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博士(医学)辻 隆裕 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)辻   隆裕 学位論文題名

     異 所性胸腺 移植によ る

HTLV‑I pX トランスジェニックラット胸腺種の 悪性化とその遺伝子発現解析

学位論文内容の要旨

    1.目的

  Human T‑cellleukemia virus typeI (HTLV‑Dは,成人T細胞自血病の原因ウィルスとして知られている.

HTLV‑Iの 構 造遺 伝 子 のう ちHTLV‑Iに 固有であ るpX遺伝 子がコー ドする ′rax蛋 白はCREB,NF KB,SRF 等の転写因子と結合し,感染宿主の細胞性遺伝子に多面的な影響を及ぼし,その病態形成に深く関与してい ると考えられている.当教室では,pX遺伝子の腫瘍原性をinvivoで検討する目的で,p56 lck遺伝子のtype I promoterの制御 下でpX遺伝子を導入したトランスジェニックラット(lck‑pXラット)を作製し,このラ ットで上皮型胸腺腫を高率に発生することを以前報告した.このラットの胸腺腫は,他臓器への浸潤や遠隔 転移等はみられず,基本的には良性の腫瘍と考えられる.今回,胸腺抜去後のlck‑pXラット腎被膜下に胸腺 腫未発症lck‑pX.ラット胸腺を移植し,約6ケ月経過観察することにより,多数の腹膜播種や遠隔転移をきた し,胸腺腫の悪性化と考えられる現象が認められた.本研究では,lck‑pXラットに発生する胸腺腫(primary thymoma) とlck‑pXラ ッ ト 腎被 膜 下 移植 後 に 悪 性形 質 を 獲得 し た と考 え ら れる 胸 腺 腫(malignant thymoma)につ い て ,病 理 組 織 学的 あ る いは 分 子 生物 学 的手法 を用い て比較検 討した ので報告 する.

    |1.材料 と方法

1. ラットか らの胸 腺摘出と 腎被膜 下胸腺移 植

  5週 齢のlck‑pXラ ットを対 象とし て胸腺摘 出を施 行し,そ の1週 間後に 生後2日のlck‑pXラット新生児 から摘 出した 胸腺を腎 被膜下に 移植し た・

2. 病理組織 学的解 析

  ラット 組織はHE染色を行 い組織 学的観察 を行な った.Ki67 indexは,対物400倍10視野におけるKi‑67 陽性細 胞数/ 全細胞数 の比の平 均を百 分率で示 した,

3.胸腺腫 の皮下 移植

約5mm角 の 腫 瘍 組 織 を5mlのHanks培 地 中 で 細切 し ,7週齢 前 後 のlck‑pXラ ッ卜 左 右 背部 皮 下 に500 ulず っ 注 入し た . 移植 の 成 立の 有無は 移植後3ケ月 まで観察 し,肉眼 的およ び組織学 的に判 定した.

4. リアルタ イム定 量RトPCR     ―296ー

(2)

  凍 結し たラ ッ卜 腫瘍 組織 ある いは 胸腺 組織 から 全RNAを抽 出しcDNAを合 成し た.SYBR@GreenIを含 む 反応液中でPCR反応を行い, 螢光をりアルタイムに検出することによりcDNA量の定量を行なった.検体 間 の各遺伝子の発現量はGAPDHの発現量で標準化した.

