博士(医学)林下尚之 学位論文題名
肝graft − versus ―host disease における接着分子の発現 学位論文内容の要旨
目的
同 種骨髄移植は造 血器悪性腫瘍 等に対する治療法として進歩、発展を遂げ てきた,ー方、その合併症としてgraft‑vers、us‐hostdisease(GVHD)があり、
その発症機序について詳細な検討が望まれている.
GVHDの標 的臓器として 主に皮膚、消化管、肝臓などがある.今回、骨髄キメ ラ マ ウス を 作成 し 、こ れに 脾細胞を 混入させること により強カなGVHDを 誘 導 し 、肝 に おけ るGVHDの 病態 と接着分子の 発現との関係を 検討し、さら に recombinantmouseTNFd(rmTNF)を骨髄キメ ラマウスに投 与して肝における GVHDに対するサイトカインの影響を検討した.
方法 1]材料
・6週齢のspeciflcpathogenfbe(SPF)のBALB/・c、C3H/Heの雄性マウスを用し、
た.
2]実験モデルの作成
880cGyの 放 射 線 照 射 を し たC3H/HeにBALB/cの 骨 髄 細 胞1X10 個 を2mM L−glutamine、100units/mlpenici11in、100〆g/mlstreptomycin含有、FCSを含 ま ぬ培養液に浮 遊し、その静 注により骨髄キメラマウスを作成した.その際 に 、骨髄細胞に 対し脾細胞を1:1または1:1/2の割合 で添加した群 (SP侶M 群 ) と、 移 植後1日 目か ら12日目まで100U/mouseのnnTNFaを腹腔内 投与す る 群 (rmTNFa群 ) 、 移 植 後1日 目 か ら12日 目 ま でPBSを 腹 腔 内 投 与 す る
(PBS群)の3群に分け、PBS群を全体の対照とした,
3]組織学的検討
骨 髄 移 植 後14日 目 に 各 群 か ら 肝 臓 を 摘 出 し : 以 下 の 検 討 を 行 っ た ,
1)光顕的観察
通常の病理組織標本|ま10%ホルマリン燐酸緩衝液にて固定の後、/ヾラフイ ン包埋後薄切しへマトキシ1上ン.エオジン染色をし、光学顕微鏡で観察した,
2)免疫組織化学的検討
4U/o PLP固定液で固 定後、凍結薄 切切片を作製 し間接酵素抗体法を用いた・
a)1Jンバ球の性状
一次 抗体は 、ラット由来 の抗Thyl.2抗体、抗L3T4抗体 と抗Lyt2抗体を用 い、二 次抗体としてはぺルオキシダーゼ標識された山羊の抗ラットIgG抗体を 用いた.3,3|‑Di‑aminobenzideTetrahydrochloride (DAB)にて発色し、1%メチ ルグリ ーンで核染色をした.光学顕微鏡下に、1視野内のりンパ球数、陽性細 胞数ならびにその陽性率を比較した.
b)接着分子の発現
ハムス ター由来の抗マウスintercellular adhesionmolecule‑l(ICAM‑l)抗 体、ラット由来の抗マウスleukocyte function associated antigen‑l(LFA‑l)抗 体、ラット由来の抗マウスcluster of differentiation‑44(CD44)を用い、二次抗 体 とし て はそ れ ぞれ ぺ ルオ キシ ダ ーゼ 標 識された山羊 由来の抗ハム スター IgG抗 体 、 抗 ラ ッ トIgG抗 体 を 用 い 、DAB発 色 と 核 染 色 を 同 様 に 行 っ た , 3)電子顕微鏡による観察.
肝を細 切の後、2%グル タールアルデ ヒド固定、1%四酸化オスミウム後固 定 、さ らに1%酢酸ウラン 燐酸液で電子 染色を行い、ア ルコール系列 による 脱水の 後、Epon812に包埋した,薄切後、クエン酸鉛で染色を行い、透過型電 子顕微鏡にて観察した,
4)血液生化学検査
肝摘出時に採血を行い、glutamic‑oxaloacetic transaminase(GOT)ヽglutamic‑
pyruvic transaminase(GPT)と1actatedehydrogenase(LDH)について測定した.
結果 1.光顕所見
SP侶M群では小葉 間胆管周囲に りンノヾ球浸 潤を認め、小葉 内に散在性、
一部巣状のりンノヾ球浸潤がみられ、肝細胞の壊死、脱落を認めた,nnTNF 群 では小 葉間胆管周囲 にりンパ球浸 潤を認めず、 小葉内にはマクロファージが 散在性 、一部巣状に みられたが、 肝細胞の壊死 、脱落は著明ではなかった.
PBS群 で は 小 葉 間 胆 管 周 囲 、 小 葉 内 に り ン ノ ヾ 球 浸 潤 を 認 め な か っ た .
