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博士(理学)門田 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(理学)門田 学位論文題名

Studies on the Endogenous Elicitor from Potato

( ジ ャ ガ イ モ 由 来 内 因 性 エ リ シ 夕 ― に 関 す る 研 究 )

学位論文内容の要旨

植物 は病 原菌 の侵 入か ら 生体 を防 御す るた めに 様々 な抵 抗反 応を 有する。この うち 、フ ィト アレキシンの生成・ 蓄積は、重要な動的防御反応である。フィトア レキ シン は、 健全な組織には含ま れず、エリシターと呼ばれる分子によりその生 産が 誘導 され る。エリシターは、 病原菌由来の外因性エリシターと植物自身に由 来す る内 因性 エリシターの二種類 に分類できるが、内因性エリシターの分子レベ ルで の研 究は 少ない。本研究では 、植物のフィトアレキシン生成機構の分子レベ ルで の解 明を 目指し、ジャガイモ の内因性エリシターの単離ならびに構造研究を 行った。

既に 、我 々の 研究 室に お いて 、ジ ャガ イモ が疫 病菌 由来 のエ リシ ターであるア ラキ ドン 酸を 接種することで過酸 化水素が発生し、それに伴ってフィトアレキシ ンを 生成 する こと 、更 に 無傷 のジ ャガ イモ ヘの 過酸 化水 素接 種に よって内因性 エリ シタ ーが 生成することを見い 出している。そこで、このようにして得られた 内因 性工 リシ 夕一 の精 製 を、 ジャ ガイ モの フィ トア レキ シン であ るりシチンの 蓄積 量を 指標 にして行った。得ら れた粗抽出物を、ゲルろ過、イオン交換クロマ トグ ラフ ィ― によ る精 製 を行 うこ とで 、分 子量

9200

の酸 性多 糖と して単離する こ と に 成 功 し た 。 こ の 物 質 は 、

25

75

gY3ml

で り シ チ ン を 蓄 積 す る こ とが でき るが 、高 濃度においては活性 を示さないという興味深い現象か観察された。

次に 、内 因性 エリ シタ ー の構 造解 析を 行う ため に、 塘組 成分 析を 行った。エリ シ タ ー を 酸 加 水 分解 (O.lM TFA、

120

°

C

、1時間 )後 、ピ リジ ルア ミ ノ化 し、

ODS

カラムに て分析した。その結累、中性塘としてラムノース、アラビノ一一一ス、

ガラ クト ース を含むことを見出し た。また、ウロン酸を還元した後、同様の操作 によ り分 析し たところ、酸性塘と してガラクッロン酸が含まれることを明らかに した(Table1)。

Table l.  Glycosyl‑composiuon in the endogenous eliciLor.

galactose : arabinosc : thamnose : galacturonic acid

次 に 、

O.lM TFA

80

°

C

にて 音B分酸 分解 を行 っ た。 電気 泳動 にお ぃて は、

2

時 間 以 内で エリ シターのバンドが消え、また、'H‑NMRから、′12時 間で分解反応が 収 束 して いた 。そ こで 、12時間 およ び1時間での加水分解物につ いて検討を行っ た 。 ます 、12時間後の分解物をゲルろ過により分画したところ、 中性糖は単裾と し て 得ら れた 。また、オリゴ塘の構造は、IH‑NMRよりa‑l.4−オ リゴガラクツロ

― 21−・

(2)

ン 酸断 片と 推定 され た。 その 重 台度 は、 高pH陰イ オン 交換 クロマトグラフイ…

に より 、3〜

6

の 混合 物で 、主 成 分が べン タガ ラク ツロ ニド であることが明らか に なっ た(

Fig.1

)。

H

1. Strusture of the oligogalacturonides obtained by mild acid hydrolysis of Lhe elicitor.

  1

時 間 後 の 加 水 分 解 物 に つ い て は 、 まず ゲル ろ過 によ り3つ の画 分に 分け た

(Table2

)。糖分析および

H‑NMR

から、アラビノースが 単糖として遊離していた

(Fractionl

)。また、ラムノースとガラクトースまたは アラビノースから成るオ リゴ糖が得られた(Fr.2)。分子量が2000以上の画分 については、陰イオン交換、

ゲ ル ろ 過 クロ マト グラ フイ ー によ り更 に精 製し 、3つの 成 分を 得た 。1つは 、5 個 のウ ロン酸を含む画分(Fr.3)、2つ目は、1〜2個の ガラクッロン酸を含み、

ラ ムノ ース 、ア ラビ ノー ス、 ガラ クト ース を1:1:1の 比で 含む分子量10003000 の 酸 性 糖 (Fr.4) 、3っ 目は

1

〜2個の ガラ クツ ロン 酸を 含 み、 ラム ノー ス、 ア ラ ビノ ース、ガラクトースを2:1:2の比で含む分子量が約1000の酸性多糖(Fr.5) であった。

Table 2.  Fracuons obtained by the acid hydrolysis of the elicitor at 80 0C for l h.

