博士(農学)高 学位論文題名
土層改良用サブソイラの性能向上に関する研究 学位論文内容の要旨
鋭
本研究 は高 圧流体 をチゼ ル先端 のノズ ルか ら噴出 させて ,流体 の圧 カで土 壌を破壊するサブソ イラを 開発す ること を目 的とす る。こ のサプ ソイ ラは重 粘土層 改良用 パンブ レーカのように心土 を破壊 し,同 時に液 体有 機質肥 料を下 層土に 拡散 するの に使用 できる と判断 された。一方で,ア スパラ ガス圃 場のよ うな 永年作 物畑で 地中に 液肥 を拡散 圧入す るイン ジェク タの開発の要請があ る。こ の場合 ,永年 作物 の根を 切断す ること は収 量上好 ましい ことで はない とされている。前者 のパン ブレー カは土 壌の 破壊度 合いが 出来る だけ 大きい 方が良 い。後 者のイ ンジェクタは作物根 の切断 を出来 るだけ 小さ くする ため, 土壌の 破壊 度合い は出来 るだけ 小さく して,液肥のみを根 系に注 入する ことが 望ま れる。 そこで ,著者 はこ れらを 総称し てサブ ソイラ と定義し,このうち 大型の 土壌破 壊を目 的と したも のをパ ンブレ 一力 ,小型 の液肥 注入を 目的に したものをインジェ クタと 定義し た。
単純な 平板 が土壌 中を進 行する ときの けん 引抵抗 カの発 生機構 にっ いては 多くの研究者によっ てこれ までに も研究 がな されて いるも のの, 土壌 の破壊 度合い にっい ては誰 も言及していない。
また, それら は単純 な平 板が土 壌に作 用した 場合 であり ,チゼ ルがっ き,さ らに流体が噴出する 複雑な 現象は 誰も扱 って いない 。土壌 の破壊 度合 は,基 本的に はサブ ソイラ の形状によるもので あり, 本研究 が扱う 流体 を噴出 する独 特な形 状で パンブ レ―力 及びイ ンジェ クタのそれぞれに最 適 な 形 状 が あ る と の 前 提 に 立 ち 理 論 ・ 実 験 両 面 か ら 解 析 を 試 み た も の で あ る 。
Iシャンク及びチゼルの形状と土壌破壊
土壌の破壊度合いがサブソイラのどの部分の形状によって影響されるのかを,まず空気を噴出しな いで,基本的にシャンク及びチゼルの形状が土壌破壊状態にどのように影響するかを実験的に調べた。
パ ンブ レーカ として は破壊 効率を 最大 とする45―60° のシャ ンク角 が最適であり,インジェク タ として は破壊 度合 ,けん 引抵抗 が最小 にな る90゜が 最適で ある 。破壊度合を小さくする目的の イ ンジェ クタで は, シャン ク厚さ を15mm以 下とす べきであり,パンブレーカとして15〜 50mmの範
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囲 で破壊 効率 が変わ らない ため, どの 厚さで も良い ことが 明らか にな った。インジェクタとして は チセル 長さ が130mm,パン ブレ ーカと しては250mmが 最適 であっ た。なお,パンブレ一カとして は チセル 太さ を50x 50mmと し,インジェク夕30x 30mmとするのが有利であるとの結論が得られた。
II流体噴 出によ る土壌 の破壊
流体を 噴出し ないサ ブソイ ラの 形状を 基本に してチ セル 先端部 分のノ ズル口からタンク圧で約 1.2MPaの 高 圧 空 気を 噴 出 し て ,け ん 引 抵 抗カ が現 象する 最適な パンブ レーカ 及び インジ ェク タ の各形 状を 決定し た。土 粒子間 カの ある土 壌では ,基本 的な土 壌の 破壊はシャンクやチゼルの 進 行によ る機 械的な 作用で なされ ,空 気噴出 の流体 的作用 は機械 的な 破壊作用の補助するものと 考 えれた 。パ ンブレ ーカと しては チゼ ルが長 いほど 破壊度 合が増 大す るから,強度の許す限りこ れ は長い 方が よい。 インジ ェクと して の最適 チゼル 長は破 壊度合 を大 きくしないで,空気噴出に よ る け ん 引 抵 抗 カ の 減 少 効 果 が 見 ら れ る250mmと す る こ と が 確 か め ら れ た 。
m有限要 素法に よる 土壌の 解析
実 験結果 を裏付 けるた め, 有限要 素法で 土壌の 破壊 度合及 び破壊 範囲を 解析し た。まず,流体 が土 壌の 中を流 れると きの難 易に よって どのよ うな土 壌破壊 の可 能性が あるの かを,土壌層を近 似 的 に2次 元弾 性体モ デルと して扱 って有 限要 素法で 解析し ,大ま かな 予測を 得た。 っぎに ,よ り 厳 密 に土 壌層を3次 元弾塑 性体モ デルと して 扱って 土壌の 破壊度 合及 び破壊 範囲を 解析し た。
