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博 士 ( 工 学 ) 今 井 忠 男

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 今 井 忠 男

     学 位 論 文 題 名

き 裂 網 モ デ ル に よ る 石 炭 の ガ ス 透 過 性 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  一般に炭層切羽のガス透過性は複雑に変化するため、ガス抜き等の保安技術の進歩は停 滞し、ガス湧出やガス突出等に関連した災害の防止対策も不完全なままである。この原因 は、石炭のガス透過性がき裂の開閉に支配されることに由来している。石炭のき裂は、内 部間隙ガス圧、外部応カに応じて可逆的に開閉するだけでなく、応力状態によってダイラ タンシーやクリープ硬化が起こり、不可逆的に開閉する。この理由で炭層のガス透過性は 地 圧 、 地 熱 お よ び 経 過 時 間 の パ ラ メ ー タ に 応 じ て 変 化 す る と 考 え ら れ る 。   本研究では、石炭のガス透過性に対する間隙ガス圧、応力、温度および時間の影響を解 明した上で、ガス透過のシミュレーションによる予測法を開発することを目的にしている。

実際には、石炭のガス透過性に対する上記パラメータの効果を実験的に明らかにした。更 に、新たに提案したき裂網モデルによって実験結果を確認し、信頼性の高いガス透過シミ ユレーション法を開発した。以下、本論文各章の概要を示す。

  第1章は序論で、石炭のガス透過性およびガス突出現象に関する既往の研究の問題点を 指摘し、本論文の目的と立場を明らかにした。

  第2章では、試料に過大な差圧をあたえず、高い間隙ガス圧を作用させることのできる ガス透過試験法を説明し、実験結果から石炭のガス透過性に対する応カおよび間隙ガス圧 の影響にっいて明かにした。すなわち、一定間隙圧下ではダルシ則が成立し、ガス透過性 は外部応カの増加に応じて指数関数的に大きく減少する。また、外部応力一定でも内部間 隙圧の増加に応じて僅かに低下し、一定値に収束する。更に、ガス透過性は応力履歴を受 けて不可逆的に低下する。これらの実験結果から、石炭のガス透過経路は内外圧によって 開閉するき裂によって構成されていることを実証した。

  第3章では、き裂網モデルを用いて石炭のガス透過挙動を数値計算によって明らにした。

具体的には、き裂網をシミュレーションによってランダムに発生させるとともにパLコレ ーション過程で開閉させ、き裂網パターンの特性とそのガス透過性との関係を数値計算に よって調べた。この結果ランダム発生過程では、き裂発生数とき裂網の透過性とは1次関 数的な増加関係になった。一方、パーコレーション過程では、き裂の閉塞数とき裂網の透 過性とは指数関数的な減少関係になった。以上のシミュレーション結果と、既往の実験結 果の比較考察から、石炭のガス透過性が、圧縮過程ではき裂のパーコレーションモデルに したがって低下し、石炭の破壊過程では、き裂網のランダムな発生モデルにしたがって増 大することを実証した。

  第4章では、石炭の非定常ガス透過現象を数値計算によって検討した。モデルの構成に 当たっては、石炭中に透過き裂網と非透過き裂網を仮定した。これらのき裂網にガスが波

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及すると、透過き裂網と非透過き裂網との間に有効間隙ガス圧が発生し、透過き裂が開閉 する。本モデルによってガス透過シミュレーションを行い、非定常ガス透過現象のメカニ ズムを調べた。このシミュレーション結果は、石炭のガス透過実験における非定常変化と よく一致したことから、本モデルの有効性が実証された。また、実際の石炭のガス透過性 がダルシ則からずれる原因も本モデルによって 説明できた。

