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博士(医学)木村享史 学′位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)木村享史 学′位論文題名

日本脳炎ウイルス高感受性細胞および

低感受性細胞におけるウイルス吸着、侵入の解析 学位論文内容の要旨

     目的

  日 本 脳 炎 ウ イ ル ス(JEV)は ヒ ト に 重 篤 な 脳 炎 を 引 き 起 こ す 節 足 動 物 媒 介 性 ウ イ ル ス で あ る が 、 そ の 組 織 特 異 性 、 細 胞 特 異 性 の メ カ ニ ズ ム に つ い て6ま ぃ ま だ 不 明 な 点 が 多 い 。 一 方 、 ウ イ ル ス の 細 胞 へ の 感 染 過 程 の 初 期 段 階 、 特 に ウ イ ル ス 外 被 蛋 白 と 細 胞 表 面 に 存 在 す る ウ イ ル ス 特 異 的 レ セ プ タ ー の 結 合 は 、 ウ イ ル ス の 組 織 特 異 性 を 決 定 す る 因 子 の ひ と つ で あ る こ と が 知 ら れ て い る 。 本 研 究 に お ぃ て は 、 種 々 の 株 化 培 養 細 胞 を 用 い て 、 細 胞 のJEV感受 性と ウイ ´ レ ス 吸 着 、 侵 入 量 と の 相 関 の 有 無 を 検 討 し 、 さ ら にJEV高 感 受 性 細 胞 に 特 異 的 に 存 在 す る ウ イ ル ス レ セ プ タ ー 分 子 の 検 出 を 試 み た 。

方 法 桂iヒ蟹養細胞t三塑!士墨IEV感 受性Q捻i土

  JEVくJaGAr‑01株 ) を 実 験 に 使 用 し た 。8穴 の チ ャン バー スラ イド にモ ノレ イヤ ー を 形 成 し 、100 PFU/cellで ウ イ ル ス を 感 染 さ せ 、2日 間 培 養 の 後 、 細 胞 を 固定 し 、 抗JEVウ サ ギ 血 清 を 用 い た 螢 光 抗 体 法 に よ っ て 染 色 を 行 っ た 。 螢 光 顕 微 鏡 に よ る 観 察 で 、 全 細 胞 中 の う ち 螢 光 陽 性 細 胞 の 占 め る 割 合 を 感 染 率 と し て 算 出し た。

空亙2ヒ丞吸着量堕Z2セイ

  48穴 の マ イ ク ロ タ イ タ ー プ レ ー ト に モ ノ レ イ ヤ ー を 形 成 し 、30 PFU/cellの

[ゴ ・・5S]メチオニン標識JI三Vを4℃下で吸着させ、経時的に細胞を回収して洗浄後、

SDSで溶解、放射活性を測定した 。 ウイ 少ス侵ム量QZ2セイ

  12穴 の マ イ ク ロ タ イ タ ー プ レ ー ト に 形 成 し た モ ノ レ イ ヤ ー に 、30PFU/cellの

[ H] ウ リ ジ ン 標 識 厄Vを4℃下90分 吸着 させ 、そ の後 に培 養を37℃ に移 して から 経 時 的 に 細 胞 を 回 収 し 、 細 胞 表 面 に 結 合 し た ウ イ ル ス を ト リ プ シ ン 処 理 に よ って 除いた後に放射活性を測定した。

璽y!型△堕ヱiクロインジェクシi二二

  精 製 厄Vよ り 抽 出 し た ゲ ノ ムRNAを 細 胞 に 注 入 し 、 注 入 後48時 間 培 養 の 後 に 上清 を採取してプラークアッセイを行った。

細胞Q蛋白分鰹酵素処理

  蛋 白 分 解 酵 素 と し て 、proteinaSeK、pronaseヽpapainを 使用 した 。細 胞を 酵素 希 釈液 に 懸濁 して37℃1時 間イ ンキ ュ ベー トし 、洗 浄の 後に20PFU/cellの [ S] メ チ オ ニ ン 標 識 厄Vを4℃ 下120分 吸 着 さ せ た 。 洗 浄 後 、 細 胞 に 吸 着 し た 放 射 活 性を 測定した。

(2)

細胞膳画盆睦在在主る JEV誼金蛋白Q捻出

  細 胞 を ホ モゲ ナイ ズ、 分画 遠心 して 得ら れた粗 膜画 分を 、陰 イオ ン交 換ク ロ マト グラ フイ ーで 粗精 製した。カラムからの溶出画分をSDS‑PAGEで分離後、

