博士(理学)高口 真 学位論文題名
On the joint spectrum and joint numerical range of Hilbert space operators
(ヒルベルト空間作用素の合同スペクトルと 合同数域について)
学 位論 文内容の要旨
単位元をもつ可換バナハ代数の研究に、アレンズとカルデロンが初めて合同スペク トルの 慨念を 導入して 多変数関 数鎗か らのアプ ローチ を試みた のは
1955
年 のこと である。以来、可換バナハ代数における合同スペクトルの研究とともに、パナハ空間 上またはヒルペルト空間上の有界線形作用素の合同スペクトルの研究がなされて来た。A=
(Ai....,A,)をヒルベルト空聞H上の可換ナ 作用案族とすると、H上の有界線 形作用 棗の全 体B (H)
は 非可換なバナハ代数となるから、A
のアレンズ・カルデロン 型の合 同スペ クトルを 定義する ために 性A
を 含むB
(H
)の可換な閉部分代数ロの中 で考える。即ちヽ Aのロに闘する合同スペクトルびp(A)は{Ai―zl….,An‑Zn
}の ロの中でっくるイデアルがロと一致しな,いようなC の要素z (Zi,..。.Zn)の全体 として定義する。 したがってロ占(A)はロのとり方に依存する。 ロとして、Aの童交 換子パ′にとることが一般的でヽこのと著のりー(A)を童交換子スペクトルという。crA"
(A)の欠陥はAが変わるとA
とともにA′´が勘くというとこるにある。 そのため、可換バナハ代数に於ける合同スペクトルについて威り立つ スペクトル写像定理 な どの重要ナ 性質を
1
″(A)性持たぬい。 この欠点を補うものとしてアレンズ.カルデ ロン型 とは異 なるテー ラーの合同スペクトル(TT
(A)がある。これ強、
いま、
E (A ‑z
.H)をA
ーz (Ai
ーZ1,….^n
―Zn)に対応するH
上のコスズル複体とすると 考ヽE(A‑z.H)が完全でないようなzeC¨の全体として定義される。 り″(A
)、aT
(A
)は次の重要なスペクトルを内部に含む。それは合同近似固有値と合同近似随‑83−
伴 固有 値 で あ る 。そ の 定 義 は ヽ (Ak―Zk)XJ +0(j→∞ ), (k=1… ..n)で あるよ うな 単位 ペ ク ト ル 列 { xJ} が 存 在 するz ( ヱ1●II. ,Zn)をAの合 同 近 似 固 有位 と い い ヽ 同様 に 、
( ^す‑ z‑c)xJ→0(J→oo), (k=1, ... ,n)であるz£C¨を合同近似随伴固有値という。
定 理 1:n 2の と き に は 、 テ ー ラ ー 合 同 ス ペ ク ト ルCrT(A) の 境 界 部 分 は 台 同 近 似固有 値かま た強合 同近似 随伴 固有値 から成 る。
n乏3の と き は 、 上 の 定 理 は 成 り 立 た な い こ と が 、 そ の 後 ク ル ト に よ り 証 明 さ れ て いる。
単 一 の 有 界 線 形 作 用 裏 の ス ペ ク ト ル の 研 究 に は 敬 域 の 研 究 が 関 連 し て く る が 、 作 用 案 族 の 壜 合 に も 合 同 ス ペ ク ト ル に 聞 連 し て 合 同 致 城 が 研 究 の 対 鍛 に な る 。 い ま 、 A= ( ^1… . ,An) を 必 ず し も 可 換 で な い 作 用 索 族 と す る 。 Aの 合 同 数 斌W(A)は W(A) = { ( (Aix x) … .. (Anx x) )EC^ :xEH.lIxlI=1} に より 定 義 さ れ るが 、 単 一 の 作 用 案 の 鳩 合 と 異 な っ て 一 般 に はCー の 中 の 凸 集 合 と は な ら な ` 、 。 し か し 、W(A) に 含 ま れ る ニ つ の 合 同 固 有 値 を 結 ぷ 壕 分 強W (A)に 含 ま れ 、W(A)に 含 ま れ る ニ つ の 合同 近 似 固 有 盛 を結 ぷ 擦 分 はW(A)に 含ま れ る 。
