• 検索結果がありません。

博 士 ( 医 学 ) 本 田 学 位 論 文 題 名

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "博 士 ( 医 学 ) 本 田 学 位 論 文 題 名"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

     博 士 ( 医 学 ) 本 田 学 位 論 文 題 名

覚醒剤精神病の動物モデルにおける行動感作現象と グルタミン酸放出との関連についての検討

学位論文内容の要旨

覚醒剤(メタンフェタミン:METH)を慢性的に乱用すると次第に幻覚・妄想など統合失調症に類似し た 精神病状態が惹起され,一端症状が出現すると断薬後も再燃準備性が持続し,少量の覚醒剤の再 使用などによって精神症状が容易に再燃する.覚醒剤精神病は幻覚・妄想との横断面での類似性と,

再発,治療抵抗性との縦断面での類似性から,統合失調症の病態モデルとして重要である,一方,覚 醒 剤を実験動物に反復投与すると,急性薬理効果の増強効果が形成され,この効果は長期断薬後に も再現される.この現象は覚醒剤に対する行動感作と呼ばれている.動物における行動感作のメカニズ ム の研究は,覚醒剤精神病の病態理解に有益であるのみならず:統合失調症の発症過程,再発脆弱 性のメカニズムの解明にも重要な示唆を与えるものと考えられる.これまで覚醒剤に対する行動感作の 神経化学的な基盤の検討は,主にドパミン(DA)系を中心に行われてきたが,最近の研究でグルタミン酸 (Glu)系,アセチルコリン系,GABA系神経伝達から成る神経回路網の可塑的変化が関与することが明 らかにされた.

本 研 究 で は,METH投 与 に よっ て 遅 発性 に 生 じる 細 胞 外Glu濃度 の 上 昇 の反 復 がMETHに対 す る 行 動 感 作の 形 成 に 関与 す る とい う 仮 説を 立て,Glu放出 抑制ある いは再 取込み促 進能を 有する MS−153を 遅 発性Glu濃 度 の 上昇 を 抑 制す る 目 的でMETH投 与 後2時 間後 あるいは3時 間後に実 験 動 物に投 与するこ とでMETHに 対する行動感作形成過程を阻止できるかを検討した.Wistar‑King系 雄性ラット(250〜300g)を使用し,行動実験では薬物投与後の移所運動量を赤外線センサーを用いて 10分毎に測定した,脳内微小透析法ではガイドカニューレを側坐核の表面に達するように固定し,先端 よ り2 mm露出させるよう透析プpーブを挿入した.手術の24時間後から人工脳脊髄液を2朋/分の流 速で灌流し,灌流開始の90分後から20分ごとに透析液を回収した,回収液は高速液体クロマトグラフイ ーに注入し,Glu,DAの細胞外濃度を測定した.

  中 等量のMETH(2.5 mg/kg)を 隔日で5回投 与し,14日 間の断 薬期間を 置いた 後に少量のMETH(1 mg/kg)を再投与すると少量のMETHに対する行動感作が形成されることが確認された,一方,毎回の METH(2.5 mg/kg)投与後2時間 または3時間の 時点でMS―153を 処置す るとMETHに 対する行 動感作 の 獲得が 阻止され た. METH反復投 与によ る行動感 作形成過程における側坐核での細胞外Gluおよ びDA濃 度変 化 の 役 割を 検 討 する 目 的 で,METH投 与 の2時 間 後にMSー153を 投与 す る 場合 と3時 間 後に投与する場合のそれぞれについて,反復投与期間中の第1回目(1日目)投与時と第5回目(9 日目)投与時における脳内微小透析実験を行った.1日目,9日目ともに側坐核での細胞外Glu濃度は

‑ 530

(2)

METH投 与後2時間ほ どしてか ら,なだ らかな 増加を示 したの に対し,DA濃度はMETH投与後40分か ら60分にピークとなる急峻な増加を示した, MS−153は2時間後あるいは3時間後投与のいずれの場合 も 一時的に この遅発 性のGlu増加を抑制したが,急峻なDA濃度の増加は,MS−153を2時間後,ある いは3時間後に処置する時点では,ほぼ基礎値に近いレベルにまで消褪し,MS−153はその後のDA濃 度 には変化 を与えな かった .METHに対 する行動 感作の形 成には ,METH投与 による側坐核でのGlu 濃 度の遅発 性の増加 が持続 すること が必要 であり,METH反復投与中のDA濃度の上昇は直接には関 与しない可能性が示唆された.

