• 検索結果がありません。

博士(工学)今 尚之 学位論文題名

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "博士(工学)今 尚之 学位論文題名"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

     博士(工学)今   尚之 学位論文題名

社会基盤システム発展における 土木史学 的法則性に関する研究

学位論文内容の要旨

  古 来 , 「 故 き を 温 ね て 新 し き を 知 ら ば , 以 っ て 師 と 為 す べ し 」 と ぃ う .   近年の土木界は闇冥にして多くヮ土木技術者は,その為すぺきことを見失い,土木技術 の行使に自信を喪失している.ここに連綿たる我が国の土木史を繙き,先人の業績を精査 して,そこに内在する歴史的進化法則とでも称すべき,一つの傾向性を探知しうるならば,

闇冥の中に一筋の光明を感得し,今日の土木技術者の為すべきことを見出.し,土木技術の 行使に確信を獲得することができる.

  しかしながら,我が土木学会における日本土木史学の成立を,1973(昭和48)年の日本 土木史研究委員会(現在の土木史研究委員会)の創立を以ってするならば,その経歴はい まだ二十年を出でず,建築史学と比べても,その揺藍期を脱したともいえない.それゆえ に学会においても土木史研究の意義に対する統一的な見解は見当たらず,研究対象の選定 も不確かで,その研究方法も確立しているとは言い難い.そこで,本研究は,学問体系と して発達途上にある土木史学の研究方法を整理し,次いで我が国土木史の発達方向を探求 した.さらにこれらにより得られた知見を,明治以降我が国近代土木技術の中心であった 社会基盤システムとしての鉄道建設,及び鉄道システム整備史に照射して,そこに土木史 学的法則とでも称すべき発展の傾向性を見出した.そしてその傾向性に基づぃて,我が国 の鉄道システム発展史における新しい時代区分法を案出した.すなわち本研究は,土木史 研究において,一つの法則性,あるいは傾向性を見出すという,新たな研究方法を提唱し たものである.

  この視点から古今東西の土木史を観ずるならば,そこに我々土木技術者は,今日,いか に 在 る べ き か , ま た 未 来 に 向 か っ て 何 を 為 す べ き か を 知 るこ と が でき よ う .   ところで,本論文は,全体で6章から構成されている.第1章は序論であって,土木技 術とその理論的体系である土木工学の対象が極めて社会性に富み,土木計画立案に際し社 会科学的あるいは人文科学的なアプローチも必要であることを述べ,本研究に関連する既 往研究のレビュー及び本研究の目的とその特徴について述べ,土木史研究における本研究

の位置付けをしている.

  第2章では,土木史研究における方法論を提唱した,本研究では,まず,人文科学分野 における歴史学の研究方法を整理した.そして,(1)歴史学が対象とする歴史には,過 去の事実(客観的側面)と歴史叙述(主観的側面)のニっが含意されているため,学問の 性格が自然科学とは多少異なっていること.(2)歴史学は,科学的な手法(史料批判)

によって,史観に貫かれた歴史叙述を行い,さらには,原因と結果の因果関係を追求し,

歴史発展の傾向性すなわち歴史学的法則を導き,歴史理論を構築することがその目的であ ることを論述し,さらに,(3)このような歴史学の特質を踏まえた上で,土木工学の一 分野である土木史学の意義,対象,方法について考察を行い,(4)複雑化し巨大化した 社会基盤システム技術としての現代土木技術の位置付けを行った.そして,さらに将来の 土木技術,土木事業の発展の予測を可能とすることを目的として,土木技術の発展史に見 られる秩序や法則性を実証的かつ批判的な研究方法によって見出すべきことに論及した.

  さて,土木史学における法則性とは,蓋然性が高く,゛さらに進んだ歴史研究及ぴ歴史へ の新しい理解を助けるための有効な仮説とぃう性格を強く持っものである.そして,土木

‑ 439

(2)

史学におけるモデルとは,いわば単純化モデルに類する理論であって,理論またはその前 提とな る仮説がモデルであることを論説し,新しい土木史研究の方法論を提唱した.

