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土木工学専攻 14 号 小林祐介 KOBAYASHI Yusuke

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Academic year: 2021

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(1)

熱劣化がアスファルト混合物の疲労特性に及ぼす影響と載荷休止によるヒーリング効果 Fatigue characteristics of asphalt mixtures affected by healing and thermal aging

土木工学専攻 14 号 小林祐介 KOBAYASHI Yusuke

1.背景

アスファルト混合物は粘弾性特性などの複雑な性 状を持ちわせているため,アスファルト混合物の疲 労メカニズムに関して未解明な部分が多い.また供 用中の舗装は太陽からの紫外線や舗装の温度上昇に ともなう熱などによる外部環境の影響を受けるため アスファルト混合物の疲労性状を把握することが難 しいとされている.

既往の研究では前川 1) がアスファルトの劣化が混 合物の疲労挙動に及ぼす影響を,試験温度 10℃,周 波数 5Hz において検証した.その結果アスファルト 混合物が繰返し載荷によって疲労ダメージを受けて いる間もそのダメージを常に回復しつづけていると 確認された.しかし休止による回復を示すデータは 無く,未解決の課題である.

2.目的

本研究では push-pull 一軸疲労試験装置を使用した 室内実験を実施し,ストレートアスファルト混合物 (以下 StAs 混合物),熱劣化を伴ったストレートアス ファルト混合物(以下熱劣化 StAs 混合物),改質Ⅱ型 混合物の疲労性状の把握を目的として,混合物のス ティフネス S に着目した検討を行った.

3.試験概要

3.1.push-pull一軸疲労試験概要

push-pull一軸疲労試験は,SHRP でLytton らによ って採用され,その後Di Benedetto やKimらによって 改良された.

この試験の特徴は,供試体の中央部断面に一様な 応力とひずみが作用することである.

本検討で使用したpush-pull一軸疲労試験装置は, 写 真-1(a)および写真-1(b)に示すとおりであり,載荷 装置,試験槽,制御装置および記録装置から構成さ れている.供試体に生じるひずみは, 写真-1(b)に見 られるように,供試体の円周上に120°間隔で配置し た3基の差動トランス(ゲージ長さ80mm)から,そ

の平均ひずみとして得られる.また本装置は,これ ら3基の差動トランスをフィードバック制御のルー プに含めることで,低ひずみレベル(20  m/m 程度)

での制御を可能にしている.

3.2.供試体概要

push-pull一軸疲労試験の供試体は,混合物を所定の 密度となるよう300×300×100mmに成型し,その中央 部分を写真-2(a)に示すように円筒形(直径75mm×

高さ120mm×3本)に横からくり抜いた後, 写真-2(b) に示す研磨装置を用いて上下面が平行となるよう研 磨したものを用いた.熱劣化混合物はストレートア スファルトと骨材の練り混ぜ後にバットに敷きなら

した後, 120℃の恒温槽に24時間, 48時間養生したも

のを未劣化のものと同様の作製手法で作製したもの である.

円筒形の供試体は,上下面が冶具に接着され,油 圧制御による繰返し載荷(引張-圧縮)を受ける.

写真-1(a)疲労試験機 (全体図)

写真-1(b)差動トランス

写真-2(a) 円筒形供試体 写真-2(b) 研摩装置

(2)

3.3.試験条件

本研究に用いたアスファルト混合物の寸法,配合 と試験条件について表-1 に示す.制御モードはひず み制御である.

3.4.試験結果の評価方法

ひずみ制御による一軸疲労試験では,StAs のステ ィフネス S は図-1 のように低下することが知られて いる.本研究では既往の研究を参考に,スティフネ ス S が応力の安定する初期スティフネス S s (載荷

500 回)の 50%低下した時を破壊とみなし,その時の

回数を破壊到達載荷回数とした.

0 5 10 15 20 25 30

0 2 4 6 8 10 12 14

S (G P a)

載荷回数(

10

4回)

100未劣化

4.熱劣化が混合物の疲労挙動に及ぼす影響 4.1.破壊到達載荷回数

未劣化混合物,熱劣化混合物,改質Ⅱ型に対して ひずみ振幅 100,120,,,,  におい て試験をおこなった.図-2 に未劣化・24 時間劣化・

48 時間劣化,改質Ⅱ型における各ひずみレベルでの 破壊到達載荷回数を示す.

