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博士(医学)日下貴文 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)日下貴文 学位論文題名

補助心臓の心補助効果に関する心力学的研究 一とくに左室脱血方式の検討一

学位論文内容の要旨

    I研究 目的

  補 助 心臓 に 関 す る 基礎 的研 究は、 これま で血行 動態 的解析 にとど まるも のが多 く、

心 力 学 的 立 場か ら の 検 討 はほ と ん ど な され て い な い 。本 研 究 の 目 的は 、左室 脱血方 式 に よ る 左 ´心 補 助 心 臓(LVAD)の ´ い 補 助 効果 を 血 行 動 態的 の み な らず´ 心力学 的 に 解析し 、従来 の左 房脱血 方式と 比較検 討す ること である 。

    n実験 材料 と実験 方法

  体 重16kgか ら33kg( 平均22. 8kg)の雑 種 成 犬22頭 を 用 い た 。一 回 拍出 量約30mlの 空 気圧 駆動ダ イアフ ラム 型補VJ)L¥IFaiポ ンプを 、雑種 成犬 の左室 心尖と 下行大 動脈問 に 取 り 付 け た。 LVADの 駆 動 モ ード と し て 、 ´1:舶数 対ポ ンプ拍 動数比1:1、2:1お よ び4:1の 心 電 図 同 期 カ ウ ン タ パ ル ス 法 、拍 動 数60およ び80beats/minの 固 定拍 動 数 法(160お よ び180モ ー ド ) を 選 び 、 そ れ ぞ れ 最 大 バ イ パ ス 流 量が え ら れ る よう に 駆動し た。

  血 行動 態を錘 ゑ察す るために、´心電図のほかに左房圧(LAP)、左室圧(LVP)、大動脈圧 (AoP)、 大 動 脈血 流 量(AoF)お よ びポ ン プ バ イ パス 流 量(BF)を モ ニ タ した 。 ま たAoF とBFの 和 を 計 算 して 全 血 流 量(TF)と し た。 全 末 梢 血 管抵 抗(TPR)は 、 平 均大 動 脈 圧 (mAoP)をTFで割 っ て 求 め た。 さ ら にEndocardial viability ratio(EVR)を 動脈圧 波 形 より 計算し た。長 軸お よび直 交する2方 向の短 軸´じ 丶室径 と、 左室自 由壁中 央部お よ び 左 冠 動 脈 前 下 行 枝 (LAD) の 血 流 領 域 の 直 交 す る2方 向 の 局 所 心 筋 長 を 、 そ

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れぞれ超音波変位計で測定した。

  対照デ ータを採 取後、LADを中 枢側で結 紮し、 その血 流領域 に局所的虚血部位 を 作 成 し た。LAD結 紮 後 は2:1モ ー ド でポン プを駆 動した まま、3時間の 経過を 観察した。左室全体および局所心筋の仕事量は、3方向の左室径から左室内容積を、

2方向の´心筋長から局所心筋面積を求め、左室圧ー容積関係および左室壁張カー局 所心筋面積関係を用いて計算した。

    m実験結果

  実 験 に用 い た22頭 中 、 全 プ口 ト コ ール を終了 しえた8頭の成 績を検 討した 。 1)血行動態諸量

  LAD結 紮前 、 結紮後 ともに 、4:1モー ド以外 のすべ ての駆動 モード 下で、 ポン プ非駆動時に比べて´湍数(皿)、最大左室圧(pLVP)、平均左房圧(mLAP)およびTPR は低値を示し、mAOPとTFが高値となった。また4:1モードを除くすべての駆動モー ドで完全バイパスがえられ、すべての指標で駆動モードにかかわらずほとんど同じ 効 果がえ られた 。ポン プ非駆 動時の 皿、pLvP、mAOPおよ びTFは、LAD結紮によっ て 、それ ぞれ結 紮前の94、87、91、85%に 減少し、mLAPとTPRはそれぞれ140およ び113% に 増 加し た 。 こ れら の 血 行 動態 諸 量 は 、LAD結 紮1〜2時間 後に最 低あ る い は 最 高 と な っ た が 、3時 間 後 に は 回 復 傾 向 が 認 め ら れ た 。   pLvPは4:1モードを除いて左房脱血方式よりも著しく低値を示し、mAOPとTFはす べてのモードで左房脱血方式よりも高値であった。

2)左室全体ならびに局所心筋の仕事量

  左室脱血方式では4:1モードを除いて、左室全体および局所J心筋のいずれにっい ても、ポンプ非駆動時の90%以上の仕事を取り除くことができ、左房脱血方式に比 べて著しく仕事量を減少できた。

  ポンプ 非駆動時 におけ る左室 全体の 仕事量 は、LAD結 紮によ り滅少するが、左

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室 脱血 方式 で は左 房脱 血方 式 より もその減少が小さ く、LAD結紮3時間後には回 復傾向に あった。LAD結紮による左室 自由壁中央部(健常部位) 局所J心筋の仕事 量の変化 は、左房脱血方式の場合と ほぼ同じであった。LAD血流領域(虚血部位)

