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博 士 ( 工 学 ) 田 中 忠 夫

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 田 中 忠 夫

学 位 論 文 題 名

通気 層 表層 にお け る放 射 性核 種 の吸 着移 行 挙動 に 関す る 研究 学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  現在 の 我が 国の 電力 需要 は 原子 力発 電が 総 発電 量の35% を占 め るに 至っ てい るが ,発電 施 設の 運 転に 伴っ て放 射能 レ ベル が低 い 低 レベ ル放 射性 廃棄 物 が,200dm°ドラム罐換 算 で年 間2.5万本 以上 発生 し てい る。 この よ うな 低レ ベル 放射 性 廃棄 物の 処分 方策 として は ,浅 地 層へ の埋 設が 世界 的 に採 用さ れて い る。 その 安全 性を 評 価す るた めに は, 地層中 に おけ る 放射 性核 種の 移行 挙 動の 正確 な把 握 が不 可欠 であ る。 浅 地層 に設 置さ れた 埋設場 か ら地 層 中に 漏出 した 放射 性 核種 は, 通気 層 を移 行し て地 下水 層 に達 し, さら には 地下水 と 共に 移 行し て生 活環 境に 至 るこ とが 想定 さ れる 。通 気層 中に お いて 放射 性核 種は ,分配 係 数等 で 定義 され る土 壌と 間 隙水 問で の吸 着 ・脱 離反 応に よる 遅 延作 用を 受け なが ら,主 と して 地 表か ら浸 透す る水 分 の移 流拡 散に よ り移 行す る。 自然 環 境の 下で の通 気層 中にお け る水 の 流れ は, 不定 期に 起 こる 降雨 によ る 地表 から の雨 水の 浸 透に 基づ ぃて いる 。ニの よ うな 不 定期 に起 こる 降雨 と 晴・ 曇り 時に 起 こる 水分 の蒸 発と の 繰り 返し のた め, 通気層 表 層付 近 では 不連 続且 つ非 定 常な 水の 流れ が 発生 する 。し かし な がら ,こ れま で一 般的に 採 用さ れ てき たカ ラム 法に よ る核 種移 行試 験 では ,定 常的 な流 れ の下 での 核種 移行 挙動の 評 価し か 行わ れて こな かっ た 。し たが って , 核種 移行 挙動 に及 ぼ す非 定常 な流 れの 影響を 考慮す ることの必要性を実験的に 検討するニとが必要である、

  本研 究 は, 通気 層表 層付 近 で形 成さ れ核 種 移行 挙動 に影 響を 及 ばす 可能 性が ある 放射性 核 種の 加 水分 解生 成物 ,土 壌 微細 粒子 との結合体及びフミン酸等 :ヒ壌中有機物質との錯体 に着目 して,通気層表層付近で生 じる不連続な水流条件下での¨、Co,°。Sr及び ̄3 Csの吸 着 ・ 脱 離 挙 動 及 び 移 行 挙 動 を 定 性 的 ・ 定 量 的 に 検 討 し た 結 果 を ま と め た も の で あ る 。   本論 文は7章で構成した。以下に 各章の概略を述ぺる。

  第1章 は 序 論 で あ り , 研究 の背 景と 従来 の 知見 ,研 究の 目的 と 意義 及び 本論 文 の構 成に ついて 述べた。

  第2章で|ま,海岸砂に吸着させ た61・Co,8°Sr及び1。 じsを乾燥と湿潤が繰り返し生じる 条 件を 仮 定し ,バ ッチ 脱離 実 験を 実施 したっ乾湿脱離条件・Fで の¨でoの脱離率は連続脱離 条件下 での値と有意な差はみられ なかったが,乾湿脱離条件卜 ・での Srと13 Csの脱離率 は 連続 脱 離条 件下 での 値よ り も大 きく なる こ とを 確認 した ‐3 Srやlj′Csの脱離率の増大 は ,乾 燥 によ って 生じ る砂 表 面の 崩壊 及び 水 に接 して いる 間に 生 じる 砂表 面イ オン 交換サ イトの 変質に起因するものと推察 した、,また,o OCo,8゜Sr及びI, Csの脱離率が乾燥期間 の 影響 を 受け なか った こと か ら, 乾湿 脱離条件下での°。Sr及びlj Csの脱離率の増大は,

