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博士(工学)吉田 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)吉田 学位論文題名

走査電子顕微鏡利用技術の確立とその炭素材料への適用 学位論文内容の要旨

  本論文は炭素材料のための走査電子顕微鏡利用技術(観察技術および観察用試料の作製技術)

を開発し,それを様々な炭素材料にっいて適用しその結果を他の物性値と比較検討したものであ る。

  近年,走査電子顕微鏡(SEM)は肉眼で観察できない物質の微細構造を探求する手段として,

低倍率から高倍率まで連続的に可変でき,しかも操作が容易なことから様々な分野での研究開発 にしばしば署q用されている。SEMは1965年に初めて商品化され,その利用技術は1970年代から 1980年代前半までは装置の性能が十分に発揮できる金属等の比較的重い元素で構成されている物 質に対するものが中心であった。しかし,炭素材料のように入射電子ビームが試料内部で異常に 拡散しSEM本来の性能が発揮できない軽元素で構成されている材料に対する利用には多くの問 題があった。そのため,炭素材料の場合には試料の形状や大凡の表面形態を観察するに止まって いた。現在,炭素材料は目的や用途に応じて様々な性質や形状のものが開発されているが,それ らの特性や性質は微細組織に強く依存するといわれ,炭素材料の微細組織を観察することは重要 な課題のーっである。一方,SEMは性能も向上し光学顕微鏡と透過電子顕微鏡の間を埋める倍 率での観察手段として炭素材料における利用が期待できる。また,炭素材料は構造の基本単位が 2次元的で異方性が強いため,これを破断すると微細組織を反映した凸凹ができ,その凸凹の観 察により容易に微細組織や配向状態を判定できる可能性がある。

  そこで,炭素材料のための観察用試料作製技術やSEM観察技術の開発が必要であると判断し,

1980年ごろから炭素材料を対象とした走査電子顕微鏡利用技術の開発とその適用にっいて検討を 行ってきた。

  炭素試料表面の凸凹に忠実なSEM像の観察(高忠実度観察)方法として入射電子線の加速電 圧に注目し,元素および密度の異なる試料にっいて,加速電圧に対する電子線の進入深さや分解 能を検討した結果,炭素材料で2 kV,そして炭素材表面に金―パラジュウム蒸着を行った場合 でも5kV程度がそれぞれ 高忠実度観察を行うための最適な加速電圧であることを見出した。

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  炭 素材料 の微細 組織 を観察 する手 段とし て,そ の微 細組織 を反映 した凸 凹のできる試料破断方 法 を検討 した結 果,液 体窒素 温度 におい て試料 をアセ トン で包理 ・固化 し,ア セトンと共に試料 を 破断す る方法 が有効 であり ,特 に炭素繊維や黒鉛化の進んだ試料に有効であることが分かった。

黒 鉛構造 の未発 達なガ ラス状 炭素 やエチ レンタ ールピ ッチ コーク ス等は 単純に 室温で破断しただ け でも観 察可能 であっ たが, 高温 加熱処 理した 炭素繊 維, 高配向 性黒鉛 ,膨張 黒鉛,あるいはカ プ ト ン 炭 フア ル ム は 単 純に 破 断 し た だけ で は 微 細 組織 を 反 映 し た 破断 面 は得ら れなか った。

  炭 素繊維 等の断 面の 直径や 面積を 正確に 測定す 弓こ とは, そのヤ ング率 や電気抵抗率などの物 理 定数を 求める 上で重 要であ る。 そこで ,走査 電子顕 微鏡 による 炭素繊 維断面 の直径を測長する た めの試 料作成 方法や その測 長精 度の高 い観察 方法を 検討 した結 果,標 準とな るスケールや回折 格 子のレ プリカ と試料 とを観 察条 件を変 えるこ となく 観察 するこ とが必 要であ ることを示した。

