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小林 祐介 2014 年

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妊娠高血圧腎症患者由来 IgG による絨毛癌細胞、ヒト 妊娠初期絨毛細胞よりの soluble Endoglin 産生の検討

日本大学大学院医学研究科博士課程 外科系産婦人科学専攻

小林 祐介 2014 年

指導教員 山本 樹生

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2

妊娠高血圧腎症患者由来 IgG による絨毛癌細胞、ヒト 妊娠初期絨毛細胞よりの soluble Endoglin 産生の検討

日本大学大学院医学研究科博士課程 外科系産婦人科学専攻

小林 祐介 2014 年

指導教員 山本 樹生

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1

目次

概要 02

略語一覧 04

緒言 06

1.背景

1.妊娠高血圧症候群について 2.妊娠高血圧症候群分類

3.妊娠高血圧症候群の病理と病態生理 4.妊娠高血圧症候群における高血圧の特徴 5.血管増殖因子について

6.AT1-AAについて

7.妊娠高血圧症候群とAT1-AA の関連

2.目的

方法 15

結果 20

考察 25

まとめ 30

謝辞 30

引用文献 31

Figure legends 43

Figures 48

研究業績 67

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2

概要

妊娠高血圧症候群 (pregnancy induced hypertension PIH) は産科特有の疾患で 基本病態は血管内皮障害による臓器障害と血圧上昇であり, 大部分は分娩後に 軽快する。その中でも妊娠高血圧腎症 (preeclampsia PE) は高血圧, 蛋白尿, 凝固 異常を併発し母児ともに危険に晒される疾患である。しかしながら, その病態に ついては不明な点が多くその解明が望まれる。

soluble Endoglin (sEng) Transforming growth factor-beta (TGF-β) と結合して, 血管新生に関わるantiangiogenic proteinとして知られている。TGF-βeNOS (endothelial Nitric Oxide Synthase) を活性化し血管拡張を引き起こす。このため

sEngTGF-βによるNOS依存性の血管拡張を阻害し, 高血圧を発症しPE患者

末梢血では高値を呈することが知られている。

PIHでは自己抗体の関与が報告されており, antiangiogenic protein産生との関連 も報告されている。しかしながら, これまでPE患者における自己抗体とsEng 濃度高値との関わりを直接示す報告はない。

そこで, 本検討ではPEにおいて血清IgGsEng産生にどのような役割を担 っているのか, 特に自己抗体とsEng産生増加の関連を明らかにするため絨毛 癌細胞株 (JEG-3 cells) 及びヒト妊娠初期絨毛細胞を用いて検討を試みた。

近年になって, 自己抗体の中でもangiotensin II type 1 (AT1) receptorに対す る自己抗体であるAT1-receptor agonistic autoantibody (AT1-AA) PE発症に関わ る因子として報告されている。

したがって, 筆者はAT1-receptor を特異的にブロックするAT1-receptor 阻害薬 (Losartan) を用いてPEsEng過剰産生におけるAT1-AA機能の有無を検討した。

(方法)正常妊婦とPE患者から血清IgG分画を抽出し, JEG-3 cellsと合法的に 採取したヒト妊娠初期絨毛細胞に添加し, sEngの蛋白産生並びにmRNA発現量 の変化を比較検討した。さらに, sEng産生におけるAT1-AA機能の有無を検討す るため, Losartan を用いて特異的にAT1-receptorを阻害したうえでsEng産生並び

sEng mRNA発現量の変化を比較検討した。またAT1-AAsEng産生と

TGF-βをはじめとしたcytokineの関係を検討するため, interleukin (IL)-1β, IL-4, IL-5, IL-6, IL-7, IL-8, IL-10/ CSIF, IL-12 (p40), IL-12 (p70), IL-17A/CTLA8,

IL-17F/ML-1, IL-23, interferon (IFN)-γ, tumor necrosis factor (TNF)-α,

granulocyte-macrophage colony stimulating factor (GM-CSF) /CSF-2, monocyte chemotactic protein-1 (MCP-1) /CCL2, macrophage inflammatory protein-1α (MIP-1α) /CCL3, regulated upon activation normal T cell expressed and presumably secreted

(RANTES) /CCL5産生の変化をLosaratan添加前後で比較検討した。

(結果)本検討によりPE患者血清をヒト妊娠絨毛細胞に添加することでin vitro

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PE発症機構におけるヒト妊娠絨毛細胞の変化を確認できた。

PE患者血清IgG分画を作用させるとJEG-3 cells及びヒト妊娠初期絨毛細胞の どちらにおいても正常妊婦血清IgG分画添加群と比較してsEng蛋白産生が有意 に増加し, sEngmRNA発現も有意に亢進した。

さらに, Losartanを用いてAT1-receptorを特異的に阻害したうえでPE患者血清 IgG分画を作用させるとsEng蛋白産生は有意に減少し, sEngmRNAの発現も 有意に抑制された。Cytokine濃度に関してはTGF-β濃度がLosartan添加で有意 な増加をみた。しかし, 他の検討したcytokine濃度は有意な変化は認めなかった。

(結語)以上の結果より, PE患者血清中のIgG分画がヒト妊娠初期絨毛細胞に 作用するとantiangiogenic proteinであるsEngの産生を亢進し, PEの病態に関与す る可能性があると推察した。

さらに, Losartant添加によりTGF-βの濃度が上昇したことからAT1-AAが胎盤 絨毛を介しsEng産生を増加させることでTGF-βを低下させ, TGF-βによる血管 拡張作用及び血管新生作用を阻害し, PE患者の病態に深く関与している可能性 があることが判明した。

今回, 筆者は培養が困難と言われているヒト妊娠初期絨毛細胞に血清IgG 分画を添加しsEng産生が増加することを証明し, LosartanによりAT1-receptor 特異的にブロックしたことでPE患者血清中のAT1-AAの存在を示し, PE発症に 関与するsEng産生という従来あまり知られていなかったAT1-AAの機能を間接 的にはじめて証明した。

