廃タイヤから得られるゴム粉を利用した密粒度アスファルト混合物の高機能化
Improvement Of Dense Graded Asphalt Mixtures Using Crumb Rubber From Waste Tires
土木工学専攻 10 号 小野 真史 ONO Masafumi
1.はじめに
従来から諸外国においても廃タイヤの不法投棄が社会 問題となっている.我が国では全排出量の 12%に当たる 約 1200 万本にも至っている.リサイクルの現状を図.1 に 示す.近年アメリカでは,我が国と比べ廃タイヤを土木材 料として活用するマテリアルリサイクルが活発であり,特に アスファルトラバー(以下 AR)と言うゴム粉を使用したアス ファルトバインダにリサイクルされており,この AR は優れ た供用性が確認されている.
熱利用 45%
海外輸出 26%
原型・加工 17%
その他 12%
年間排出量:1億300万本 2004年度 ブリヂストン調べ
図.1. 日本のリサイクル現状
AR とは,アスファルトに粉砕した廃タイヤを一定時間熟成 させた改質バインダであり,①粘弾性が高い②廃タイヤ のリサイクル可能③改質剤に比べ材料費が安価,などの 利点はある.
2.研究目的
本研究では表層用加熱アスファルト混合物として最も一 般的に使用されている密粒度舗装に廃タイヤを混入し,
その性状を把握改善,そして AR 再生骨材の再生密粒度 混合物への適応性,再生 AR バインダの劣化特性の検討 を目的としている.
3.試験概要
以下に本研究のフローチャートを示した.図 2 は AR バ インダを用いた密粒度混合物の性状把握,図 3,4 は AR の劣化特性について混合物レベル,バインダレベルで検 討したものである.
配合設計 マーシャル試験 混合物性状把握
ホイールトラッキング試験 S-DFテスター
すべり抵抗性 わだち掘れ抵抗性 密粒度混合物
疲労試験
ひび割れ抵抗性
AR再生骨材を採取
アブソン法でアスファルトを抽出
AR再生骨材と新骨材の配合設計
(AR再生骨材使用量10.30.50%)
抽出した旧アスファルトの 性状試験
マーシャル試験 混合物性状把握 ホイールトラッキング試験
再生用添加剤の 添加量の決定
S-DFテスター すべり抵抗性 わだち掘れ抵抗性
図 2 AR 密粒度混合物 図 3 AR 再生密粒度混合物
ARバインダを作成 RTFOT+PAVで劣化
再生用添加剤添加
RTFOT粘度試験
Original RTFOT+PAV
BBR試験
DSR試験 DSR試験 DSR試験
図 4 再生 AR バインダ劣化特性
4.AR 密粒度混合物
4.1 AR 密粒度混合物の配合設計
既往の研究より,ゴム粉の種類は TB,0.4mm,12.5%が もっともバインダ性状がよい事がわかった.混合物試験で はこの条件を基本とし,表 1 の条件のもとバインダの作成 を行った.またその後,それぞれについて最適アスファル ト量(以下:OAC) を決定する為,マーシャル安定度試験 を行なった.
表 1 バインダ条件
・StAs 60/80
・StAs 60/80 + ゴム粉
・改質Ⅱ型アスファルト アスファルトの種類
TB(トラック・バス用)
ゴム粉の種類
ゴム粉の粒径,添加量 粒径 添加量 0.2mm 10%
0.4mm 12.5%
0.6mm 15%
4.2. 試験項目
①ホイールトラッキング試験
アスファルト混合物のわだち掘れを想定したわだち掘れ 抵抗性を測定する試験である.
②疲労試験
アスファルト混合物の疲労ひび割れを想定した疲労抵 抗性を測定する試験である.
③DF テスターS-TYPE 試験
アスファルト混合物表面のすべり抵抗性を動的摩擦係 数で評価するための試験である.
4.3 試験結果
4.3.1 ホイールトラッキング試験
密粒度混合物の RD を図.5 に示す.ゴム粉粒径が
0.4mm の混合物が最も高いわだち掘れ抵抗性があり,こ
れは 0.4mm の粒径が最も空隙を埋めやすく,最も骨材の
ような役割を果たしているためと思われる.ゴム添加量は 12.5%のものが最もわだち掘れ抵抗性が高かった.