  第5章では、圧縮 破壊で起こるき裂配向が、石炭のガス透過性とガス圧勾配に与える影 響を数値計算によって究明した。具体的には、単軸圧縮破壊の条件下で形成されるき裂網 の異方性を検討し、このき裂網に生じるガス圧分布の特異性を明らかにした。また、この ガス圧分布による石炭の破壊条件にっいて論じ、最大主応力方向に偏向したき裂網はガス 透過性に対して異方性が大きく、最小主応力方 向のき裂には閉塞Neckが発生することが 明らかになった。また、炭層切羽に垂直に配向したき裂問題でも、ガス流出をせき止める Neckが発生し、急峻なガス圧勾配が生起するこ とが立証された。炭壁のガス透過き裂網 にNeckが発生すると、自由面と平行なき裂面に 大きな間隙ガス圧が作用するため、炭壁 圧出やガス突出の危険性が増大することが解明 された。

  第6章では、石炭 のガス透過性に対する応力、温度および載荷時間の効果 を実験によ て究明した。実際には、温度をパラメータにとって石炭のクリープ試験結果からクリープ パラ メー タの 効果 をWLF式に よっ て評 価し 、WLF式が 温度 効果 以外 に応 力効 果の 定式 化にも適用できることを確認した。また、石炭のクリープ現象にとって応カと温度の効果 は等価で、応カと温度の問に換算式が成立することを実証した。更に、石炭のクリープお よびガス透過試験結果から、ひずみおよびガス透過量比を、作用応カに温度効果分を加味 した実効応カの関数として近似し、地圧を受けた炭層のガス透過性に対する温度効果を論 理的に説明した。

  第7章では、各章 で得られた研究成果をまとめ、この研究分野の発展性を 展望した。

  以上、本研究では、石炭のガス透過性に対するき裂網モデルの有効性を実証し、石炭内 のき裂網に対する間隙ガス圧、応力、温度、クリープ時間の影響を明らかにすることで、

複雑な石炭のガス透過メカニズムを解明した。

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学位論文審査の要旨 主査    教 授    中島    巌 副査   教授    福迫尚一郎 副査   教授    金子勝比古 副査   助教授   朝倉國臣      学位論文題名

き裂網モデルによる石炭のガス透過性に関する研究

  一般に炭層切羽のガス透過性は複雑に変化するため、ガス抜き等の保安技術の進歩は停滞 し、ガス湧出やガス突出等に関連した災害の防止対策も不完全なままである。この原因は、

石炭のガス透過性がき裂の開閉に支配されることに由来している。石炭のき裂は、外部応力、

内部間隙ガス圧に応じて可逆的に開閉するだけでなく、状況によってはダイラタンシーやク リープ硬化が起こり、不可逆的に開閉する。このような理由から、炭層のガス透過性は地圧、

地熱および経過時間のパラメータに応じて変化すると考えられる。

  本論文では、石炭のガス透過性に対する応力、間隙ガス圧、温度および時間の影響を解明 した上で、ガス透過のシミュレーションによる予測法を開発することを研究目的にしている。

具体的には、石炭のガス透過性に対する上記パラメータの効果を実験的に明らかにした。更 に、新たに提案したき裂網モデルによって実験結果を確認し、信頼性の高いガス透過シミュ レ ー シ ョ ン 法 を 開 発 し て い る 。 以 下 、 本 論 文 各 章 の 研 究 成 果 を 要 約 す る 。   第1章は序論で、石炭のガス透過性およびガス突出現象に関する既往の研究の問題点を指 摘し、本論文の目的と立場を明らかにしている。

  第2章では、試料に過大な差圧をあたえず、高い間隙ガス圧を作用させることのできるガ ス透過試験法を説明し、本法の実験によって石炭のガス透過性に対する応カおよび間隙ガス 圧の影響を明かにしている。すなわち、一定間隙圧下ではダルシー則が成立し、ガス透過性 は外部応カの増加に応じて指数関数的に大きく減少する。また、外部応力一定でも内部間隙 圧の増加に応じて僅かに低下し、一定値に収束する。更に、ガス透過性は応力履歴を受けて 不可逆的に低下する。これらの実験結果から、石炭のガス透過経路は内外圧に応じて開閉す るき裂によって構成されていることを実証している。