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略語一覧

A : alanine

ACE : angiotensin converting enzyme ANGⅡ : angiotensinⅡ

AT1-AA : angiotensinⅡtype 1 receptor agonistic autoantibody

C : cysteine

E : glutamine acid

eNOS : endothelial nitric oxide synthase ERK : extracellular signal regulated kinase F : phenyalanine

GM-CSF : granulocyte-macrophage colony stimulating factor H : histidine

HELLP : hemolysis, elevated liver enzyme and low platelets I : isoleucine

IFN : interferon

IGFBP : insulin-like growth factor binding protein IL : interleukin

L : leucine

MCP-1 : monocyte chemotactic protein-1 MIP-1 : macrophage inflammatory protein-1 N : asparagine

NADPH : nicotinamide-adenine dinucleotide phosphate NF-κB : nuclear factor κ B

NP : normal pregnancy

PAI-1 : plasminogen activator inhibiter-1 PAPP-A : pregnancy-associated plasma protein-A PE : preeclampsia

PIH : pregnancy induced hypertension PlGF : placenta growth factor

Q : glutamine

R : arginine

RANTES : regulated upon activation normal T cell expressed and presumably secreted RAS : renin angiotensin system

ROS : reactive oxygen species

S : serine

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sEng : soluble Endoglin

sFlt-1 : soluble fms-like tyrosine kinase-1

sVEGFR1 : soluble vascular endothelial growth factor receptor-1 T : threonine

TGF : transforming growth factor TNF : tumor necrosis factor

V : valine

VEGF : vascular endothelial growth factor Y : thyrosine

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諸言

研究の背景

1.妊娠高血圧症候群について

定義:妊娠20週以降, 分娩後12週までに高血圧が見られる場合, または 高血圧に蛋白尿を伴う場合のいずれかで, かつこれらの症状が単なる妊娠の 偶発合併症によらないものと定義される1, 2)

頻度:Sibai et alや他の報告によると世界的な頻度は全妊娠の約3~5%に見ら れるとされており, 人種としては黒人に多いとされている3-5)。また, 初回妊娠で

6~8%, 多胎妊娠では14~20%, 子宮奇形を有するものでは30%, 慢性高血圧お

よび慢性腎疾患を有するものは25%の頻度でPEを発症する5)

特に10歳代の妊娠は20歳以上の妊娠と比べてPE発症のハイリスク群である ことが知られ6), さらには PE 85%が初産婦であるとされている 7)。それは短 い同棲歴や婚姻歴, または精液暴露の機会が少ないことでPEの発症が増加する とされている。また胚提供や卵子提供ではPEの発症率は高率になる。

これらのことから, PIH発症には免疫学的要因として免疫寛容が関与している 可能性が示唆されている8-10)

PE は妊娠高血圧症より早期に発症し, 子宮内胎児発育遅延を伴うことが多く 早産の大きな要因となる。また, PEによる年間母体死亡数は約7万人~8万人, さらに年間新生児死亡数は約 50 万人とされ, 母児ともに非常に危険な疾患であ 5)

2.妊娠高血圧症候群分類

PIHの診断基準を以下に示す11) 病型分類:

1.妊娠高血圧腎症 (preeclampsia):妊娠20週以降に初めて高血圧が発症し,

かつ蛋白尿を伴うもので分娩後12週までに正常に復する場合をいう。

2.妊娠高血圧 (gestational hypertension):妊娠20週以降に初めて高血圧が 発症し, 分娩後12週までに正常に復する場合をいう。

3.加重型妊娠高血圧腎症 (superimposed preeclampsia):

(1) 高血圧症 (chronic hypertension) が妊娠前あるいは妊娠20週までに存在し, 妊娠20週以降蛋白尿を伴う場合。

(2) 高血圧と蛋白尿が妊娠前あるいは妊娠20週までに存在し, 妊娠20週以降, 何れか, または両症状が増悪する場合。

(3) 蛋白尿のみを呈する腎疾患が妊娠前あるいは妊娠20週までに存在し,

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妊娠20週以降に高血圧が発症する場合をいう。

4.子癇 (eclampsia):妊娠20週以降に初めて痙攣発作を起こし,てんかんや

二次性痙攣が否定されるもの。痙攣発症の起こった時期により, 妊娠子癇・

分娩子癇・産褥子癇と称する。

症候による亜分類:

重症, 軽症の病型を高血圧と蛋白尿の程度によって分類する。

○ 軽症 血圧:次のいずれかに該当する場合。

収縮期血圧 140 mmHg以上, 160 mmHg未満の場合 拡張期血圧 90 mmHg以上, 110 mmHg未満の場合

蛋白尿:300 mg/日以上, 2 g/日未満のときは蛋白尿軽症とする。

○ 重症 血圧:次のいずれかに該当する場合。

収縮期血圧 160 mmHg以上の場合 拡張期血圧 110 mmHg以上の場合

蛋白尿:2 g/日以上のときは蛋白尿重症とする。

なお, 随時尿を用いた試験紙法による尿中蛋白の半定量は24時間蓄尿検体を用 いた定量法と相関性が悪いため, 蛋白尿の重症度の判定は24時間尿を用いた 定量によることを原則とする。随時尿を用いた試験紙法による成績しか得られ ない場合は, 複数回の新鮮尿検体で, 連続して3+以上 (300 mg/dl以上) の陽性 と判定される時に蛋白尿重症とみなす。

発症時期による病型分類:

妊娠32週未満に発症するものを早発型 (early onset type EO), 妊娠32週以降に 発症するものを遅発型 (late onset type LO) とする。なお, 欧米では妊娠34週を 境に分類する。

