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博 士 ( 工 学 ) 角 田 直 人

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 角 田 直 人

学 位 論 文 題 名

部 位 別 特 性 を 考 慮 し た 生 体 内 温 度 予 測 プ ロ グ ラ ム の 開 発 と 温 熱 環 境 評 価 へ の 応 用 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  省 エ ネ ル ギ ー 性 を 考 慮 し た 床 暖 房 あ る い は イ ン テ リ ジ ェ ン ト ビ ル で の バ ー ソ ナ ル 空 調 , 車 室 内 空 調 な ど 不 均 一 な 温 熱 環 境 に 対 す る 精 度 の 高 い 評 価 法 と 制 御 法 が 求 め ら れ て い る . 本 研 究 は , そ れ ら の 要 請 に 対 応 す る た め 部 位 別 特 性 を 考 慮 し た 生 体 内 温 度 予 測 プ ロ グ ラ ム を 開 発 し , 多 様 な 温 熱 環 境 の 評 価 を 可 能 と す る 温 熱 環 境 評 価 シ ミ ュ レ ー タ の 確 立 に 向 け て な さ れ た も の で あ る . 従 来 の 温 熱 環 境 評 価 で 用 い ら れ て き た 数 理 モ デ ル は , 人 間 を 質 点 系 と み な し 集 中 定 数 化 さ れ た も の で , 不 均 一 な 温 熱 環 境 の 評 価 に は 原 理 的 に 対 応 が 不 可 能 と い え る .

  本 研 究 で 開 発 し た プ ロ グ ラ ム の 主 な 特 徴 は 以 下 の と お り で あ る .1) 生 体 の 解 剖 と 機 能 の 面 か ら 人 体 を16部 位 に 分 割 し , さ ら に 各 部 位 を 内 部 構 造 , 機 能 , 熱 移 動 現 象 を 考 慮 し 円 筒 眉 モ デ ル と し た .2) 環 境 と の 熱 授 受 , 生 体 内 の 熱 伝導 ,血 液に よる 熱輸 送,

産 熱 を 忠 実 に 再 現 す る 各 組 織 お よ び 動 脈 系 , 静 脈 系 に つ い て の 生 体 内 熱 移 動 方 程 式 の 数 値 解 法 に 基 づ い て お り ,3) 特 に , 定 常 状 態 の 解 法 に つ い て は 極 め て 効 率 的 な ア ル ゴ リ ズ ム と し た .4) 生 理 学 的 知 見 を 基 に , 発 汗 , 血 流 , ふ る え 産 熱 の 体 温 調 節 出 力 量 を 与 え る プ ロ グ ラ ム を 組 込 ん だ .5) 部 位 毎 の 温 熱 環 境 因 子 の 入 カ の み で , 皮 膚 層 か ら 内 臓 層 ま で の 温 度 と 熱 流 束 分 布 お よ び 詳 細 な 各 部 位 各 層 毎 の 動 脈 , 静 脈 温 度 の 予 測 値 を 得 る こ と が で き る ・

  次 に , 生 体 内 温 度 予 測 プ ロ グ ラ ム の 精 度 向 上 の た め の 基 礎 デ 一 夕 の 収 集 を 目 的 と し て 被 験 者 実 験 を 行 っ た . 実 測 結 果 と 計 算 結 果 を 比 較 検 討 し , 本 研 究 の プ ロ グ ラ ム の 有 効 性 を 確 認 し た . 最 後 に , 温 熱 環 境 評 価 シ ミ ュ レ ー タ と し て 活 用 す る 場 合 に 必 須 な , 環 境 と の 熱 授 受 の 対 流 熱 伝 達 と 放 射 熱 伝 達 の 計 算 に つ い て 独 自 に 開 発 し た プ ロ グ ラ ム に つ い て 述 ベ , 環 境 と の 熱 授 受 の 面 か ら 部 位 別 特 性 を 考 慮 す べ き 具 体 例 を 示 し た .   本 論 文 は9章 よ り 構 成 さ れ , 各 章 の 概 要 を 以 下 に 述 べ る .