5.p16遺伝子のゲノムサザンブロッティング

  正常ラッ卜胸腺組織から作製したcDNAをtemplateとして ,ジゴキシゲニン標識プ口ーブを作成した.定 法 に てラット組織から抽出したDNAを制限酵素(HindHI,BamHI,PstI)で切断後,電気泳動し,ナイ口 ン メンブレンに転写した.メンブレンはプ口ーブをハイブリダイゼーションさせた後,洗浄し,化学発光系 で シグナルを検出した.バンド濃度はScionimageを用いて 定量した,

    III.結果

1.移 植後約6ケ月を経過するころより,全例(n二ニ5)で腹腔内に多数の転移結節を形成し,肺への遠隔転 移もみられるmalignant thymomaの発生が認められた,

2.HE染 色 で は ,malignant thymomaはprimary thymomaと 比 較 し て ,N/C比 の増 大や 核 分裂 像の 増 加,核異型の増強といった病理組織学的悪性変化が認められた.   Ki67 indexはprimary thymomaが25.85 土4.34%(mean土S.D.)であるのに対して,malignant thymomaでは55.77土7.12%(mean士S.D.)であ り,malignant thymomaで有意に高値であった(pく0.001).

3.  malignant thymomaを移植し た群でのみ,同系lck‑pXラット皮下への移植の成立と腫瘍の増大が観察 された.

4. primary thymomaとmalignant thymomaの 間 でHTLV‑I pXお よ びcyclin D2,p16,ARFの 発 現 量に有意な差が認められた(pく0.01). HTLV‑IpXおよびcyclin D2はprimary thymomaで高発現であった が,malignant thymomaでは胸腺腫発症前と同等のレベルまで 発現が低下する傾向が認められた,p16と ARFは 同様の傾向を示し,非腫瘍胸腺では低発現であるものの,primary thymomaでは高い発現を示した.

一方malignant thymomaではその発現がほとんど認められなか った.

5.ど の 酵 素 で 切 断 し た場 合で も正 常ラ ット 組織 ,primary thymoma,malignant thymoma間 でp16遺 伝子のバンドのパターンに違いは 認められなかった.しかしmalignant thymomaのバンド濃度は他と比べ 約1/3の濃度であった.

    IV.考察

  malignant thymomaはprimary thymomaと起源は同一ながら,組織形態学的あるい は,同系ラット皮下 への可移植 性において明確にprimary thymomaとは異なり,悪性腫瘍としての条件を備えていると考えら れ る. リア ルタ イム 定 量R′r‑PCRの結果,p16とARFは 検索した全例でprimary thymomaでは高発現であ る一方,malignant thymomaでは発現しておらず,両者間で最も大きな違いが認められた遺伝子である.ヒ 卜では食道 癌,神経膠腫,中皮腫などの種々の腫瘍で欠失が報告されている.p16のサザンブ口ッティング でmalignant thymomaでみられた薄いbandは,腫瘍に介在する問質の細胞のシグナルを検出しているもの と 推測され,malignant thymomaにおいてもp16/ARF遺伝子領域が欠失している可能 性が高いと考えられ る.

  ATLは一般にキャリア状態から腫瘍化し,くすぶり型 や慢性型といった低悪性度のATLから急性型やり ン バ腫型といった高悪性度 のATLへと進展する経過をた どる.高悪性度のATLへの移 行の際にはp16やp53

‑ 297

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      c  yR CDezpj ‑4Sedico(D1IV/9I dbLgQU pe91ApIIIOIIIhdIIIepgpjp GXdIoIb§epjSdoIII iuPulUQIIIoghIIIedIIIOIIIAgd XdIIolGgqbdIHXd     A     Gg 02rbGSp eetpj1e§pGJ eGplrpnjp3pOG

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

     異 所性胸腺 移植によ る

HTLV‑I pX トランスジェニックラット胸腺種の 悪性化とその遺伝子発現解析

  ヒ ト 成人T細 胞 白血 病 ウ ィルス(HTLV‑I)のpX遺伝子 の造腫 瘍性をinvrvoで検討す る 目的で 樹立されたトランスジェニックラット(lck‑pXラット)では、良性の上皮型胸腺腫     −