シ ャンク のみが 作用す る場 合,シ ャンク 角が90℃で, 作用深 が30cmで ある時 ,塑性応カは深さ 約25cmまで働 いた 。地表 面での 土壌の 垂直移動量はわずか0.5cmであった。シャンク角が45°の時 は, 塑性 応カは 深さ60cmまで働 き,土 壌の垂 直移 動量は2.5cmに なった 。これ によルインジェク タの シャ ンク角 を90°と し, パンブ レーカのシャンクは90°以下にすべきであるとする設計原理は 理論 的に 正しい ことが 裏付け られ た。
流 体を 噴出 しない パン ブレー カのチ ゼル先 端に約0. 005而の 範囲に 高い 塑性応 カUx=O.814 MPa,びJ二ニ2. 148MPa,az−O.392MPaが 集中 し,チ ゼル先 端から 離れる と塑 性応カ は漸次 減 少し た。 チゼル 先端は 土壌を 集中 的に進 行方向 にのみ ,押す こと になる から, 著者はこれをハー ド作 用カ と名付 けた。 流体を 噴出 するパンブレーカの場合もノズル周辺に高い塑性応カが働くが,
ノズ ルか ら離れ ると塑 性応カ は急 激に減 少した 。流体 は比較 的広 い範囲 に作用 し,かつ方向が全 方向 であ るため ,著者 はこれ をソ フト作 用カと 名付け た。
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IV流体を噴出するバ ンブレーカの応用 事例
空 気を 噴 出す るパ ン ブレ ーカにおいて, 空気が含水比30% の土壌層に圧送され ると,ノズル周 辺に 水平 の 亀裂 を生 じ るの が観察された。 ごく少量の空気圧 送で,土壌は引張破 壊することが確 認さ れた 。 チゼ ル先 端 が, 亀裂の先端に達 するまで,空気の 圧送は必要ない。そ れゆえ,空気を 脈流状に流して,圧 送空気量を滅少す ることができた。
都市下水汚泥を噴出するパンブレーカにおいて,下水汚泥圧送によるけん引抵抗カの滅少は,速度・
流量及び下水汚泥をまだ流していない初期のけん引抵抗カの大小に影響された。下水汚泥の粘度は高い ほどけん引抵抗の減少も大きくなった。都市下水汚泥を噴出するパンブレーカは土壌を膨軟にすると同 時に,心土に有機物 を供給することが でき,牧草地の更 新や重粘土層の改良 に有効と考えられる。
V液 体肥 料イ ン ジェ クタ の 応用 事例
土壌 の 破壊 度合 が 小さ く,根を なるべく切断しな いで液肥を圧入で きるインジェクタを 前章で 決 定し た 。こ のイ ン ジェ クタを実 際にアスパラガス 圃場で施工して, アスパラガスの収量 を調べ た 。ア ス パラ ガス の 根は 深さ10―30cmに大部分あり ,横の広がりは50cmであった。したが って,
こ の根 域 をさ けて 圧 入す る必要が ある。けん引抵抗 カを減少するのに 粘土質ロームで最低400g/ m'畦の 液 体肥 料が 必 要で あっ た 。ま た, 施 肥距 離は 畦 中央 部か らO.6mが最 適で あ った 。こ れ は アス パ ラガ ス根 系 は, 半径約0. 6mで広がってお り,2本の インジェクタの距 離が1.2m以上で は 根系 の ない 部分 に 施肥 され る ため ,Growth Intensity (G.I. 平 均 草丈cmx1株 当た り総 茎 径 )が 滅 少す るも の と考 えられる 。実験結果からは ,施肥量が増える に従いG,I.値も比 例して 増 える 留 こと が確 認 され た。
学位論文審査の要旨
本研 究 は高 圧流 体 をチゼル先端の ノズルから噴出させ て,流体の圧カで 土壌を破壊し,け ん引 抵 抗を 減 少さ せ, か っ作業に要する 全工ネルギの節減を 図るサブソイラを 開発することを意 図し
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男
悟
隆
出
日
尾
部
田
寺
南
前
授
授
授
教
教
教
査
査
査
主
副
副
て実 施され たもの である 。著 者は, サブソ イラの うち 大型の 土壌破 壊を目 的としたものをパンブ レー カ,小 型の液 肥注入 を目 的とし たもの をイン ジェ クタと 定義し ,土壌 の破壊度合は基本的に は サ ブソ イ ラ の 形 状に よ るも ので あり, 本研究 のよう に流 体を噴 出させ る独特 な方式 でパ ンブ レー カ及び インジ ェクタ のそ れぞれ に最適 な形状 が存 在する との前 提から 理論と実験の解析が試 みら れた。
本 論 文 は そ の 成果 を7章 ・ 図83. 表8・ 引 用 文 献98な どを含 む総頁196和 文論 文にま とめて い る。 別に参 考論文14編が 添えら れてい る。
第1章 は 序 論 で ,用 語 の 定 義 ,研 究 の 背 景 ,研 究 の 目 的 及 び範 囲 に っ い て記 述 し て あ る。