局 所心 筋の 仕事量は、LAD結紮によルマイナスとなっ たが、左房脱血方式ではそ の後もマ イナスレベルを保っのに対 し、左室脱血方式では3時間後にはほぼゼロレ ベルとなった。

3)EndocardialviabilityratioくEVR)

  EvRはLAD結紮前1.14±0.19くmean±sD)であったが、結紮1時間後に最低(0.90± 0.13,p〈O.001)となり、3時間後には回復傾向(0.98±O.17)が認められた。

    W考察

  LVADの脱 血 方法 はカ ニュ ー ラ先 端の位置によって 、左房脱血方式と左室脱血 方 式の2っ に分けられる。 現在、本邦で施行され′て いるLVADの大半は左房脱血 方 式で あり 、 これ で十 分で あ ると する意見が多い。 しかしながらLVADの離脱率 は比較的 良好であるにもかかわらず、長期生存率は低く、左房脱血方式の限界とみ られる症例が少なからず存在するとみられる。

  補助心臓の目的は、全身循環と冠血流量を維持するとともに、不全J心を休息させ て´C機能を回復させる事にある。左房脱血方式では完全バイパスをえることはでき なかった が、左室脱血方式では4:1モードを除くすべての駆動モードで、完全バイ パスがえ られた。その結果として、左室脱血方式ではmAOPとTFがポンプ非駆動時に 比べて著 しく増加し、強カな循環補助能カをえることができた。また、左室脱曲方 式 で は 左 房 脱 血 方 式 に 比 べ て 、 著 し い 除 負 荷 効 果 が 認 め ら れ た 。   左室脱血方式では、ポンプ非駆動時の血行動態諸量、仕事量およびJ凵務の酸素供 給 と 消 費 のバ ラ ンス を示 すと い われ てい るEvRは 、LAD結 紮1〜2時 間後 に 最低 あるいは 最高となったが、3時間後に は回復傾向がみられた。左房脱血方式では、

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ポンプ機能の回復に数日から10日間を要する。このことから、左室脱血方式は´L機 能を回復させる効果が著しく大きいことが知られる。

  本研究により循環補助能力、除負荷効果および´!職能回復作用において、左室脱 血方式が左房脱血方式に 比べて優れていることが明らかにされた。現在は左房脱血 方式が主流を占めている が、左房脱血方式の効果の限界を越える重症例が存在する こ と も 確 か で あ り 、 こ れ に 対 す る 左 室 脱 血 方 式 の 応 用 が 期 待 さ れ る 。     V結論

  左室脱血方式による補助´じ丶臓のJL助効果を血行動態的のみならず心力学的に解 析 し 、 左 房 脱 血 方 式 と の 比 較 検 討 を 行 い 、 以 下 の 結 論 を え た 。   1)4:1モード以外のすべての駆動モード下で、ポンプ非駆動時に比べて皿、pLVP丶 mLAPおよびTPRは低値を 示し、mAoPとTFカ滴値となった。また4:1モードを除くす べての駆動モードで、完全バイパスがえられた。

  2)4:1モード以外のどの駆動モード下でも、左室全体および局所´心筋はほとんど 仕事を行わず、 100xに近い除負荷効果がえられた。

  3)左房脱血方式に比べてpLlrpは著しく低値を示し、mAoPどrFは増加した。また左 房 脱 血 方 式 より も、 左室 全 体お よび 局所 い務 の 仕事 量を 著し く 滅少 させ た。

  4)2:1、1:1、160、180モードでは、駆動モードによる効果の差はほとんどなかった。

  5) ポ ン プ 非 駆 動 時 の 血 行 動 態 諸 量、 仕事 量 およ びEVRは 、LAD結 紮1〜2時 間 後 に 最 低 あ る い は 最 高 と な っ た が 、3時 間 後 に は 回 復 傾 向 が み ら れ た 。 以上より左室脱血方式は循環補助能力、除負荷効果および´1:蟻能回復作用におい て、これまで多く用いら れてきた左房脱血方式よりも極めて有効であることが示さ れた。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