定 理2:W(A)の 点z=(Zi. . . . ,z,)がW(A)の 缶 点 に な っ て い れ ば 、 zはAの 合 同 固 有 値 で あ る 。 W(A)の 点zがW(A)の 缶 点 な ら ば 、 zはAの 合 同 近 似 固 有 値 で あ る。 さ ら に、 ^k(k〓1, . .. ,n)がす ぺて亜 正規作 用素( ^k養^k乏^k^.+ ) でか つ
^P^k ^k^J責 (j≠k) の と き は 、w(A) の 凸 包 の 蝋点 怯 す ぺ てAの 合 同 固 有 値 であ り 、 W (A)の凸 包 の 端 点 は すぺ て 合 同 近 似固 有 値 で あ る。
A= ( ^I… . ,An) がH上 の 可 換 な 正 規 作 用 索 族 の と き に は 、 よ く 知 ら れ た 正 規 作 用 秦 の ス ペ ク ト ル 分 解 定 理 か ら 、 或 測 度 空 間 (Q; 肛 ) と 、 L2(0; ロ ) か らHへ の ユ ニ タ リ 作 用 素U、 Lo(0; ロ ) のn個 の 要 素 チ = ( す1, .. . , チn)が あ っ て 、 U‑1A kUt
= チkf( ↑ £L2(Q; 弘 ) ) と で 毒 る 。 し た が っ て 、 作 用 素 族Aの 性 質 は 関 数 の 族 チ :
( す1, . . , チn) の 性 質 に 帰 着 さ れ ヽ そ の こ と か ら、Aが 可 換 な正 規 作 用 素 族の と き は 、 り ″ (A) 、a.T(A) はAの 合 同 近 似 固 有 値 の 全 体 に 等 し い こ と 、W(A) が 凸 集 合 に な る こ と ヽ Aの 合 同 ス ペ ク ト ル の 凸 包 が W(A)に 等 し い こ と な ど が 容 易 に わ か る 。 そ こ で 、 単 一 の 作 用 泰 の 燭 合 と 同 じ よ う に 、 何 ら か の 意 味 で 可 換 な 正 規 作 用 素 族 の よ う な 性 質 を 持 っ た 種 々 ナ ょ 作 用 秦 族 の ク ラ ス を 考 え る 。 先 ず 、 可 換 な 作 用 案 族A=
(^1… . , ^n) に つ い ての 定 義 を 与 え る。 も し 、AJ葺^k ^kAj責(j≠k)な らば、Aは 重可
換 ‑eあ ると ¥. }* lI A lI = sup { ( E kt'I lI Ak X 11 2)7‑ : lI x 11 =1 1¥ r (A)=
sup{Iz| :zEW(A)} と 置 く 。 も し 、 Cnの 全 て の 点z (zll・ I. .Zn) に 対 し て
‖A ‑zlI― r(A ‑z) が 成 り 立 っ と き ヽ Aは 合 同 ト ラ ン ス ロ イ ド で あ る と m′
し ヽ C の 全 て の 点 z ( zI… . Zn) に 対 し て 、 |nt{ 〔 ヱk・1‖ ( ^k‑ Zk)X
いう。 も 1 2〕T:
|Ix‖ 〓l) ニd( z, CrT(A) ) で あ る な ら ば 、Aは 合 同 くGi) に 農 す る と い う 。 も し 、 ( ^1… . ,A^ ) の 一 次 結 合 か ら 成 る 作 用 泰 のn個 の 族 が 全 て 合 同 (Gi)に ■ す る と き 、 Aは 完 全 合 同 (Gi) に 馬 す る と い う 。 も し 、 Crr( A) の 凸 包 がW(A) の 凸 包 に 等 し い な ら ば、 Aは 合 同 コ ン ペ クソ イ ド で あ る と い う。
