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博士(医学) 吉田貴之 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)   吉田貴之 学位論文題名

Relationship between neutrophil infiux and oxidative stress in     alveolar space in lipopolysaccharide‑induced lung injury

    (LPS 投与急性肺障害モデルマウスにおける肺胞腔の好中球浸潤と

     酸化ストレスの関係に関する検討)

学位論文内容の要旨

【 背 景 と 目 的 】 急 性 肺 傷 害(ALI)お よ び そ の 重 症 型 で あ る 急 性 呼 吸 促 迫 症 候 群(ARDS)は 肺 炎 、 敗 血 症 、 外 傷 性 シ ョ ッ ク 、 輸 血 な ど 種 々 の 背 景 疾 患 に よ り 肺 胞 気 道 上 皮 の 傷 害 と 肺 血 管 透 過 性 の 亢 進 が 生 じ て 非 心 原 性 の 肺 水 腫 に 至 る 疾 患 で あ る 。 病 理 組 織 学 的 に は 好 中 球 を 主 体 と す る 炎 症 細 胞 の 集 族 、 肺 毛 細 血 管 の う っ 血 、 肺 胞 壁 の 浮 腫 や 肥 厚 、 硝 子 膜 の 形 成 を 特 徴 と す る 。 現 時 点 で ALI/ARDSに 対 し 明 ら か に 有 効 な 治 療 法 は 確 立 し て お ら ず 、 そ の 致 死 率 は 依 然 高 い ま ま で あ る 。 ALI/ARDSの 発 症 お よ び 進 展 に お い て は 好 中 球 か ら 産 生 さ れ る 酸 化 ス ト レ ス が 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る 。 炎 症 細 胞 由 来 の 各 種 サ イ 卜 カ イ ン や メ デ ィ エ ー 夕 一 な ら び に 内 皮 細 胞 由 来 の 接 着 分 子 の 発 現 亢 進 に よ り 循 環 血 中 の 好 中 球 の 肺 へ の 集 積 と 肺 胞 腔 へ の 遊 走 が 起 こ る 。 肺 胞 腔 で 活 性 化 し た 好 中 球 は 好 中 球 エ ラ ス タ ー ゼ 及 び 次 亜 塩 素 酸 な ど の 活 性 酸 素 種(reactive oxygen speciesROS) を 放 出 す る 。 こ れ ら の 酸 化 活 性 物 質 が も た ら す 酸 化 ス ト レ ス が 生 体 に 備 わ っ て い る 抗 酸 化 防 御 機 構 を 凌 駕 す る こ と に よ り 上 皮 細 胞 と 内 皮 細 胞 の 傷 害 を 伴 う 炎 症 が 起 こ り 、 肺 胞 上 皮 お よ び 肺 微 小 血 管 の 透 過 性 亢 進 が 起 こ る こ と がALI/ARDSの 発 症 ヌ カ ニ ズ ム に 関 与 し て い る 。 こ れ ま で に も ALI/ARDS患 者 の 肺 胞 洗 浄(BAL)液 で 健 常 者 と 比 較 し て カ ル ポ ニ ル 蛋 白 や 脂 質 酸 化 物(LPO)な ど の 酸 化 ス ト レ ス マ ー カ ー が 上 昇 し て い る こ と が 報 告 さ れ て い る が 、 こ れ ら の 酸 化 ス ト レ ス と 好 中 球 性 炎 症 と の 関 連 を み た 検 討 は 現 時 点 で な い 。 こ の た め 我 々 は 今 回 急 性 肺 傷 害 モ デ ル マ ウ ス を 用 い てBAL液 に お け る 好 中 球 性 炎 症 お よ び 酸 化 ス ト レ ス に つ し ゝ て 経 時 的 な 検 討 を お こ な っ た 。

