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博士(獣医学)松下 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(獣医学)松下 学位論文題名

ラットおよびマウスの CAR bacillus 感染症に関する研究

特に形態学的変化を中心にしてー

学位論文内容の要旨

  齧歯類の気道の粘膜上皮の線毛部にのみ付着するフアラメント状の桿菌に起因し,齧歯類呼吸 器マイコ プラズマ症(MRM)と同様の病 変を示す疾患が,1980年にオランダで初めて認められ た。この病原菌は1985年cilia一associated respiratory(CAR) bacillusと呼ぶことが提唱さ れた。CAR bacillus感染症は,ラット,マウス,ウサギに認められるが,本菌の培養が困難な こともあってその本態の究明が遅れている。本研究では,ラットとマウスに本菌を実験的に感染 させ,本 症の病態の究明と血清学的診 断法を確立し,さらに本菌 の伝播様式を解明した。

  先ず, 自然感染ラットから分離されたCAR bacillus SMR株をラットに経鼻接種し,接種後 56日まで定期的に解剖後,病理組織学的に検索した。臨床的には,接種後21日目より一部のラッ トが異常呼吸音を発し,また全例が体重増加の抑制,活動の低下と粗毛を示した。肉眼的には,

同じく接種後21日目より肺の肥大と重量増加,無気肺巣,気管支周囲のりング状の灰白色充実域 と気管支拡張,ならびに肺気腫などが認められた。組織学的には,接種後14日目より,鼻腔,気 管,気管支,細気管支および中耳の粘膜上皮の線毛部に好銀性のフィラメント状CAR bacillus

(長さ4〜8〃m)の付着が見られ,それらの粘膜固有層には小円形細胞浸潤が認められた。病 変部の肺内気管支は拡張し,その周囲に重度の小円形細胞浸潤とルンパ瀘胞の形成からなる気管 支周囲炎が認められた。これらの病変は経時的に,気管支樹の近位へ拡大するとともに病像も重 度 と な り , ま た 接 種 後21日 目 以 降 で は 化 膿 性 気 管 支 肺 炎 も 認 め ら れ た 。   上記の菌接種ラットの気管と肺内気管支の粘膜上皮を走査電顕と透過電顕で観察した。走査電 顕では,菌体が接種後7日目からラットの気管粘膜上皮の線毛間および一部の無線毛細胞の表面 に出芽するような形状で付着していた。接種後14日目以降では,気管粘膜の大部分は本菌の群生 した苔状巣で覆われていた。これ以外の粘膜は腫大した無線毛細胞によって構成され,その表面 も本菌が出芽するようにして付着していた。透過電顕では,接種後14日目より肺内気管支の粘膜 上皮の線毛間に線毛と平行して菌が付着していた。菌が多数付着した線毛細胞では,線毛がほと

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んど 消 失 す る 一方 で , 微 絨 毛が 付 着 してい た。CAR bacillusは杯 細胞( 粘液 細胞) の表面 にも 粘膜と 直角方 向に付 着し ,また 侵され た粘膜 上皮で は, 線毛細 胞と杯 細胞の 増生 ならびにクララ 細胞の 滅数・ 消失が 観察 された 。

  以 上 の 所 見か ら ,CAR bacillusは ラッ トの気 道粘膜 に感染 する 呼吸器 系病原 体であ ること が 示さ れ た 。 電顕 的に本 菌は ,菌接 種ラッ トの気 道の粘 膜上 皮で接 種後7日目 から観 察され たが , 組織病 変が出 現する まで には14日 間を要 した。感染は上部気道より肺内気管支ヘ下行性に拡大し,

細気管 支周囲 には化 膿性 肺炎を 惹起す る場合 もあっ た。 病変部 の粘膜 の小円 形細 胞反応は菌の感 染にも とづく 局所の 免疫 反応と みなさ れた。

  本菌の 感染を 受け たラッ トとマ ウスの 気管 と肺内 気管支 を透過 電顕で 検索 した結 果,菌はいず れの粘 膜上皮 の宿主 細胞 に対し ても表 面に直 角方向 に付 着して いた。 菌の宿 主細 胞付着端は細く なり( 狭部) ,先端 が膨 れてい るもの もあっ た。付 着し た菌の 先端部 と宿主 細胞 の細胞膜との間 には狭 い空間 が存在 し, そこに は細線 維状構 造物が 両者 を結ぶ ように 存在し てい た。この構造物 はルテ ニウム 赤染色 標本 で―層 明瞭に 観察さ れ,接 着に 関与す る粘液 物質と 考え られた。菌の幅 は,最狭部は0.  15〜O.18ロm,その他は0.35ロm以下(多くは0.24〜0. 28肛m)で,長さは3.5

〜9.OHm以 上 あ り 一 定 で は な か っ た。 菌 の 表 層 は ,約10nmの 細 胞 壁 , 約20nmの中 間 層 , お よび 約7 nmの 細胞 膜の3層か らナょ り,細 胞壁と 細胞 膜は単 位膜構 造を示 して いた。 またル テニ ウム 赤 染 色 標 本に よ り , 菌 体表 面 に 厚さ約10〜20nmの 電子密 度の高 い微 細顆粒 状の粘 液層が 観 察でき た。こ の粘液 層は ,別の 菌体の 粘液層 あるい は宿 主細胞 の細胞 膜,微 絨毛 さらには線毛と 直 接 接 着 し て お り , 宿 主 細 胞 へ の 付 着 に 重 要 な 役 割 を 演 じ て い る と み な さ れ た 。     ・。