  第3章は,日本における土木史研究の大略をまとめ,日本の土木史研究が現在までに指 向してきたべクトルを明らかにし,′これからの土木史研究が取り組むぺき課題を述ぺるも のである.我が国における土木史研究の歴史は第I期:1910年代後半(大正時代)から19 45(昭和20)年 .第II期:1945年から1970年頃, 第m期 :1970年頃から現在の三期に 時代区分できる.第I期は,我が国土木史研究の萌芽期で,研究の対象とされたのは明治以 前の土木事業と人物であった.第H期は,第二次世界大戦後まもなくの国土復興のための 研究,あるいは,企業や公共機関による土木事業の記録,研究,及びそれらを集大成した 土木史書の刊行が特徴である.第III期でtま,土木学会が土木史研究の中心となり,土木史 史料の収集,土木文化財の調査・研究と共に,土木史学の成立について議論が行われた.

この時代区分より,従来の土木史研究が土木事業の記録を主目的とし,史観に基づく研究 の取り組みがほとんどなされていないことが判明した.これにより,結論として,土木史 研究が学問として自立するためには,一つの科学的史観に基づく研究が不可欠で,その科 学的史観に基づぃた研究の数多くなされることが,個別的,個性記述的土木史を土木史体 系 と な し , 初 め て 土 木 工 学 に お け る 重 要 な 学 問 領 域 と な り う る の で あ る .   第4章では,社会基盤施設が相互に関連しシステムを形成していることに着目し、その 発展を考察する上に必要な基本概念を説明し,さらに,鉄道が社会基盤システムを構成す るサプシステムで,施設・設備,車両等のハードウェアと,列車の運用,建設・運転にか かわるソフトウェアの相互関連によって機能するトータルシステムであることを論述した,

さらに,鉄道システムの発展傾向を考察するために,表定速度を発展指標として採用し,

北海道5区間,本州2区間の計7区間における表定速度の変化を時系列的に調査した.そ の結果,(1)表定速度は7区間すぺてにおいて成長曲線モデルが想起される曲線を示し ながら変化し,すべての区間において複数回出現していることを明らかにし,(2)鉄道 システムの発展にはライフサイクルが存在し,段階的に発展していく傾向的な法則性があ ることを実証した.

  第5章においては,社会基盤システムを構成するサブシズテムである鉄道システムが.

技術の累積と継承によって段階的かつ重層的に発展しているとぃう,鉄道システム発展の 重層段階発展説モデルを提唱し,それより鉄道システム発展に着目した新しい時代区分を 行った,その結果,本研究が対象とした7区間のうち,主要幹線4区間では4期に,地方 幹線3区間では2期に時代区分ができ,鉄道システムの発展様相に差違があることがわかっ た.さらに,施設・設備,車両等の変遷を本研究が提唱する時代区分に基づき,マトリク ス形式で整理し,運用,規程,法制度等の変遷を含めて考察した結果,第二次世界大戦前 においてtま,施設・設備の改良が,第二次世界大戦後においては,施設・設備の改良と同 時に,気動車による動力近代化が表定速度の向上に大きな影響を与えていることを確認で きた.

  第6章では,本研究において得られた成果を総括した.その大要をまとめるならば,本 研究の成果は,土木史学の研究方法論を論考し,それより歴史学的モデルを仮設し.それ に依拠して技術の総合的発展を考察し,社会基盤システムとしての鉄道建設,及び鉄道シ ステム整備史における時代区分を試みたことである.

