博 士 ( 理 学 ) 津 田 岳 夫
学 位 論 文 題 名
Fluorescence Probes at Lys‑480 and Lys‑501 ina‑Chain ofNa 十 , K 十 ‐ ATPaseCanSensetheMuldpleATPBinding InduCedCOn 二 formation 甜 ChangeS
― ― 01igomeriCNatureofNa 十 , K 十 ・ ATPaSe ―
(Na+,K+‑ATPasea鎖のりジン480とりジン501に結合した螢光プローブによる多様 をATP結合で引き起こされる構造変化の感知Na+,K゛‐ATPaseのオリゴマー性質)
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
細胞内 外のNa+とK+の 濃度勾配 は、Na+,K+‑ATP aseがATP加水分解 に伴い細胞外ヘNa+
を細胞内ヘK+を能動輸送することにより形成される。Na+,K+‑ ATPaseは加水分解及びイオ ン 輸送 能 を 担う 分 子量 約11万 の 鎖 と 糖 鎖を 含 む 分子 量 約3.5万 のp鎖 からな る。apの みのプ ロトマー で活性を発現する、あるいは、(d P)2のダイプロトマーまたはそれ以上の オリゴ マーとし て機能し 反応サイ クル中にd鎖 間に相互 作用が生 じる、等 の酵素の機能単 位 に 関 す る 報 告 が 多数 さ れて い る 。反 応 サイ ク ル 中にATPのァ 位 の りン 酸 基 が 鎖 の Asp369に転移 されたり ン酸化酵 素中間体(EP)を形成する ことから 本酵素はP型ATPaseに属 す る。 そ の 反応 様式とし て、Na+結 合型酵素(NaEl)のATPからの りン酸化 により、ADP感 受性の りン酸化 酵素中間 体(EIP)、つい でK+感受性のりン酸化酵素中間体(E2P)を経て、脱 リ ン酸 化 さ れK+結合 型 酵 素(KE2)を 形 成 後Na+と 反応して 、再びNaElヘ 移行するPost‑
Albers機構が 知られて いる。し かし、ATPの エネルギー のイオン 輸送エネ ルギーへの変換 機構に ついての 知見は少 ない。こ れらの疑問 に対して私たちの研究室では、螢光プローブ をNa+,K+‑ AT Paseに導入して、反応中間体形成に伴う螢光プローブ周辺の微少環境変化を 反 映 し た 螢 光 強 度 変 化 を 測 定 し 、 酵 素 の 動 的 な 構 造 変 化 の 解 析 を 行 っ て い る 。 ピ リ ド キサ ール リン酸(PLP)やPLP分子にAMPを りン酸エ ステル結 合し合成 されたAP2PL は 、ATPを 必 要と す る蛋 白 質 のATP結 合部 位 へ の親 和 標識 試 薬 とし て 用 いられ ている。
Na+,K+‑ATPaseをピ リドキサ ール化合 物で処理 すると、そ れらプロ ーブはd鎖のLys480に 結 合し 、ATPase活 性 やATPか ら のEP形成 能 を 低下させ るが小分 子リン酸 化基質であ るア セ チル リ ン 酸(AcP)か らのEP形成 能は保持 している 。この様 な諸活性 への影響は 、d鎖の Lys501に フ ル オレセイ ンイソチ オシアネ ート(FITC)の 導入によ っても観 察される。P型 ATPaseで そ れ らLys残 基前 後 の アミ ノ 酸配 列 は 保存 さ れて お り 、そ れ らLys残基周辺 は ATP結合 部 位 であ る と考 え ら れて い た。FITCプロ ーブは酵 素の構造 変化を感知 する螢光 プロー ブとして 使用され てきたが 、P型ATPaseにおい てピリド キサール プローブをそのよ うに螢光プローブとして使用された例はない。