【 材 料 と 方 法 】9週 齢 のICRマ ウ ス に グ ラ ム 陰 性 菌 の 内 毒 素 で あ るLiPOPoIYsaccharide (LPS)を 気 管 内 投 与 し て 急 性 肺 傷 害 モ デ ル マ ウ ス を 作 成 し た 。LPS投 与1357 14日 後 の 各 々 の タ イ ム ポ イ ン ト に お し ゝ てBAL液 お よ び 肺 組 織 の 回 収 を お こ な っ た 。BAL液 に お い て は 、cytospin法 に よ る 好 中 球 数 の 算 定 と 、 好 中 球 活 性 の 一 般 的 な 指 標 で あ るMPO活 性 に つ い て 検 討 し た 。 さ ら に 酸 化 ス ト レ ス マ ー カ ー と し て カ ル ボ ニ ル 化 ア ル プ ミ ン 、 過 酸 化 脂 質(LPO)、 グ ル タ チ オ ン お よ び 酸 化 型 グ ル タ チ オ ン の 測 定 を お こ な っ た 。 好 中 球 炎 症 に つ い て 肺 胞 腔 と 肺 組 織 と の 動 態 の 変 化 を 検 討 す る た め 肺 組 織 に お い てGr−1染 色 に よ る 好 中 球 浸 潤 の 評 価 とMPO活 性 を 測 定 し た 。 ま た 肺 傷 害 の 程 度 に つ い てwe t/d ry肺 重 量 比 や 肺 傷 害 ス コ ア を 検 討 し た 。 さ ら に 、LPS投 与 後 に 肺 胞 腔 に 集 積 し た 好 中 球 のROS産 生 能 に つ い て 検 討 す る た め にLPS投 与1日 後 お よ び5日 後 の マ ウ ス よ り 回 収 し た BAL液 か ら 好 中 球 を 分 離 し 、 細 胞 内 の 活 性 酸 素 強 度 に つ い て 螢 光 試 薬 で あ るAPF (aminophenyl

356

(2)

f luorescein)

を用いた螢光強度の測定およびフ口ーサイト法により検討した。

【結果】LPS の気管内投与後に肺胞腔の好中球 浸潤を反映してBAL 液中の著明な好中球数の上昇 を認めた。好中球 数の上昇はLPS 投与後5 日目がピークであり、7 日目には明らかな消退を認め た。次にBAL 液中の酸化ストレスマーカーとし てカルポニル化アルブミン、LPO 、グルタチオン および酸化型グル タチオンを測定したところいずれもLPS 投与7 日後まで上 昇しておりBAL 液中 の好中球数のピー クと解離していた。そこで好中球活性の指標であるMPO 活性についてBAL 液で 検討したところ酸 化ストレスマーカーと同様にLPS 投与7 日後まで上昇を認 めた。さらに、BAL 液中のMPO 活性とカルポニル化蛋白の間に有意な相関を認めた。また、気道上皮傷害の指標であ るwe t/d ry 肺重量比および肺傷害スコアはMPO 活性や酸化ストレスマーカーと同様にLPS 投与7 日目まで上昇していた。一方で肺組織でのGr ―1 染色による好中球浸潤の評価、MPO 活性および酸 化ス卜レスマーカ ーであるカルボニル化蛋白や4 ―HNE の測定をしたところいずれも

LPS

投与7 日 後には明らかに低 下していた。最後に、LPS 投 与

1

日後および

5

日後にマウスの肺胞腔から回収 した好中球のMPO 活性および

ROS

強度を螢光強度測定法およびフ口ーサイト法で検討したところ

5

日後に回収した好中球では1 日後に回収した好中球と比較していずれも有意に増強していた。

【考察】本研究では急性肺傷 害モデルマウスのBAL 液を解 析することにより

LPS

投与後の肺胞腔 における好中球性炎症と酸化ストレスの関連を検討し、.肺組織と対比させることを目的とした。

今回得られた結果より、急性肺障害モデルマウスにおいて肺胞腔の酸化ストレスは好中球の消退 した後も遷延していること、酸化ス卜レスの動態が肺胞腔と肺組織で一様ではないこと、肺胞腔 に遊走した好中球の酸化ス卜レス産生能が炎症後期では早期と比較して増強していることが明ら かとなった。ROS の直接的な測定は困難であるため、ROS の強度を示す間接的な指標である酸化 修飾物は、酸化ス卜レスマーカーとして用いられる。近年、これらの酸化ス卜レスマーカーは単 なるマーカーではなく、機能変化やシグナル伝達などを介して積極的に肺の傷害に関わっている と考えられている。今回の検討で好中球が消退した後も肺傷害が遷延した機序として、肺胞腔の 酸化ス卜レスマーカー自体が上皮障害や炎症細胞の活性化に関わっている可能性も考えられた。

