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博士(医学)吉田和博 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)吉田和博 学位論文題名

    Weakened cellular scavenging activity against oxidative stressln diabetes mellitus : regulation of glutathione synthesis and efflux

(糖 尿病 患者 にお ける 酸化的 ス卜 レス に対 する 細胞 性消去活性の低下:

グル タチ オン の合 成と 輸送の 制御 )

学位論文内容の要旨

    I研究目的

  グ ル タチオ ン(GSH)は、 ほと んど すべて の細 胞に 存在 し、 代謝 .輸 送, 細胞 防 御 機 構 に重要 な役 割を はた して いる ‥赤 血球 のGSHの主 な役 割は 、低 濃度 の過 酸 化 水素 の解 毒作 用と へモ グ口 ビン や酵 素蛋白 のSH基が 酸化されるのを保護して機 能 維 持 に働く と考 えら れて いる ‥細 胞内 での 高濃 度GSH維持 のた めに 、合 成系 と 細 胞外 への 輸送 機構 の両 方が 重要 であ る。輸 送機 構に 関しては、酸化型グルタチ オン(GSSG)のATP依存性の膜輸送機構が存在する。

  また 細胞 にと って 酸化 的ス卜レスの原因となる薬物などはグルタチオンS―トラ ン ス フ ェラ― ゼ(GST)で、 グル タチ オンS一抱 合体 に解 毒さ れる が分 解機 構が な い た め に、ATP依 存性 の細 胞外 への 輸送機 構が 存在 して いる ‥糖 尿病 患者 赤血 球 で は 細 胞 内GSH及 びGSSGの 膜 輸 送 機 構 が 低 下 し てGSSG量 が 増 加 す る と報 告 さ れている 、細胞内でのS一抱合体の蓄積は重要な酵素活性を低下させ、発癌性など の 細胞 障害 を引 き起 こす ため 、S‑抱合 体の輸 送機 構は 細胞の防御機構上重要と考 え られ てい る‥ 従っ てヒ ト赤血球のS一抱合体の輸送機構の生理的意義を明らかに す る た め に 、GSH合 成の 律 速 酵 素 で あるy―グ ルタ ミル シス テイ ン合 成酵 素fy− GGS)の 発現 調節 とS― 泡合 体の 輸送 につ いてn型糖 尿病 患者赤血球と高濃度グルコ ー ス で 培 養 し た 赤 芽 球 系 細 胞 tK562細 胞 ) を 用 い て 検 討 し た ‥

    ||対象と方法

  北 海 道 大 学 医 学 部 附 属 病 院 第 ー 内 科 通院 中 の 未 治 療 のn型 糖 尿 病 患者15名 を 対 象 と し た ヵ コ ン ト ロ ― ル はacie matchさ せ た正 常人15名 ー糖尿 病患 者の 平 均 年 齢 は57歳 。 臨 床 デ ー タ は 、 空 腹 時血 糖 は 平均220mci/dl。HbAlcは 平均 10.5%で、罹病期間は1年から20年であったヵ

  ここで次の項目を検討した。

(1) ヒ 卜 赤血 球 中 のGSHは ジ チ オ ビ ス 安息 香 酸(DTNB>を 基 質 と し たenzyme‑

recVclinq法で求め、グルタチオン関連酵素のGST測定は1一ク口口一2,4ージニトロ ノ 丶 ご ン ゼ ン(CDNBJを 基 質 と し て 、 ま たATP濃度 はBe ultlerの方法 で測 定‥

(2)

(2)ヒト赤血 球のグルタ チオンS‑抱合体の輸送実験は、基質としてCDNBを 添加し一時間インキュベーションして、細胞外ヘ輸送されるS‐抱合体を測定カ

(3)ヒ卜赤血球を遠沈法にてreticulocyteイichグループとreticuIOCYte‑Poorグ ル ― プ に 分 け てS‐ 抱 合 体 輸 送 実 験 と グ ル タ チ オ ン 関 連 酵 素 を 測 定 。

(4)糖尿病患者赤血球のS―抱合体輸送活性の治療(経口血糖降下剤)による 変化を測定。

(5)K562細 胞 を 高血 糖(27mmol/l qlucose)条件 で7日間 培 養し[3H] ー qlVcineを 加 えCDNBを 添 加 し 、37℃ で1時 間 イ ン キ ュベ ― ショ ン し た後 Dowexー1カ ラ ム に か け 、 ギ 酸 で 溶 出 し たS‑抱 合 体の 輸 送 活性 を 測定 。

(6)y‐GCSに対する 特異抗体を 作製し、高血糖培養細胞のy‐GCSの発現を フローサイ卜メトリ一法で測定。

(7)高濃度グルコースに糖化抑制剤アミノグァニジンを予め添加培養した細 胞とy‐GCSの阻害剤ブチオニンスルホキシミン(BS○1を予め添加培養した細胞 を 用 い て 、S一 抱 合 体 の 輸 送 実 験 と 細 胞 毒 性 をMTTア ッセ イ 法で 測 定。

