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博士(獣医学)吉田 緑 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(獣医学)吉田   緑 学位論文題名

ラ ッ ト に 出 現 し た ム コ 多 糖 症 VI型 に 関 す る 研 究

一特に本症ラットの生化学的異常と遺伝学的ならびに形態学的特徴について一 学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  ム コ多 糖 症 はglycosaminoglycan(GAG)を 分解 する酵 素 の遺伝的欠損により生ずる蓄積病であり、代表的な先天性代謝 異常疾患のーつである。ムコ多糖症では、分解酵素の欠損によ って 分解さ れなか ったGAGが、全 身の諸 臓器・ 組織 の細胞 の りソ ソーム 内に異 常に 蓄積し、尿中へも大量に排泄される。

  動物繁殖研究所において、継代・維持されているIsh系ラッ ト(イシバシラット由来のミュータントで副乳頭 形成、貧毛を 特徴とする)に、矮小体でずんぐりとした、鼻梁の短い異常ラ ットが出現した。こ.の異常ラットは本研究により、ムコ多糖症 VI型であることが明らかとなった。本研究では、その異常ラッ トを生化学的、遺伝学および形態学的に検索し、その本態を明 らかにした。

  異常ラットの尿は、簡便法であるスポットテストにて陽性を 示 し 、GAGを 含 ん で い た 。 そ の 尿 中 のGAG量 は 正 常 ラ ッ 卜 の5〜6倍に 増加し てい た。尿 中の増 加して いるG.AGの種 類 を電気泳動法により分析した結果、デルマタン硫酸が主体をな して いた。 尿の生 化学 的検査結果を基に、異常ラットの肝臓 についてデルマタン硫酸を分解する関連酵素の活性値を測定し た。その結果、異常ラットではデルマタン硫酸を分解する酵素 のー っであ るarylsulfataseBの活性値が極めて低値(正常個 体の5%)であった。これらの成績より、異常ラットはムコ多

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糖 症 VI型 ( Maroteaux− Lamy症 候 群 ) と 診 断 し た 。   次に、異常ラットの遺伝様式を検索した。方法としては、異 常個体が生まれるcarrierと他系統であるWistar KingSラット の間で、Fl、F2および戻し交配を行った。異常個体が常染色体 の単一劣性遺伝子に支配されていると仮定レて、これらの交配 で 得られ た異常個体と正常個体の分離比をX2検定した。その 結果、この仮説は否定されなかった。よって、このムコ多糖症 ラットの出現は、常染色体上の単一劣性遺伝子による支配であ ることが明らかと.なった。遺伝様式の分析結果より、ムコ多糖 症 VI型 を 起 こ す ラ ッ ト の コ ロ ニ ー をMPR(mucopoly―     .  f  ..

saccharidosisrat)と命 名し、 ムコ多 糖症VI型を起こす常染 色 体 上 の 単 一 劣 性 遺 伝 子 をabd遺 伝 子 (arylsulfataseB deficient)と命名した。

  このabd遺伝子がどの染色体に位置しているかを連鎖試験に より検索した。Ish系とWistar KingS系で異なる型を示すこと が 知 ら れ て い る 第2染 色 体 に 位 置 す る3種 の 標 識 遺 伝 子、

carboxypeptidaseB(CP,B)、prolactin receptor(PRLR)、

metallothionein−1pseudogeneB(MTIPB)について、abd遺伝子 との間の連鎖の有無を検定した。その結果、強い連鎖がa塑遺 伝子とM工1PBの間で認められた。PRLRとの間にも連鎖は認めら れたが、QZBとの間にはそれは認められなかった。この連鎖試 験 の結果 より、abd遺伝子が第2染色体上に位置することが判 明した。abd遺伝子とMエ1PBの染色体上の位置は極めて近く、標 識遺伝子とabd遺伝子との位置関係は、abdの近くよりMTIPB、 PRLR、CPBの 順であった。ヒトのarysulfataseB遺伝子が位置 す る第5染色 体の一部は、ラッ卜の第2染色体の一部と相同関 係にあると報告されている。異常ラットの連鎖試験結果は、第 2染色体に位置するabd遺伝子が、ヒトと同様にarylsulfatase B遺伝子である可能性を強く示唆していた。

    ′

  異常ラットは、離乳期(3〜4週齢)頃から、矮小体で鼻梁が

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短く、体幹の幅が広いずんぐりした体格となり、胸部肋骨がオ ール型を示した。したカjって、異常個体は正常ラッ卜と容易に 識別できた。

  異常ラッ卜では多くの臓器・組織にコ口イド鉄陽性を示すG AGの 蓄積を 伴う 細胞が光顕的に認められ、この細胞はH−E染 色標本では細胞質の空胞化として観察された。電顕的に、細胞 質内 のGAGは限 界膜 に囲ま れたり ソソ― ムに 蓄積し ていた。