改質Ⅱ型の基準値 RD=0.025(mm/min)以下
比較 10%
12.5%
15% 0.00
0.02 0.04 0.06 0.08 0.10
AR0.2mm AR0.4mm
AR0.6mm StAs
k
AR0.2mm AR0.4mm AR0.6mm StAs 改質Ⅱ型
RD(m m/m in)変 形量
ゴ ム 粉 添
加 量
改 質
Ⅱ 型
ゴム 粉粒 径
改質Ⅱ型の基準値 RD=0.025(mm/min)以下
比較 10%
12.5%
15% 0.00
0.02 0.04 0.06 0.08 0.10
AR0.2mm AR0.4mm
AR0.6mm StAs
k
AR0.2mm AR0.4mm AR0.6mm StAs 改質Ⅱ型
RD(m m/m in)変 形量
ゴ ム 粉 添
加 量
改 質
Ⅱ 型
ゴム 粉粒 径
図 5 変形量 RD の比較
4.3.2 疲労試験(水浸 4 点曲げ試験)
①ゴム粒径の違いによる影響:試験結果を図.6 に示す.
耐ひび割れ抵抗性は,粒径の違いによる影響は無い.
AR 混合物のひび割れ抵抗性は,StAs 60/80 混合物より は優るが改質Ⅱ型混合物より劣った.
②ゴム添加量の違いによる影響:試験結果を図.7 に示す.
AR 混合物のひび割れ抵抗性は,粒径が大きいほど高く なり,ゴム添加量が 15%のものは,改質Ⅱ型混合物よりも 優れていた.
103 104 105 106
100 200 300 400 500 600
700
AR-0.2mm-12.5%
AR-0.4mm-12.5%
AR-0.6mm-12.5%
ストアス 改質Ⅱ型
ひずみ(μ)
破壊回数
103 104 105 106
200 300 400 500 600 700
ひずみ(μ)
破壊回数
AR-0.4mm-10.0%
AR-0.4mm-12.5%
AR-0.4mm-15.0%
ストアス 改質Ⅱ型
図.6 破壊回数とひずみ 図.7 破壊回数とひずみ (ゴム粒径による違い) (ゴム添加量による違い)
4.3.3 DF テスターS-Type 試験
図8 が動摩擦係数μをグラフ化したものである.動摩擦 係数は予測と反して,StAs が一番良く,次いで改質Ⅱ型,
AR という結果になった.一般的には動摩擦係数μが 0.5
以上ですべりにくい路面と判断されるため,AR の舗装面 はすべりにくい舗装である.しかし,期待されていたような すべりに特化した舗装ではないことがわかった.
一般的には動摩擦係数μが 0.5以上の時
すべりにくい舗装と判断される
ゴム 粉粒 径
比較10%
12.5%
15%
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2
AR0.2m m
AR 0.4m
m AR0
.6mm StAs
kaishitu
AR0.2mm AR0.4mm AR0.6mm StAs 改質Ⅱ型
動摩擦係数μ
ゴ ム
粉 添 加 量
改 質
Ⅱ 型 一般的には動摩擦係数μが
0.5以上の時
すべりにくい舗装と判断される 一般的には動摩擦係数μが
0.5以上の時
すべりにくい舗装と判断される
ゴム 粉粒 径
比較10%
12.5%
15%
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2
AR0.2m m
AR 0.4m
m AR0
.6mm StAs
kaishitu
AR0.2mm AR0.4mm AR0.6mm StAs 改質Ⅱ型
動摩擦係数μ
ゴ ム
粉 添 加 量
改 質
Ⅱ 型
図 8 動摩擦係数 μ の比較
5.AR 再生密粒度混合物
5.1 AR 再生密粒度混合物の配合設計
現在,舗装はほぼ 100%再利用されている.そのため に AR 混合物を再生骨材として使用した場合の影響につ いて検討した.AR 再生骨材の添加量を 10, 30,50%と変 化させ,添加量の違いによる変化についての検討と行っ た.新しく加えるバインダは StAs40/60 という通常使用され るバインダを用いた.そしてマーシャル試験によって OAC を算出した.OAC を表 2 に示す.
表 2 再生 AR 密粒度混合物の OAC
再生骨材 10% 30% 50%
OAC 5.9% 6.0% 6.0%
一般に再生骨材量が増加すると,OACは減少すると言 われている.また,ゴム粉の量が増加すれば OACは増加 すると言われている.通常再生骨材の表面には図9 のよう に古アスファルトが若干付着している状態にあり,AR 再 生骨材の場合,そのアスファルト内にゴム粉が残っている 為に,OAC に差が出なかったと思われる.