  (8)ヒト胎盤のcDNAライブラリーよルヒトy‑GCSをクロ―ニングして作製 したcDNAをプ ローブとし て、K562細胞を 用いmRNAの発現を ノーザンブロッ トで測定。

    川結  果

  末治療の糖尿病患者赤血球のグルタチオンS‑抱合体輸送活性は、正常者に比較し て約70%に低下いまたATP濃度とGST活性及び細胞内で合成されるS‐抱合体の量は、

糖尿 病患者と正 常者で差は なかったが 、細胞内GSH濃度とy‑GCS活性は糖 尿病患 者で有意に低下していた。未治療糖尿病患者の治療効果の結果では、S‐抱合体輸送 活 性 はHbAlcの 改善 に っれ て 増加し、y‑GCS活性とGSH濃度は上 昇していた 。患 者 赤 血 球 のSー 抱 合 体 輸 送 活 性 は 、HbAlcと 有 意 の 負 の 相 関 を 示 し た 。   比重差を用いた老,若2群に分けた赤血球分画では、若い細胞のS‐抱合体輸送活 性とy‐GCS活性は、古い細胞に比較して上昇してぃた。

  赤血球膜の反転小胞を用いたS‑抱合体輸送実験では、老,若赤血球を問わず、糖 尿病患者は正常者より低かった。高血糖培養細胞のGSH濃度は、グルコ―ス濃度が 増加するにっれて低下した‥S一抱合体の輸送活性は、コントロールに比較し約70% に、またyーGCS活性も同程度に低下レた。

  高血糖培養細胞では、y―GCSの免疫学的発現は、コントロ―ルに比較し約190% に 増 え 、 ま たy−GCSmRNAの 発 現 は 数 時 間 で 増 加 し72時間 過 ぎて 低 下 した 。 またy―GGS活性は徐々に低下し、y‑GCSのタンノヾク量は72時間過ぎて増加した(1   さらに高血糖培養細胞では、患者赤血球と同様に、GSH濃度.y−GCS活性は低下 して いた。細胞毒性に関しては、高血糖培養細胞にCDNBを添加した細胞の死滅率   (|Cso値)は、コン卜ロールに比較レて有意に増加した。その死滅率の増加はy‑

GCSの阻害剤のBSOやS‑抱合体輸送系の阻害剤のSodium fluorideを加えても見られ たヵアミノグァニジンを高濃度グルコ―スに添加したK562細胞のS‑抱合体輸送活性 はコ ントロール とほば同じ で、死滅率 は高血糖培 養細胞に比 較して減少 した。

    1V考察ならびに結話

高血糖は糖化や酸化などをひきおこし、酸化的ストレスに対して防御機構が低

(3)

下し、細胞障害と糖尿病性合併症を引き起こすと考えられている。我々は今ま でに糖尿病患者赤血球や実験的糖尿病家兎の大動脈血管内皮細胞の抗酸化機構 低下を報告してきたぃしかしGSH代謝障害の病因論から見た意義はまだ十分明 らかになっていなぃ,1今回我々は糖尿病におけるGSH代謝調節をヒ卜赤血球と K562細胞を用いて研究し、患者赤血球のy−GCS活性とS‑抱合体輸送活性は治 療 で改 善す ること を見 い出 した。GSH濃度とy‐GCS活性は共にHbAlcと負の 相関を示した。以上の変化は赤血球内に存在するcarbonic anhydraseやCu‐Zn― S〇Dの糖化による変化と同じと恩われる。

  y‐GCSの防御機構における重要性は、heat shock proteinの発現に似て、

mRNAの発現が酸化的ストレスに対して高い反応性を示すことからもわかる,、

高 血糖 培養 細胞で は、y‐GCS活性 は徐 々に低下したが、y‐GCSmRNAの発現 は 顕著 な増 加を示 し、 またy−GCSの免 疫学的レベルは増加した。さらにy‑

GCSは 糖 尿 病 状 態 で 不 活 化 さ れ 、y‑GCSmRNA発 現 の 障 害 はy‐GCS活 性と GSH濃度低下を引き起こすと考えられる。糖尿病患者赤血球と高血糖培養細胞 におけるS一抱合体輸送活性低下は、GSHの代謝障害によると考えられてぃるー アミノグァニジンを高濃度グルコ―スに添加培養した細胞では、y−GCS活性 とS‑抱合体輸送活性は影響されなかった。この事実によってy―GCSとS一抱合体 輸送系のグルコ―スによる修飾が、酵素活性低下の要因の―っと考えられるー GSH合成とS―抱合体の輸送系は、糖尿病患者赤血球と高血糖培養細胞で障害さ れるゥy‐GCS活性低下は酵素蛋白の不活化とmRNA発現の低下によると考えら れる。高血糖培養細胞では、酸化的ストレスに対する防御機構が低下し、障害 された細胞が血管内を循環する際に内皮細胞に接触し、内皮細胞の機能を侵襲 する様な相互作用が惹起されると考えている。したがって、糖尿病患者赤血球の 研究は他の細胞にも当てはまると思われ、酸化的ストレスに対する防御機構の 低 下 は 糖 尿 病 性 合 併 症 の 病 因 の 研 究 に 寄 与 す る と 考 え て ぃ る ー