また 蓄積し たGAGは 、ヒア ル口ニ ダーゼ で消 化され なかった た め 、 デ ル マ タ ン 硫 酸 で あ る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。   リ ソソー ム内 のGAGの蓄 積は、 主とし てマ クロフ ァージ、

洞内皮細胞など単核食細胞系、軟骨細胞、線維細胞、線維芽細 胞、平滑筋細胞などの間葉系細胞に観察された。電顕的観察で は、 角膜上 皮細 胞、角 膜内皮 細胞、 動脈内 皮細 胞にもGAGの 蓄積が認められた。

  軟骨では、軟骨細胞の増数、腫大、細胞質の空胞化が観察さ れ、軟骨柱は不整化していた。.これらの変化は、軟骨内骨化不 全を招来し、結果的にラッ卜を矮小体にしているものと考えら れた 。子宮 内膜 の粘膜 固有層 では、 問質細 胞にGAGの顕著な 蓄積 が認め られ 、これは異常ラットにおける繁殖率の低下の 一因をなすものと思われた。

  神 経系組 織に はGAGの蓄 積は観 察され ず、 生前の 正常な行 動も考慮に入れて、異常ラットの知能は正常であるとみなされ た。

  末梢血液中の大部分の好中球に粗大な細胞質内顆粒が観察さ れ 、 こ れ は り ソ ソ ーム 内 のGAGの 異常 蓄 積 と 考 えら れ た 。   以上のように、異常ラットは生化学的、遺伝学的および形態 学的にムコ多糖症VI型の特徴を有し、これらはヒトおよびネコ のムコ多糖症VI型の特徴的変化と酷似していた。したがって、

このラッ卜はムコ多糖症VI型の疾患モデル動物として有用であ ると考えられる。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

ラ ッ ト に出 現し たム コ多 糖 症 VI 型 に関 する 研究

一特に本症ラットの生化学的異常と遺伝学的ならびに形態学的特徴について―

  ムコ 多糖症は人と一部の動 物に生じる遺伝性疾病である 。本症の特徴病変は、グリ コサミノグ リ カ ン (GAG)分子 の分 解系 酵素 活 性の 先天 的欠 損 のた め、 全身 の諸 臓 器・ 組織 の細 胞の り ソ ソ ーム 内へ の分 解 され なか ったGAGの異 常蓄 積 であ る。 申請 者は 、 ムコ 多糖 症をラ ットで初め て 認 め 、 こ れ に つ い て の 生 化 学 的 、 遺 伝 学 的 、 病 理 学 的 解 析 を 行 っ た 。   本症 はIsh系 ラッ トに 認め ら れ、臨床的には矮小体でず んぐりとした、鼻梁の短い 体形を特徴 と して いた 。生 化 学的 検索 では 、尿 中 へ排 泄さ れるGAGが正常ラットの5‑‑‑6倍に増 量し、その GAGは デ ル マ タ ン 硫 酸 を 主 体 に し て い た 。 尿 中 へ のGAGの 排 泄 は本 症 の特 徴の ーつ であ る 。   遺伝学的解 析の結果では、本症ラットは 常染色体上の単一劣性遺伝子によって支配されており、

その遺伝子をarylsulfataseBdeficientと命名した。この遺伝子の染色体上の位置は、連鎖試験の結 果 、第2染 色体 上に 位置 して い た。また、命名した遺伝子 はヒトと同様である可能性 も示唆され た。

  病理 組織 学的 検 索で は、 リソ ソー ム 内へ のGAGの 蓄積 は、 主に マ クロ ファ ージ、 洞内皮細胞 などの単核食 細胞系、軟骨細胞、線維細胞 、線維芽細胞、平滑筋細胞の間葉系細胞に認められた。

超 微形 態学 的検 索 では 、GAGの 蓄積 は、 さら に 角膜 上皮 細胞 、角 膜 内皮 細胞 、動脈 内皮細胞に も 生じ てい た。 本 症ラ ット の体 形異 常 であ る矮 小体 は、 骨 端軟 骨に おけ る 軟骨細胞 へのGAG 蓄 積の 結果生じた軟骨内骨化 不全によって招来されていた 。また、本症ラットの繁殖 率の低下の 一 因 は 、 子 宮 内 膜 の 粘 膜 固 有 層 の 間 質 細 胞 へ のGAGの 著 明 な 蓄 積 に あ る と 解 さ れ た 。   以上 の諸変化から、このラ ットはムコ多糖症VI型の特徴 を持ち、繁殖率は低いが系 統維持もな さ れ、 疾患モデル動物として の有用性が高い。よって審査 貝一同は、吉田緑氏が博士 (獣医学)

の学位を受け るに十分な資格を有するもの と認めた。

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敏之 正春 智昌 智善 倉藤 邊本 板斉 渡橋 授授 授授       教 教教 教助 査査 査査 主副 副副

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