  少 量のMETH再 投 与に よ る 行動 感 作 発現時 の側坐核 での細胞 外Glu濃度およ びDA濃度 に関する 検討を目的に,前述と同様のスケジュールで処置を行い,14日間の断薬期間をおいて少量のMETH(1 mg/kg)を 再投与し た際の 脳内微小透析法を行った.断薬前の中等量のMETH(2.5 mg/kg)の反復投与 により行動感作が形成された群とMS−153を後処置することで行動感作の形成が阻止された群とでは,

少 量のMETH(1 mg/kg)再投与による移所運動量には違いが生じたが,側坐核における両群間での細 胞外Glu濃度およびDA濃度に差は見られなかった.このことから,側坐核における細胞外Glu濃度と DA濃 度 の 増 加 はMETHに 対 す る 行 動 感 作 発 現 過 程 に は 直 接 的 に 関 与 し な い と 考 え ら れ た . 少 量のMETH(1 mg/kg)急性投 与によ る移所運 動亢進に 対するMS―153の効果を検討する目的で,ラ ッ トに前処 置として それぞ れ10,25あるいは50 mg/kgのMS―153を投与し,20分後にMETH投与して 行 動 量 を測 定 し た, 少 量 のMETH急 性 投与に よる側 坐核での 細胞外Glu及びDAの濃度 変化に対 し てMS―153(25 mg/kg)がいかなる直接的影響を与えるかを検討する目的で,前処置としてMS−153(25 mg/kg)を 投与しE20分後 にMETHを投与 して, 脳内微小 透析法 により前 処置の前80分時点 から340 分時点まで透析液を回収した. MS−153をMETH(1 mg/kg)投与の20分前に処置することにより,METH 急 性投与に よる移所 運動量 増加は用 量関連 性に抑制 された .MS―153投与はMETH急性投与による 側坐核での細胞外Glu濃度1こ対して有意な変化を与えなかったが,DA濃度を有意に減少させた,これ ら のことか らMS一153は,METHの移所運動発現効果とほば同様の経過をとる側坐核での急峻なDA濃 度の増加を減弱させることで,METHの急性運動効果への減弱効果を発揮している可能性が示唆され た,

  以 上より, 覚醒剤 に対する行動感作形成には覚醒剤反復投与時の側坐核における遅発性のGlu濃 度上昇の維持が重要な役割を果たしており,同部位での急峻なDA濃度の上昇は直接的には関与しな い可能性があること,行動感作形成群への少量の覚醒剤再投与時における行動上の増強効果は,側 坐核の細胞外GluおよびDA濃度の変化によっては説明できないことが示唆された,また,少量の覚醒 剤 を急性投 与した時 の移所 運動発現には側坐核のDAが関与しており,MS―153は覚醒剤投与の直前 の処置により側坐核での細胞外DA濃度上昇を減弱させることで,移所運動発現の程度を減弱させた 可能性があること,覚醒剤による細胞外Glu濃度の増加は反復投与による行動感作形成過程には関与 し て も , 急 性 単 回 投 与 の 際 の 行 動 発 現 に は 直 接 的 な 関 与 は し な い こ と が 示 唆 さ れ た .   動物実験の結果の臨床的意義を考える際には慎重であらねばならないが,今回の結果は覚醒剤精 神 病や統合 失調症に おける 再燃,再発脆弱性の形成や,治療抵抗性に至る過程にGlu系神経伝達の 亢進が関与し,この亢進を阻害しうる薬物が上記の問題の改善に寄与する可能性を示唆する点で興味 深い.今後はGlu放出以降のセカンドメッセンジャーや遺伝子の変化と神経可塑性などを念頭に置き,