3.妊娠高血圧症候群の病理と病態生理

PIHでは臨床症状は妊娠20週以降に出現する。しかし, すでに着床期から 異常が起きており, 基本病態は全身性の血管内皮障害である 1)。Pijnenborg et al が, PIHでは胎盤床での脱落膜のらせん動脈への絨毛細胞の侵入不全の結果, せん動脈の血管径の狭小化による remodeling 不全が起きて胎児胎盤循環不全に 至ると報告した12)。PE (特にearly onset type) ではこの絨毛外絨毛細胞による ラセン動脈の置換が不十分であり, ラセン動脈の径は非妊娠時とそれほど変わ らないため絨毛間隙の血流は減少しているとされている12)

絨毛細胞の脱落膜への侵入は局所の酸素分圧に規定され, 母体の血管が絨毛 管腔に還流が始まる着床後10週~12週までの酸素分圧は低い (約2~3%)。

これは絨毛外絨毛細胞が血管の出口を塞ぎ胎児が活性酸素ストレスから免れる

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のに役立っている。この時期の活性酸素ストレスは胎児奇形の大きな原因の一 つとなる。

妊娠 12 週以降, 絨毛外絨毛細胞によりラセン動脈は血管平滑筋を置換するよ うに侵入し, 血管内皮まで置換する。これはラセン動脈の remodeling と呼ばれ, らせん動脈のremodelingが進むと酸素分圧が上昇 (約7~8%) する12)。また胎盤 は昇圧物質の影響を受けにくくなり, 血管は拡張する。この血管拡張により, 毛管腔には多量の血液が流入し, 胎児は成長に十分な栄養を得ることができる。

らせん動脈の浸潤が障害されると血流減少が起こり, 胎児胎盤循環不全が起 こるといった悪循環からPIHが発症すると考えられている。これがRedmann et al が提言したPIHtwo step theoryfirst stageである13)

Second stageに入ると, 胎児胎盤循環不全による低酸素の影響で絨毛細胞から

vascular endothelial growth factor (VEGF) の可溶性受容体であるsoluble fms-like tyrosine kinase-1 (sFlt-1) TGF-β1TGF-β3の可溶性受容体であるsEngの産生 が増加し胎児胎盤循環系や母体循環系に移行する。これら抗血管新生因子の異 常増加のため, hypoxia の状態になり酸化ストレスや pro-inflammatory cytokine

(TNFα, IL-6, IL-17等) の放出がおこる。さらに血管内皮細胞の活性化障害, 凝固

系の異常が誘導され臨床症状 (高血圧, 蛋白尿, 浮腫) が発症すると考えられて いる13-16)

臨床で遭遇するPIHの臨床症状は発症メカニズムからすればsecond step以降 の不可逆的な病態である。さらに, PIHは胎盤形成不全が基盤にあるため臨床 症状が発症してからの治療はきわめて困難である17)

4.妊娠高血圧症候群における高血圧の特徴

PIH では循環血漿量が正常妊娠に比し減少しており, 血圧の上昇は血管抵抗 の増加によるものである。また妊娠によりrenin angiotensin system (RAS) は上昇 するが, PIHでは正常妊娠に比較し RASが逆に若干低下する。

また, angiotensinⅡ (ANGⅡ) 値は正常妊婦に比し低値をとるが, ANGⅡに対す る感受性が亢進しているので高血圧になる。血圧を上昇させるはずの輸液によ る容量負荷によって血圧が低下するなどの特徴がある2)

5.血管増殖因子について VEGF

VEGFSenger et alによって, 腫瘍細胞が腹水産生過剰を促進する蛋白性の

血管透過性因子として発見された18)。Ferrara et alは血管内皮細胞に対して特異 的な増殖作用があるその因子をVEGFと命名した19)

VEGFは血管内皮細胞や絨毛細胞で産生され, 血管拡張, 血管内皮細胞増殖や

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絨毛増殖に作用する血管新生因子 (angiogenic protein) である。

placenta growth factor (PlGF)

PlGFVEGFと同様にangiogenic proteinのひとつであり, 絨毛増殖に作用す る絨毛細胞で産生される因子である 20)。胎盤の酸素状態と深く関係する子宮内 胎児発育遅延を呈した胎盤でのPlGFの産生が, 正常妊娠の同じ週数のそれに比 し有意に低下している。このことから, PlGFは高濃度酸素状態では産生が増加し, 低酸素状態では産生が低下することが証明された21)

さらに, 後に PE を発症する女性では正常妊娠女性に比し妊娠 13~16 週より PlGFの産生が有意に低下するとされている22)

sFlt-1

sFlt-1soluble vascular endothelial growth factor receptor-1 (sVEGFR1) とも言わ れ, VEGF PlGFsoluble receptorである。sFlt-1VEGF, PlGF antagonist である抗血管新生因子 (antiangiogenic protein) であり, 正常妊娠では後期に増加 するとされている22)

PEにおけるsFlt-1の高値はLevine et alが報告し, PE発症の約5週前より上昇 し, early onset type及び出生児がsmall-for-gestational-ageを合併するPE患者に強 くその傾向が見られるとした22)。実際に, PEでは正常妊娠に比べてsFlt-1がより 早期に増加するのに対して, PlGFがより早期に減少している。

sFlt-1は主に, 胎盤でANGⅡ刺激により絨毛細胞から産生され, 過剰産生され

ると高血圧, 蛋白尿, 糸球体内皮症 (endotheliosis) PE所見を起こすと報告さ れている23)

Maynard et alはラットでsFlt-1を過剰に発現させると高血圧, 蛋白尿, 糸球体

硬化症 (glomerular endotheliosis) などのPE様所見を生ずると報告した24) また, VEGFの投与で誘導されたラットの腎動脈の血管の拡張がsFlt-1投与によ り有意に抑制され25), 血管内皮細胞にPIH患者血清を添加すると内皮細胞の 増殖が抑制されるが, sFlt-1の除去によりその抑制が認められなくなると報告 した26)