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

    Weakened cellular scavenging activity against oxidative stressln diabetes mellitus : regulation of glutathione synthesis and efflux

( 糖 尿 病 患 者 に お け る 酸 化 的 ス ト レ ス に 対 す る 細 胞 性 消 去 活 性 の 低 下 : グ ル タ チ オ ン の 合 成 と 輸 送 の 制 御 )

  目 的 : 細 胞 に と っ て 酸 化 的 ス ト レ ス の 原 因 と な る 薬 物 な ど は 、 グ ル タ チ オ ンS−ト ラン スフ ウラ ー ゼ(GST)で、 グル タチ オンS一抱 合体 に解 毒されるが、

赤 血 球 に お ぃ てtS→ 抱 合 体 の 分 解 機 構 が な いた め´u剛 衣存 性の 膜 輸送 機構 が 存 在 し て い る 。 細 胞 内 で のS一 抱 合 体 の 蓄 積は 重要 な酵 素活 性を 低 下さ せ、

発 癌 性 な ど の 細 胞 障 害 を 引 き 起 こ す こ と が 報 告 さ れ 、S一 抱 合 体 の 輸 送 機 構 は 細 胞 の 防 衛 機 構 上 重 要 と 考 え ら れ て い る が 、S一 抱 合 体 の 代 謝 過 程 は ま だ 明 ら か に さ れ て い な ぃ 。 本 論 文tよ 、 ヒ ト 赤 血 球 に お け る グ ル タ チ オ ンS―抱 合 体 の 輸 送 機 構 の 生 理 的 意 義 を 明 ら か に す る た め に 、 グ ル タ チ オ ン 合 成 の 律 速 酵 素 で あ るyー グ ル タ ミ ル シ ス テ イ ン 合 成 酵 素 (yGCS) の 発 現 調 節 と S・ 抱 合 体 の 膜 輸 送 機 構 に つ い てH型 糖 尿 病 患 者 赤 血 球 と 高 濃 度 グ ル コ ー ス

27mMグ ル コ ー ス )で 培養 した 赤芽 球系 細胞 (K562細 胞) を用 いて 検 討し た。

ま た 高 濃 度 グ ル コ ー ス に 糖 化 抑 制 荊 ア ミ ノ グ ア ニ シ ン を 加 え た 培 養 系 を 用 い て グ ル タ チ オ ンS一 抱 合 体 の 輸 送 実 験 と 細 胞 毒 性 をMrrア ッ セ イ 法 で 検 討 し た。

  結 果 : 糖 尿 病 患 者 赤 血 球 に お い て グ ル タ チ オ ン (GSH) 量 、y‐ グ ル タ ミル シ ステ イン 合成 酵素(y−GCS)活性、グルタチオンS一抱合体(GSH―S一抱合体)

の 細 胞 外 へ の 輸 送 活 性 の 低 下 が 認 め ら れ た 。 高 濃 度 グ ル コ ー ス で 培 養 し た 赤 芽 球 系 細 胞 (K562細 胞 ) に お ぃ て も 、GSH量、y―〔 ℃S活性 、GSH−S‐ 抱合 体 輸 送 活 性 の 低 下 が 認 め ら れ 、GSHS一 抱 合 体 に 対 す る 細 胞 毒 性 が 増 加 して い た 。 ま たyー ( ℃Sに 関 し て は 、mRNAの 発 現 が 一 過 性 に 増 加 し 、 蛋 白 量 が 増 加し てい たに もか かわ らず 活性 は低 下し てい た。

和 顕

義  

  勝

上 畠

川 北

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

  高濃 度グ ルコ ース に糖 化抑 制剤ア ミノ グアニシンを加えた培養系では、

GSH量 、y‑GCS活 性 、GSH−S一抱 合体の 輸送 活性 の低 下並 びに 細胞 毒性 は 改善した。

  結論 :高 血糖状態ではグルタチオン合成とグルタチオンS一抱合体の輸送 機 構は 障害 され 、赤 血球 が血 管内で 高い 抗酸化能を有していることから、

これら防御機構の低下は、糖尿病性合併症の進展に関連すると考えられた。

こ の防 御機 構低 下の 原因 は、 合成酵 素や 膜輸送体の糖化によると推測され た。

  口答 発表 にあたり、宮崎教授よりS一抱合体の膜輸送体の調節因子につい て 、北 畠教 授よりS―抱合体の輸送活性と治療の内容との関連について、そ れ ぞ れ 質 問 が あ っ た 。 申 請 者 は 概 ね 妥 当 に 答 え た と 思 う 。   また 、宮 崎教 授、 北畠 教授 より個 別に 審査を受け、合格との御返事をい ただいている。

  これまでにグルタチオンS一抱合体の生理的意義は明らかにされておらず、

S・抱合 体の 膜輸送磯構の意義の重要性を示したことは、意義あるものと考 え ら れ 、 よ っ て 本 論 文 は 博 士 ( 医 学 ) に 相 当 す る も の と 認 め た 。

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