博 士 ( 理 学 ) 冲 中 学 位 論 文 題 名
泰
Studies on Primary Structure and Binding Site of Microbial Elicitors for the Induction of Defense Responses in Soybean Plant
(ダイズ植物に防御反応を誘導する病原微生物由来エリシターの一次構造 および結合部位に関する研究)
学位論文内容の要旨
【第―章】ダイズ組織内のロー1,3‐エンドグルカナ―ゼの作用による糸状菌細胞壁からのエリシター の遊離モデルの提唱
(研究の背景)
ファイ トアレ キシン は植物 が合成 する抗菌的な低分子化合物であり、その合成・蓄積fま病原体 に対す る防御 システ ムの― つであ る。ファ イ卜ア レキシ ン合成は病原体が植物ヘ侵入する際に誘 導され るが、 その誘 導は病 原体由 来のユニ ークな シグナ ル分子(エリシタ−)を植物が認巌する 結 果 起 こ る と 考 え ら れ て い る 。 以 前 私 の 研 究 室 で は 、 ダ イ ズ 疫 病 菌 (Phytophthora megasperma f.sp. glycea冫の細 胞壁中 には、 ダイズの ファイ 卜アレ キシン 合成を 強く誘導する エリシ タ―が 存在す ること を証明 した。さ らに、 このエ リシターが多糖であり、ダイズ組織内の ロ‐1,3−エン ドグルカナ―ゼ(ロEGと略)の働きにより不溶性の疫病菌細胞壁から遊離されるこ と を明 ら か に した。 しかし 、この 遊離エ リシタ ―(REと 略)が いかな る構造を 持ち、 宿主の ロ EGの 作 用 でど の ように 遊離さ れるか は末だ 不明で あった 。そこ で、本 研究ではREの― 次構造の 解 析 を 行 な い 、 そ の 構 造 か ら 推 測 さ れ る 遊 離 の メ カ ニ ズ ム の 提 唱 を 行 な っ た 。
(研究方法と成果)
まず、REの分子 量をゲ ル漉遇 クロマ 卜グラ フイ― にて分 析した 結果、お よそ数 百から5万以上 に亙ったため、便宜上それらを4分画(RE‐|、RE‐ 丶F涯.m、RE‐lVは、.それぞれ平均分子量が 40,000,15,000,4,000,く500)に分類した。そのうち、RE‐I〜‐‖lだけに高いエリシタ―活性が 見られ た。次 に、各RE:分画 を構成 する単 糖の種 類を調べ るため、REの加水分解物をガスクロマ トグラ フイ― にて分 析した 。その 結果、4分画とも ほぼ完 全にグ ルコー スから 構成さ れることが 判明し た。よ って次 に、Fに 中での グルコ ―スの結 合様式 を調べ るため 、1Hおよ び13C‐NMR分析 を行なった。その結果、エリシタ一活性を持つRE小`‐刪ではロ‐1,3結合およぴロ‐1.6結合の両方 が検出されたのに対し、REーWではロ・1,3結合のみが検出された。また、RE・l〜・1‖に再度ロE(拠 理を行 なって も分解は見られず、またエリシタ一活性にも影響はなかった。―方、RE‐1〜・mを今 度はロ ‐1,3‐ エキソグルカナーゼで処理したところ、各RE分画は低分子化され、エリシタ一活性 も消失していた。以上の結果からRE‐I〜―‖Iの主要鎖はロ−1,6結合であり、ロEGにより分解され ない1な いし2残 基のロ ‐1,3結 合の側 鎖の存 在が示 唆され た。さらに、その側鎖がェリシタ―活 性 に重 要 で あ ること も示さ れた。 この基 本構造 からREの 遊離メ カニズ ムを推測 すると 次のよ う に説明 できる 。疫病菌細胞壁には様々な長さのロ.1,6結合の多糖(グルカン)が存在し、細胞壁
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本体とは多様な長さのロー1,3結合でつながれている。よって、疫病菌がダイズ植物体ヘ進入する 際、ダイズ組 織内のロEGによってそのロ・1,3結合が切断され、以上 に述べた特徴を持つREが遊 離すると考えられる。