本研究では、ピリドキサール螢光を測定する事により、各反応中間体形成に伴う酵素の 構造変化を検出できるのかを検討した。さらに、a鎖当たりのATPから形成される最大の EP量 の 見 積 も り も 検 討 し た 。 本 論 文 の 要 旨 は 以 下 の 3点 で あ る 。 lPLPやAP2PLがd鎖Imol当たり0.5mol結 合するまでは、ATPase活性は50%まで低下し それらプローブはLys480に優先的に結合するが、 鎖にそれ以上結合してもさらなる ATPase活性の低下とLys480への結合は観察されない。また、EP形成量がATP ase分子の 半分にあるいは全てに起きるのか、研究室間の測定法などにより様々な見解がなされてい たが、酵素標品の精製方法や比活性に関わらずATPから形成される最大のEP量は、 鎖 Imol当たり0.5 molである事を示した。
っまり、ピリドキサールプローブの結合量やEP形成量を 鎖を分離し見積もる事によ り、膜結合型Na+,K+‑ ATPaseがダイプロトマー以上の構造で機能していることを明らかに した。
2Lys480に結 合したAP2PLプローブは 、AcPからのE2P形成後の構造変化を螢光強度の 増加として感知することを示した。ATPを添加しても、AP2PL処理によりEP形成能が低 下したにも関わらずAcPで観察されたよ.うな螢光の増加が起きた。AP2PL修飾酵素をさら にFITCで処!理するとFITCはd鎖Imol当たり0.9mol Lys501に結合し、ATPからのEP形成 能のみ数%レベルまで低下するが、AcPやATPで引き起こされるAP2PL螢光の増加にiま影 響しない。一方、AP2PL‑ FITC修飾酵素のFITCプローブはATP添加による螢光変化を生じ ない。また、E2Pと阻害剤であるouabainとの複合体であるouabain‑E2Pの構造状態の違い をAP2PLプローブにより初めて検出できた。
ピリドキサールプローブがAcPからのE2P形成後、さらにFITCプローブでは観察されな いATPに よ るEP形 成 以 前 の 構 造 変 化 を モ ニ タ ー で き る こ と を 明 ら か に し た 。 3反応サイクル中にATPは、NaElへのEP形成に関わるpMオーダーのhigh affinity site とKE2からNaElへの転移を促進するmMオーダーのlow affinity siteへの2つの反応ステッ プに関わ ると報告されている。ATPからのEP形成能を失ったAP2PL‑FITC修飾酵素を用 い、AP2PL螢光でhigh affinity siteへのATPの結合による2種類の構造変化を、両螢光で low affinity siteへのATPの作用を観察できた。これは、AP2PLやFITC処理後もKE2から NaElへの転移を促進するATPの作用が残存し、かつその効果を両螢光変化としてモニ ターできることを示した。
FITC修飾酵素のAcPからのE2P形成による螢光変化量に比ベ、AP2PL‑ FITC修飾酵素の それは約半分の値を示した。このことはAP2PLが結合したd鎖上のFITCプローブは螢光 変化せず 、残りの半 分のd鎖 に結合したFITCのみの螢光 が変化する と考えられる。
AP2PLとFITC螢光をモニターすることにより、ATPの結合で引き起こされるオリゴマー 内の異な る 鎖で起 きる様々な 構造変化を 同時に検出できることを示唆している。
AP2PLやFITC処理によりATPの結合が阻害されAT Pase活性やATPからのEP形成を低下 すると考えられていたが、それらプローブで処理後もATPの結合能は保持していることを
【 ‑32P]ATPを 用 い 遠 心 法 に て 直 接 結 合 量 を 見 積 も る こ と に よ り 示 し た 。 今までATP結合部位への親和標識試薬としてのみ用いられてきたAP2PLやFITCプロー
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ブで、ATPで引き起こされる酵素の構造変化をモニターする螢光プローブとして利用でき ることを初めて示した。以上の結果から、膜結合型Na+,K+‑ATPaseが(a p)2のダイプロト マー以上で働き、その反応サイクル中にATPがd鎖に相をずらして結合ついでりン酸化 し、イオンを輸送していると考えられる。