PIHでは母体血中のsFlt-1濃度は高値を示すが、late onset typeと比較し

early onset typeでは有意に高値を示す傾向がある。sFlt-1濃度は蛋白尿に対して

は正の相関を示し, 血小板と児体重とは負の相関を示す。さらに, 低酸素下で は胎盤絨毛からのsFlt-1産生は増加するとされている27)

このことから, sFlt-1は胎盤で産生されPIH発症に至るまでの血管内皮細胞 障害に対する重要な物質の一つであると考えられている。また, AT1-AA陽性患 者においてもsFlt-1は増加していることが報告されている28)

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それはAT1-AAAT1-receptorを過剰刺激し, 絨毛細胞でのsFlt-1産生を促進 するとされている29)。他方, AT1-AAの有無とsFlt-1濃度の関連は見いだされな かったとの報告もある30, 31)

soluble Endoglin (sEng)

Endoglin (CD105) TGF-β1TGF-β3 の細胞表面に存在するreceptorであり, 血管内皮細胞やsyncytiotrophoblastに存在し, TGF-β1TGF-β3の作用を調節し ている32)。sEng Endoglinの可溶性 receptor であり, 血管内皮細胞上における

TGF-β receptorの一部と結合し, 血管新生に関する細胞内シグナル伝達を低下さ

せるantiangiogenic proteinとして知られる。TGF-βeNOSを活性化し血管拡張 を促す。よって, sEng TGF-βによるeNOS 依存性の血管拡張を阻害し, 高血 圧発症の要因となると考えられている32)

Venkatesha et alはアデノウイルスを利用し, 妊娠ラットへ sFlt-1 および sEng を同時に投与すると, sFlt-1 単独投与と比較してより重篤な高血圧, 蛋白尿およ び重症PEに高頻度に合併するhemolysis, elevated liver enzyme and low platelates

(HELLP) 症候群様病態を呈することを報告した33 )

sEngPIH発症の約8~12週前に上昇する傾向があり, 発症予知マーカーとし ても期待されている22-25)。さらに, 胎盤で産生されるとされるTGF-β family 一つである inhibin A も妊娠初期において, 後に重症 PE を発症する患者群では 正常妊娠群に比べ有意に増加することからPEの発症予知マーカーとしての 有用性が検討されている34)

その他に, 胎盤由来の糖蛋白 である pregnancy-associated plasma protein A (PAPP-A) insulin-like growth factor binding protein-4 (IGFBP-4) IGFBP-5を除 insulin-like growth factor (IGF) (特にIGF-1IGF-2) の機能を調整している。

しかし, PAPP-APIHや子宮内胎児発育遅延症例において妊娠初期に血中で増 加するが, 妊娠中期で減少するため, PE の発症予知のマーカーとしては有用で はないとされている35)

6.AT1-AAについて

AT1-AAは子宮動脈の血流異常を示すPIH患者 (とりわけPE) の一部から 発見されたAT1- receptorと結合し, 過剰刺激する自己抗体としてWallukat et al により1999年に初めて報告された36)。AT1-AAhuman AT1-receptor position 165-191 (Isoleucine-Histidine-Arginine-Asparagine-Valine-Phenylalanine-

Phenylalanine-Isoleucine-Isoleucine-Asparagine-Threonine-Asparagine-Isoleucine- Threonine-Valine-Cystine-Alanine-Phenylalanine-Histidine-Tyrosine-Glutamic acid- Serine-Glutamine-Asparagine-Serine-Threonine-Leucine) (I-H-R-N-V-F-F-I-I-N-T-N-

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I-T-V-C-A-F-H-Y-E-S-Q-N-S-T-L)の細胞外第2ループに対するIgG 抗体であり, その中の7つのアミノ酸配列であるAlanine, Phenylalanine, Histidine, Tyrosine, Glutamic acid, Serine, Glutamine (AFHYESQ) に結合し, 結果としてAT1-receptor を過剰刺激しPIH発症へ関与することが示唆されている36)

AT1-AAANGⅡの有無にかかわらず, AT1-receptor を直接刺激し絨毛細胞 の侵入を抑制し胎盤形成を傷害する37)。その機序としてはsFlt-1, plasminogen activator inhibitor-1 (PAI-1), tissue factor (TF), nuclear factor-κB (NF-κB ) を活性化 させること, さらにnicotinamide-adenine dinucleotide phosphate (NADPH) oxydase の増加, reactive oxygen species (ROS) 産生, 酸化ストレス等を増加させたりする ことで胎盤形成・機能異常を引き起こし, PIHの発症・病態悪化に関与している とされている38-41)

PAI-1urokinase type plasminogen activator を阻害することによりplasminogen

からplasminへの変換を減少させ, 絨毛細胞の胎盤形成を阻害するとされている。

PEではPAI-1濃度が正常妊婦に比べて高濃度であり, 高濃度のPAI-1が腎臓で

線維化の増加等を誘導し, 腎機能障害をきたすとされている42, 43)

また, TF は膜結合型の蛋白質であり, 外因性の血液凝固反応に関わる因子で ある。TFはセリンプロテアーゼである第Ⅶa因子と複合体を結成し, 第Ⅹ因子を 活性化して血液凝固亢進を起こす。AT1-AAはヒト平滑筋細胞表面に発現してい AT1-receptor に特異的に結合し, ANGⅡと同様に extracellular signal regulated

kinase1/2 (ERK1/2) のリン酸化を亢進し, 血中の単核球由来のTFが増加させる

とされている44)。TFPAI-1とともに凝固系を亢進させ, PE発症に関与すると 考えられている45)