  高 配向性 黒鉛の 結晶 学的情 報を得 るため に,電 子チ ャンネ リング コント ラスト効果を利用した 方 法 を 検 討 し 改 良し た 結 果 , キッ シ ュ 黒 鉛(KG) や 高 配向 性 熱 分 解 黒鉛 (HOPG) に お け る電 子 チ ャ ン ネリ ン グ パ タ ーン(ECP) の 観 察 に より 黒 鉛 結 晶 の 完全 性 や 結 晶方位 が確 認でき た。

ま た ,HOPGに お い て 試 料 傾 斜 し た と き のECPと 電 子 チ ャ ン ネ リ ン グ コ ン ト ラ ス 卜 像(ECM) か ら,そ の結晶 粒径や 結晶方 位分 布を知 ること ができ た。 さらに ,高配 向性黒 鉛フアルムとみな せ る 黒 鉛 化カ プ ト ン 炭 フィ ル ム に お いて もECMによ る結晶 粒の 観察か らその 黒鉛結 晶の発 達の 度 合いを 知るこ とがで きた。

  こ れらの 観察用 試料 作成や 観察技 術を種 々の炭 素材 料に適 用し, その炭 素網面の配向状態や発 達 の状態 などを 検討し た。

  微 細 組 織 の 配 向 形 式 が 面 配 向 組 織 を持 つKGやHOPGは 連続 的 な 平 行 縞 が観 察 さ れ た 。こ の 平 行縞の 組織は 断面に 対応す るも ので, その連 続性や 直線 性ある いは配 向性な どが,磁気抵抗測 定 によっ て評価 した黒 鉛化の 程度 や炭素 網面の 配向度 と良 い対応 を示し た。ま た,電子チャンネ リ ングコ ントラ スト像 から求 めた 結晶粒 径や磁 気抵抗 など の物性 値とも よい対 応を示した。黒鉛 化 カプト ン炭フ アルム の断面 にも 同様の 組織が 観察さ れ, 黒鉛網 面の配 向状態 や発達状態を知る こ とがで きた。

  無 配向 組 織 を 有 しほ と ん ど黒鉛 化の 進行し ないガ ラス状 炭素 の破断 面には 粒状組 織が観 察さ れ ,その 平均粒 径は熱 処理温 度の 上昇と 共にわ ずかに 増加 した。 この粒 状組織 の熱処理にともな う 変 化は ,X線 回折 と磁気 抵抗測 定の結 果と よく対 応し, 小さな 炭素網 面の 殻が集 合し生 成して い ること が明ら かにな った。

  完 全な面 配向と 無配向 組織 の中間 に位置 するコ ーク スの原 料の1っで あるエ チレン タール ピッ

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チにっ いて, 水素化 の効 果とそ の黒鉛 化挙動 を破 断面の 高忠実 度観察 から検 討し た結果 ,350〜4 00℃での 水素 化処理 によっ て組織 の大き さや 状態に 改善が 見られ ,黒 鉛化し たコー クスで は流れ 状組織 が観察 された 。黒 鉛化し たコー クスに っい て測定 された 磁気抵 抗値と の対 応から ,水素化 によ る 配 向 組 織の 改 善 が 黒 鉛 化性 の 向 上 に 重要 な 役 割 を 果た し て い る こと を 明 ら かに した。

  軸配向 組織 を有し ,原料 や製法 の異な る種 々の炭 素繊維 にっい ての 断面組 織や黒 鉛化性 および 黒鉛 化 の 程 度 の評 価 を 行 っ た 結果 ,PAN系 炭 素 繊 維 の断 面 に は粒 状組織 が観 察され たが, 炭素 化時と 黒鉛化 時の延 伸操 作が炭 素網面 の発達 を促 すこと が明ら かとな った。 その 条件に よっては 炭素繊 維は黒 鉛リボ ンと 良く似 た断面 組織と なっ た。等 方性ピ ッチ系 炭素繊 維の 断面に はガラス 状炭素 のよう な組織 が観 察され ,3000℃ 処理に よって も断面 組織 はほと んど変 化しな かった。ま た , メ ソ フ ェ ー ズ ピ ッ チ 系 炭 素 繊 維 (MPCF)にお け る 破 断 面組 織 は6種 類に 分 類 さ れ た。 そ れらの 熱処理 による 組織 の変化 や黒鉛 化性お よび 機械的 性質は この断 面組織 と強 く関係 し,1200