  CAR bacillus感 染症 に っ い て ,間 接螢 光抗体 法によ る血清 学的 診断法 の感度 を検討 した。 抗 原用 プ レ パ ラ ―ト と し て はCAR bacillus SMR株 を 実 験 感 染さ せ た マ ウ ス の気 管 切片 および 菌 を増殖 させた 発育鶏 卵尿 膜腔液 の塗抹 を用い た。本 菌自 然感染 ラット コ口ニ ーよ り得られた13例 の血 清 を 検 索 した 結 果 ,9例に 抗 体 が 検 出さ れ た ( 抗 体 価は1: 10〜1:80)。病 理組織 学的 検 索では ,菌は 抗体陽 性例 にのみ 認めら れ,血 清学的 診断 と組織 学的診 断とが 一致 した。なお,気 管粘膜 に付着 してい る菌 体抗原 と発育 鶏卵尿 膜腔液 中の 菌体抗 原は, いずれ も既 知の呼吸器系病 原体に 対する 抗体陽 性の ラット 血清お よび正 常対照 のラ ット血 清に対 しては 反応 しなかった。次 に, 本 菌 自 然感 染ウサ ギコ 口二ー から得 られた15例の ウサギ 血清の 抗体測 定で は,4例の 陽性例 が検出 された (抗体 価は1: 10と1:40)。ま たこ れらの ウサギ におけ る病理 組織 学的検索では,

抗体 陽 性3例 と抗 体 陰 性3例で 菌 が 認め られ, 血清学 的診 断法と 組織学 的診断 法の成 績の 間で完 全な一 致はみ られな かっ た。こ れは, ウサギ の場合 は, 病変が 軽度な ため組 織学 的には菌体を検

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出し難いことと,本菌が感染してから抗体が上昇するまでの期間が長いことなどの理由によるも のと思われた。さらに,経鼻接種ラットでは,抗体は接種後14日目から21日目までの間に陽転し た抗体価は接種後28日目で最高に達し(抗体価1: 80と1:160),実験終了時の接種後56日目で も高力価が維持されていた。

  以上の成績から,ラッ卜においては間接螢光抗体法CAR bacillus感染症の血清学的診断に 極めて有用であることが示された。

  最後に,CAR bacillusの同居感染にっいて,病理組織学的方法と間接螢光抗体法による血清 学 的方法を用いて検討した。まずマウスにCAR bacillus SMR株を経鼻接種し,これを非感染 マウスと同一ケージに入れて12週間同居飼育を行った。その結果,同居後4週目から感染が成立 し始め,同居後12週目では大部分のマウスが感染した。他方,室内同居感染の成立の有無を検討 するために経鼻感染したマウスをケージの周囲に,約3 cmの距離を置いて非感染マウスを入れた ケ ー ジ を 配 置 し ,12週 間 飼 育 し た が , 感 染 例 は1例 も 認 め ら れ な か っ た 。   以上の成績から,CAR bacillusの主要伝播様式は感染動物や汚染媒介物による接触感染であ るとみなされた。

学位論文審査の要旨

  齧歯類において,気道の粘膜上皮の線毛部に感染して慢性呼吸器病を引き起こすcilia―asso‑

ciated respiratory(CAR) bacillus感染症が,約10年前から問題となっている。本症にっい ては,菌の培養が困難なこともあって本態の究明が遅れている。申請者は,ラットとマウスに本 菌を実験的に感染させ,本症の病態と血清学的診断法,並びに本菌の伝播様式にっいて研究し,

本 論 文 を ま と め た 。 本 論 文 は 131頁 か ら な り , 4章 で 構 成 さ れ て い る 。   第1章では,本菌を経鼻接種したラットの呼吸器系組織を病理組織学的に検索し,病変の詳細 を明らかにした。この病変は,粘膜上皮の線毛部へのCAR bacillusの付着と,粘膜固有層に

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敏 郎

智 茂

   

倉 岡

板 波

杉 橋

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

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お け るりン パ球 反応を 特徴と してい た。第2章 では, 実験 的に本 菌を感 染させ たラ ット, マウス 及 び発育 鶏卵の 呼吸 器系組 織を, 走査電 顕と透 過電 顕を用 いて検 索し, 菌の 形態並びに菌と宿主 細 胞の相 互関係 を解 明した 。菌体 表層に は粘液 層が あり, これが 宿主細 胞と の付着に重要な役割 を 演 じてい るこ とを指 摘した 。第3章で は,間 接螢光 抗体 法によ る本症 の血清 学的 診断法 を確立 し ,その 有用性 を明 確にし た。抗 原用プ レパラ ート として は,本 菌を感 染さ せたマウスの気管及 び 菌を増 殖させ た発 育鶏卵 尿膜腔 液の塗抹を用いたが,両者による抗体価に差はみられなかった。

第4章で は,マ ウスを 用い て本菌 のケー ジ内同 居感染 と室 内同居 感染実 験を行 い, 本菌の 主要な 感 染経路 は感染 動物 あるい は本菌 汚染媒 介物に よる 接触感 染であ ること ,空 気感染は成立し難い こ とを明 らかに した 。

  以 上 のよ う に , 申 請者 はCAR bacillus感 染症 に っ い て の系 統 だ て た研 究を行 い, いくっ か の 新知見 をもた らし た。こ れらの 成果は ,実験 動物 の微生 物学, 病理学 並び に疫学に貢献すると こ ろが大 きい。 よっ て審査 員一同 は,松 下悟氏 が博 士(獣 医学) の学位 を受 けるに十分な資格を 有 するも のと認 めた 。

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参照

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