第2章はシ ャンク 及び チゼル 形状と 土の破 壊で, 土壌 の破壊 がサブ ソイラ のど の部分 の形状 に よっ て影響 される かを実 験に よって 調べて いる。 パン ブレー カとし ては破 壊効率を最大とする45
―60° のシャ ンク 角が最 適であ り,シ ャンク 厚さ は15―50mmの範囲 ではど の厚さでもよい。チゼ ル 長さ は250mm,径 は50x 50mmが 最適で あっ た。破 壊度合 及びけ ん引 抵抗が 最小と なるイ ンジェ クタ はシャ ンク角90°が 最適で あった 。シャ ンク 厚さは15mm以下,チゼル長は130mm,径は30x 30 mmとの 結果が 得ら れた。
第3章 は 流 体噴 出 に よ る 土 壌の 破 壊 で , チゼ ル 先 端 部 分の ノ ズ ル か らタン ク圧で 約1.2MPa の高 圧空気 を噴出 して, けん 引抵抗 カが減 少する 最適 なパン ブレ一 力及び インジェクタの各形状 を決 定した 。粘性 土壌で は, 基本的な土壌の破壊シャンクやチゼルの進行による機械的ナょ作用で なさ れ,空 気噴出 の流体 的作 用は機 械的な 破壊作 用の 補助を するも のと考 えられた。パンブレー カは チゼル が長い ほど破 壊度 合が増 大する から, 強度 の許す 限りこ れは長 い方がよい。インジェ ク タ は 空 気 噴 出 に よ る け ん 引 抵 抗 カ の 減 少 効 果 のみ ら れ る250mmが 理想 と の 結 果 を 得た 。 第4章は有 限要素 法に よる土 壌破壊 の解析 で,流 体が 土壌の 中を流 れると きの 難易に よって ど の よう な土壌 破壊の 可能 性があ るかに っき土 壌層 を3次 元弾 塑性体 モデル として 扱って 土壌 の破 壊度 合及び 破壊範 囲を解 析し た。シ ャンク 単独で はシ ャンク 角が90° で, 作用深さ30cmであると き, 塑性応 カは深 さ約25cmであっ た。シャンク角45°では深さ60cmまで作用し,垂直移動量は2.5 cmまで 作用が 及び ,地表 面での 土壌の 垂直移 動量 はわず かO.5cmになっ た。これによルインジェ クタ のシャ ンク角 を90° とし, パンブレ一カは90°以下にすべきであるとする設計原理は正しいこ とが 確認さ れた。
第5章は流 体を噴 出す るパン ブレ一 カの応 用で, 空気 を噴出 するパ ンブレ ーカ におい て,空 気 が含 水比30% の土 壌層に 圧送さ れると ,ノズ ル周 辺に水 平の亀 裂を生 じ, ごく少量の空気圧送で 土壌 は引張 破壊す ること が確 認され た。チ ゼル先 端が 亀裂の 先端に 達する まで空気の圧送は必要
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な い 。そ れゆ え ,空 気を 脈 流状 に流して圧 送空気量を減少す ることができた。都 市下水汚泥を噴 出 す るパ ンブ レ ーカ にお い て, 下水汚泥圧 送によるけん引抵 抗の減少は,速度・ 流量及び下水汚 泥 を まだ 流し て いな い初 期 のけ ん引抵抗カ の大小に影響され た。下水汚泥の粘度 は高いほどけん 引抵 抗の減少も大きく なった。
第6章は 液 体肥 料圧 入 イン ジェ ク 夕応 用で , 土壌 の破 壊度合 が小さく,根をなる べく切断しない で 液 肥を 圧入 で きる イン ジ ェク タを前章で 決定した。圃場調 査からアスパラガス の根は深さ10 ‑ 20cmに大 部分 あ り, 横の 広 がり は50cmであ った。したがって ,この根域をさけて 圧入する必要が あ る 。 け ん 引 抵 抗 カ を 減 少 す るの に 粘土 質ロ ー ムで 最低400g/m'畦 の 液体 肥料 が 必要 であ っ た。 また,施肥距離は 畦中央部から0. 6mが最適であった。これはアスパラガス根系は,半径約0.6 mで 広が っ てお り,2本の イ ンジ ェク タ の距 離が1. 2m以上 で は根 系の な い部分 に施肥されるた め ,Growth Intensity (G.I.二ニ平均草丈cmxl株当たり総茎 径)が減少するもの と考えられる。
第7章は総括 である。
以 上は ,高 圧 流体 の圧 カ で土 壌を破壊し ,また液体有機肥 料を下層土に拡散す る目的にも使用 で き るサ プソ イ ラの 開発 を 試み たものであ り,ここに得られ た成果は学術上重要 な新知見を加え た ば かり でな く ,土 層改 良 技術 面からも高 く評価される。よ って審査員一同は別 に行った学力確 認 試 験の 結果 と 合わ せて , 本論 文の 提 出者 高鋭 は 博士 (農 学 )の 学位 を 受ける のに十分な資格 があ るものと認定した 。
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