定 理 3: 童 可 換 な 亜 正 規 作 用 棗 故 A= ( AI… . , ^n) に 対 し 、 も し 、Cー の 点A=
(A| . . .An) が 作 用 棄 蕨AキA= ( ^ ナ ^1 … ,A〆 ^n) の 合 同 ス ペ ク ト ル に 馬 す る な ら ば 、 lzk| ヱ :Ak(k=1 . . . n) で あ る よ う なz (zl… . zn) でAの 合 同 ス ペ ク ト ル a・ 一 (A) に 農 す る も の が 存 在 す る 。Aぐ = ( ^ |A广 … . , ^nAF) に つ い て も 同 様 で あ る 。 系1: 童 可 換 な亜 正 規 作 用 案 族 独合 同 ト ラ ン ス ロ イ ドで あ る 。
系2:A〓 ( ^1. . . . . ^n) が 鼠 可 換 な 亜 正 規 作 用 索 族 な ら ば 、C^ の 全 て の 点z (z| 疇 レ
. . . zn) に 対 し 、 inf{ 匸Zk. |‖ (Ak−zk) キxI|2〕 声 :IIx‖=1}=d(2 a.r(A))
が 成 り 立 つ 。
可 換 ナ 作 用 索 族Aに 合 同 ス ペ ク ト ルo辛 (A) を 対 応 さ せ る 対 応 は 、 一 般 に は ハ ウ ス ド ル フ の 距 離 の 意 味 で 連 続 で な い 。 こ の 問 題 に 対 し て 、 次 の こ と が 系2か ら 導 か れ る 。 系3: Aに al( A) を 対 応 さ せ る 上 記 の 対 応 は 、 Aを 重 可 換 ナ 亜 正 規 作 用 泰 族 に 制 限 す る と 連続 で あ る 。
命 題 : 合 同 ト ラ ン ス ロ イ ド 作 用 素 族 Aの 閉 数 埴 W(A) の 凸 包 の 端 点 強 、 全 て 合 同 近 似 固 有 値 であ る 。
n個 か ら 成 る 作 用 素 族 を 上 で 定 義 し た 種 々 の 穂 類 に ク ラ ス 別 け し た と を の 包 含 関 係 を 図 示 す る と、 次 の よ う に ナ る。
|可換な正
1 /´r
ごノ冖 童可換な亜正規|ーー一冫 合同トランスロイド 丶丶丶ー
|規作用案 ――〜―〜――シ 完全合同( G,) −
H が無限次元のとき独、 ノルム・トポロジーに関して、可換な正規作用素族のクラ ス性完全 合同 (Gi )の中 で至る ところ非頒密である。後になってヽウローペル強、
合同コン ペクヽ ´イド作 用秦族 A の閉数埴W(A) が凸集合なることを旺明している。
―85−
学位論文審査の要旨 主査
副査 副査
教授 教授 教授
安藤 岸本 岡部
毅 晶 孝 靖 憲
学 位 論 文 題 名
On the joint spectrum and joint numerical range of Hilbert space operators
( ヒ ル ペ ル ト 空 間 作 用 素 の 合 同 ス ペ ク ト ル と 合 同 数 域 に っ い て )1
個 の 線 形 作 用 索 に 対 す る ス ペ ク ト ル の 概 念 ; ま ,Arens
とCalderon
に よ りn
個 の 可 換 な 線 形 作 用 素 の 族A ‑ (Ai
,A2
… ,A
″) に 対 す る 合同 ス ペ ク ト ル の概 念 に 拡 張 され た が , そ の 定 義 はA
を 含 む 可 換 ナ ょ 部 分 代 数 の 取 り 方 に 依 存 す る , 普 通 はA
の 重 交 換 子 代 数A