PVDFメ ン ブ レン に転 写し 、[35S]メ チオ ニン 標識JEVと 反応 させ 、オ ート ラジ オグラフイーを行った。  ・

fjL,JEy垂22里ニ士2ヒ抗垈t三よるJEVの細胞仝Q結金阻害

  JEVE蛋 白 に反 応す るモ ノク ロー ナル 抗体 のウイ ルス 吸着 に及 ぼす 影響 が細 胞によって異なるかどうかを検討するため、[ S]標識JEVをMAb 301(HI抗体)、

MAb 503(中 和抗 体) と4℃2時間プレインキュベートし、細胞に吸着させた。な お 、 Fcの 影 響 を 除 く た め 、Fabフ ラ グ メ ン ト を 調 整 し て 使 用 し た 。 垂Z2里ニ士)ヒ拭佳!≦圭墨JEVcD細胞蛋白仝Q結金阻畫

  抗JEVE蛋 白 モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 お よ び 抗JEV血 清 か ら 精 製 し たIgG(抗JEV IgG)を[35S]標 識JEVと4℃2時間プレインキュベートした。この標識ウイルス粒 子 ーIgG混 合 液 をSDS‑PAGEの後 メ ン ブ レ ン に転写 した カラ ム溶 出画 分と 反応 させた。

結果 各種桂ゴヒ培養細胞!三塑!土るJE翌感染壅

  14種 類 の 株 化細 胞にJEVを 感染 させ 、抗JEVウ サギ 血清 を用 いた 螢光 抗体 法 に よ っ て 求 め た感 染率 をJEV感受 性と して 比較 した 結果 、感染 率は0.2%か ら 100% と細 胞 に よっ てか なり 異な る値 をし めし た。 この うちJEV高 感受 性細 胞 と してVero(感染 率100) を、 低感受性細胞としてNRK(感染率0.20/0)を選び、

種々の解析を行った。

立至2ヒ丕吸着量ユ侵ム量Q壷イネテイックス

  Vero、NRKに[ S]メチオニン標識した精製ウイルスを4℃下で吸着させ、細 胞 に 吸 着 し た 放射 活性 を経 時的に グラ フに する と、Veroのウ イル ス吸 着量 は NRKに比 べて 多か った 。ま た、 [ H]ウリジン標識した精製ウイルスを4℃下で プ レ イ ン キ ュ ベー トし 吸着 させ、 その 後培 養を37℃ に移 すこ とに よっ て細 胞 内 に取 り込 ませ、 細胞 内に 取り 込まれた放射活性を経時的にグラフにすると、

Veroは NRKよ り も 多 く の ウ イ ル ス を 細 胞 内 に 取 り 込 ん で い た 。 感染性RNAのヱゴ2里イン芝三22弖Z

  JEVゲノ ムRNAをJEV低 感 受 性 細 胞NRKに マ イ ク ロ イ ン ジ ェ ク シ ョ ン に よ っ て 直 接 導 入 す る と 、RNA注 入 後48時 間 目 の 培養 上清 中に 感染 性ウ イル ス粒 子 が認められた。

細胞堕蛋白分鰹醒素処理Q立ゴ)ヒ丞結金t三対空ろ髭饗

  Vero、NRKを蛋 白分 解酵 素で37℃1時間処理した後に[ユ5S]標識JEVを反応さ せ る と 、Vero、NRKとも に使 用し た3種 の酵 素に よっ て用 量依 存性 にウ イル ス 吸着量が減少した。

JEV結金蛋白cD捻出

  粗 膜 画 分 を 陰イ オン 交換 クロマ トグ ラフ イー にか け、 溶出 画分 をSDS‑PAGE で分離後メンブレンに転写し、[ S]メチオニン標識JEVを反応させると、Vero

(3)

で は 74 KD 、 NRK で は 39 B:D の JEV 結 合 蛋 白 が 検 出 さ れ た 。 VILJEV 垂 ′ ク ロ 二 士 2 ヒ 抗 佳 ! 三 よ る JEVc) 細 胞 i¥cD 誼 金 田 晝   MAb 301 によってVero 、NRK どちらにおいてもウイルス吸着が阻害されたが、

MAb 503 およびコントロールとして用いたマウスIgG による吸着阻害は認めら れなかった。

垂 2 之 旦 ニ 士 ) レ 抗 垈 t 三 よ る l 亙 2 ヒ 丞 cD 細 胞 性 蛋 自 仝 丑 盤 金 盟 晝   Vem で検 出さ れた 74KD 蛋白へ のウイルス結合は、 MAb301 および抗正 VIgG に よっ て阻 害され たが 、MAb503 は阻害を引き起こさなかった。NRK で検出 さ れた 39KD 蛋白へ のウ イル ス結 合は、 抗正 VIgG によ って阻 害さ れたが、

