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博 士 ( 工 学 ) 加 藤 和 夫

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 加 藤 和 夫      学 位 論 文 題 名

脳 波 リ ズ ム 変 動 と 事 象 関 連 電 位 に 基 づ く 両 眼 視 野 闘 争 過 程 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  人間のように左尚面眼の視野に重複部がある動物では、両眼に与えられた視覚 刺激による相互作用が生じ両眼視固有の知覚過程が生じる。その中でも時間特l生 が顕著に観測される両眼視野闘争過程と呼ばれる知覚過程がある。両眼視野闘争 過程とは、左右の眼に与えられる刺激の形や動き等カ沍いに極端に異なりーつに 融合できない場合に、ある時点では右眼に呈示された刺激図形が、他の時点では 左眼に呈示された刺激図形が知覚される過程である。この両眼視野闘争過程に 注目す ることによ り視覚系 の競合的 な情報処 理機構、 あるいは 視覚的認知 に関わ る脳高次機能に対する理解の手掛かりが得られることが期待される。

本研究 では、全頭 にわたる 脳波の多 チャンネ ル同時計 測に基づ き、ヒトを 対象に 視野闘争過 程に関連 する大脳 神経活動 を調べる ことを目 的としてい る。具 体的には、 視野闘争 過程と脳 波リズム 、あるい は事象関 連電位には 関連が あるのか、 もレある とすれば どのよう な時空間 特性を有 するのかに ついて 注目し、視 野闘争過 程に関与 する神経 活動を調 べること を目的に研 究 を 行 な っ た 。 本 論 文 は 全 体 と し て8章 か ら 構 成 さ れ て い る 。   第1章 で は、 脳 波 を用 いた視野 闘争研究 の必要性 、および 研究目的 につ いて述べる。

  第2章 は 、視 野 闘 争過 程の基礎 となる両 眼視機構 の生理学 的知見、 両眼 視野闘 争過程に関 する従来 の研究の 概略、さ らに脳波 に基づく 脳機能研究 の概略について述べる。

  第3章 で は 、 脳 波 計 測 の 実 験 装 置 、 解 析 方 法 に つ い て 述 べ る 。   第4章 で は、 運 動 、静 止縞刺激 による視 野闘争、 および融 合過程に 見ら れる自 発脳波パヮ ーの空間 分布がど のように 変化する のかを調 べた。その 結果、ロ波帯域(8・13[Hz])、ロ波帯域(16‑24[Hz])において、運動、静止縞刺 激に共 通して視野 闘争・融 合間のパ ヮーに有 意な差異 が見られ た。また、

運動・ 静止といっ た呈示図 形の性質 の違いに より、ロ 波帯域の 視野闘争時 と視野 融合時のパ ヮー差が 、運動縞 刺激では 頭頂部位 で大きい という分布 を示し たのに対し 、静止縞 刺激では 頭頂から 後頭部位 において パヮ一差が 大きい という分布 を示した 。これら の結果よ り視野闘 争過程と 自発脳波パ ワ ーに は 関連 が あ り、 対照と した視野 融合過程 と比較す るとロ波 帯域、p 波帯域 において有 意な差が 見られる ことがわ かった。 さらに、 刺激図形の 運動・ 静止という違いにより、ロ波帯域においてパヮー差の空間分布が異な ることがわかった。

(2)