加えて, PE 患者ではカルシウムの代謝異常が起こっており血球内のカルシウ ムイオン濃度が上昇しているとされている。AT1-AA AT1-receptor を介し, Gq

proteinと結合しカルシウム濃度を上昇させることで毛細血管収縮作用や血小板

活性化, 凝固系カスケードの活性化等を引き起こすとされている37)

現時点で, AT1-AAが作用するAT1-receptorを発現している細胞として心筋細胞, ヒト妊娠絨毛細胞 (特にsyncytiotrophoblast) , チャイニーズハムスターの卵巣細 胞, 内皮細胞, メサンギウム細胞や血管平滑筋細胞などが確認されている37) また, ヒト妊娠絨毛細胞表面では生体内でAT1-receptor の発現レベルが一番 高値との報告もある46)

正常妊娠とPIH におけるRAS AT1-AA の関係を比較すると, 正常では妊娠 により血中エストロゲン濃度が著しく増加し, 肝での angiotensionogenの産生が 亢進し, 胎盤由来の renin 産生等が行われ, angiotensin converting enzyme (ACE) 以外に子宮胎盤系のRASの活性化が亢進する47)

正常妊娠ではANGⅡ濃度は2倍以上上昇しているのに対して, 顕著な血圧

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12

上昇は認められない。これは, 妊娠によって増加する血管拡張の作用がある progesterone prostcycline 産生のため, 抹消血管の抵抗が減弱し ANGⅡによる 昇 圧 作 用 の 反 応 性 が less sensitive に な る た め, ま た 妊 娠 中 に 上 昇 し た

Angiotensin1-7 ANGⅡの効果を阻害しているためと考えられている。それ故,

妊娠中期までは血圧は逆に低下する47, 48)

一方, PIHでもRASは非妊娠時に比べて若干亢進するが, 正常妊娠に比較する と血中renin活性やaldosteroneレベル等はむしろ低下している47)。また, PIH は正常妊婦に比べて, ANGⅡレベルは低値となる。しかし, AT1-AAANGⅡ様 に作用し, Angiotensin1-7のレベルが低値となっているためANGⅡの効果が阻害 されず, 加えてANGⅡの感受性がhighly sensitiveとなっているため, 血圧が上昇 するといった悪循環に陥りPIHの病態を悪化させていると考えられている 49-51)

さらに, PIHでは正常妊娠と比較して脱落膜でのAT1-receptor の発現が亢進し ているとの報告がある。脱落膜と胎盤にわけて, AT1-receptor の発現量を検討し たところ胎盤では非妊娠時の10倍の増加を認めたが, 正常妊娠群とPIH群では 有意な差は認めなかった 47)。一方, 脱落膜ではPIH 群が正常妊娠群の約 5 倍の 増加を認め, さらにAT1-AAの胎盤通過性も認められた。つまりPIHでは, 母体 由来の脱落膜上で過剰に発現した AT1-receptor AT1-AA が強力に作用し, PIH の病態悪化を誘導している報告がある52)

また, 正常妊娠には正常な胎盤形成や良好な胎盤機能が必須である。母体と 胎児を隔てるバリアーの存在である胎盤は栄養, 酸素運搬, ホルモン産生など を行っている53, 54)。加えて, 胎盤は免疫学的なバリアー機能も担っている。IgG も胎盤通過性があることが知られており, サブクラスにより通過性が異なるこ とも知られている 55-57)。まだ議論の余地はあるものの, IgG1>IgG3>IgG4>IgG2 されている58-60)。Wallukat et alによるとAT1-AAIgG3のサブタイプに分類さ れる36)

7.妊娠高血圧症候群と AT1-AAの関連

妊娠 20 週頃の妊婦における AT1-AA 陽性率を調査した報告 28)によると, AT1-AA は子宮血流異常のない妊婦では全く認められなかったのに対して, 将来 PIHを発症した子宮血流異常が認められた群では陽性率が約80%であった。

また, 将来 PIH までは発症しなくても子宮血流異常や子宮内胎児発育遅延を認 めたものには高率で陽性となったことから, AT1-AAPIH発症前から陽性にな っていると示唆されている28)

さらに, 血中AT1-AAは分娩後に急速に減少していくが, 分娩後1年経過して も, AT1-AAが陽性であるPIHを発症した患者が約17%に認められたとの報告も ある。これらの患者ではインスリン抵抗性やsFlt-1の増加, VEGFの低下傾向が

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13

認められている28)。PIH患者とその児は将来, 心血管疾患, 糖尿病などの耐糖能 異常が増加するという報告もあり, AT1-AAPIH患者とその児の将来的な心血 管疾患を含めた成人病の予知として有用であると期待されている47)

また, AT1-AA は本態性悪性高血圧や腎移植後の拒絶反応を起こした患者でも 見出されている。AT1-AAPIHだけではなく, hypoxiaや血管炎等の免疫異常 疾患に共通にみられると考えられる61, 62)

PIH AT1-AA が存在する理由として, 動物モデルの実験結果によると AT1-AA は原因として働くのではなく, 虚血や炎症により二次的に出現すると考 えられている63)

PIHを発症するtransgenic rat ではPE様の腎病変や胎盤のらせん動脈には 動脈狭窄・硬化病変といった胎盤病変を認め, さらに血中sFlt-1AT1-AA濃度 高値を認めたという報告もなされている64-66)

また, AT1-AA と胎盤虚血に関する報告によると外科的に子宮還流血流を減少 させhypoxiaを誘導したreduction in uterine perfusion pressure (RUPP) 妊娠ラット では, 血圧の上昇や蛋白尿等の PE 様症状をきたした。さらに, 血中 sFlt-1 濃度

TNF-α 濃度も 著 しく増 加 してお り, 高濃度の AT1-AA も検 出され その

bioactivityも高値であったとしている67)