2.免疫組織化学的所見
a1肝組織内のりンノヾ球の性状について
SP/BM群において、PBS群と比較し、リンノヾ球数の増加とThyl.2,L3T4,お よびLyt2の陽 性 細胞 数の 増 加を み たが 、 陽性 率に差 はなかった.rmTNFa群 で は り ン ノヾ 球 数、 陽 性細 胞 数、 陽性 率 にPBS群 との 間 に差 はな か った . b)肝における接着分子の発現
ICAM‑1は 、PBS群 で は 類 洞 内 皮 細 胞 に 弱 く その 発 現を み、SP/BM群 では 類洞内皮細胞に強くその発現をみ、小葉内の肝細胞壊死、脱落を伴うルンノヾ 球浸 潤部 に もそ の発現が認め られ、rmTNF 群では類 洞内皮細胞に その発現 が強 く認 め られ た .小 葉 間胆 管 上皮 にはICAM‑1の発現 は全ての群にお いて 認められなかった.
LFA‑1とCD44と は ほ ぼ 同 様 の 発 現 を み た . すな わ ち、PBS群 で はマ ク 口 ファージを中心にりンノヾ球も含めてその発現がみられ、SP/BM群ではりンノヾ 球と マク 口 ファ ージを主体に 、それらを発現 する細胞の増 加を認め、rmTNF a群ではマク口フ ァージを主体にそれらを発現する細胞の増加が認められた.
3.電顕所見
SP/BM群 では 小葉間胆管の 胆管上皮下へ のりンノヾ球 浸潤、胆管上皮 の圧 排、胞体の空胞化、絨毛の消失が認められた.小葉内ではりンパ球は類洞内で 類洞内皮細胞や肝細胞と接していた,さらに肝細胞表面の絨毛の消失や胞体の sheddingを 認 め た.rmTNFa群 で は 小 葉 内 で は 類 洞 内 に 増 大 し た マ ク 口 ファージが認 められ、類洞内 皮細胞と接し 、活性化したマク口ファージが肝 細胞と接している所見も認められた.
4.血液生化学検査
SP[BM群 で はGOT、GPT、LDHは 他 の2群 に 比 較 し て 上 昇 し て い た.rmTNF a群はPBS群と比較して、LDHの上昇が認められた.
考察
今 回の 研 究で は、 脾 細胞 を 混入 さ せる こと に より強カにGVHDを誘導 した 骨髄キメラマ ウスにおいて肝 ではりンパ球 浸潤、肝細胞の壊死脱落、胆管上 皮細胞の変性 などがみられた .接着分子は 浸潤リンパ球、マクロフアージに LFA‑1、CD44の発 現を認め、類 洞内皮細胞にICAM‑1の発 現の増強を認 めた・
この 結果 は 肝GVHDに おい て 接着 分 子の 発 現が その病 態に深く関わ っている ことを示唆し た.一方、TNFaの投与 を受けた骨髄 キメラマウスにおいて肝で はマクロファ ージの増加をみ たが、明らか な肝細胞の壊死脱落、胆管上皮の
変性は認められなかった,接着分子はマクロファー、ジを中心にLFA‑1、CD44 の発現をみ、類洞内皮細胞にICAM‑1の発現の増強を認めた,この他にさらな る 増 悪 因 子 が 活 性 化 さ れ る とGVHDが 顕 性 化 す る と 考 え ら れ る . したがって、今回の結果から、GVHDにおける接着分子の果たす役割の重 要性が示唆され、その発現抑制または機能抑制はGVHDの発症予防、治療に 有用であることが示唆された,
結語
重篤な肝GVHDにおいては接着分子の発現が病態に深く関わることが示唆 された.一方、TNF口は接着分子の発現を通じて肝GVHDに関与することが示 唆 さ れ た が 、 そ れ の み で は 強 い 肝GVHDを も た ら さ な か っ た .
学位論文審査の要旨
学位論文題名
肝graft ーversus − host disease における接着分子の発現
同 種 貫 髏 移 襖 の 合 併 症 と し てGVHDが あ り 、そ の 発症 機序 に 2いて詳 細な 検討 が望 まれている.今回、骨髄キメラマウスを作 感 し 、 こ れ に 脾 細 胞 を 混 入 さ せ る こ と に よ り強 カ なGVHDを 誘 導 し 、 肝GVHDの 病 態 と 接 着 分 子 の 発 現 と の 関係 を 検討 し、 さ を 睦recombinant mouse TNFd(rmTNFd) を骨 髄キ メラマウスに 投与して肝GVHDに対する影響を検討した.
1]材料 方法
6週 齢 のspeciflcpathogenfreeのBALB/c、C3H/Heの 雄性 マ ウスを用いた.
2]実験モデルの作成
88g豊 町9放 射 線 照 射を し たC3H/HeにBALB/cの 骨 髄 細 胞l X107個を静注することにより骨髄キメラマウスを作成した.その 際 に 、 貫 髄 細 胞 に 対し 脾細 胞を1:1また は1:1/2の割 合で 添 加 し た 群 (SP/BM群) と、 移植 後1日 目か ら12′日 目ぞ で100U のmTNF を 腹腔 内投 与す る群 (nnTNF 群) 、移 植後1日目から 12日 目 ま でPBSを 腹 腔 内 投 与 す る 群 (PBS群 ) に 分 け 、PBS群 を全体の対照とした.