再生骨材 劣化ゴム粉
再生骨材表面には 劣化バインダ+劣化ゴムが 付着している状態
劣化バインダ
図 9 再生骨材表面の様子
5.2 試験項目
① ホイールトラッキング試験
② DF テスターS-TYPE 試験 試験については 4.2 と同様である.
5.3 試験結果
5.3.1 ホイールトラッキング試験
密粒度混合物の RD を図.10 に示す.
StAs 改 質Ⅱ 型 再 生 骨 材 10% 再 生 骨 材 30% 再 生 骨 材 50%
0.00 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08 0.09 0.10
0.0311 0.0455 0.0605
0.007 0.0772
再 生 骨 材 有 り 再 生 骨 材 無 し
ス トア ス
目 標 値 [0.084(m m/min)以 下 ]
RD(mm/min) 変形率
図 10 変形率 RD の比較(再生)
結果は再生骨材を用いたものでは 50%使用したものがも っともわだち掘れ抵抗を有していることがわかった.これ はゴム粉量が再生骨材使用量の増加に伴って,増加する ために,わだち掘れ抵抗性も高くなったと思われる.新規 の骨材で作成した混合物(StAs 60/80,改質Ⅱ型を使用)と 比較すると,改質Ⅱ型には及ばないが,いい結果を示し ていることがわかる.
5.3.2 DF テスターS-TYPE 試験
動摩擦係数μの結果を図 11 に示す.
StAs 改質Ⅱ型 再生骨材10% 再生骨材30% 再生骨材50%
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4
0.5以上 0.71 0.66
0.79 0.78 1.07
再生骨材有り 再生骨材無し
動摩擦係数μ
図 11 動摩擦係数 μ の比較(再生)
再生 AR 骨材を使用したものは StAs,改質Ⅱ型の混合物 よりも動摩擦係数μは低かった.これは AR 再生骨材中 のゴム粉が影響を及ぼしたためであると思われる.しかし,
0.5 以上の値をもっているために,すべりにくい舗装であ ると言える.
6.再生 AR バインダの劣化特性 6.1 再生 AR バインダについて
AR バインダの長期供用劣化後,再生用添加剤で機能 を回復させたバインダの劣化特性について検討した.し かし,通常の方法では劣化した AR バインダを抽出し,試 験を行うことが難しい.そのため本研究では,アメリカの
SUPERPAVE で定められている,RTFOT(回転薄膜試験
機・・熱劣化)とPAV(加圧劣化試験機・・供用劣化)を用い
て,人工的に長期供用後の劣化をシミュレートし,そのバ インダを再生用添加剤により,機能を回復し,再度劣化を シミュレートするという方法を用いて,AR バインダの劣化 特性について検討した.AR バインダは表3の条件で行っ た.比較対象をして,StAs60/80 と改質Ⅱ型を用意した.
表 3 再生 AR バインダ条件 ゴム粉粒径 ゴム粉添加量 ゴム粉種類
0.2mm 12.5%
10%
12.5%
15%
0.6mm 12.5%
TB 0.4mm
6.2 試験項目
SUPERPAVE 試験法に従って以下の試験を行った.
再生用添加剤にて機能回復した再生 AR バインダを Original バインダとし,
【Original】
① 高温粘度試験・・・粘度の測定
② DSR 試験・・・わだち掘れ抵抗性の測定
【RTFOT 後】
③ DSR 試験・・・わだち掘れ抵抗性の測定
【RTFOT+PAV 後】
④ DSR 試験・・・疲労ひび割れ抵抗性の測定
⑤ BBR 試験・・・低温ひび割れ抵抗性の測定 6.3 試験結果
6.3.1 高温粘度試験結果(Or iginal)
試験結果を図 11,12,13 に示す.
100 120 140 160 180 200
40 50 60 7080 10090 200 300 400 500 600 700800 1000900 2000
粘度(mPa・s)
温度(℃)
StAs 60/80 改質Ⅱ型 AR 0.4mm 12.5%
100 120 140 160 180 200
300 400 500 600 700 800 1000900 2000 3000 4000 5000 6000
粘度(mPa・s)
温度(℃)
AR 0.4mm 10%
AR 0.4mm 12.5%
AR 0.4mm 15%
図 11 StAs,改質Ⅱ型,AR 図 12 添加量の違い
100 120 140 160 180 200
200 300 400 500 600 700 800 900 1000 2000 3000
粘度(mPa・s)
温度(℃)
AR 0.2mm 12.5%
AR 0.4mm 12.5%
AR 0.6mm 12.5%
図 13 粒径の違い
粘度試験において,AR はゴム粉の影響から非常に高い
粘度をもっていることがわかる.ゴム粉添加量を増加させ
ると粘度は上昇する.ゴム粉粒径の違いはほとんどないこ ともわかる.