MAb301 、MAb503 による阻害は認められなかった。

     考察

  JEv 感受性は検索した株化細胞間でかなり異なり、高感受性細胞Vero では低,

感受性細胞 NRK に比べてより多くのウイルス吸着、侵入が認められたが、こ のことは細胞へのウイルス吸着、侵入の過程が厄 V 感受性を決定する因子のひ とつであることを示している。細胞をあらかじめ蛋白分解酵素処理すると、

ウイルス吸着量が顕著に減少することから、 Vem 、NRKf ま共に蛋白質分子を 介して亜V を吸着することが考えられる。本研究ではVero の膜画分中に74KD 、 NRK の 膜画分 中に 39KD の JEV 結 合蛋 白が検 出さ れた 。JEV の74KD 蛋白への結 合は 、HI 活性 を持 つ MAb301 に よっ て阻害 され た。 MAb301 は厄V の細胞への 結合も阻害することから、74KD 蛋白|ま厄V に対するレセプターのひとつ、も しくはレセプターの一部分であることが示唆される。また、NRK では74KD 蛋 白は検出されず、Vem で検出されなかった39KD 蛋白が認められたことから、

Vem と NRK では レセ プター が異なっていることが考えられ、これらの結果は JEV が細胞への吸着に2 種類以上のレセプターを利用することを示唆している。

     結語

   日本脳炎ウイルスくI 班V )の組織親和性を検討する目的で種々の株化培養細胞 を用いて検索した結果、ウイ´レスの吸着と侵入の過程が細胞の厄V 感受性に関 連し てい るこ とが 示され た。高感受性細胞であるVem では74KD の JEV 結合蛋 白が 検出 され 、正 V と 74KD 蛋白との結合は厄V のエンベロープ蛋白に対する モノクローナル抗体で阻害された。従って新しく同定された結合蛋白はVero におけるJI 三V レセプターもしくはその component であることが示唆された。

174 ‑

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

日本脳炎ウイルス高感受性細胞および

低感受性細胞におけるウイルス吸着、侵入の解析

    目 的: 日本 脳炎 ウイ ルス(JEV)はヒトに重篤な脳炎を引き起こす節足動物媒 介性 ウ イ ル ス で あ る が 、 そ の 組 織 特 異性 、細 胞特 異性 のメ カニ ズム につ いて はぃ ま だ 不 明 な 点 が 多 い 。 一 方 、 ウ イル スの 細胞 への 感染 過程 の初 期段 階、

特に ウ イ ル ス 外 被 蛋 白 と 細 胞 表 面 に 存在 する ウイ ルス 特異 的レ セプ ター の結 合は 、 ウ イ ル ス の 組 織 特 異 性 を 決 定 する 因子 のひ とつ であ るこ とが 知ら れて いる。 そこ で種 々の 株化 培養細胞を用いて、細胞のrEV感受性とウイルス吸着、

侵入 量 と の相 関の 有無 を検 討し 、さ らにJEV高 感受 性細 胞に 特異 的に 存在 する ウイルスレセプター分子の検出を試みた。

  実験方法:14種類の株化培養細胞に100 PFU/cellでJEV(JaGAr‑01株)を感染さ せ、2日 問 培 養 の 後 、 抗JEVウ サ ギ 血 清を 用い た螢 光抗 体法 によ って 染色 を行 ってウ イル ス感 受性 を比 較し た。 高感 受性 細胞 と低 感受性細胞に知PFU/ceLlの

[ S】メチオニン標識JEVを4℃下で吸着させ、経時的に細胞を回収して洗浄後、

放射活 性を 測定 し、 ウイ ルス吸着量の比較を行った。また、30 PFU/cellの['H]

ウリ ジ ン 標 識JEVを4℃ 下90分 吸 着 さ せ、 その 後に 培養 を37℃に 移し てか ら経 時的 に 細 胞 を 回 収 し 、 細 胞 表 面 に 結 合し たウ イル スを トリ プシ ン処 理に よっ て除 い た 後に 、放 射活 性を 測定 して ウイ ルス 侵入 量の比 較を 行っ た。 精製JEV より 抽 出 し た ゲ ノ ムRNAを 低 感受 性 細 胞 に 注 入 し 、 ウ イ ル ス 粒 子 産 生の 有無 を検討した。細胞をproteinaseK、pronaseヽpapainの3種の蛋白分解酵素と37℃1 時間反応させ、洗浄の後に20 PFU/cellの[ S]メチオニン標識JEVを4℃下120分 吸着 さ せ る こ と に よ り 、 細 胞 表 面 の ウイ ルス 吸着 物質 の性 質を 検討 した 。細 胞膜 画 分 に存 在す るJEV結合 蛋白 を検 出す るた め、 細胞 から 粗精 製し た膜 画分   をSDS‑PAGEで 分離 後、PVDFメン ブレ ンに 転写 し、(35S]メチオニン標識JEVと 反応 さ せ 、オ ート ラジ オグ ラフ イー を行 った 。JEVエン ベロ ープ 蛋白 に反 応す   るモノクローナル抗体のウイルス吸着に及ぽす影響を検討するため、[ S]標識 JEVをMAb 301(H(抗体)、MAb 503(中和抗体)と4℃2時間プレインキュベー.トし、