″ を とり ,この 合同ス ペクト ル( の集合 )をび ″(A)と書く .A"
はA
と 共 に 変 わ る た め ,n
変 数 のn
個 の 解 析 関 数 を , 族A
に 施 す 写 像 に 関 し て , い わゆ るスペ クトル 写像定 理が 成り立 たない 場合が 起こる .ー 方 ′ ] : 、aylorは ,
1
個 の 作用 索 の ス ペ クト ル を 別 の 観点 か ら 考 察 し,n
個 の 可 換な 作 用 素 の 族 に 対 し て も , そ れ に 関 連 し て 導 入 さ れ るKoszul
複 体 を 使 っ て , 新 し い 合 同 ス ペ ク ト ル の 概 念 を 導入 し た . こ れは ´I
`aylor
の 合同 ス ペ ク ト ルと 呼 ば れ ,ロT(A
) と書か れる.ゲ ″ (
A
) も 町 (A) も と も に , 各 ん ( ゴ =1,2
, …n
)の 写 像 と し て の自 然 な 性 質 のみ に 依 存 す る 合 同 近 似 固 有 値 及 び 合 同 近 似 随 伴 固 有 値 の す べ て を そ の 内 部 に 含 む . こ こ でA
= (A1
… ,A
ハ ) がA
の 合 同 近 似固 有 値 で あ ると は ,1
|4z
た ― ん2
た| | ― →0(七 →oo)( ゴ =
1
,2
, … ,n
) とな る よ う な 単位 ベ ク ト ル の 列t2あ } が存 在 す る こと である ,また ,Aが 合 同近 似随伴 固有値 である と1よ,(Al
,… ,A″)が 族(A1゛ …IA
″゛) の合同近似固有値のと き であ る.申 請者 は, 特に
n=2
のと きに は ,rIヽaylorの合 同ス ペク ト ルの どの 境界点も合同近似 固 有 値か また は合 同近 似 随伴 固有 値と なる こ とを 証明 した . この 事実 はnが3以上の場合 は成り立たないことも後に判明した.合 同近似固有値や合同近似随伴固有値は,ん(ゴ=1,2,…,n)の相互の可換性に
1
よ依存 し な い で定 義さ れ るが ,こ の他 にも 可 換性 とは 関連 な い対 象と してA
の 合同 数域W
(A
) がある.すなわちw
(A)〓(((A蛾z),…,(A渦z))I|zlI=¢1
個 の作用素のときは,数域が複 素平面の凸集合になること1
ま古典的ナょ結果である.n
個 の作 用素の族のときは,合同数 域|よ合同近似固有値及び合 同近似随伴固有値をすべて合む が,一般には凸集合とはならない.申請 者は ,数 域の 特別な位置にあ る点に注目して,必ずしも 司換ではない場合でも,
W
・くA
) の閉 包の 錐点 は 必然 的に 合同 近似 固 有値 とな るこ と を見 いだ した.また,各AJ(ゴ=1,2,…
n
)が亜正規作用索で,4゛AモA
モん゛(ゴ≠七)をみたすときは,W (A)の 閉包の端点もすべて合同近似固有値になることを示した,さ らに申請者は,
A
が重可換な 亜正規作用素からなるとき は,ゲ″(A
)と町(A)iま一致 し,族(A1
゛Al …,Aハ゛A″)の合同スペクトルのどの点も,A自身のある合同スペクトルの 点の 絶対値の2
乗となっているこ とをも示した.この結果から,C の点A
〓(A1
,…,入″)からのゲ
T
(A)への距離が次の公式で求められる,diS (A ,小舮i 轟((茎悄‥刈| )1/21 忙忙1 )
以 上の よう に ,申 請者 の研 究は ,
n
個の 作用素の族のス ペクトルの性質に関して重 要な 新しい知見をもたらすも ので,審査員一同は申請者が 博士(理学)の学位を得るのに十分な 資格あるものと認めた.‑87−