湿 潤 状 態 か ら 乾 燥 状 態 ヘ 変 化 す る 過 程 の 過 渡 的 環境 にお いて 発 生す るこ とを 見 出し た。

  第3章で は,6゜Co,8゜Sr及 び ̄3 Csで表面を汚染させた海岸 砂質土壌層小型カラムヘ脱 イ オン 水 を断 続的 に流 入す る カラ ム移 行実 験 を実 施し ,放 射性 核 種の 化学 形態 と移 行メカ ニ ズム に っい て検 討し た。 土 壌層 中を 移行 す る放 射性 核種 の化 学 形態 には ,土 壌へ の吸着 性が高 く表面付近に留まる陽イオ ン性化学種と吸着性力:低く ノKとはばI司じ速度で上壌層深 部へと 移行する非陽イオン性化学 種とがあるニとをir.した ,土壌層傑部/丶移行する非陽イ オ ン性 化 学種 は, 放射 性核 種 が土 壌微 細粒 子 に吸 着す るニ とに よ り形 成さ れる 疑似 コ口イ

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ド及び゜。coの加水分解生成物であるコロイド状のt'UCo (OH)2)ーであることを確認した。ま た,土壌層中における放射性核種の移行挙動に及ぼす流れの停止期間及び停止回数の影響 として,陽イオン性°。Srの移行速度及び非陽イオン性゜。Coの土壌層深部への移行量の増大 を確認した。陽イオン性°。Srの移行速度の増大は,流れの停止期間中に3SSrの土壌への吸 着に対しての競合イオンであるCa2゛の濃度が増加したためであることを見出した。一方,

土壌層深部への非陽イオン性¨Coの移行量の増大は,流れの停止期間に緩衝作用によって 間隙水のpHが上昇し,(°。Co(0H)|1。が生成したためであるニとを明らかにした」

  第4章では,日本原子力研究所の環境シミュレー・ション試験装置に直径30ccu,長さ60ccn の大型砂質土壌カラムを設置し,降雨と乾燥の繰り返しによる地中水の不連続な流れを模 擬した条件下での uCo ‑'Sr及び!。 Csの移行試験を行った。乾湿サイクル条件下では,

土壌層表面付近における陽イオン性  ̄Srの移行速度並びに‥ Co及びlj Csの粒子性化学種 の土壌層深部への移行量が増大するなど,小型カラムを用いて実施した実験結果と定性的 に一致することを確認した。しかしながら,小カラム実験と定量的に異なる結果も得られ,

小型カラムでは評価できない土壌層内の水分率やカラムのサイズの効果を考慮することの 必要性を指摘した。  ―

  第2′4章で観察した通気層表面付近での放射性核種の移行挙動が一般的なものである かどうかを検証するためには,実際の環境中での移行挙動と比較することが必要である。

第5章では,放射性同位元素(3H,60Co,85Sr及び ̄j Cs)で標識した土壌を通気層中に 埋設して実施した野外核種移行試験のデータを用いて,乾湿サイクルの影響について検証 した。野外試験の結果から,核種標識土壌を通気層中に埋設した場合,すなわち通気層内 部での核種移行に着目した場合,乾湿サイクル効果によって期待された陽イオン性化学種 の移行速度及び非陽イオン性化学種の生成量の増大は無視できるほど小さいものであるこ とを明らかにした。また,通気層中における核種移行に及ぼす乾湿サイクルの影響は,間 隙水の化学組成が降雨や蒸発により著しく影響を受ける地表面や地層境界面に存在する放 射性核種の脱離挙動に限定されるものであることを指摘した,