【 第二 章】Pseudomonas syrgaeの 非病 原性 遺伝 子aw・D由 来の 特異 的エリシタ―( シリンゴラ イ ド ) に 対 す る レ セ プ タ 一 様 タ ン パ ク 質 の ダ イ ズ 可 溶 性 画 分 に お け る 存 在
(研究の背景)
植 物 と 病 原 体と の間 に みら れる 相互 作用 の うち 、遺 伝子 対 遺伝 子相 互作 用(gene‑for‑gene interaction) (GFGと略 )は高い特異性を有すること で有名な現象である。すな わちGFGとは、あ る優 性の1遺 伝子 (抵 抗性 遺 伝子 )を 持つ 植物 が 、そ れと 対応する優性の1遺伝 子(非病原性遺 伝子 )を 持つ 病原 体 の侵 入に 対し てのみ特異的に抵 抗反応を発現する現象であ る。GFGの事例は 現在 数多 く確認されてい るが、この遺伝子依存的現 象に関する分子生物学的メカ ニズムはまだほ とんど解明されていない。
分 子生 物学 的研 究 が比 較的 進ん でい るGFGの 例 に、 ダイ ズの抵抗性遺伝子月 ・pg4と病原細菌 PSeu加′nonass.y加g舶(PSと略)の非病原性遺伝子aw・Dとの系がある。この系で既に解明され ていることは、まずaw.Dを 持つPSがダイズに侵入した際 、avr.Dの働きでシリンゴライド(Sりと 略) と呼 ばれるシグナル 分子(エリシタ―)を合成 する。この際ダイズがRpg4を 有していると、
ダイ ズの 被侵 入部 位 ではSり に依 存し た抵 抗反 応 が誘 導さ れる 。っ ま り、Rpg4を持 っダイズは Syrを 特異 的に認識し速 やかに抵抗反応を起こすこと で、aw.Dを持つPSの侵入を 防いでいる。私 はこ の系 のメカニズムを さらに解明するため、想定 されるシリンゴライドレセプ タ―の単離解析 を目 標に 研究を行なって いる。その第ー段階として 、そのようなレセプタ―がダ イズ組織内に実 在す るか 否か の検 討 を、 ダイ ズ細 胞成 分 と放 射線 標識 し たSyrとの 結 合実 験に より 行なった。
(研究方法と成果)
方 法と して 、印 卵 を持 っダ イズ の緑 葉 から 細胞 成分 を 抽出し、14Cで標巌し たSyrとの特異的 結合 を測 定し た。 そ の結 果、Syrに対する特異的結 合サイトは予想していた膜画 分には検出され ず、細胞可溶性画分に存在す ることが明らかとなった。 この可溶性画分の結合サイトはプロテアー ゼに感受性であることから、 ―般的なレセブタ一同様タ ンパク質を成分とすることが示唆された。
またSyrと の特異的結合 のスキャッチャ―ド解析によ り、解離定数(Kd)は340nMで、結合サイト の数 はダ イズ 可溶 性 タン パク 質1mg当 たり65pm0| 存在 す る計 算と なっ た。 さ らに 、Syrの構造 類似 体を 用いた実験では 、この結合サイトはエリシ タ―活性を有する類似体とは 強く結合するが エリ シタ 一活性を持たな い類似体とは結合しないと いう機能的相関が示され、こ のサイトがシリ ンゴ ライ ドレ セプ タ ーで ある こと を強く支持する結 果となった。なお、Syrのよ うな特異的エリ シタ―に対するレセブターの研究は、まだほとんど報告例のない先進的分野である。「エリシタ―・
レセプタ―モデル」は現在世 界的な支持を受けているGFGのメカニズムの仮説である。.すなわち 植物 の抵 抗性遺伝子がレ セプターをコードし、病原 体の非病原性遺伝子由来の特 異的エリシタ―
がそ のレ セプタ―で認識 されるという筋書きである 。しかしながら本研究におい てさらに検討を 加え た結 果、Syrに対 する 結 合サ イトは抵抗性遺伝 子Rpガを持たないダイズにも 同様に存在する こと が判 明し た。 っ まり 、Rp〆産 物は レ セプ タ― では な く、より下流のシグナ ル伝達系に関与 し抵 抗性 発現のオン・オ フを決定しているものと推 察される。このことは、従来 より支持されて き た エ リ シ タ ー ・ レ セ プ タ ー モ デ ル に ― 石 を 投 じ る 重 要 な 発 見 で あ る と 恩 わ れ る 。
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