6.3.2 DSR 試験結果(Or iginal)
試験結果を図 14 に示す.
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
3 .8 4 5 . 2 6 4 5 .3 3 9
4 . 2 2 9 3 .7 8 1 7 .7 1 4
1 .8 4 2
【 6 5 ℃ 】 D S R ( O ri g in a l )
1 . 0 以 上
A R 0 . 6 m m 1 2 .5 % A R 0 .4 m m
1 5 % A R 0 .4 m m 1 2 . 5 % A R 0 . 4 m m
1 0 % A R 0 . 2 m m 1 2 .5 % 改 質 Ⅱ 型
S t A s
(kPa)*|G |/sinδ
図 14 | G
*| / sin δ (kPa)とバインダの違い
Original の規格は | G*| / sin δ≧ 1.0( k Pa)である.この値が 大きいほどわだち掘れ抵抗性が高いと言われている.AR バインダは改質Ⅱ型には劣るが,StAs に比べ,高いわだ ち掘れ抵抗性をもっていることがわかる.
6.3.3 DSR 試験結果(RTFOT 後)
試験結果を図 15 に示す.
0 2 4 6 8 1 0 1 2 1 4 1 6
4 . 6 6 2 5 .4 4 5 5 .5 6 6 4 . 3 4 4 3 .9 5 1 4 .2 8
3 .2 3 9
【 6 5 ℃ 】 D S R ( R T F O T
後
)2 .2 以 上
A R 0 .6 m m 1 2 .5 % A R 0 .4 m m
1 5 % A R 0 .4 m m 1 2 .5 % A R 0 .4 m m
1 0 % A R 0 .2 m m 1 2 . 5 % 改 質 Ⅱ 型 S tA s
(kPa)*δ|G |/sin
図 15 | G
*| / sin δ (kPa)とバインダの違い
RTFOT 後の規格は | G*| / sin δ≧ 2.2( k Pa)である.この値 が大きいほどわだち掘れ抵抗性が高いと言われている.
AR バインダは改質Ⅱ型には劣るが,StAs に比べ,高い わだち掘れ抵抗性をもっていることがわかる.
6.3.4 DSR 試験(RTFOT+PAV 後)
試験結果を図 16 に示す.
0 5 1 0 1 5 2 0 2 5
1 7 .5
と な る 温 度
<5 0 0 0 (k P a)
*
δ
| G |
・
s in温度(℃)
9 .2 9 .8 9 .9 1 4.8
10 .4 2 0 .3
D S R ( R T F O T + P A V
後
)A R 0 .6 m m 1 2 .5%
A R 0 .4 m m
1 5%
A R 0 .4 m m 12 .5 % A R 0 .4 m m
1 0 % A R 0 .2 m m 12 .5 % 改 質 Ⅱ 型 S tA s
図 16 | G
*| ・ sin δ (kPa)とバインダの違い
RTFOT+PAV 後の規格は | G*| ・ sin δ≦ 5000( k Pa)である.
この値になる温度が低いほど,疲労ひび割れ掘れ抵抗性
が高いと言われている.StAs,改質Ⅱ型に比べ,高い疲労 ひび割れ抵抗性をもっていることがわかる.
6.3.5 BBR 試験(RTFOT+PAV 後)
試験結果を図 17,18 に示す.
0 50 100 150 200 250 300
300(MPa)以下
97 128 174 155 153 286
253
AR 0.6mm 12.5%
AR 0.4mm 15%
AR 0.4mm 12.5%
AR 0.4mm 10%
AR 0.2mm 12.5%
改質Ⅱ型 StAs
スティフネス(MPa)
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
0.377 0.348 0.341 0.332 0.343
0.257 0.31
0.3以上
AR 0.6mm 12.5%
AR 0.4mm
15%
AR 0.4mm 12.5%
AR 0.4mm
10%
AR 0.2mm 12.5%
改質Ⅱ型 StAs
m値