  第6章では,天然環境に広く存在し,多くの陽イオン性放射性核種と安定なコ口イド状 の錯体を形成する可能性が指摘されるフミン酸について,放射性核種のヒ壊中吸着・移行 挙動に及ぼす影響をバッチ実験及びカラム実験で調べた 、バッチ実験から,c Co及び° Sr は分子量100,000以下のフミン酸と,24 ̄Amは分子量30,000以上のフミン酸とそれぞれ優先 的に錯形成するが,13 Cs及び゜j Npはどの分子量のフミン酸ともほとんど錯体を形成しな いことを明らかにした。フミン酸を吸着しない砂に対する¨Co及び¨.Amの分配係数はフ ミン酸濃度が増加するに従って減少するが,フミン酸との結合カが砂との吸着親和性に比 ぺて著しく小さい85Srの分配係数はフミン酸の影響を受けないことを確認した。一方,フ ミン酸を良く吸着するク口ボク士の場合っフミン酸濃度の増加に伴う‥´(‑:0及びー'AInの分 配係数の減少率は砂より小さく,8 Srの分配係数;よフミン酸濃度が増加するに従って増大 することが分かった。ニのような,放射性核種の分配係数に及ばすフミン酸の影響は,液 相中での錯形成,錯体の吸着,フミン酸の吸着による土壌の核種吸着能の変化を考慮した モデルにより評価できることを示した。また,フミン酸を含む¨cO 85Si及び¨ Cs水溶 液を砂層カラムヘ流入する実験の結果,フミン酸と錯体を形成するo "Coや¨Srの移行がフ ミン酸の共存によって増大することを確認した。さらに,カラム実験系における核種移行 を定量的に評価するため,フミン酸錯体の形成・解離の速度を考慮した吸着・移行モデル を提案するとともに,実験結果との比較検討から,フミン酸共存下での85Srの移行は,解 離速度定数を用いて定量的に説明できろことを確認した‥

  第7章は結諭であり,本研究で得られた成果を総括した,、

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨

学 位 論 文 題 名

通気層表層における放射J 陸核種の吸着移行挙動に関する研究

  原子力発電所の運転に伴って発生する低レベル放射性廃棄物の処分方策としては,浅地 層埋設が世界的に採用されている。その安全性評価には,地層中における放射性核種の移 行挙動の正確な把握が不可欠である。浅地層に設置された埋設場から地層中に漏出する放 射性核種は,通気層から地下水層に達し,さらには地下水と共に移行して生活環境に至る ことが想定される。この場合、通気層表層付近では、不定期に起こる降雨と水分の蒸発と の繰り返しのため,不連続かつ非定常な水の流れが発生する。しかし,これまで―般的に 採用されてきたカラム法による核種移行試験では,定常流れの下での核種移行挙動の評価 しか行われておらず,核種移行挙動に及ぼす非定常流れの影響は考慮されていない。本論 文は,通気層表層付近で形成される放射性核種の加水分解生成物,土壌微細粒子との結合 体およびフミン酸等土壌中有機物質との錯体に着目して,通気層表層付近で生じる不連続 な水流条件下での放射性核種(60Co,85Sr,134Cs,L37Csおよび241Am)の吸着・脱離挙動およ び移行挙動を検討した結果をまとめたものである。

  本論文の成果は、以下のように要約される。

  1.海岸砂に吸着させた60Co,85Srおよび137Csの乾湿繰り返し条件下でのバッチ脱離実験 を行い,乾湿脱離条件下でのbOCoの脱離率は連続脱離条件下での値と有意差がみられないが,

乾湿脱離条件下での80Srと137Csの脱離率は連続脱離条件下での値よりも大きくなることを 見出した。85Srおよび137Csの脱離率の増大は,乾燥によって生じる砂表面の崩壊および水に 接している間に生じる砂表面イオン交換サイトの変質に起因するものと説明した。また,

乾湿脱離条件下での85Srおよび137Csの脱離率の増大は,湿潤状態から乾燥状態へ変化する過 程の過渡的環境において発生することを見出した。

  2. 60Co,85Srおよび137Csで表面を汚染させた海岸砂質土壌層小型カラムヘ脱イオン水を断 続的に流入するカラム移行実験を行い,土壌層中を移行する放射性核種の化学形態には,