図-2 よりひずみレベルが大きくなるにつれて,破 壊到達載荷回数が小さくなっていることがわかる.

また,概ね 150  以上と比べて 150  未満は,熱劣化に より著しく破壊到達回数に差が見られる.小さなひ ずみレベル(100  程度であれば,熱劣化の方がスティ フネス S の減少が緩やかで長寿命化する可能性があ

る.改質Ⅱ型に関しては他と比べ,破壊到達載荷回 数が大きく,長寿命であると言える.

80 100 120 140 160 180 200 220 240 260 0

1 2 3 4 5 6 7 8 9

(

1 0

5 )

ひずみ(

)

未劣化

24

時間劣化

48

時間劣化

改質Ⅱ型

4.2.初期スティフネス

図-3 に各ひずみレベルの初期スティフネス S s を 示す. 図-3 より 250  を除いた全てのひずみレベルで,

48 時間劣化,24 時間劣化,未劣化,改質Ⅱ型の順に 初期スティフネス S s が高くなっている.前述のとお り,破壊到達載荷回数に関しては,小さいひずみレ ベルのみ劣化の有無や劣化時間による差が見られた のに対して,載荷初期はすべてのひずみレベルでス ティフネス S s の上昇という形で劣化が影響してい ると考えられる.これは熱劣化によってスティフネ ス S が増加したと考えられる.

100 120 140 160 180 200 220 240 260 0

2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

初期スティフネス

S

s(

G Pa

)

ひずみ(

) 未劣化

24

時間劣化

48

時間劣化 改質Ⅱ型

4.3.位相角

図-4 にひずみレベル 120  での載荷回数と位相角 の関係を示す.未劣化と比べて劣化したものは,位 相のずれが小さい.今回行ったすべての実験で,こ のような傾向が見られた.このことから劣化させる ことで,バインダの硬化など粘性が小さくなってい

試験

供試体寸法 円筒形

直径75mm,高さ120mm 供試体配合 ストレートアスファルト(60/80),

骨材最大粒径13mm バインダ種

StAs(未劣化,24時間劣化,48時間劣化)

改質Ⅱ型

試験温度

10

制御モード ひずみ制御

載荷波形 正弦波

5Hz

ひずみ振幅

100m, 120m, 150m, 170m, 200m, 250m

表-1 試験条件

図-1 スティフネスの変化例

図-2 破壊到達載荷回数

図-3 初期スティフネス

(3)

ると考えられる.また 24 時間劣化, 48 時間劣化では 位相角に大きな違いは見られない.

4.4.応力-ひずみ関係の経時変化

応力-ひずみ関係をより精緻に調べるため,いくつ かの載荷回数において載荷 1 サイクルあたりのヒス テリシスループを描いた.先に述べた位相角は図-5 および式-1 から算出された.ひずみ制御では L 1 が一 定のもと,ループの傾きが小さくなることで L 2 が大 きくなり位相角が大きくなっていることが判明した.

図-6 より載荷開始から破壊到達載荷回数までは粘 弾性挙動を示すが,破壊後載荷を続けると,ループ の形が楕円形から平行四辺形の様な形になり,形状 の変化が見て取れる.四点曲げ試験でも同様の変状 が見て取れた.この変状は供試体の劣化の有無に関 係なく表れ,疲労の進行によりできた供試体内部の 小さなひび割れが原因と考えられる.破壊後(ループ の形状が変化後)において,この方法で求めた位相角 は,アスファルト混合物の挙動を表す指標としては ふさわしくないと考えられる.

-150 -100 -50 0 50 100 150

-1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0

1.5 12024h

劣化

(

M P a

)

ひずみ(

)

載荷

500

載荷

10000

載荷

213000

回(破壊直前) 載荷

300000

5.休止が混合物の疲労挙動に及ぼす影響 5.1.休止によるスティフネス回復率

150  で異なる休止時間(5 分,1h,24h)を設け,疲労 試験を行った.スティフネス回復率 R を式-2 に定義 する.また図-7 に結果を示す.