  第3章では、き裂網モデルを用いて石炭のガス透過挙動を数値計算によって明らにしてい る。具体的には、き裂網の構成に当って平面座標にき裂のランダム発生過程とパーコレーシ ヨン閉塞過程を設定し、き裂網パターンの特性とそのガス透過性との関係を数値計算によっ て調べている。この 結果、ランダム発生過程ではき裂発生数とき裂網の透過性とは1次関数 的な増加関係になり、一方、パーコレーション過程ではき裂の閉塞数とき裂網の透過性とは 指数関数的な減少関係になる。以上のシミュレーション結果と既往の実験結果の比較考察か ら、石炭のガス透過性が、圧縮過程ではき裂のパーコレーション閉塞モデルに従って低下し、

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破 壊 過 程 で は き 裂 の ラ ン ダ ム 発 生 モ デ ル に 従っ て 増 大す る こ とを 実 証 し てい る 。   第4章では、石炭の非定常ガス透過現象を数値計算によって検討している。具体的には、

透過き裂網と非透過き裂網を組合わせた二重パーコレーションき裂網モデルを提案した。こ れらのき裂網にガスが波及すると、透過き裂網と非透過き裂網との聞に有効間隙ガス圧が発 生し、透過き裂が開閉する。本モデルによってガス透過シミュレーションを行い、非定常ガ ス透過現象のメカニズムを解明した。このシミュレーション結果は、石炭のガス透過実験に おける非定常変化とよく一致したことから、本モデルの有効性を実証している。また、実際 の 石 炭 のガ ス 透 過性がダ ルシー 則からず れる原 因も本モ デルに よって説 明してい る。

  第5章では、圧縮破壊で起こる異方性き裂配向が、石炭のガス透過性とガス圧勾配に与え る影響を数値計算によって究明している。具体的には、ランダムき裂網モデルにき裂の配向 密度関数を組込んだ異方性き裂網モデルを提案した。このモデルで圧縮破壊の条件下で形成 されるき裂網に生じるガス圧分布の特異性を検討した。また、このガス圧分布による石炭の 破壊条件を論じ、最大主応力方向に偏向したき裂網はガス透過性に対して異方性が大きく、

最小主応力方向のき裂には閉塞ネックが発生することを確認した。なお、炭層切羽に垂直に 配向したき裂にもガス流出をせき止めるネックが発生し、急峻なガス圧勾配が誘起すること を立証した。この結果、炭壁のガス透過き裂網にネックが発生すると、自由面と平行なき裂 面に大きな間隙ガス圧が作用するため、炭壁圧出やガス突出の危険性が増大することを解明 している。

  第6章では、石炭のガス透過性に対する応力、温度および載荷時間の効果を高分子材料の クリープ速度論によって究明している。実際には、温度をパラメータにとった石炭のクリー プ 試 験 結果 か ら クリープ パラメ ータの効 果をWLF式によ って評 価し、WLF式が温 度効果 以外に応力効果の定式化にも適用できることを確認した。また、石炭のクリープ現象にとっ て応カと温度の効果は等価で、応カと温度の間に換算式が成立することを実証している。更 に、石炭のクリープおよびガス透過試験結果から、ひずみおよびガス透過量比を、作用応カ に温度効果分を加味した実効応カの関数として近似し、地圧を受けた炭層のガス透過性に対 する温度効果を論理的に説明している。

  第7章では、各章で得られた研究成果をまとめ、この研究分野の発展性を展望している。

  これを要するに、著者は、石炭き裂網の開閉に対する外部応力、内部間隙圧、温度、クリ ープ時間の影響を究明するとともに、石炭のガス透過シミュレーションに対するき裂網モデ ルの有効性を実証し、複雑な石炭のガス透過メカニズムを解明するのに成功しており、資源 開発工学の発展に寄与するところ大である。よって、著者は、北海道大学博士(工学)の学 位を授与される資格あるものと認める。

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参照

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