℃処理 の破断 面組織 が直 線的な 配向を 持っも のの 方が3000℃ 処理 により 発達し た組織 になりやす いこ と が 分 か った 。 ま た , 引 張り 弾 性 率 の 高いMPCFは 面 配 向 に 近い 断 面 組 織 を 持ち ,黒鉛 構 造が か な り 発 達し て い る こ と がわ か っ た 。 気相 成 長 炭 素 繊維 (VGCF)では 年輪状 断面 組織は2 200℃ 以上で の熱処 理に よって ,黒鉛 層面の 成長に 起因 する変 形(ポ リゴニゼーション)が生じ,

3000℃ 以 上 に 処 理 さ れ たVGCFの 側 面 や 表 面 に よ く 発 達 し た 黒 鉛 結 晶 が 観 察 さ れ た 。   天然黒 鉛の 層間化 合物を 急熱す ること によ って生 成した 膨張黒 鉛の 外観は 出発層 間化合 物がア クセプ タータ イプで ある かドナ 一夕イ プであ るか によっ て異な ること を明ら かに した。 気相成長 黒鉛繊 維の層 間化合 物か ら生成 した膨 張黒鉛 はり ボン状 で黒鉛 層面が りボン の表 面にほ ば垂直と ナよっ ている ことを 見出 した。 また, リボン の一端には元の繊維の中心部分がほとんど膨張しない で 残 っ て い る こ と が 分 か っ た 。 こ れ ら の 観 察 結 果 か ら そ の 特 異 な 膨 張 過 程 を 解 明 し た 。   以上の よう に,本 研究で は,炭 素材料 のた めの走 査電子 顕微鏡 観察 用試料 の作成 技術お よびそ れらの 観察技 術を開 発す るとと もに, これら の技 術を様 々な炭 素材料 に適用した結果,X線回折,

磁気抵 抗など の物性 値と よく対 応した 。そ丶 してそれらの炭素材料の微細組織,網面の発達状態お よび配 向状態 ナょど を明 らかに するこ とがで きた 。

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学位論文審査の要旨

    主査  教授  稲垣道夫     副査  教授  小平紘平     副査  教授  真田雄三     副査  教授  高橋平七郎

  走査 電子 顕 微鏡 は材 料 の形 状や 表面の微細 組織あるいは破面の 観察に広く用いら れている。し か し, その 観 察条 件が 適 切に 選択 されない場 合は,充分に正確な 情報を得ることが 出来ず,時に は誤まった 情報が得られる危険 性さえある。

  本論 文は , 工業 材料 と して 広く 使われてい る各種炭素材料の微 細組織観察に,こ の走査電子顕 微鏡を活用するため,(1)その利用技術の確立のための基礎的研究を行うと共に,(2)それを各種炭 素 材料 に適 用 し, 微細 組 織を 観察 し た結 果を ま とめ たも のである。本論 文は全4章 からなってい る。

  第一 章は 緒 論で あり , 走査 電子 顕微鏡の歴 史,装置上の特徴, そしてこれを微細 組織観察に適 用 する 際の 問 題点 にっ い て簡 潔に 述べている 。そして,軽元素か らなる炭素材料に 対してのその 利用技術を 確立する必要性を述 べている。

  第2章 では 炭素 材 料の ため の 走査 電子 顕 微鏡 利用 技 術と して 以 下の4点を 検討し ,これを確立 した成果を 述べている。

  1) 最 適加 速電 圧 の確 定: 軽 元素 であ る 炭素 原子 の 集合体であ る炭素材料の表面 を正確に観察 す る た め には 電子 線 の加 速電 圧 を低 くす る こと が必 須 であ るこ と を実 験的 に 示す と共 に ,2kV が最適であ ることを決定した。