一方, 正常妊娠ラットにはAT1-AAは検出されないが, 妊娠ラットにTNF-α 慢性的に投与すると高血圧が誘導され, さらに AT1-AA が検出された。しかし, 非妊娠ラットに TNF-α を投与しても AT1-AA は検出されなかった。このことか

ら, 妊娠やTNF-αAT1-AA発生の重要な因子であるとされている68)

また, 疫学調査の子宮血流異常者にAT1-AA陽性率が高いことより胎盤虚血 状態すなわちhypoxiaからAT1-AAが誘導される可能性もある69, 70)。このような ことから, 胎盤への血流の減少によりhypoxiaに陥り, cytokineAT1-AAの産生 へとつながるとされている。AT1-AAAT1-receptor を過剰刺激し, antiangiogenic proteinであるsFlt-1やさらなるcytokineの増加を引き起こす。

その結果, 血管内皮障害や炎症反応を増悪させ, detrimental cycleによりPIHが発 症するとされている70-73)

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目的

PIH は産科特有の疾患で基本病態は血管内皮障害による臓器障害と血圧上昇 であり, 大分部は分娩後に軽快する。その中でもPE は高血圧, 蛋白尿そして 凝固異常を併発し母児ともに危険に晒される疾患で子癇 (eclampsia) に発展す る可能性があるきわめて危険な病態である。しかしながら, 依然その病因につい ては不明な部分が多い1)

PEでは自己抗体の産生が報告なされており, PEの病態解明を目的とし筆者は 自己抗体に着目した。その中でも, 子宮動脈の血流異常を呈するPIH患者 (とり わけ PE) から発見された AT1-AA AT1-receptor の細胞外第 2 ループに対する IgG抗体であり, PIH発症の関与が指摘されている36)

その機序として AT1-AA ANGⅡの有無にかかわらず, 妊娠絨毛細胞表面に 発現しているAT1-receptor を過剰に刺激し, antiangiogenic proteinであるsFlt-1 pro-inflammatory cytokine (TNF-α, IL-6等) の過剰産生などに寄与するためと 理解されているが, その実体はよくわかっていない70-73)

sEngTGF-βと結合して, 血管新生に関わるantiangiogenic proteinとして知ら れている。TGF-βeNOS を活性化し血管拡張を引き起こす。このためsEng

TGF-βによる NOS 依存性の血管拡張を阻害し, 高血圧を発症すると指摘されて

いる。PE において末梢血でsEngが高値を示すことが報告されているが, その メカニズムはまだ不明である32)

一方, これまでPE患者における自己抗体とsEng濃度高値との関わりを直接 示す報告はない。そこで, 本検討では PE において血清 IgG sEng 産生にどの ような役割を担っているのか, 特に自己抗体である AT1-AA sEng 産生増加の 関連を明らかにするため, JEG-3 cells及びヒト妊娠初期絨毛細胞を用いて検討を 試みた。AT1-receptor 阻害薬 (Losartan) を用いて AT1-receptor を特異的にブロッ クしAT1-AA機能の有無を検討した。Losartan添加の有無によりPE患者血清IgG 分画をさらに添加し, ヒト妊娠絨毛細胞におけるsEngの産生及びsEng mRNA 現の変化を比較検討した。

加えて, sEng TGF-βの作用を中和することが知られている。TGF-βをはじ めとした多種類のcytokine産生とsEng並びにAT1-AAの関係を検討するため,

Losartan添加の有無によりPE患者血清IgG分画をさらに添加し, AT1-AAのヒト

妊娠初期絨毛細胞におけるcytokine産生量の変化を比較検討した。

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方法

1.検体の採取

PE患者と正常妊婦 (normal pregnancy NP) より文書によりinformed consent 得て血清を採取し-90℃に保存した。PE患者は20例, NP群は12例であった。

PE患者とNP群の年齢はそれぞれ32.9±3.1歳と32.0±2.9歳であり, PE患者とNP 群の妊娠週数はそれぞれ32.1±3.1週と32.5±3.3週 (mean±SD) となった。

各群間で年齢 (P=0.10) や妊娠週数 (P=0.60) における統計学的な差は有意では なかった。

分娩歴はNP群では初産9例と経産婦3例であり, PE患者では初産婦13例と 経産婦は7例であった。PE患者の初産婦13例では軽症5例と重症8例であり, 経産婦7例では軽症3例と重症4例であった。

2.末梢血中の sEng濃度の測定

PE患者とNP群の血清中sEng濃度をELISA Kit (Quantikine Immunoassay, R&D,

USA) を用いて測定した。各standardを用意し希釈液を100 μlずつ各wellに入

れ, standardおよび細胞培養上清5倍希釈したものを室温下でincubateした。

各プレートの上清を吸引後4回洗浄し, wellhorseradish peroxidase conjugate anti human Endoglin mouse monoclonal antibodyを加えた。室温下で2

shaker上にてincubateした後, 各プレートの上清を吸引後200 μlの発色基材を

加え, 遮光した状態で室温下にて30分間incubateした。

Bio Rad Microplate Reader Model 550 (Bio-Rad, Texas, USA) を用いて450 nm Optical Density (OD) 値を測定し, 標準曲線より sEng 量を測定した。同実験は duplicateで施行した。

3. IgG分画の分離・濃縮

血清中の polyclonal IgG 分画を選択的に抽出するため, MAb TrapTM Kit (GE Healthcare Bio-Sciences AB, Uppsala, Sweden) を使用しProtein G affinity column

Human IgG 25 mg/mlの結合容量で精製した。

精製されたIgGを遠心式フィルタユニットであるAmicon Ultra-4 Spin Column (Millipore Corporation, Billerico, MA, USA) を用いてfilter membraneを精製水3 ml pre wet (4℃下3310×g15分間遠心) し, IgG溶液3 ml100倍遠心濃縮 (4℃