440

(3)

学位論文審査の要旨 主査   教授   五十嵐日出夫 副 査    教 授    佐 藤 馨 一 副 査    教 授    越 野    武

学 位 論 文 題 名

社会基盤システム発展における 土木史 学的法則性に関する研究

  歴 史 研 究 の 利 益 の ー っ は , ・ 先 人 の 行 動 規 範 や 業 績 等 を 調 査 し て , そ の 得 失 を 知 り , そ こ に 内 在 す る 因 果 連 鎖 を 推 量 し て , 現 在 の 我 々 が 立 脚 す る 位 置 と , 将 来 の と る べ き 行 為 の 方 向 を 見 定 め る 手 掛 を 得 る こ と に あ る .   本 論 文 は , 土 木 工 学 の 体 系 に お い て , 今 日 確 立 途 上 に あ る 土 木 史 学 の 研 究 方 法 を 整 理 し , そ の 発 展 方 向 を 探 究 し , さ ら に こ れ ら に よ っ て 得 ら れ た 知 見 等 か ら , 明 治 以 降 よ り ご く 最 近 ま で , 我 が 国 近 代 土 木 技 術 の 中 心 で あ っ た 社 会 基 盤 シ ス テ ム と し て の 鉄 道 建 設 , 及 び 鉄 道 シ ス テ ム 整 備 史 を 考 察 し て , そ こ に 土 木 史 学 的 法 則 と で も 称 す べ き シ ス テ ム 発 展 の 傾 向 性 を 見 出 し た . そ し て そ の 傾 向 性 に 基 づ い て , 我 が 国 の 鉄 道 シ ス テ ム 発 展 史 に お け る 新 し い 時 代 区 分 法 を 案 出 し た も の で あ り , 全 6章 か ら 構 成 さ れ て い る ,   第1章 は 序 論 で あ っ て , 土 木 技 術 と そ れ を 支 え る 科 学 的 理 論 体 系 で あ る 土 木 工 学 の 対 象 が 極 め て 社 会 性 に 富 む こ と か ら , 土 木 計 画 立 案 に 際 し , 自 然 科 学 的 ア プ ロ ー チ は も と よ り , 社 会 科 学 的 あ る い は 人 文 科 学 的 ア プ ロ ー チ も 必 要 で あ る こ と を 述 べ , 本 研 究 に 関 連 す る 既 存 研 究 を 精 力 的 に 渉 猟 し 評 論 し て , 更 に 本 研 究 の 目 的 と そ の 特 徴 に つ い て 述 べ , 土 木 史 研 究 に お け る 本 研 究 の 位 置 付 け を し て い る ,

  第2章 で は , 歴 史 学 の 学 問 と し て の 特 質 を 踏 え た 上 で , 土 木 工 学 の 一 分 野 で あ る 土 木 史 学 の 意 義 , 対 象 , 方 法 に つ い て の 論 考 を 行 い , 複 雑 化 し 巨 大 化 し た 社 会 基 鶴 シ ス テ ム 技 術 と し て の 現 代 土 木 技 術 を 定 位 し た , そ し て , 将 来 の 土 木 技 術 及 び 土 木 事 業 の 発 展 方 向 を 探 る た め に , 土 木 史 学 的 発 展 法 則 と で も 言 う べ き シ ス テ ム 発 展 の 傾 向 性 , す な わ ち 社 会 基 盤 シ ス テ ム の ハ ー ド ウ . エ ア と ソ フ ト ウ ェ ア 及 び ユ ー ズ ウ ェ ア と の 関 連 の 中 に 推 定 さ れ る 因 果 連 鎖 を 認 識 し て , こ れ を 土 木 史 学 に お け る 歴 史 学 的 モ デ ル と 称 し た ,   第3章 で は , 明 治 以 降 に お け る 我 が 国 土 木 史 研 究 の 大 略 を ま と め , こ れ ま で に 指 向 し て き た 研 究 方 向 を 明 ら か に し , こ れ か ら の 土 木 史 研 究 が 取 り 組 む べ き 課 題 に つ い て 論 述 し て い る , こ れ に よ る と 我 が 国 の 土 木 史 研 究 は , 第I期

(4)

  (1945 年: 昭和 20 年 以前 ), 第II 期(1945 〜1970 年頃:昭和45 年頃),第III 期 (1970 年 頃 〜 現 在 )に 分け 得る とい う. しかし これ らを 概観 する とい ずれ も 個性記 述的 であ って 個物 や個 人の id 述 に偏 し, 法則 定立 的あるいは体系的 な 記述は 希で ある .そ こで 著者 は, 土木 史研 究が 自然 科学 的性向を持つ土木 工 学の体 系の 巾で 自立 し; 一つ の重 要な 領域 とし て認 めら れるためには,個 性 記述的 土木 史に 加え て法 則定 立的 土木 史の 展開 が必 須で あることを主張し た.