  2) 試 料調 整法 の 確立 :炭 素 材料 の中 で も細 い繊 維 や黒鉛層が 高度に配向した試 料にっいて,

そ の微 細繊 維 を反 映し た 破断 面を 作るため, 試料を液体窒素温度 でアセトン中に包 理し,破断さ せる独創的 な手法を確立した。

  3)形 状の 精 密測 定: 炭 素繊 維の 直 径な ど炭 素 材料 にっ い ての 長さ お よび 面積を 走査電子顕微 鏡 下て 精密 に 測定 する た め,2っの 方法 を 提案 し, そ れらの精度 および適用上の問 題点にっいて 論じた。

  4) 結 晶粒 径と方位分布の 評価:電子チャン ネリングコン卜ラス 卜効果を用いるこ とによって,

黒 鉛構 造の 発 達し た高 配 向性 黒鉛 中の結晶粒 径及びその方位分布 を測定出来ること を示し,その

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測 定条件 を確立 した 。

  第3章で は 前章 で確 立した 走査電 子顕微 鏡利用 技術 を各種 の炭素 材料へ 適用 し,そ の微細 組織 を 観 察 し た 結果を5節 に分け て述 ベ,各 種の物 性との 対応 にっい て論じ ている 。そし て, 炭素材 料 におけ る組織 の重 要性を 示して いる。

  1) 面配 向 組織 をも つ高配 向性黒 鉛:前 章で開 発し た試料 調製法 によっ ては じめて ,破断 面組 織 の正確 な観察 が可 能とな った。 また, へき 開面内 での結 晶粒径 および 方位 分布を 決定した。こ れ らの結 果と磁 気抵 抗測定 結果と はよい 対応 を示し た。

  2) 無配 向 組織 をも っガラ ス状炭 素:低 加速電 圧を 用いる ことに よって はじ めて断 面内の 粒状 組 織を観 察する こと が可能 となっ た。そ の平 均粒径 は熱処 理温度 ととも に大 きくな り,磁気抵抗 値 および 結晶子 サイ ズの変 化とよ い対応 を示 した。

  3) ピッ チ コ― クス :水素 化処理 に伴う 組織変 化を 低加速 電圧を 用いた 観察 によっ て示す と共 に ,高温 での黒 鉛構 造の発 達がこ の組織 に強 く依存 してい ること を,磁 気抵 抗測定 の結果と対照 さ せるこ とによ って 明らか にした 。

  4) 軸配 向 組織 をも つ炭素 繊維: 各種炭 素繊維 の破 断面の 微細組 織が原 料, 製造法 ,熱処 理温 度 ,延伸 処理な どに よって 大きく 変化す る様 子を明 らかに し,微 細組織 が繊 維の機 械的特性を強 く 支配し ている こと を実験 的に示 した。

  5) 膨張 黒 鉛: 各種 黒鉛層 間化合 物の熱 分解に よっ て生成 する膨 張黒鉛 の形 態を観 察し, イン タ 一カレ ートの 種類 による 違いを 明らか にし た。ま た,気 相成長 炭素繊 維に っいて はその特異な 膨 張挙動 を詳細 な観 察によ って解 明した 。

  第4章は 結 論で あり ,炭素 材料へ の走査 電子顕 微鏡 技術の 適用が その微 細組 織解明 にきわ めて 重 要 で あ る こ と を 改 め て 示 す と 共 に , 今 後 の 展 望 に っ い て も 論 じ て い る 。   こ れを 要する に,著 者は軽 元素か らな る炭素 材料の ための 走査 電子顕 微鏡利 用技術 を確立し,

各 種の炭 素材料 の微 細組織 を解明 し,各 種物 性との 対応を 明らか にした 。こ れらの 成果は応用化 学 ,応用 物理学 ,さ らに炭 素材料 工学の 進歩に寄与するところ大である。よって,著者は博士(工 学 )の学 位を授 与さ れる資 格ある ものと 認め る。

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参照

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