3310×g 1時間30分間遠心) した。作成されたIgG pelletsを-80℃下に凍結 保存した。以上の操作をPE 患者血清並びにNP 血清にそれぞれ行い, それぞれ IgG分画を回収した。

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4.絨毛癌細胞の培養

JEG-3 cellsDSMZ (Braunschweig, Germany) から購入したものを使用した。

JEG-3 cells10% fetal bovine serum (FBS) (Funakoshi, Tokyo, Japan), streptomycin 100 μg/ml (Meiji, Tokyo, Japan), penicillin G potassium 100 U/ml (Meiji, Tokyo, Japan)を添加したRPMI medium (SIGMA-ALDRICH, St Louis, USA) を加えた培 地で, 37℃,5% CO2の環境下で培養した。

JEG-3 cells 5×104 cells/mlの密度で24穴プレート400 μl/wellもしくは 6穴プレート2ml/well (Becton Dickinson and Company Franklin Lakes, NJ, USA)

播き, 培養後約48~72時間後, 90% confluenceの条件下で実験に使用した。

5.ヒト妊娠初期絨毛細胞の培養

実験に用いたヒト妊娠初期絨毛栄養膜細胞は, 16歳から36歳までの基礎疾患 のない健康な妊娠女性 (妊娠 7 週~11 週) に合法的に施行された人工妊娠中絶

(母体保護法156号第314~15条による) より得た。

患者血清の採取と同様に事前に臨床研究審査委員会の承認を得た。また, 人工妊娠中絶検体の採取については協力機関において倫理審査を十分に行った 上, 被験者に文書にてinformed consentを得てから検体を採取した。

ヒト妊娠初期絨毛細胞は約 60%が栄養膜細胞に分化し, 40%は invasive

villous trophoblastに分化する絨毛外絨毛細胞を含むとされている74)。そのためヒ

ト妊娠絨毛組織から栄養膜細胞の分離を行うため, ヒト妊娠絨毛細胞を細切・

homoginateして0.125% trypsin含有PBS (phosphate-buffered saline) 下でincubate (37℃, 30分) し, PBS3回洗浄した。incubation後の培養液上清を回収し, 15%

FBS溶液を加えてtrypsinを中和して遠心 (4℃, 300×g, 10分) した。

栄養膜細胞はPercoll® (GE Healthcare Life Sciences, Uppsala, Sweden) を用いて 抽出した。Percoll®75%から5%まで3 mlずつを5%ごとに段階的に重ねてい き (非連続性濃度勾配法) , あらかじめ5% FBS添加RPMI mediumで細胞を分離 しやすくさせた絨毛組織を最上部に載せて遠心分離した (4℃,1200×g, 25分)。

遠心後のPercoll 濃度が40~45%のyieldに収束された栄養膜細胞をPercoll溶液 ごと回収し, PBS2回洗浄した。

回収されてきた細胞懸濁液をFluorescents activated cell sorting (FACS) (Becton, Dickinson and Company, New Jersey, USA) を用いて, 栄養膜細胞の表面抗原とし

cytokeratinを検出することで絨毛細胞の純度を確認した。測定結果は栄養膜

細胞の表面抗原であるcytokeratin陽性細胞が91.3%と大多数であり, 本検討に適 切な検体であると確認した (当教室の東らの検討)

回収した絨毛栄養膜細胞を24穴プレート (Becton Dickinson and Company Franklin Lakes, NJ, USA) 15%FBS添加RPMI培地 (streptomycin 100 μg/ml,

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penicillin G potassium 100 U/ml含有) で培養した。

6. XTT法による細胞生存率の測定

XTT法による細胞生存率の測定はCell Proliferation Kit (XTT) (Roche,

Indianapolis, USA) Microplate reader (Bio-Rad Model 550, USA) を使用し, 450 nmOptical Density (OD) 値を測定した。

7. JEG-3 cells及びヒト妊娠初期絨毛細胞に対する PE患者血清IgG分画による 細胞障害性に対する検討

・JEG-3 cellsにおける検討

JEG-3 cellsに対してPE患者血清IgG分画の適正添加濃度を検討するため,

0.06 mg/ml, 0.15 mg/ml, 0.3 mg/ml, 0.6 mg/ml, 1.2 mg/mlとそれぞれ添加する血清 IgG分画濃度を段階的に変化させ24時間培養した。培養後の細胞生存率をXTT 法にて測定し, sEng産生量から適正添加濃度を決定した。

・ヒト妊娠初期絨毛細胞での検討

ヒト妊娠初期絨毛細胞に対するPE患者血清IgG分画の適正添加濃度を検討す るため, 0.06 mg/ml, 0.15 mg/ml, 0.3 mg/ml, 0.6 mg/ml, 1.2 mg/mlとそれぞれ添加す る血清IgG分画濃度を段階的に変化させ24時間培養した。培養後の細胞生存率 XTT法にて測定し, sEng産生量から適正添加濃度を決定した。

8. JEG-3 cells及びヒト妊娠初期絨毛細胞におけるsEng蛋白産生に対するPE 者血清IgG分画の影響

PE患者血清及びNP血清よりIgGを分離し, 0.6 mg/ml の濃度に調整した。

24穴プレートで90% confluence となったJEG-3 cellsならびにヒト妊娠初期絨毛 細胞の培養細胞を用い, PE患者血清及びNP血清IgG分画を0.6 mg/ml の濃度に なるように0.1% BSA添加RPMI培養液に患者由来IgG分画を加え400 μlとし, 24時間培養し上清を採取した。