MPO

はほぼ好中球にのみ存在するため、好中球活性の最も 一般的な指標である。BAL 液における 好中球の消退後もMPO 活性が遷延していた機序として今回 我々は肺胞腔から回収した好中球の

MPO

活性とAPF で標識した活性 酸素強度が経時的に増強することを示した。MPO 活性が遷延した別 な 機 序 と し て 、

MPO

の 肺 胞 腔 か ら の ク リ ア ラ ン ス が 低 下 し て い た 可 能性 も考 えら れた 。 臨床においてBAL 液における好中球の割合は、疾患の活動性を評価する指標として広く使われて いる。今回の肺傷害モデルの 検討においてBAL 液中の好中 球数が低下した後もMPO や酸化ストレ スマーカーは低下せず、肺傷害の指標と同様の動態を示したことから、両者が好中球数よりも有 用な疾患の活動性のマーカーになる可能性や、ALI/ARDS 治療薬の効果判定のマーカーになりうる 可能性がある。

【結諭】本研究は急性肺傷害モデルにおける好中球性炎症と酸化ストレスマーカーに関する最初 の論文である。 今回の我々の研究からALI/ARDS 患者の

BAL

液においてMPO 活性や酸化ストレスマ ーカーが、従来の好中球分画と比較してすぐれた疾患活動性マーカーや治療効果判定の指標とな る可能性が示唆 された。

    ‑ 357

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

Relationship between neutrophil influx and oxidative stressin     alveolar space in lipopolysaccharide‑induced lung injury

    (LPS 投与急性肺障害モデルマウスにおける肺胞腔の好中球浸潤と

     酸化ストレスの関係に関する検討)

  

急性肺傷害は様々な疾患を背景として急性の非心原性の肺水腫を呈する肺疾患である。

本研究ではlipopolysaccharide (LPS) を気管内投与したモデルマウスを用いて、気管支肺 胞洗浄

(BAL)

液の炎症細胞、特に好中球や様々酸化ストレスマーカーが、肺組織や肺傷害 の程度をどの程度反映するかについて詳細な検討をおこなった。本研究の結果、

BAL

液の好 中球は肺組織の好中球と有意に相関するが肺傷害の修復が起こる前に速やかに消退するこ と、BAL 液の酸化ストレスマーカーは肺組織の酸化ス卜レスと相関しない一方で肺傷害の程 度を反映すること、さらにLPS 投与後に肺胞腔に集積する好中球の酸化ス卜レス活性が炎 症の時相で異なることが明らかとなった。

  

質疑応答において、副査である上出教授からは、@今回マウスモデルで得られた結果が そのまま様々な背景疾患があるヒ卜の場合に当てはまると考えることができるか、◎刺激 に対する好中球の

heterogeneity

につしゝては検討したか、の2 点について質問をいただい た。これに対して申請者は、@ヒトの急性肺傷害では様々な背景疾患があるが、大きく肺 の直接的な傷害に起因するものと、肺以外の傷害による間接的な肺傷害との2 種類がある。

今回のモデルは前者の代表的なモデルであるが、後者のモデルであるLPS の腹腔内投与や 虫垂穿孔によるマウスモデルで今回の結果が再現できるかについても検討する必要がある

◎今回の検討ではノックアウ卜マウスや薬物を用いた好中球のheterogeneity の検討はお こなっていない、ことについて回答をおこなった。

  

次に副査である瀬谷教授より、@今回用いたLPS はTLR ―

4

のりガンドとして作用する種 類のものか。そうであるならば、例えば

TLR

―4 のノックアウトマウスにLPS を気管内投与 した際にはどのような結果になると考えられるか、◎今回の結果で、肺胞腔から好中球が 見かけ上で消退した後もその活性である