  第5章では 、視野闘 争と視野 融合刺激 の交替に伴 う自発脳 波リズム 、お よび事 象関連電 位の時空 間特性を 調べた。 その結果、視野融合状態から視 野闘争 状態への 切り替わ り後、口 波分散が 後頭、後側頭部位から頭頂部位 にかけ て大きく 減衰し、 その後、 僅かな回 復を示した。一方、視野闘争状 態から 視野融合 状態への 切り替わ り後、大 きな回復が見られた。回復過程 以後の ほぼ定常 とみなせ る状態に おいて、 視野闘争状態と視野融合状態の 分散に 有意差が 見られた 。事象関 連電位に ついては、いずれの刺激切り替 わりの 場合にお いても潜時約500[ms]の陰性成分が頭頂中心に見られ、その 振 幅 に は 有 意 差 が あ った 。 こ れら の 結 果か ら 、事 象 関 連電 位 の潜 時 約 500[ms]の陰性 成分、およびば波帯域における分散の過渡的減衰過程は、主 に刺激 変化の知 覚に関わ る神経活 動を、ま た刺激切り替わり直前のほぼ定 常 とみな せる状態 において 見られた 視野闘争時 と視野融 合時のa波 帯域に おける 分散の差 は、視野 闘争・融 合の神経 活動の差を反映したものである と推察された。

  第6章では 、大脳皮 質領域で の局所的 な神経活動 を計測で きる脳磁 界計 測 により 、第5章の 実験と同 様に視野 闘争・融合 過程の交 替に伴う 自発脳 磁界口 リズムの 測定を行 った。そ の結果、 刺激切り替わり直前における視 野闘争 時の脳磁 界口波分 散は左右 頭頂近傍 で局所的な減衰を示した。この 結果か ら、左右 頭頂近傍 が視野闘 争に関与 する神経活動部位であることが 推察された。

  第7章では 、視野闘 争におけ る内的な 知覚図形交 替に伴う 事象関連 電位 につい て調べた 。実験で は、内的 な知覚図 形の切り替わりを被験者のボタ ン押しにより決定レ、これをトリガとして脳電位の計測(視野闘争実験)を 行った 。また、 比較のた め視野闘 争を生じ させるのに用いた刺激を物理的 に交替させ、それに伴う脳電位(視野融合実験)の計測を行った。その結果、

視野闘 争の内的 切り替わ りに関連 すると思 われる事象関連電位が、潜時−

400[ms]からO[ms]に かけて時 間的にブ ロードに 、また、その空間分布は左 頭頂か ら左後側 頭、左後 頭部位に かけて見 られた。一方、視野融合の物理 的切り 替わりに 関連すると思われる誘発電位は潜時‑55[ms]に見られた。そ の空間 分布は、 頭頂から 中心部位 にかけて 見られ、視野闘争の事象関連電 位の空 間分布と は差異が 見られた 。この空 間分布の差異は、刺激図形の内 的交替 、および 物理的交 替という 異なった 神経機構を反映したものと推察 される。

  第8章では、本論文で得られた結果を総括する。

(3)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査 副査

教 授 教 授 教 授 教 授 助 教授

栗 城 眞 也 清 水 孝 一 河 原 剛 一 狩 野    猛 小 林 哲 生

     学位論文題名

脳波リズム変動と事象関連電位に基づく      両 眼 視 野 闘 争 過 程 に 関 す る 研究

  人 間 の よ う に 左 右 両 眼 の 視 野 に 重 複 部 が あ る 動 物 で は 、 両 眼 に 与 え ら れ た 視 覚 刺 激 間 に 相 互 作 用 が 生 じ 両 眼 視 固 有 の 知 覚 過 程 が 生 じ る 。 そ の 中 で 、 左 右 の 眼 に 与 え ら れ る 刺 激 の 形 や 動 き 等 が 互 い に 極 端 に 異 な り ー つ に 融 合 で き な い 場 合 に は 、 あ る 時 点 で は 右 眼 に 呈 示 さ れ た 刺 激 図 形 が 、 他 の 時 点 で は 左 眼 に 呈 示 さ れ た 刺 激 図 形 が 知 覚 さ れ 、 こ れ が 交 互 に 繰 り 返 す と い う 過 程 が あ る 。 こ の 過 程 は 両 眼 視 野 闘 争 と 呼 ば れ 視 覚 系 の 競 合 的 な 情 報 処 理 機 構 、 あ る い は 視 覚 的 認 知 に 関 わ る 脳 高 次 機 能 に 対 す る 理 解 の 手 掛 か り に な る こ と が 期 待 さ れ る 現 象 と し て 注 目 さ れ て い る 。 本 研 究 で は 、 全 頭 に わ た る 脳 波 の 多 チ ャ ン ネ ル 同 時 計 測 に 基 づ き 、 ヒ ト を 対 象 に こ の 視 野 闘 争 過 程 に 関 連 す る 大 脳 神 経 活 動 を 調 べ る こ と を 目 的 と し て い る 。 具 体 的 に は 、 視 野 闘 争 に 伴 う 脳 波 リ ズ ム の 変 動 と 事 象 関 連 電 位 に つ い て 、 そ の 時 空 間 特 性 を 調 べ る こ と に よ り 、 基 盤 と な る 脳 の 神 経 活 動 を 検 討 レ て い る 。 本 研 究 の 主 な 成 果 は 以 下 の 点 に 要 約 さ れ る 。