(primary thymoma)を発生す る。申請 者は、 このラッ トの腎被膜下に異所性に正常胸腺 を移植 することにより、約6ケ月間の観察で高度の腹膜播種や遠隔転移をきたす胸腺腫の 悪性化(malignant thymoma)と 考えら れる現象 を認め、 その悪性化機構を解明するため に研究 を行なっ た。malignant thymomaは組 織形態学 的、あるいは同系lck‑pXラット皮 下への 可移植性の検討において、primary thymomaとは明確に異なる悪性腫瘍と考えられ た。 リ ア ルタ イ ム 定 量RTPCRに よ る検 討 で は、primary thymomaではp16,ARF遺伝 子 が高発 現であるのに対し、malignant thymomaではそれらの発現がほとんど認められなか った。p16/ARF遺伝 子領域 について のサザ ンブロッ ト解析で は、正 常組織DNAと比 ベ、

malignant thymomaではバン ド濃度が 薄く、malignant thymomaで のこの 遺伝子領 域の 欠損の可能性が示唆された。

  質疑応 答では、 副査畠 山昌則教授から、@蛋白レベルでの発現解析の検討の有無につ いて、 @primary thymomaで、細胞 周期を 抑制するp16、ARFのような遺伝子が高発現し ている にもかか わらず腫 瘍化し ているこ との理 由につい て、◎cyclin DlのmRNA発現の 検討の有無について等の質問があった。それらの質問に対し申請者は、(恥16については免     ―299一

   

   

木 嶋

吉 長

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

疫染色でprimary thymomaでの高発現を確認した。◎機序の詳細は不明ながら、cyclin D2 等の高 発現に よる細胞 周期の 回転を停 止させる ためにp16,ARFの高発現が誘導されてい ると考察している。◎cyclin Dlの発現は検討しているものの、サンプル間でのばらっきが 大きく 、詳細 な検討は 行なっ ていない と回答し た。次に副査長嶋和郎教授から、@腎被 膜下に移植することによる悪性化の理由について、◎腎被膜下移植後胸腺の悪性化の時期 につい て、◎malignant thymomaでpX遺伝子 の発現が 低下し ている理 由についての質問 があった。それらの質問に対し申請者は、@腎被膜下以外の腹腔内に移植した場合には、

腫瘍の生着率が低く、悪性化は腎被膜下のみでみられる現象の可能性がある。その理由と して腎 実質か らの血管 新生や増殖因子の分泌の関与などが推測される。◎移植後3ケ月に 腎 被膜 下 に 生着 し た 腫瘍 の 検 討 では 、 組 織像お よび遺伝 子発現 のバター ンはprimary thymomaに類似し ており、 少なく ともこの 時点で は悪性化 してい ないと考 えられる。◎

aggressiveなATLでは、pXが発現 できない 状態に なってい ること が多いと いう報告を引 用 し、 こ の 腫瘍 の場 合も、p16とARFの発現 がなくな った状 態では、 増殖の ためのpXの 発現は 必ずし も必要で はないと考えられ、むしろpXを発現していないcloneが優位に増殖 し てい る 可 能性 があ ると回答 した。最 後に主 査古木敬 教授か ら、培養 細胞株 への野生 型p16、ARF遺伝子導 入実験 の可能性 について の質問があった。それに対し申請者は、樹 立した 培養細 胞株をも ちいて、実際にそのような実験を計画中であり、p16、ARF、p53等 の遺伝子を組みあわせて導入することを検討中であることを回答した。以上、質疑に対す る応答は概ね妥当であった。

  この論文は、良性の胸腺腫瘍を腎被膜下という異所に移植することにより、起源は同一 ながらも性質の全く異なる高悪性度腫瘍を誘導しており、その手法と結果にオリジナリテ イがある点で高く評価できる。今後このin vivoモデルを使った解析をすすめることにより、

HTLV‑I関連 腫瘍の悪 性化お よび良性 腫瘍の悪 性化のメカニズム等が明らかになることが 期待される。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑚や取得単位なども あわせ、申請者が博士(医学)の学位を受けるのに十分な資格を有するものと判定した。

‑ 300 ‑

参照

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