細胞 に 吸 着さ せた 。同 モノ クロ ーナ ル抗 体に よるJEVの 細胞 蛋白 への 結合 阻害   を検討するため、MAb301とMAb503を[ S]標識JEVと4℃2時間プレインキュベ   ー ト し 、 こ の 標 識 ウ イ ル ス 粒 子‑MAb混 合液 をSDS‑PAGEの 後メ ンブ レン に転 写した膜画分と反応させた。

    結 果:(1)検索 した14種類の株化細胞におぃては、細胞によってかなり異な   るJEV感 受 性 を 示 し た 。(2)JEV高 感 受 性細 胞Vero、低 感受 性細 胞NRKに 標識

郎 良

和 和

嶋 田

長 生

授 授

教 教

査 一

主 副

(5)

JEV を4 ℃下で吸着させ、細胞に吸着した放射活性を経時的にグラフ|三芝うも Vero あゥイル攴吸着量はNRK に比べて多かった。また、標識JEV を37 ℃下で細 胞内に取り込ませ、細胞内に取り込まれた放射活性を経時的にグラフにすゑ と 、Vero は NRK よりも多くのウイルスを細胞内に取り込んでいた。(3)JEV ゲ 冫、ムぶスをNRK にマイクロインジェクションすると、RNA 注入後48 時間目の 培養上清中に感染性ウイルス粒子が認められた。(4)Vero 丶NRK を,蛋白忿麗麗 素処理すると、共に使用した3 種の酵素によって用量依存性にウイノヒス吸着量 が減少した。(5)SDS‑PAGE で分離後メンブレンに転写した膜画分から、Vero で は 74 KD 、 NRK では 39 KD の JEV 結合 蛋白が検出された。(6)MAb 301 によって Vero 、 NRK どちらにおいてもウイルス吸着が阻害されたが、MAb 503 による吸着 阻害は認められなかった。(7)Vero で検出された74 KD 蛋白へのウイルス結合弦、

MAb 301 によって阻害されたが、 MAb 503 は阻害を引き起こさなかった。 NRK で 検出 された39 KD 蛋白へのウイルス結合においては、MAb 301 、MAb 503 に よる阻害は認められなかった。   .

  JEV 感受性は検索した株化細胞間でかなり異なり、高感受性細胞Vero では低 感 受性 細胞NRK に比べてより多くのウイルス吸着、侵入が認められたが、こ のことは細胞へのウイルス吸着、侵入の過程がJEV 感受性を決定する因子のひ とつであることを示している。細胞をあらかじめ蛋白分解酵素処理すると、

ウ イル ス吸着量が顕著に減少することから、Vero 、 NRK は共に蛋白質分子を 介してJEV を吸着することが考えられる。本研究ではVero の膜画分中に74 KD 、 NRK の 膜画分中に39 KD の JEV 結合蛋白が検出された。JEV の74 KD 蛋白への結 合は、HI 活性を持つMAb 301 によって阻害された。MAb 301;:tjEV の細胞への 結合も阻害することから、74 KD 蛋白はJEV に対するレセプ夕一のひとつ、も しくはレセプターの一部分であることが示唆される。,

   口頭発表にあたり、生田教授より精製エンペロープ蛋白と JEV 結合蛋白の反 応、および抗エンベロープ抗体のそれに及ぼす影響等について、また皆川教 授 より 過去に脳組織から分離精製されているHA 阻害物質とJEV 結合蛋白との 関連、74KD 蛋白のウイルス感染防御能の有無等について質問がなされたが申 請者はおおむね適切な回答をした。また、副査の生田、皆川両教授には個別 の審査を受け合格と判定された。.

   以上、本研究は JEV の株化培養細胞への吸着、侵入過程を解析することによ り、細胞のJEV 感受性がウイルス吸着、侵入過程により規定されることを明ら かにし、さらにウイルスレセプターの一成分と考えられる蛋白を同定したも ので、JEV 感染機序の解明に大きく寄与したものである。よって博士(医学)

の学位授与に充分値するものと思われる。

参照

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