3]組織学的検討
骨髄 移植 後14日目 に各 群か ら肝臓 を摘 出し 、以 下の検討を行 った.1)光顕的観察
ホルマリン固定、パラフイン包埋後、薄切しへマトキシリン・
エオジン染色にて観察した.
2)免疫組織化学的検討
PLP固 定後 、凍 結薄 切切片を作製し間接酵素抗体法を用いた.
a)リンパ球の性状
, 了 次 抗 停 は 、 ラッ ト抗Thy1.2抗 体、 抗L3T4抗 体と 抗Lyt2 抗 体 を 二 次 抗 体 はぺ ルオ キシ ダー ゼ標 識山羊 抗多 ット 瓸G抗 体を用いた.光学顕微鏡下に、1視野内のりンパ球の陽´瞰!を比 較、検討した.
b)接着分子の発現
ハ ム ス タ ー 抗 マ ウ スinterCellularadheSionmoleCule‐1 (ICAM‐1)抗体、′ラット抗マウスleukOCy也funCtionasSOCiated antigen‐1(LFA‐1) 抗 体 、 ラ ッ ト 抗 マ ウ スclusterof differentiation・44(CD44)抗体を用い、二次抗体としてはぺル オ キ シ ダ ー ゼ 標 識 山 羊 抗 ハ ム ス タ ーIgG抗 体 、 抗ラ ットIgG抗
保則 紀 和知 崎江 川 野 宮 小 皆 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副
体を用いた.
3)電子顕微鏡による観察
グルタールアルデヒド、四酸化オスミウム固定、アルコール系 列による脱水の後、樹脂包埋し、薄切後、透過型電子顕微鏡で観 察した, 結果
1.光顕所見
SP/BM群 では小 葉間 胆管 周囲 にり ンパ 球浸 潤を 認め 、小葉内 に散在性、一部巣状のりンバ球浸潤がみられ、肝細胞の壊死、脱 落を認めた.rmTNF 群では小葉間胆管周囲にりンバ球浸潤を認め ず、小葉内に増大したマク口ファージが散在性にみられたが、明 かな肝細胞の壊死、脱落はみられなかった.
2.免疫組織化学的所見
a)肝組織内のりンパ球の性状
そ れ ぞ れ の3群 に お い てThyl.2、L3T4、Lyt2の陽 性率 には 有 意の差を認めなかった,
b)接着分子の発現
ICAM‑1は 、PBS群 で は 類 洞 内 皮 細 胞 に 弱 く そ の 発 現を み 、 SP/BM群 では 類洞 内皮 細胞 に強 くそ の発 現をみ 、rmTNFば群では
.類洞内皮細胞にその発現が強く認められた.小葉間胆管上皮に は ICAM‑1の 発 現 を 全 て の 群 に お い て 認 め な か っ た , PBS群 では マク ロフ ァー ジを 中心 にり ンパ球 も含 めてLFA‑1お よ ぴCD44の 発 現 が み ら れ 、SP/BM群 で は り ン パ 球 と マク ロ フ ァ ー ジ を 主 体 に 、 そ れ ら を 発 現す る 細 胞 の 増 加 を 認め 、 rmTNF 群 では マク ロフ ァージを主体にそれらを発現する細胞 の、増加が認められた,
3.電顕所見、
SP/BM群 で は り ン パ 球 は 類 洞 内 で 類 洞 内 皮 細 胞 や 肝i し 、 肝 細 胞 の 変 性 所 見 を認 めた .rmTNF 群で は類 洞内 鵠焚 も たマクロファージをみ、類洞内皮細胞や肝細胞と接している所見 が認められた.
考察および結語
1. SP/BM群 にお いて 肝細 胞の壊 死脱 落を 認め 、類洞内皮細胞に ICAM‑1の 発 現 を み 、 浸 潤 リ ン パ 球 を 中 心 にLFA‑1お よ ぴCD44 の発現をみた.
2. rmTNFa群 にお いて明らかな肝細胞の壊死脱落は認められなか っ た . 類 洞 内皮 細胞 にICAM‑1の発 現の 増強 を認め 、増 加し たマ ク ロ フ ア ー ジ を 中 心 にLFA‑1、CD44の 発 現 が み ら れ た . こ れ ら の 検 討 の 結 果 、 肝GVHDの 病 態と 接 着 分 子 の 発 現 と が 密接 な関 係に ある こと が示 唆さ れた .一 方、TNF の投与により 接着分子の発現の増強ならびに発現細胞の増加はみられたものの、
GVHDが 顕 在 化 し な か っ た こ とは 、GVHD の 顕在 化に はTNFふだ けで はな く、 さら に他の因子の存在することが必要であることが 示唆された.
以上 より 、本 研究 は博士(医学)の学位論文として妥当なものと 判断される.