MPO

が遷延していたのは好中球が原因と考えられ るかという3 点について質問をいただいた。これに対して申請者は、@今回用いた

LPS

は、

TLR

4

のりガンドとして作用する一般的なものである。TLR −4 はその下流シグナルである

NF

―kB を介して炎症性サイトカインの発現などに関わるので、その欠損マウスにおいては

LPS

投与後の好中球の集積や肺傷害の程度は抑制されると考えられる。しかしながら、BAL 液と肺組織の関係がTLR −4 の欠損によりどのような結果になるかについては今回の検討か らは述べることはできない、◎炎症早期と比較して、後期で好中球の活性が上昇している ことが機序のーっに挙げられる。別の機序としては、酸化ストレスはマク口ファージの貪

358

典 光

司 治

   

原 出

谷 村

西

(4)

食 能 を 抑 制 す る こ と が 報 告 さ れ て お り 、 炎 症 後 期 に お い て はMPOの ク リ ア ラ ン ス が 低 下 し て い る 可 能 性 も 考 え ら れ る 。 とnI答 し た 。

  次 に 剛 布 で あ る |W村 教 授 よ り 、 @ 今 同 の 動 物 モ デ ル を 用 い て 得 ら れ た 検 討 を 今 後 ど う よ う に 尖 際 の 臨 床 に 応 川 で き る か 、 と い う 点 に つ い て 質Imを い ただ い た 。 こ れに 対 し て1|I請 皆 は 、 @ ヒ トの 肺 疾 患 、 特に 急 性 肺 傷 害な ど の 急rト疾 也 に お い てはHWtIL織 の 生 検 は づト 常 に 凶 雌 で あ り 、BALが 翁l織 を ど の よう に 反 映 し てい る か を 対 比 させ て 検 討 す るこ と は で き ない 。 今 回 の 検Nは 介 入 実 験 を お こ な っ て お ら ず 、 急 性 帥 傷 害 の 病 態 な ど に 直 接 迫 る も の で は な い が 、BALか ら 得 ら れ た 情 報 に よ り 実 際 の 肺 で お こ っ て い る 病 態 の な に を み て い る か と い う 解 釈 に 寄 与 す る 、 と 回 答 し た 。

  嚴 後 に 主Aで あ る 笠 原 教 授 よ り 、 @ 今 後 ヒ ト に お い て 、fllJが 活 動 性 の 把 掘 な ど で良 い マ ー カ ー で あ る か を 検 討 す る う え で 雨 嬰 な こ と は な に か 、 ◎ 複 数 の 酸化 ス ト レ ス マー カ ー で 、 今 回 の 検 討 と あ わ せ て 皺 も41JHな も の は ど れ か 、 と い う2点 に つ い て 質f剛 を い た だ い た 。 こ れ に 対 し 申 請 者 は 、 @ ヒ ト で は 今 回 の よ う に 繰 り 返 しBALを お こ な う こ と は で き な い た め に 同 じ こ と は で き な い が 、 他 の マ ウ ス モ デ ル や 他 のstrainで も 同 様 の 結 果 で あ れ ば 、1 回 のBALで の 好 中 球 数 、 好 中 球 炎 症 、 酸 化 ス ト レ ス を 総 合 的 に 評 価 す る こ と で 炎 症 の 時 相 や 、 活 動 性 の 有 無 に つ い て の 〓f価 が 期 待 で き る 、 ◎ 以uIJの我 々 の 検 討 では 気 管 支 喘 息患 者 の 喀 痰 中 の カ ル ボ ニ ル 蛋 白 が 好 酸 球 比 率 と 有 意 に 相 関 し て い た 。 蛋 白 酸 化 は 組 織 傷 害 の 直 接 的 な 指 標 で あ る た め に 今 回 測 定 し た う ち で は 最 も 有 用 で は な い か と 考 え ら れ る 、 と 回 答 し た 。

  こ の 論 文 は 、 急 性 肺 傷 害 に お け るBAL液 と 肺 組 織 の 経 時 的 変 化 に つ い て 詳 細 に 検 討 し た 点 に お い て 高 く 評 価 さ れ 、 今 後 は ヒ ト に お け る 有 用 な 活 動 性 マ ー カ ー の 検 索 を 目 的 と し た 研 究 へ の 進 展 が 期 待 さ れ る 。 審 査 員 一 同 は 、 こ れ ら の 成 果 を 高 く 評 価 し 、 大 学 院 課 程 に お け る 研 鑽 や 取 得 単 位 な ど も 併 せ 申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。

‑ 359 ‑

参照

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