博士(理学)門田 学位論文題名
Studies on the Endogenous Elicitor from Potato
( ジ ャ ガ イ モ 由 来 内 因 性 エ リ シ 夕 ― に 関 す る 研 究 )
学位論文内容の要旨
植物 は病 原菌 の侵 入か ら 生体 を防 御す るた めに 様々 な抵 抗反 応を 有する。この うち 、フ ィト アレキシンの生成・ 蓄積は、重要な動的防御反応である。フィトア レキ シン は、 健全な組織には含ま れず、エリシターと呼ばれる分子によりその生 産が 誘導 され る。エリシターは、 病原菌由来の外因性エリシターと植物自身に由 来す る内 因性 エリシターの二種類 に分類できるが、内因性エリシターの分子レベ ルで の研 究は 少ない。本研究では 、植物のフィトアレキシン生成機構の分子レベ ルで の解 明を 目指し、ジャガイモ の内因性エリシターの単離ならびに構造研究を 行った。
既に 、我 々の 研究 室に お いて 、ジ ャガ イモ が疫 病菌 由来 のエ リシ ターであるア ラキ ドン 酸を 接種することで過酸 化水素が発生し、それに伴ってフィトアレキシ ンを 生成 する こと 、更 に 無傷 のジ ャガ イモ ヘの 過酸 化水 素接 種に よって内因性 エリ シタ ーが 生成することを見い 出している。そこで、このようにして得られた 内因 性工 リシ 夕一 の精 製 を、 ジャ ガイ モの フィ トア レキ シン であ るりシチンの 蓄積 量を 指標 にして行った。得ら れた粗抽出物を、ゲルろ過、イオン交換クロマ トグ ラフ ィ― によ る精 製 を行 うこ とで 、分 子量
9200
の酸 性多 糖と して単離する こ と に 成 功 し た 。 こ の 物 質 は 、25
〜75
ロgY3ml
で り シ チ ン を 蓄 積 す る こ とが でき るが 、高 濃度においては活性 を示さないという興味深い現象か観察された。次に 、内 因性 エリ シタ ー の構 造解 析を 行う ため に、 塘組 成分 析を 行った。エリ シ タ ー を 酸 加 水 分解 (O.lM TFA、
120
°C
、1時間 )後 、ピ リジ ルア ミ ノ化 し、ODS
カラムに て分析した。その結累、中性塘としてラムノース、アラビノ一一一ス、ガラ クト ース を含むことを見出し た。また、ウロン酸を還元した後、同様の操作 によ り分 析し たところ、酸性塘と してガラクッロン酸が含まれることを明らかに した(Table1)。
Table l. Glycosyl‑composiuon in the endogenous eliciLor.
galactose : arabinosc : thamnose : galacturonic acid
次 に 、
O.lM TFA
、80
°C
にて 音B分酸 分解 を行 っ た。 電気 泳動 にお ぃて は、2
時 間 以 内で エリ シターのバンドが消え、また、'H‑NMRから、′12時 間で分解反応が 収 束 して いた 。そ こで 、12時間 およ び1時間での加水分解物につ いて検討を行っ た 。 ます 、12時間後の分解物をゲルろ過により分画したところ、 中性糖は単裾と し て 得ら れた 。また、オリゴ塘の構造は、IH‑NMRよりa‑l.4−オ リゴガラクツロ― 21−・
勉
ン 酸断 片と 推定 され た。 その 重 台度 は、 高pH陰イ オン 交換 クロマトグラフイ…
に より 、3〜
6
の 混合 物で 、主 成 分が べン タガ ラク ツロ ニド であることが明らか に なっ た(Fig.1
)。H
1. Strusture of the oligogalacturonides obtained by mild acid hydrolysis of Lhe elicitor.
1
時 間 後 の 加 水 分 解 物 に つ い て は 、 まず ゲル ろ過 によ り3つ の画 分に 分け た(Table2
)。糖分析およびH‑NMR
から、アラビノースが 単糖として遊離していた(Fractionl
)。また、ラムノースとガラクトースまたは アラビノースから成るオ リゴ糖が得られた(Fr.2)。分子量が2000以上の画分 については、陰イオン交換、ゲ ル ろ 過 クロ マト グラ フイ ー によ り更 に精 製し 、3つの 成 分を 得た 。1つは 、5 個 のウ ロン酸を含む画分(Fr.3)、2つ目は、1〜2個の ガラクッロン酸を含み、
ラ ムノ ース 、ア ラビ ノー ス、 ガラ クト ース を1:1:1の 比で 含む分子量10003000 の 酸 性 糖 (Fr.4) 、3っ 目は
1
〜2個の ガラ クツ ロン 酸を 含 み、 ラム ノー ス、 ア ラ ビノ ース、ガラクトースを2:1:2の比で含む分子量が約1000の酸性多糖(Fr.5) であった。Table 2. Fracuons obtained by the acid hydrolysis of the elicitor at 80 0C for l h.
FractonS Neut:ral Sugars Amount of galacLuronic acid MW
1 A 0
2 A and R,
or G and R O 500〜1200
3 5
4 G, A, and R 1ー,2 1000‑3000
5 G,A, and R 1 〜1000
G, GalacLose; A, Arabinose; R, Rhamnose.
さて 、エ リシタ一 中にべンタガラクツロニドが含まれていることは既に述 べた。
一方、オリゴガラクッロニドは、Ca2.を介して、高次構造を形成することが知ら れている。そこで、内因性エリシタ一中のCa7゛を原子吸光により定量したところ
4
等 量のCaz
. を含 んで いた 。次 に、pH
を1
〜2
に調 整し た後 、Ca2゛をキ レート 樹脂 によ り除 去し 、ゲ ルろ 過を 行う と、分子 量5800の位置に溶出し、またCa2. を4
等 量 加 え ると 分子 量9800の 位置 に 戻っ た。 更に ウロ ン酸 が還 元さ れた 化合 物 の 分 子 量 は5800
を示 した 。こ の過 程を |H‑NMRに より 追跡 する と、 酸性 化とCa2
.除去によるシグナルの変化が観測された。以上のことより、内因性エリシター は、ガラクッロン酸によりCa2.を配位し、高次構造を形成していることが示唆さ れた。これ らの 知見を基 に、内因性エリシターのモデル構造を推定した。この構 造は、
これ まで に知られ ている内因性エリシターとは異なる構造を有しているこ とが明 らかになった。また、Ca2.が高次構造形成に関与することを初めて明らかにする ことができた。
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