学位論文審査の要旨 主 査 教授 谷ロ和彌 副 査 教授 矢澤道生 副査 教授 菊池九二三 副 査 教授 田村 守
学位論文題名
Fluorescence Probes at Lys‑480 and Lys‑501 inQ‑Chain of Na+ , K+‑TPaseCanSensetheMu1 伍 pleATPBinding InduCedCOnformadon 甜ChangeS
―― OligomeriCNatureofNa 十, K 十‐ATPaSe ―−
(Na+,K+‑ATPasea鎖 の り ジ ン480と り ジ ン501に 結 合し た螢 光プ ロー プに よる 多様 なATP結合 で引 き 起こ され る構 造変 化の 感知Na+ ,K゛ ・ATPaseのオ1Jゴ マー 性質)
細胞 内外 のNa+とK+の濃 度勾 配は 、Na十,K゛‑パIRlseがATP加 水分解に伴い細胞外 ヘNa゛ を細 胞内 へK゛ を能 動輸 送す るこ とにより形成される。ATPの化学エネルギーの イ オ ン 輸 送 エ ネ ル ギ ー へ の 変 換 機 構 に つ い て の 知 見 を 得 る た め 螢 光 プ ロ ー ブ を Na゛,K二十―A冊)aseに導入して、反応中間体形成に伴う酵素の動的な構造変化の解析を試 みた。
1ピ リ ド キ サー ルリ ン酸 (PIJ)) やPLP分 子 にAMPを りン 酸エ ステ ル結 合 し合 成さ れ たAP2PLはNa゛ ,K二 十 一ATPaseのa鎖 のLys480に1mol当 たり0.5mol結 合し バrPaSe 活 性 を50% ま で 低 下 し た 。 し か しLyS480へ の そ れ 以 上 の 結 合 とATPase活性 の低 下 は 観 察 さ れな か った 。ま た、ATPから 形成 さ れる 最大 のり ン酸 化中 間体 、EP量は 、a 鎖lm01当たりO.5m01である事を初めて直接証明した。
2 AP2PL処 理 に よ りEP形 成 能 が 低 下 し た に も 関 わ ら ずLys480に 結 合 し たAP2PL プ ロ ー ブ 螢光 は 、ATPを 添加 する と、AcPで 観察 され たよ うな 螢光 の増 加 を示 した 。 AP2PL修 飾 酵 素 を さ ら にFITCで 処 理 す る とFITCはa鎖1mol当 た り0.9molLys501 に 結 合 し 、ATPか ら のEP形 成 能 を 数 % レ ベ ル ま で 低 下 し た が 、AcPやATPで 引 き 起 こ され るAP2PL螢 光の 増加 には 影響 を与 えなっかった。又AP2PLプ ロープ螢光により、
E2Pと 阻 害 剤 で あ るouabamと の 複 合 体 で あ るouabam−E2Pの 構 造 状態 の 違い が明 か にされた。
3ATPか ら のEP形 成 能 を 失 っ たAP2PL′FHC修 飾 酵 素 を 用 い 、AP2PL螢 光 でhlgh a仟mlけs辻eへ のATPの 結 合 に よ る2種 類 の 構 造 変 化 を 、 両 螢 光 で1cwaff弧iけsite へ のATPの作 用を 観察 でき た。 事実 これ らの標品がA.TPの結合能 は保持していること を[a―32P]ATPを用い遠心法にて直接結合量を測定し示した。
以上の結果から、膜結合型Na+,K+―ATPaseが(aロ):のダイプロトマー以上で働き、
そ の 反応 サイ クル 中にATPがa鎖 に相 をず らし て結 合つ いで り ン酸 化し 、イ オンを輸 送 しているとする仮説を提出した。従来の研究でこのような観点からオリゴマー構造の 存 在を示唆した研究はみられず、本分野の研究の進展に寄与することは明白である。よ っ て 申請 者は 北海 道大 学博 士( 理学 )の 学位 を授 与さ れる 資 格あ るも のと 認める。