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博士(医学)林 宏恵 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)林   宏恵 学位論文題名

JC ウイルス初期転写領域の腫瘍原性の解析 及びヒト髄芽腫との関連に関する検討

学位論文内容の要旨

[目的と背景]

JC virusくJCV)は ヒ ト 脳の脱 髄性疾 患であ る進行 性多巣 性白質 脳症progressive multifocal leukoencephalopathy (PML)の 原 因virusで ある .JCVは 同属 のpolyomavirusで あ るsimian virus 40 (SV40),BK virus (BKV)と同様に 実験的 に新生 仔hamster脳に腫瘍原性がある事が示 さ れ てお り , 脳 腫瘍 と の 関連性 が示唆 されてい るが, 未だそ の詳細 な機構 にっい ては解 明さ れ て い な い .Polyomavirusのtransform能 の 解 析 では , 現 在 まで にSV40で の 研 究が 詳 細 に 行 わ れ て き て い る . JCVはSV40とDNA全 体 で69% のhomologyを 有 し , かつ 腫 瘍 化 に関 連 す るLargeT(LT)遺 伝 子 で は72% のhomologyを 持 つ . 現 在 ま で の 報 告 で は ,JCVのLT抗 原 ( 蛋白 ) のtransform誘 導 能 はSV40のLT抗 原 のtransform誘 導 能よ り 著 しく低 いとレ ゝう 結 果 が発 表 さ れ てい る . しかし 通常LTとsmallt (st)とは 同じframeから翻訳 される ため,LT 単 独 の機 能 は 不 明で あ っ た .そ こ で 著 者ら は ,JCVのLTの み を発 現 す るplasmidを構 築し,

NIH3T3細 胞を 用 い てstable transformantを 作製 し ,腫瘍 原性の有 無を解 析し, その強 度を SV40,BKVと 比較 検 討 し た. ま た 最 近、JCVが ヒ トmedulloblastomaの発 生 に 関 連し て い る と い う報 告 が あ り, 再 びJCVとヒ ト 脳 腫 瘍と の 関 連性 が注目を 集めて きてい る,そ こで. ヒ トmedulloblastomaの 手 術 材 料 を 用 い てJCVのLT遺 伝 子 と そ の 蛋 白 の 有 無 を 検 討 し た .

[対象と方法]

1. Mouse線 維 芽 細 胞 で あ るNIH3T3細 胞 にJCV,SV40,BKVのLT遺 伝 子 の み を 単 独 で 発 現さ せるplasmids,すな わちJCLT, SV40LT, BIく工Tを構築し,それらをPCXN2―Flag vectorに 組 み 込 みLTのtransform能 をcolony formation assay, 細 胞 増 殖 能 の 検 討 に 用 い た . 2. LTとstを判 別する 為に,JC virus smallt (JCst)に対する抗体の作製を試みた.JCstは172 個 のamino acid残 基 か ら な り ,688個 のJCLTとN末 端 の81残 基 が 同 じframeか ら 翻 訳 さ れ , そ の 後splicingに よ り 異な っ た 蛋 白と し て 作 られ る . そ こでJCLTと 交 差 し ないC末 端 の16残基を抗原として抗体を作製した,

3. ヒ ト 脳 腫瘍 とJCLTの 関 連性 を 調 ぺ る為 に ヒ ト 小脳 に 発 生 したmedulloblastomaの手術材 料を用いてJCV遺伝子の有無をPCR,genomic Southern blotting,in situ hybridization (ISH)法,

および免疫染色法にて検討を行った.

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(2)

[結果]

1) Transform能の解析:NIH3T3を 用いてJCLT, SV40LTおよびBKLTをstableに発現する cloneをそれぞれ3cloneずつ樹立した.Colony formation assayの結果,JCLTを組み込んだ NIH3T3細 胞はSV40LT,BKLTを組 み込 んだNJJ‑13T3細胞よりはやや低いものの,これら とほぼ同等のtransform能を誘導する事が判明した.さらに細胞増殖能とtransform能が比例 していた.

2) JCst抗体 の検討:JCLTと交差しないJCstのC末端の16残基を抗原として抗体を作製 し,抗体の感度と特異性をJCV持続感染細胞(JCI)およびJCV transformed hamster cell line (Med‑l)を用いて調べたところ,感染細胞及び腫瘍化細胞のいずれにおいても予想される分 子量の位置にstが発現していることが判明した.非感染 細胞のIMR‑32は陰性であり,抗 体が特異的であると思われた.またヒトPML脳においてはJCV感染oligodendrogliaの核内 に陽性となった。

3) ヒ トmedulloblastomaとJCV genomeと の 関 連 :  ヒ ト 小 脳 に 発 生 し た8例 の medulloblastoma(6例の凍結手術材料と3例のparaffin‑embedded tissue)を用レュてJCV感染 の有無をPCR,genomic Southern blotting,ISH,免疫染色にて検討を行った.その結果8例の ヒト のmedulloblastomaではいずれ の方法においてもJCV genomeは検出されなかった.

[考察]

現在までのRat2細胞を用いた実験ではJCLTのtransform能がないと報告されているが,今 回JCstを欠いたJCLTでNIH3T3細胞に高い腫瘍原性を示し た.このことは,我々の実験で 使用したPCXN2‑Flag vectorのpromoterがJCVの野生型promoterより非常に強カな機能を 持つ 事と ,mouseの培 養細 胞 に対 して 高い 活性 を持 つ特 徴を 有す る為と考えられた.