  第1章 は , 序 論 で あ り , 人 間 の 温 熱 生 理 状 態 に 基 づ く 温 熱 環 境 評 価 の た め の 生 体 内 温 度 予 測 プ ロ グ ラ ム の 開 発 の 意 義 を 述 べ た .

  第2章 で は , 人 体 の 熱 移 動 モ デ ル お よ び 環 境 と の 熱 授 受 の 部 位 別 特 性 に 関 す る 既 往 の 研 究 を 概 説 し , 本 研 究 の 目 的 お よ び 位 置 づ け を 述 べ た ・

  第3章 で は , 環 境 と の 熱 授 受 , 熱 伝 導 , 産 熱 , 血 流 に よ る 熱 輸 送 を 記 述 す る 生 体 内 熱 移 動 方 程 式 を 提 示 し , そ の 数 値 解 法 に つ い て 検 討 し た . ま た 数 値 計 算 対 象 の 生 体 に つ い て , 本 研 究 で は 生 体 機 能 の 面 か ら 人 体 を 大 き く16分 割 し た モ デ ル を 考 え , 各 部

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位はその内部構造に着目し,円筒眉モデルとした.定常状態の生体内熱移動方程式の 解法として,効率的なアルゴリズムを提案した.すなわち産熱と血流を含む生体内熱 移動方程式の一般解を,変形Bessel 関数の線形結合によって表わせることを示し,そ の解と領域分割法の概念を基に,動脈血液,静脈血液の熱収支式との連立解法を示し た.また,非定常状態の生体内熱移動方程式の解法のための離散定式化を説明し,組 織,動脈血液,静脈血液の熱収支式の連立解法を示した.

  

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章では,体温調節出力量の数理モデルについて述べた.体温調節機構の調節様 式としては血流量調節,発汗量調節,産熱量調節が発達しているが,生理学的知見に 基づき,それそれの調節様式についての数理モデル式を検討し,体温調節出力量の算 出プログラムを開発した・

  

第5 章では,生体内温度予測ブログラムによる計算結果とその考察を述べた.まず,

比較的実測値の揃っている大腿部の計算結果を中心に,生体内熱移動方程式の一般解 の特性,各項の寄与の割合について考察した.次に,中立領域と考えられる温熱環境 条件下の全身のシミュレーションを行い,各部位の内部温度,血液温度,放熱量につ いて検討した.計算結果はいずれも,過去に報告された断片的な深部温度の実測結果 と適合し,その温度分布は部位別特性を反映しているものと考えられた.さらに,温 熱環境変化に伴う非定常シミュレーションを行った.温熱環境条件がステッブ変化し た場合を想定し,体温調節系の血流量調節の効果の妥当性について検討した.環境が 低温側に移行したときは,血流量調節により,深部温の低下が抑制されること,同時 に誘発さ れる皮膚温 の低下が, 放熱量を抑 制するという過程を定量的に示した・

  

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章では,生体内温度予測プログラムの精度を一層高めるための基礎データの収 集を目的として行った被験者実験について述べた.実験は,温熱環境条件の制御可能 な空気環境試験室内にて行った.主要な測定項目は全身皮膚温,直腸温,鼓膜温,産 熱量で, 温熱環境因 子と共に連続測定した.設定条件は

6

種で,計18 例の基礎デー タを得た.次に,実測結果と生体内温度予測プログラムによる計算結果を設定条件毎 に比較検討した.計算結果は実測結果を概ね再現することが示された.皮膚温につい てみると,部位別特性を反映した結果となり,下腿部,足部を除けぱ実測値と計算値 の差は

1

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℃以内の範囲となった.また,計算値と実測値の差が相対的に大きかった 下腿部,足部でも吹出し気流の乱れ成分の影響をそれそれの部位に与えることによっ て,実体に近づけることが可能であると考えられた.直腸温にっいては気温26 ℃〜 32 ℃ の条件で,その差は0 .3 ℃以内となり,本研究のプログラムによる組織内部温度の予 測精度は良好なものであることが示された.