さらなる検討が必要である,

531

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

覚醒剤精神病の動物モデルにおける行動感作現象と グルタミン酸放出との関連についての検討

  覚醒剤 精神病は幻覚..妄想との横断面での類似性と,再発,治療抵抗性との縦断面での 類似性 から,統 合失調症 の病態モ デルとし て重要で ある.一方 ,覚醒剤を実験動物に反復 投 与す る と ,急 性 薬理 効 果 の増 強 効 果が形成さ れ,この 効果は長 期断薬後 にも再現 され る.こ の現象は 覚醒剤に 対する行 動感作と 呼ばれて いる.動物 における行動感作のメカニ ズ ムの 研 究 は, 覚 醒剤 精 神 病の 病 態 理解に有益 であるの みならず ,統合失 調症の発 症過 程 , 再 発 脆 弱 性 の メ カ ニ ズ ム の 解 明 に も 重 要 な 示 唆 を 与 え る も の と 考 え ら れ る .   本研究 では,脳 内微小透 析実験と 行動実験 を用い, 覚醒剤に対 する行動感作現象と側坐 核にお ける細胞 外グルタ ミン酸お よぴドバ ミン濃度 変化の関連 について検討した.覚醒剤 急性投 与による 移所運動 亢進には 主として ドバミン が関与し, グルタミン酸は直接的には 関 与 し な い こと ,MS‑153を 毎 回の 覚 醒剤 反 復 投与 の2時 間後 あ る いは3時 間 後に 投 与 す ること で側坐核 の細胞外 ドバミン 濃度に影 響を与え ることなく 同部位でのグルタミン酸の 遅発性 増加を抑 制し,そ のことが 行動感作 の形成を 阻止したこ とから,行動感作の形成過 程にお いてドバ ミンは直 接的には 関与せず ,遅発性 のグルタミ ン酸濃度の上昇の維持が重 要な役割を果たしていることが明らかとなった.

  質疑応 答では, 本間教授 から細胞 外グルタ ミン酸濃 度が上昇す る機序について,部分的 なグル タミン酸 神経伝達 の抑制で 行動感作 の形成が 抑制された 理由について,半減期の短 いMS‑153の グ ルタ ミ ン酸 の 総 分泌 量 に対す る効果につ いて質問 があった .これに 対して 申 請者 は , 覚醒 剤 投与 に よ り, グ ル タミン酸系 神経伝達 に抑制的 に作用す るドパミ ンD1 レセプ ターの脱 感作が起 こること でグルタ ミン酸濃 度の上昇が 起こる可能性が考えられる こと, 行動感作 の形成に はグルタ ミン酸神 経伝達の 持続的な刺 激が必要である可能性があ ること ,行動感 作の形成 にはグル タミン酸 分泌の総 量ではなく ,濃度上昇時における経過 が重要 であると 考えられ ることを 回答した .次いで ,吉岡教授 から,グルタミン酸濃度増 加 の 抑 制 と ドパ ミ ン濃 度 増 加の 抑 制と の 関 連に つ いて , 行 動感 作 抑 制の 為 の効 果 的 な Time win.くk)wについて,ラットの移所運動量増加と人の統合失調症の関連について,側坐

   

   

山 間

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

核以外での変化について質問があった.これに対して申請者は,慢性投与実験において

MS‑153

を投与した際にはドバミン濃度増加は基礎値レベルまで消褪しており,ドバミン 濃度変化を介してグルタミン酸濃度上昇が抑制されたとは考えにくいこと,MS‑153 の効 果的Time win (

k

)w を確認する為にはさらなる検討が必要なこと,ラットの移所運動量と人 の統合失調症の症状を直接結びっけることは出来ないが,両者ともドバミン神経伝達の亢 進に基づくという共通点が確認されていること,今回の検討は側坐核以外では行っていな いが,これまでの知見から単一の部位のみで行動感作の形成を説明することは困難であ り,線条体は勿論,腹側被蓋野,内側前頭前野,海馬,扁桃体などを含めた神経回路網の 可塑的変化が関与しているものと考えられることを回答した.

  

この論文は覚醒剤精神病およぴ統合失調症の病態に遅発性のグルタミン酸濃度の上昇が 深く関与し,その抑制が病態の慢性化,難治化を防ぐ可能性を示した点で高く評価され る.今後,動物モデル研究の進歩と臨床知見の蓄積により,覚醒剤精神病およぴ統合失調 症の病態解明と治療がさらに進展することが期待される.

  

審査員一同は,これらの成果を高く評価し,大学院研究科における研鑽と併せ,申請者

が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た .

参照

関連したドキュメント

[r]

  

  3 .  GVHD マウ スにおける血清IFN‑y レベル.これまでの報告ではIFN‑y などの Thl サイト カイ ン は,急 性GVHD の誘 導に重要 な役割 を果たし ている と考えら

   本研究において,照 射群と観察群との累積腫瘍増 大抑制率に統計学的に大きな有意差を認めたことと,聴力 低下

[r]

PCR に用 いた プ口 ーブ をノ ーザ ンブ ロッ トに用 いても,3 .2KbmRNA が出現するかにっいて,. それに関連 しては58KDaSCPx

  2 .研究方法:1 )手技に関する事項:腫瘍の局在により左右上下に大別し左右上下甲状腺動 脈への選択的挿入率を求めた。っいで年令別では20

   脾における GvH 様反応はりンパ球の著明な減少と牌の線維化であり、移 入後3 週日に完成する。10 口目にj 曽殖のピークを示すCD8 陽性′l 丶細胞はコ ンカナバ リンA