  JCstの抗体が作られ,これを用いた解析で,JCVによってtransformレた細胞とJCVに感 染した細胞の両方にJCstが発現していることが明らかとなった,

  ヒトのmedulloblastomaの検索で,いずれの方法でも陰性であった。我々は凍結保存材料 からDNAを抽出して検討して おり,報告された論文に比してより正確な結果が得られたも のと考えられた,1症例のVP領域にて増幅されるbandが出現したが,PCRによる非特異的 増幅産物であった.

[結語]

1. JCVSV40,BKVのLTのみを発現するNIH3T3細胞株を樹立し,colony formation assayを 行った結果,SV40やBKVと同 様にJCLTもrodent cellをtransformさせることが判明レた.

ま た い ず れ のtransformantで も 細 胞 増 殖 能 の 増 加 が 見 ら れ た . そ の 活 性 は SV40LT>B1:く工T>JCLTの順であった.

2. JCstに対する抗体を作製し,JCstがJCV感染細胞および腫瘍化細胞で発現していることを 明らかにした.

3.ヒトmedulloblastoma8例についてPCR法,genomic Southern blotting,ISH法,および免疫 染色法で検討したが,いずれの方法においてもJCV genomeの存在は認められなかった.

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(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

JC ウイルス初期転写領域の腫瘍原性の解析 及びヒト髄芽腫との関連に関する検討

  JC virus (JCV)はヒト脳の脱髄性疾患である進行性多巣性白質脳症progressive multifocal leukoencephalopathy (PML)の原因virusである。JCVは同属のpolyomavirusであるSV40, BKVと同様、 実験的に新生仔ハムスター脳に腫瘍原性がある事が示されており、脳腫瘍と の関連性が示唆されているが、未だその詳細な機構については解明されていない。最近、

JCVがヒト髄 芽腫の発生に関連しているという報告があり、再びJCVとヒト脳腫瘍との関 連性が注目を集めてきている。一方、トランスフオーム能の解析では、現在までにSV40で の研究が詳細に行われてきている。JCVはSV40とDNA組成で69 010の相同性を有し、かつ 腫瘍化に関連するする大型T抗原遺伝子では720/0の相同性があり、JCVの腫瘍化機構の解 析が興味の対象となってきている。現在 までの報告では,JCVの大型T抗原蛋白のトラン スフオーム誘導能はSV40の大型T抗原蛋白のトランスフオーム誘導能より著しく低いとい う結果が発表されている。しかし通常大 型T抗原と小型t抗原とは同じフレームから翻訳 され るた め、 大型T抗原単独の機能は不明であった 。そこで著者らは、JCVの大 型T抗原 のみを発現するプラスミドを構築し、NIH3T3細胞を用いてク口一ン化細胞を作製し、腫瘍 原性の有無を解析し、その強度をSV40,BKVと比較検討した。又、注目されているヒト髄 芽腫との関連に関しては、ヒト手術材料 を用いてJCVの大型T抗原遺伝子とその蛋白の有 無を解析した。その結果、以下の4点が明らかとなった:

11 Transform能の 解析 :NIH3T3を 用い てJCLT, SV40LTおよびBKLTをstableに発現する cloneをそれぞれ3cloneずっ樹立した,Colony formation assayの結果,JCLTを組み込んだ NIH3T3細 胞 はSV40LT,BKLTを 組み 込ん だNIH3T3細 胞よ りは やや 低い もの の, これ ら とほぼ同等のtransform能を誘導する事が判明した.さらに細胞増殖能とtransform能が比例 していた.

2、 JCst抗体 の検 討:JCLTと交差しないJCstのC末 端の16残基を抗原として抗体を作製 し.抗体の感度と特異性をJCV持続感染細胞(JCDおよびJCV transformed hamster cell line

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郎 敬

和  

  哲

嶋 木

長 吉

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

(Med‑l)を用いて調べたところ,感染細胞及び腫瘍化細胞のいずれにおいても予想される分 子量の位置にstが発現している ことが判明した,非感染細胞のIMR−32は陰性であり,抗 体が特異的であると思われた. またヒトPML脳においてはJCV感染oligodendrogliaの核内 に陽性となった。

3) ヒ 卜medulloblastomaとJCV genomeと の 関 連 :  ヒ ト 小 脳 に 発 生 し た8例 の medulloblastoma(6例の凍結手術材料と3例のparaffin‑embedded tissue)を用いてJCV感染 の有無をPCR,genomic Southern blotting,ISH,免疫染色にて検討を行った.その結果8例の ヒト のmedulloblastomaではいずれの方法においてもJCV genomeは検出されなか った。

  口 頭 発表 にあたり、副査の古木教授から、1) NIH3T3細胞以外でJCVによるト ランス フ オ ー ム 能の 報告 につ いて 、2) 大型T抗 原 と小 型t抗原 の局 在に つい て 、31小型t抗 原遺伝子の機能につしゝて、4) 1999年発表のProc Natl Acad SciUSAの報告との差異に関 しての質問があった。続いて副査の守内教授から、1) PCR assayの結果について、2)この 論文のまとめ方について。更に主査の長嶋から、1) JCLTがNLH3T3細胞強卜ランスフオー ム能を示した点、2) smallt抗体でmedulloblastomaを検討したかについての質問を行った。

これらの質問に対して発表者は 豊富な知識と文献例を引用し、ほぼ妥当な解答をした。

  こ の 論文 は、JCVの大 型T抗 原が 単独 でNIH3T3細胞のトランスフオーム誘導能 を有す ることを明らかにした。さらに、JCVはヒト髄芽腫には直接関係していないことを示した。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分 な資格を有するものと判定した。

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