  

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章は,上記のプログラムを温熱環境評価シミュレータとして活用する場合に必 須な,環境との熱授受の対流熱伝達計算モジュールについての章である.本研究では 頭部・頸部に代表される複雑な曲面形状や躯幹部と四肢との相対的位置関係の変化に よる多様な姿勢条件にも対応可能な気流解析プログラムを独自に開発した.そのため,

形状適合 のための

BFC

法と計算効率向上のためのCFSV 法の活用を考えた.開発プロ グラムの有用性を示すための例として,インテリジェントビル空調で採用されること が多い床吹出し気流を取り上げ,シミュレーションを行った.人体という制限物に対 する床吹出し気流の全体特性と速度ベクトルの部位間による大きな変異,特に下腿部,

大腿部の流速および乱れが大きいことを示した.

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   第8 章では,温熱環境評価シミュレータへの展開のための人体と環境との放射熱伝 達計算モジュールについて述べた.本研究では,放射熱伝達計算のための形態係数の 算出法として数値積分法を採用した.具体的には微小面要素で構成される人体モデル を作成し,その面要素と壁面要素の形態係数を求めることが可能なプログラムとなっ ている.応用例として,小オフイススベースでの部位と壁面の形態係数,部位同士の 形態係数の実数値を示し,人体の放射熱伝達の部位別特性を定量的に明らかにした・

   第9 章は総括であり,本研究で得られた成果をまとめ,今後の展望について述ぺた.

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学 位 論 文 審 査の 要 旨 主 査    教 授    落 藤    澄 副 査    教 授    持 田    徹 副 査    教 授    絵 内 正 道 副査   助教授   横山真太郎

学 位 論 文 題 名

部 位 別 特 性 を 考 慮 した 生 体 内 温度 予 測 プ ログ ラ ム の 開 発 と 温 熱 環 境 評 価 への 応 用 に 関す る 研 究

  省 エ ネ ル ギ ー 性 を 考 慮 し た 床 暖 房 あ る い は イ ン テ リ ジ ェ ン ト ビ ル で の バ ー ソ ナ ル 空 調 , 車 室 内 空 調 な ど 不 均 一 な 温 熱 環 境 に 対 す る 精 度 の 高 い 評 価 法 と 制 御 法 が 求 め ら れ て い る . 本 論 文 は , そ れ ら の 要 請 に 対 応 す る た め 部 位 別 特 性 を 考 慮 し た 生 体 内 温 度 予 測 ブ ロ グ ラ ム を 開 発 し , 多 様 な 温 熱 環 境 の 評 価 を 可 能 と す る 温 熱 環 境 評 価 シ ミ ュ レ ー タ の 確 立 に 向 け て な さ れ た も の で あ る ・

  こ の 研 究 で 開 発 さ れ た プ ロ グ ラ ム の 主 な 特 徴 は 以 下 の と お り で あ る .1) 生 体 の 解 剖 と 機 能 の 面 か ら 人 体 を16部 位 に 分 割 し , さ ら に 各 部 位 を 円 簡 眉 モ デ ル と し た . 2) 環 境 と の 熱 授 受 , 生 体 内 の 熱 伝 導 , 血 液 に よ る 熱 輸 送 , 産 熱 を 忠 実 に 再 現 す る 各 組 織 お よ び 動 脈 系 , 静 脈 系 に つ い て の 生 体 内 熱 移 動 方 程 式 の 数 値 解 法 に 基 づ い て お り ,3) 特 に , 定 常 状 態 の 解 法 に つ い て は 極 め て 効 率 的 な ア ル ゴ リ ズ ム と し た . 4) 生 理 学 的 知 見 を 基 に , 発 汗 , 血 流 , ふ る え 産 熱 の 体 温 調 節 出 力 量 を 与 え る プ ロ グ ラ ム を 組 込 ん だ .5) 部 位 毎 の 温 熱 環 境 因 子 の 入 カ の み で , 皮 膚 層 か ら 内 臓 層 ま で の 温 度 と 熱 流 束 分 布 お よ び 詳 細 な 各 部 位 各 層 毎 の 動 脈 , 静 脈 温 度 の 予 測 値 を 得 る こ と カsで き る .