土壌への吸着性が高く表面付近に留まる陽イオン性化学種と吸着性が低く水とほぼ同じ速 度で土壌層深部へと移行する非陽イオン性化学種とがあるニとを示した。この非陽イオン 性化学種は,疑似コ口イドとコ口イド状の{60Co (OH)2t″であることを明らかにした‐また,

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士 壽

美 史

弘 信

昌 貞

橋 中

川 村

大 田

恒 澤

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

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土壌層中における放射性核種の移行挙動に及ぼす流れの停止期間および停止回数の影響と して,陽イオン性85Srの移行速度および非陽イオン性bOCoの土壌層深部への移行量の増大を 見出した、、陽イオン性85Srの移行速度の増大は,流れの停止期間中に85Srの土壌への吸着 に対して競合するCd2゛の濃度が増加したためであることを見出し,土壌層深部への非陽イ オン性60Coの移行量の増大は,流れの停止期間に緩衝作用によって間隙水のpHが上昇し,

{bOCo (OH)2)″が生成したためであることを明らかにした。

  3.日本原子力研究所の環境シミュレーション試験装置に直径30cui,長さ60crnの大型砂 質土壌カラムを設置し,降雨と乾燥の繰り返しによる地中水の不連続な流れを模擬した条 件下での60Co,85Srおよび137Csの移行試験を行い,乾湿サイクル条件下では,土壌層表面付 近における陽イオン性85Srの移行速度並びに60Coおよび137Csの粒子性化学種の土壌層深部へ の移行量が増大するなど,小型カラムを用いて実施した実験結果と定性的に一致すること を見出した。

  4. 3H,60Co,85Srおよび134Csで標識した土壌を通気層中に埋設して実施した実環境野外核 種移行試験データを用いて,乾湿サイクルの影響を検証した。野外試験の結果から,核種 標識土壌を通気層中に埋設した場合,乾湿サイクル効果によって期待された陽イオン性化 学種の移行速度および非陽イオン性化学種の生成量の増大は無視できるほど小さいもので あることを見出した。また,通気層中における核種移行に及ぼす乾湿サイクルの影響;よ,

間隙水の化学組成が降雨や蒸発により著しく影響を受ける地表面や地層境界面に存在する 放射性核種の脱離挙動に限定されるものであることを指摘した。

  5.バッチ実験から,bOCoおよび85S1.;1よ分子量100,000以下のフミン酸と,241Amは分子量 30,000以上のフミン酸とそれぞれ優先的に錯形成するが,137Csおよび23‑Npはどの分子量のフ ミン酸ともほとんど錯体を形成しないことを明らかにした。フミン酸を吸着しない砂に対 する60Coおよび241Arnの分配係数はフミン酸濃度の増加とともに減少するが,フミン酸との結 合カが砂との吸着親和性に比ぺて著しく小さい85Srの分配係数はフミン酸の影響を受けな いことを見出した。一方,フミン酸を良く吸着するク口ボク土の場合,フミン酸濃度の増 加に伴う60Coおよび241Amの分配係数の減少率は砂より小さく,8JSrの分配係数ぬフミン酸濃 度の増加とともに増大することを見出した。このような放射性核種の分配係数に及ばすフ ミン酸の影響は,液相中での錯形成,錯体の吸着,フミン酸の吸着による土壌の核種吸着 能の変化を考慮したモデルにより評価できることを示した。また,フミン酸を含む60Co,85Sr および137Cs水溶液の砂層カラムヘの流入実験の結果,フミン酸錯体を形成しない137Csはフミ ン酸の共存によって影響を受けないが、フミン酸錯体を形成する60Coおよび85Srの移行はフ ミン酸の共存によって増大することを見出した。さらに,フミン酸錯体の形成・解離の速 度を考慮した吸着・移行モデルを提案し,フミン酸共存下での85Srのカラム系での移行挙動 を解離速度定数を用いて定量的に説明できることを示した。

  これを要するに,著者は低レベル放射性廃棄物の浅地層処分に関して新知見を得たもの で あ り , 核 燃 料 サ イ ク ル 工 学 に 対 し て 貢 献 す る と こ ろ 大 な る も の が あ る 。   よって著者は,北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格があるものと認める。

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