図-7 より休止時間が長くなるにつれて,スティフ ネス S が回復していることがわかる.しかし破壊到 達載荷回数について検討を行ったが,今回の試験条 件(5Hz,150  )では休止の有無,また休止時間での大 きな違いはなく,一度の休止では破壊到達載荷回数 に与える影響は小さいと言える.

p res

S

RS

式-2

:

R

スティフネス回復率

p :

S 3

万回載荷時のスティフネス

res :

S

休止後のスティフネス

10 100 1000

0.8 0.9 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5

R

(=

S

res/

S

p)

休止時間(分)

5

分休止

1h

休止

24h

休止

5.2.破壊到達載荷回数

休止が破壊到達載荷回数に与える影響を調べるた

0 1 2

0.07 0.08 0.09 0.10 0.11 0.12 0.13 0.14 0.15 0.16

 (r ad )

載荷回数(×

10

5回)

120未劣化 12024時間劣化 12048時間劣化

図-7 休止時間-スティフネス回復率 図-4 載荷回数-位相角

図-6 ヒステリシスループ

図-5 位相角の算出

-150 -100 -50 0 50

-1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5

L

1

L

2

(

M P a

)

ひずみ()

式-1

1

sin 2

L

L

(4)

め,ひずみレベル 150  において,1 万回載荷後に 1 時間休止を 1 セットとし,破壊到達までこの工程を 繰返し行った.試験結果を図-8 に示す. 図-8 より休 止時間を設けることによって,疲労寿命が延びてい る事がみてとれる.また休止によるスティフネス回 復率については,載荷回数が増加後も同程度の回復 を見せている.

5.3.位相角

図-9 に休止の有無による位相角の推移を示す.休 止時間を設けることで,一時的に位相角は小さくな るが,その後休止なしと同様の推移を示している.

これは載荷により発生したマイクロクラックが回復 し,一時的に位相角が小さくなったと考えられる.

6.まとめ

本検討で得られた知見を以下に示す.

*熱劣化について 

・150  以上と比べて 150  未満は,熱劣化により著 しく破壊到達載荷回数に差が見られる.

・小さなひずみレベル(100  程度)では,熱劣化の方

がスティフネスの減少が緩やかで長寿命化する 可能性がある.

・供試体を熱劣化させることで初期スティフネス を含めて相対的にスティフネスが高くなる.

・未劣化と比べて劣化したものは,位相のずれが 小さい.このことから劣化させることで,バイ ンダの硬化など粘性が小さくなっていると考え られる.

・載荷回数が増加し,ヒステリシスループの傾き が小さくなることで,位相角が大きくなってい くことがわかった.

*休止について

・休止時間が長くなるにつれて,スティフネスは より多く回復する.また載荷回数が増加後も休 止によるスティフネス回復率は変化しないこと が確認できた.

・休止時間を設けることで疲労寿命が延びること が確認できた.

・休止を設けることで一時的に位相角は小さくな る.これは載荷により発生したマイクロクラッ クが,休止時間を設けることで回復したことが 原因と考えられる.

7.結論

本研究により検討した結果,劣化の有無による初 期スティフネス,位相角の顕著な差が確認できた.

しかしながらスティフネスの変化,及び破壊到達載 荷回数に関しては,小さなひずみレベルにおいての み劣化の有無による明確な差が確認できた.また休 止時間を設けることで,スティフネスが回復し,疲 労寿命が延びることが確認できた.この知見は今後,

舗装をより効率的に維持管理していく上で,大きな 影響を及ぼし得るものである.位相角の算出方法に ついては,新しい方法で指標を作成するところまで 至らなかった為,今後の課題としたい.

[参考文献]

1

)前川亮太:繰返し載荷実験に基づくアスファルト混合物の 変形および疲労挙動に関する研究,中央大学博士論文,

2012 2

)和地敬:バインダ性状の違いがアスファルト混合物の疲労 挙動に及ぼす影響,中央大学修士論文,

2010

3

)向後憲一:載荷条件の違いに着目したアスファルト混合物 の疲労挙動に関する研究,中央大学博士論文,

2009

0 5 10 15 20 25 30 35

0 2 4 6 8 10 12 14 16

スティフネス

S

(

G P a

)

載荷回数(×103回) 休止なし

休止あり① 休止あり② 休止あり③

0 1 2 3

0.070 0.075 0.080 0.085 0.090 0.095 0.100

 (r ad )

載荷回数(×

10

4回)

休止なし 休止あり

図-8 休止によるスティフネスの変化

図-9 休止の有無による位相角の推移

参照

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