(1) 運 動 、 お よ び 静 止 縞 刺 激 を 用 い て 視 野 闘 争 と 視 野 融 合 状 態 に お け る 自 発 脳 波 パ ヮ ー の 特 性 を 計 測 し て い る 。 そ の 結 果 、a波 帯 域 、 ロ 波 帯 域 に お い て 、 二 つ の 過 程 間 で 自 発 脳 波 パ ヮ ー に 有 意 な 差 が あ る こ と を 観 測 し 、 こ の パ ヮ 一 差 が 視 野 闘 争 と 視 野 融 合 間 の 神 経 活 動 の 差 を 反 映 し た も の で あ る と 指 摘 し て い る 。 さ ら に 、 刺 激 図 形 の 運 動 ・ 静 止 と い う 属 性 の 違 い に よ り 、 ば 波 帯 域 に お い て 視 野

(4)

闘 争 と 視 野 融 合 の パ ヮ ー 差 の 空 間 分 布 が 異 な る こ と を 見 出 し た 。 (2)視野闘争と 視野融合を生じさせる刺激を交替したときに見られる自発脳 波ロリズムの変化と事象関連電位の時空間特性を調べる実験を行なっている。

その結果、刺激図形交替後、事象関連電位には潜時約500[ms]に陰性成分が生じ、

他方、脳波ロ波分散(パヮ一)には過渡的な減衰・回復過程が生じることを観 測し、これらは刺激図形の変化の知覚に関わる神経活動を反映レていると指摘 している。また回復過程以後の定常状態では、視野闘争と視野融合間の脳波ロ 波分散に有意な差を認めている。

(3)大 脳皮質の神 経活動を局所的に検出できる脳磁界により、(2)の実験 と同様に視野闘争と視野融合刺激の交替による自発脳磁界aリズムの空間分布 を調べている。その結果、脳磁界a波分散の過渡的な減衰・回復過程後の定常 状態において、視野闘争と視野融合間の脳磁界ロ波分散の差が、左右頭頂近傍 で局所的に見られることを見出した。

(4)視野闘争における内的な図形交替の知覚に伴う事象関連電位の出現、お よびその時空間特性を調べるため、図形の切り替わり知覚時に行なう被験者の ボタン押レをトリガとレて脳電位を計測レている。その結果、視野闘争時に左 頭頂から左後側頭、左後頭にかけて電位成分を観測し、また対照実験とレて行 なった視野融合時の電位成分とは異なる空間分布であることを確認した。さら に、これら空間分布の差異は、刺激図形の内的交替、および物理的交替という 異なった神経機構を反映レたものと指摘している。

  以上を要するに、著者は、脳波計測を通して両眼視野闘争の大脳神経活動を 検討し、脳波a波分散と事象関連電位についての新知見を得たものであり、生 体工学に対して貢献するところ大なるものがある。

  よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと 認める。

参照

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