補 助 心 臓 の 心 補 助効 果 に 関 する 心 力 学的 研 究      一 と く に 左 室 脱 血 方 式 の 検 討 一

   重 篤 な 不 全 に 陥 っ た 心 臓 を 回 復さ せ る ため に 補 助心 臓 の 応用 が 検 討 され て い る が 、 補 助 心 臓 に 関 す る 基 礎 的研 究 は 、こ れ ま で血 行 動 態的 解 析 に と ど ま る も の が 多 く 、 心 力 学 的 立 場 から の 検 討は ほ と んど な さ れて い な い 。 本 研 究 の 目 的 は 、 よ り 効 果 的 と 考 えら れ る 左室 脱 血 方式 に よ る左 心 補 助 心 臓 (LVAD ) の 心補 助 効 果を 血 行 動態 的 の みな ら ず 心力 学 的 に解 析 し 、 従来 か ら 多 く 用 い ら れ て い る 左 房 脱 血 方 式 と 比 較 検 討 す る こ と で あ る 。    雑 種 成 犬 22 頭 を 用 い 、 一 回 拍 出 量 約 30ml の空 気 圧 駆動 ダ イ ア フラ ム 型 補 助 心 臓 ポ ン プ を 、 左 室 心 尖 と 下 行 大動 脈 間 に取 り 付 けた 。 LVAD の 駆 動モ ー ドと し て 、 心拍 数 対 ポン プ 拍 動数 比 1 :1 、 2 : 1 お よび 4 : 1 の心 電図同期 カウ ン タ パ ルス 法 、 拍 動数 60 およ び 80beats/min の 固 定拍 動 数 法 (160 およ び 180 モ ー ド ) を 選 び 、 そ れ ぞ れ 最 大 バ イパ ス 流 量が え ら れる よ う に駆 動 し た 。    心 電 図 のほ か に 左房 圧 (LAP ) 、左 室 圧 (LVP )、 大 動脈圧 (AoP )、大 動脈血 流量(AoF ) およびポ ンプバ イパス流 量(BF )をモニ タし、また全血流量(TF )、

三 顕

達  

  慶

邊 畠

田 北

授 授

教 教

査 査

主 副

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全 末梢 血管抵抗(TPR )を算定した。さらにEndocardial viability ratio (EVR ) を動脈圧波形より計算し、局所心筋長を超音波変位計で測定した。

   対照データを採取後、左冠動脈前下行枝(LAD )を中枢側で結紮し、2 :1 モ ー ドで ポン プを 駆動 した まま 、3 時 間の経過を観察した。左室全体および 局 所心 筋の仕事量は、3 方向の左室径から左室内容積を、2 方向の心筋長か ら 局所 心筋面積を求め、左室圧一容積関係および左室壁張力一局所心筋面 積関係を用いて計算した。

   実験結果はLAD 結紮前、結紮後ともに、4 :1 モード以外のすべての駆動モ ード下で、ポンプ非駆動時に比べて心拍数(HR )、最大左室圧(PLVP )、平均 左房圧(mLAP )およびTPR は低値を示し、mAoP とTF が高値となった。また4 :1 モ ード を除くすべての駆動モードで完全バイパスがえられ、すべての指標 で駆動モードにかかわらずほとんど同じ効果がえられた。ポンプ非羇匿動時 の HR 、 pLVP 、mAoP お よび TF は 、LAD 結紮によって、それぞれ結紮前の94 、 87 、91 、85 %に減少し、mLAP とTPR はそれぞれ140 および113 %に増加した。

こ れら の血 行動 態諸 量は 、LAD 結紮 l 〜2 時間後に最低あるいは最高となっ たが、3 時間後には回復傾向か認められた。pLVP は4 :1 モードを除いて左房 脱 血方 式よりも著しく低値を示し、mAoP とTF はすべてのモードで左房脱血 方式よりも高値であった。

   左室 全体ならびに局所心筋の仕事量は4 :1 モードを除いて、左室全体お よ び局 所心筋のいずれについても、ポンプ非駆動時の90 %以上の仕事を取 り 除く こと がで き、 左房 脱血 方式 に比 べて 著し く仕事 量を 減少 できた。

   以上の成績から次の結諭がえられた。1 )4 :1 モード以外のすべての駆動 モ ード 下で 、ポ ンプ 非駆 動時 に比 べてHR 、pLVP 、mLAP およびTPR は低値を 示 し、 mAoP とTF が高値となった。また4 :1 モードを除くすべての駆動モー

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ドで、完全バイパスがえられた。2 )4 :1 モード以外のどの辱巨動モード下で も 、左 室 全 体お よ び局 所 心筋 はほとん ど仕事を 行わず、100% に 近い除負 荷効果 がえられ た。3 )左 房脱血方 式に比べ てpLVP は著しく 低値を示 し、

mAoP とTF は増 加した。 また左房 脱血方式 よりも、左室全体および局所心筋 の仕事量を著しく減少させた。4 )2 :1 、1 :1 、160 、180 モードでは、駆動モ ードに よる効果の差はほとんどなかった。5 )ポンプ非駆動時の血行動態諸 量、仕 事量およ びEVR は、LAD 結 紮1 〜2 時間後に最低あるいは最高となった が、3 時間後には回復傾向がみられた。

   以上よ り左室脱 血方式は 循環補助 能力、除負荷効果および心機能回復作 用にお ぃて、こ れまで多 く用いら れてきた左房脱血方式よりも極めて有効 であることが示された。

   口頭発 表にあた って、北 畠教授か ら急性心筋虚血の回復、左房脱血方式 との比 較、安田 教授から 鴎床応用 にあたっての対策、古舘教授から駆動モ ードの 対比など について 質問があ ったが、申請者はおおむね妥当な回答を 行った 。また副 査の北畠 教授、安 田教授とは個別に審査を受け合格と判定 された。

   重症心 不全に対 する補助 心臓につ いて、左室脱血方式の有用性を明らか

に し た 本 研 究 は 、 学 術 的 意 義 が 大 き く 学 位 授 与 に 値 す る と 考 え る 。

参照

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