   第4 章 では ,鉄 道シ ステ ムを 社会基雛システムの….つのサブシステムとし て 理解し ,さ らに それ を施 設・ 設備 ,車 両等 のハ ード ウェ アと列車の運用,

建 設・運転等に関するソフトウェア,及び何時,どこで,どのような人々が,

い かなる 意図 でど のよ うに 利用 して きた かと いう よう な社 会的ユーズウェア と が相互 に関 連し なが ら全 体と して 機能 する 卜ー タル シス テムとして把握し て いる,このような把握の方法は鉄道システム研究では最初のものである.・

そ して, この 鉄道 シス テム の発 展過 程を 考察 する ため に, その指標として表 定 速 度 を 採 用 し, 北 海 道 5 区 間 , 本 州 2 区 間 の 計 7 区 間 に お け る 表 定 速 度 の 変 化 を 時 系 列 的 に 調 査 し た . その 結 果 , ( 1 ) 表定 速度 は 7 区 間す べて にお い て成長 曲線 モデ ルの 複数 回連 続を 想起 させ る曲 線を 示し ながら変化するこ と を認め ,こ のこ とは ,歴 史事 象の 変遷 に内 在す ると 思わ れる,いわゆる,

歴 史的慣 性法 則に 起因 する とし て, 鉄道 シス テム の発 達に おける重層段階発 展モデルを提唱したのである.

   第 5 章 で は , 前 章 にお いて 提唱 した 亟層 段階発 展モ デル に依 拠し て, 鉄道 システムの発述に関する新しい‖む代I 乂分を行った.その糸l キ果,ホ刷「究が対象 とした7 区mJ のうち,主要幹線4  IX |fiJ では4 期に,地方幹線3 【嚢Il ‖では2J 閉 に 時代区 分が でき ,鉄 道シ ステ ムの 発展 様相 に差 違が ある ことを発見した.

こ の著者 によ る新 しい 時代 区分 は, 既存 研究 の鉄 道技 術発 達史における時代 区 分,日 本園 有鉄 道百 年史 にお ける 区分 ,原 田勝 正に よる 区分,および瀧山 養 等によ る時 代区 分と ほぼ 一致 することから,新捉n 日モデルの正当性が間接 的ながらriit 明された.

   そ し て , 最 後 の第 6 章 は, 本研 究に よっ て得ら れた 成果 の総 括で ある .そ の大要をまとめる・ならば,本研究の成果は,土木史学の研究方法論を論考し,

社 会基盤 シス テム の代 表例 とし て我 が国 の鉄 道シ ステ ムを 取り上げ,その発 展 過程を 表定 速度 を指 標と して 分析 し, それ より 貢厨 段階 発展モデルを仮設 し,これに依拠して鉄道システム整伽史におけるll:i: イ℃|X 分を試み,成功した ことである.

   これを要するに,著者は,土木史学上,幾っかの為 ネ$な新知見を得たもの であり,」1 .:米ニI .ニ学の進歩に対して貢献するところ人なるものがある,

   よって 著者 は, 北海 道大 学博 士( ―に学)の学位を授与される資格あるもの

と認める.

参照

関連したドキュメント

   この論文では、生体内で多様な存在形態をしめ iOPN

   さ らを る熱 伝 導率 の向 上を 目 指す ため に, VGCF よ ルサ イズ が小 さい CNT を添 加し,その効果 につ いて 検討 し てい る.

[r]

[r]

[r]

     著者は,前項の理論的基礎に基づぃて,内部メカニズムが未知または計算    コスト の高いシ ステムを ,単純 GA と

   本論文は,まず第2

   第6 章では、 次世代型製 鉄プロセスの主要課題である、スクラップリサイクル につ いて述ぺている。熱効率、プロセス効率の良いシャフト炉について数学モデ