上清中のsEng濃度はELISA Kit (Quantikine Immunoassay, R&D, US) にて測定 した。なお, 同実験に用いたPE 患者血清とNP血清はそれぞれ5検体ずつとし た。PE患者とNP群の年齢はそれぞれ32.3±5.2歳, 31.5±2.9歳であった。PE 者とNP群の妊娠週数はそれぞれ31.5±2.0週, 31.5±2.1週 (mean±SD) となり各群 間で年齢 (P=0.80) や妊娠週数 (P=0.80) における統計学的な差は有意ではなか った。なお, PE患者5例はすべて重症のearly onset typeのみを選出し, それらは すべて初産婦であった。NP群は4例が初産婦であり1例が経産婦であった。

また, 使用したヒト妊娠初期絨毛細胞は妊娠8週, 9週と10週のものであり,

同実験はduplicateで施行した。

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9. JEG-3 cells及びヒト妊娠初期絨毛細胞におけるsEng mRNA発現量に対する PE患者血清IgG分画の影響

PE血清及びNP血清より上記の通りIgGを分離し, 0.6 mg/mlの濃度に調整し た。24穴プレートで90% confluenceとなったJEG-3 cellsならびにヒト妊娠初期 絨毛細胞を用い, RPMI 培養液にPE患者血清IgG分画またはNP血清IgG分画

を加えtotal 400 μlとしたものを添加し24時間培養した。培養細胞を採取し, total

RNAを抽出した。total RNATRIZOL Reagent (invitrogen, Carlsbad, CA, USA) 抽 出 し た 。 さ ら に High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit (Applied Biosystems, Fostercity, CA, USA) を使用してcDNAを作製した。

real-time PCRTaqmanUniversal PCR Master Mix (Roche:Indianapolis, IN, USA) 試薬とABI PRISM 7700 sequence Detection System (Applied Biosystems, Fostercity, CA, USA) を用いてduplicateで行った。

PCRの条件はholding stage 50℃2分, holding stage 95℃10分, cycling stage 95℃

15秒, 60℃140サイクル行った。

使用したプライマーの塩基配列は以下のごとくである。

sEng;

forward 5´-CAT CCT TGA AGT CCA TGT CCT CCT-3´

reverse 5´-GCC AGG TGC CAT TTT GCTT-3´

Taqman sEng probe:

5´-FAM-TCC CAA CGG GCC CGT CAC AG-TAMRA-3´

(location exon 7 and 8 ,product size 95 bp,designed with Primer Express 2.0 software) reference geneにはGlyceraldehyde-3-phosphate-dehydrogenase (GAPDH) を選択し, Pre-Developed TaqMan®Assay Reagents Human GAPDH (Applied Biosystems, Foster City, CA, USA) を用いた。NP血清IgG分画およびPE患者血清IgG分画を添加 直後並びに24時間後の細胞のGAPDH mRNA発現を求めた。

さらに, sEng mRNA発現量の比較はΔΔCt 法により, NP血清IgG分画の添加 直後値と24時間培養後のIgG分画添加群の値とを比較した fold differenceで表 示した。なお, 同実験に用いたPE患者血清とNP血清はそれぞれ

実験方法8と同じ検体を用いた。また, 使用したヒト妊娠初期絨毛細胞は 妊娠8週, 9週と10週のものであり同実験はduplicateで施行した。

10. PE患者血清IgG分画を添加したJEG-3 cells及びヒト妊娠初期絨毛細胞に おけるsEng蛋白産生及びsEng mRNA発現量に対するAT1-receptor 阻害薬 (Losartan) の影響

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過去に絨毛癌細胞株もしくはヒト妊娠初期絨毛細胞を用いてAT1-receptor 阻害薬であるLosartan (Losartan Potasium, Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA, USA) の添加した実験報告が存在しないため, Losartan添加濃度を1 nM, 10

nM, 100 nM, 1 μM, 10 μMと段階的に添加濃度を変化させ24時間培養し, 細胞生

存率をXTT法にて測定し適正添加濃度を決定した。

Losartan添加の有無に加え, PE患者血清 IgG分画 0.6 mg/mlをさらに添加し,

JEG-3 cells並びにヒト妊娠初期絨毛細胞におけるsEngの産生及び発現の変化を

比較検討した。Losartan 100 nMPE患者血清IgG添加の30分前に添加した。

なお, 同実験に用いたPE患者血清は5検体で実験方法8と同じ検体を用いた。

また, 使用したヒト妊娠初期絨毛細胞は妊娠8週, 9週と10週のものであり 同実験はduplicateで行った。

11. PE患者血清IgG分画を添加したヒト妊娠初期絨毛細胞におけるcytokine

生作用に対するAT1-receptor 阻害薬 (Losartan) の影響

Losartan 100 nM添加の有無に加えPE患者血清IgG分画0.6 mg/mlをさらに添 加し, ヒト妊娠初期絨毛細胞における上清中の cytokine 濃度の変化を比較検討 した。Suspension array system (Bio-Plex®) cytokine (IL-1β, IL-4, IL-5, IL-6, IL-7, IL-8, IL-10/CSIF, IL-12 (p40), IL-12 (p70), IL-17A/CTLA8, IL-17F/ML-1, IL-23, IFN-γ, TNF-α, GM-CSF/CSF-2, MCP-1/CCL2, MIP-1α/CCL3, RANTES/CCL5,

TGF-β) 量を測定した。

なお, 同実験に用いたPE患者血清は5検体で実験方法8と同じ検体を用いた。

また, 使用したヒト妊娠初期絨毛細胞は妊娠9 週と10 週のものであり同実験は duplicateで行った。

12. 統計学的解析

PE患者血清IgG分画添加によるsEng蛋白産生とsEng mRNA発現量の 検討では, 各群間の解析はMann-Whitney U testを用いた。PE患者血清IgG 分画を添加したヒト妊娠初期絨毛細胞におけるLosartan添加前後のsEng, cytokine測定の検討ではWilcoxon signed-ranks testを用いた。

統計解析にStat View®を用いてP<0.05をもって差が有意であると判断した。

参照

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