    FractonS Neut:ral Sugars Amount of galacLuronic acid   MW

    1     A     0

    2 A and R,

 or G and R     O   500〜1200

    3     5

    4          G, A, and R    1ー,2 1000‑3000

    5 G,A, and R     1 〜1000

G, GalacLose; A, Arabinose; R, Rhamnose.

さて 、エ リシタ一 中にべンタガラクツロニドが含まれていることは既に述 べた。

一方、オリゴガラクッロニドは、Ca2.を介して、高次構造を形成することが知ら れている。そこで、内因性エリシタ一中のCa7゛を原子吸光により定量したところ

4

等 量の

Caz

. を含 んで いた 。次 に、

 pH

1

2

に調 整し た後 、Ca2゛をキ レート 樹脂 によ り除 去し 、ゲ ルろ 過を 行う と、分子 量5800の位置に溶出し、またCa2. を

4

等 量 加 え ると 分子 量9800の 位置 に 戻っ た。 更に ウロ ン酸 が還 元さ れた 化合 物 の 分 子 量 は

5800

を示 した 。こ の過 程を |H‑NMRに より 追跡 する と、 酸性 化と

Ca2

.除去によるシグナルの変化が観測された。以上のことより、内因性エリシター は、ガラクッロン酸によりCa2.を配位し、高次構造を形成していることが示唆さ れた。

これ らの 知見を基 に、内因性エリシターのモデル構造を推定した。この構 造は、

これ まで に知られ ている内因性エリシターとは異なる構造を有しているこ とが明 らかになった。また、Ca2.が高次構造形成に関与することを初めて明らかにする ことができた。

ー 22―

(3)

学 位論文審査の要旨

主査    教 授    村井章夫 副査    教 授    吉川正明 副査    教 授    西村紳一郎

副査    教 授    荒木義雄( 大学院地球 環境科学研 究科)

副査    助 教授    中村英士

     学 位 論文 題 名

Studies on the Endogenous Elicitor from Potato

(ジャガイモ由来内因性エリシ夕一に関する研究)

   植物は病原菌の侵入から生体を防御するために様々な抵抗反応を有する。このう ち、フィトアレキシンの生成蓄積は重要な動的防御反応である。フィトアレキシン は健全な植物組織には含まれず、エリシターと呼ばれる分子によりその生産が誘導 新生される。エリシターは、病原菌由来の外因性エリシターと植物組織自身に由来 する内因性エリシターのニ種類に分類できるが、内因性エリシターの分子レベルで の研究は少ないのが現状である。まして植物の自己誘導型内因性エリシターの研究 は未開拓の分野で、今後の発展が待たれている状況にある。

   本論文は、このような現況にある内因性エリシターについて、ジャガイモを用い て単離ならぴに構造を研究することを目的として展開されたものである。すでに我々 の研究室において、ジャガイモに疫病菌由来のアラキドン酸を接種すると過酸化水 素が発生し、それに伴ってフィトアレキシンを生成すること、さらに健全ジャガイ モ組織に過酸化水素を接種すると内因性エリシターが生成蓄積することを見い出し てい る。申請者 はこの内因 性エリシタ ーの精製を 行い、分子 量 9200 の酸性多糖 物質として単離することに成功した。これは植物の自己誘導型内因性エリシターの 単離として世界で最初の成功例である。次いで申請者はこの物質の構造解析を行い、

中性糖としてラムノース、アラビノース、ガラクトースを、また酸´性糖としてガラ クツロン酸が含まれることを明らかにした。さらに部分酸加水分解によって、この ガラ クツ口ン酸 は重合度が 3 〜 6 の混合物であり、主成分の重合度が5 であること を明らかにした。さらに内因性エリシター中に4 等量のC212 十を含むことを見い出し、

NMR スペクトルの検討により、このエリシターがガラクツロン酸によってCa +を配

位し、高次構造をとっていることを明らかにした。またCa2 十.free のエリシターまた

は還 元されたエ リシターの 分子量が5800 で あることを 見い出した 。これらの知

(4)

見をもとに部分酸加水分解による結果と合わせて内因性エリシターの推定構造を提 出した。このように申請者は、内因性エ1J シターについて分子レベルでの新知見を 初めて提供したものであり、近年、その概念の輪郭ができつっある天然超分子化学 に対し貢献するところ大なるものがある。

   よって申請者は、北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格あるものと認

めた。

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