  さ ら に , 被 験 者 実 験 を 行 い , 実 測 結 果 と 計 算 結 果 を 比 較 検 討 す る こ と に よ り , プ ロ グ ラ ム の 有 効 性 を 確 認 し て い る . 最 後 に , 温 熱 環 境 評 価 シ ミ ユ レ ー タ と し て 活 用 す る 場 合 に 必 須 な , 環 境 と の 熱 授 受 の 対 流 熱 伝 達 と 放 射 熱 伝 達 の 計 算 に つ い て 独 自 に 開 発 し た プ ロ グ ラ ム に つ い て 述 ベ , 環 境 と の 熱 授 受 の 面 か ら 部 位 別 特 性 を 考 慮 す べ き 具 体 例 を 示 し て い る .

  本 論 文 は 9章 よ り 構 成 さ れ , 各 章 の 概 要 を 以 下 に 述 べ る .   第1章 は , 序 論 で あ り , 生 体 内 温 度 予 測 プ ロ グ ラ ム の 開 発 の 意 義 を 述 べ て い る ・   第2章 で は , 人 体 の 熱 移 動 モ デ ル お よ び 環 境 と の 熱 授 受 の 部 位 別 特 性 に 関 す る

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既 往 の 研 究 を 概 説 し , 本 研 究 の 目 的 お よ ぴ 位 置 づ け を 述 べ て い る .    第3 章 では, 環境 との 熱授受 ,熱 伝導,産熱,血流による熱輸送を記述する生 体 内熱 移動方程式を提示し,その数値解法について検討している.特に,各部位 を 円簡 眉モデルとした場合における,定常状態の生体内熱移動方程式の解法とし て , 変 形 Bessel 関 数 を 用 い た 効 率 的 な ア ル ゴ リ ズ ム を 提 案 し て い る ・    第4 章では,生理学的知見に基づき,体温調節機構の血流量調節,発汗量調節,

産 熱量 調節の数理モデル式を検討し,体温調節出力量の算出プログラムを開発し ている.

   第5 章 では, 生体 内温 度予測 プロ グラムによるシミュレーションを行い,各部 位 の内 部温度,血液温度,放熱量の計算値はいずれも,過去に報告された実測結 果 と適 合し,部位別特性を反映していることを示している.また,体温調節系の 血 流 量 調 節 が 温 度 分 布 に 与 え る 影 響 を 定 量 的 に 示 し て い る .    第6 章 では, 生体 内温 度予測 プロ グラムの精度を一層高めるための基礎データ の 収集 を目的として行った被験者実験について述べている.計算結果は実測結果 を概ね再現し,プログラムの有効性が示されている.

   第7 章 は,上 記の プロ グラム を温 熱環境評価シミュレータとして活用する場合 に 必須 な,環境との熱授受の対流熱伝達計算モジュールについての章である.形 状 適 合 の た め の BFC 法と 計算 効率 向上 のため のCFSV 法 を活 用した 独自 のプ ログ ラ ムを 開発し,人体周辺の気流シミュレーションを行っている.人体という制限 物 に対 する 気流 特性と 速度 ベク トル の部位 間に よる 大きな 変異 を示している.

   第8 章 では, 温熱 環境 評価シ ミュ レータへの展開のための人体と環境との放射 熱 伝達 計算モジュールについて述べている.人体の表面要素と壁面との形態係数 の 実数 値を示し,人体の放射熱伝達の部位別特性を定量的に明らかにしている.

   第9 章 は総括 であ り, 研究の 成果 をまとめ,今後の展望について述ぺている.

   これ を要するに,著者は,生体内熱移動方程式,体温調節機構の数理モデルを 基 に部 位別特性を考慮した生体内温度予測プログラムを開発し,その有効性を示 している.さらに,部位毎の対流熱伝達,放射熱伝達の計算モジュールを開発し,

生 体内 温度予測プログラムと組み合わせることにより,不均一な温熱環境に対す る 精度 の高い評価シミュレータを構築できることを示しており,温熱環境工学,

空 気調 整工学および人間環境計画学の進展に寄与するところ大なるものがある・

   よって,著者は北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格があるものと認

める.

参照

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