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博 士 ( 獣 医 学 ) 桐 山 洋 子 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 獣 医 学 ) 桐 山 洋 子

学 位 論 文 題 名

未 哺 乳 新 生 豚 リ ン パ ・ 血 液 中 へ の 初 乳 蛋 白 質 の 移 行 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の要 旨

  新 生期の 脊椎動 物の 抗病性 は,母 親から 獲得し た免 疫グロ ブリン に負っ てい る。一般に,抗体 の 移行経 路には4っ の型:I) 卵黄嚢 を介す る(卵 生動 物)型 ,且) 母乳の 腸管 吸収を介する型,

m) 卵 黄嚢 内 蔵 板 を 介 する 型 ,IV)胎 盤 を 介 する 型 , が ある。m) に属す るラッ トでは ,若 干の 抗 体 が 卵 黄嚢と 胎盤か ら移行 するが ,生 後14日位 まで上 部消 化管に 存在す るIgG特異レ セプ ター に よって 初乳中 の免疫 グ口ブ リン が選択 的に吸収されていることがよく知られいてる。一方,II) に 属 す る 豚では ,母親 からの 抗体が 移行 せず低 一7グ口ブ リン血 症の状 態で 生まれ てくる ため,

初 乳 摂 取 によ る 消 化 管 から のIgGの 確 保 は 本 来 非常 に 重要 な意味 を持 っはず である 。しか しな が ら , 生 後2〜3日 中は , 免 疫 グ口 ブリ ンのみ ならず ,同種 ,異種 の蛋 白質や 非蛋白 性の高 分子 物 質 も 吸 収され ること がin vivoの実 験で報 告され てお り,こ の時期 の豚に おけ る消化 管から の 高 分子物 質の移 行型は , 非 特異 的(nonspecific) ,非選 択的(nonselective) なものだと考 え ら れ て き た 。と こ ろ が , 豚 と同 型 に 属 す る仔 牛 に お い てIgG,は,IgMよ りも 高 率 で 吸 収さ れ るとい う報告 もありu) 型にお ける高 分子 物質の 移行様 式は未だ確定されていない状況である。

  こ のよう な混乱 が起 きてい る背景 には, 今迄に 有蹄 類で行 われて きた実 験系 に幾っかの問題点 が あった ことが 挙げら れる。 第一 に,測 定試料の問題であり,第二に測定法の選択の問題である。

本 研究で は,こ れらの 問題を 解決 するた めに移 行物質 が代 謝の影 響を受 けにく いりンパ液を血液 と 同時に 採取し うる実 験手技 を確 立し, 未哺乳 新生豚 の十 二指腸 へ牛初 乳を投 与した。採取した 両 液 中 の 牛初 乳 成 分 の 定量 分 析 は , 酵素 抗 体 法̲(ELISA)を 用 い て 行な っ た 。そ の結果 ,牛初 乳 中のIgGの移 行特性 並びに 移行 経路を 明らか にする ことが 出来 た。

  第1章 未 哺 乳 新 生 豚 に お け る 経 時 的 な 胸 管 リ ン パ 液 と 血 液 の 同 時 採 取 法 の 確 立   胸管リ ンパ液 の採 取方法 として は,開 胸手術 を施 し胸部 から採 取する方法が広く羊,ラットで 行なわ れてき たが, この方 法を 用いる と動物 の生命 に危 険が及 び実験 に供した場合にも生理的な

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状態 から 逸脱し た状態 となる 。そ こで, 供試動 物への 負担を 軽減 するた めに,開胸術を施さない 手術 法を 確立し た。こ の方法 を用 いると ,未哺 乳新生 豚でも 長時 間の実 験に耐えうることが明ら か に な った 。 ま た , 本 方法 は , ハ 口 セン 麻 酔 下 で 手術 を 行 な う ため 麻 酔死の 懸念も 少な い。

  手 術方法 の概略 を示す 。先 ず左頚 部を切 開し, 頚静 脈に開 口して いる胸 管ヘカニューレ(外径 0. 5〜1. Omm)を挿入する。次に末梢血採取用として,外頚静脈へカテーテル(外径1.35mm)を挿 入し ,頚 部を整 復する 。次に 腹部 正中切 開を施 し,胃 液排泄 用ド レイン を装着後,十二指腸投与 用カ テー テルを 装着し ,腹部 を整 復する 。

  麻 酔覚醒 後,保定枠内で実験を行なうが,この時,胸管リンパ液の流速fま,6. 1〜16. 6mE/h/ kg体 重であ り仔羊 や仔牛 での 報告に 近い値 となっ た。 また, 流速は 牛初乳 投与後45分目で最大と な った 後,6時間 後まで 一定の 流速 を維持 した。 この実 験系 では, 血液と りンパ 液を分 離し た状 態 で 同 時に 採 取 で き る 事か ら , 消 化 管か ら り ン パ系或 いは血 管系を 介する 初乳IgGの 移行特 性 を別 々に 評価す ること が可能 とな った。

  第2章 酵素 抗体法(ELISA)に よる牛 初乳 蛋白質 成分測 定法の 改良

  消化管 からの 初乳蛋 白質 の移行 にっいては,電気泳動的,免疫学的手法がよく用いられている。

し かし ながら ,これ らの手 法は定 性的 な判定 を下す 場合に は有 効であ るが,定量的な測定にっい て は 感 度 が 悪い と い う 問 題 点が あ る 。 そ こで , 牛初 乳蛋白 質成分 に対す るELISAの改 良を行 つ た 。

  牛初乳 中から 測定す る蛋 白質;IgG(M. W. 150,000), ガゼイ ン(M. W. 23,600),初乳特有 小 分 子 蛋 白 質 : SP(M. W.約10,000)の3っ を ゲ ル ろ 過 法(SephadexG−100カラ ム ) に よ っ て 分画 し,こ れに対 するウ サギ抗 体を得た。これらの抗体は,アフィニティーク口マトグラフィー (Sepharose4Bカ ラ ム ) に よ っ て 更に 精 製 し た 後, 混 合 し , 混合 抗 体 に ぺ ル オキ シ ダ ー ゼ を 標 識 し て 混 合標 識 抗 体 を得 た。 測定は ,サン ドウィ ッチ法 によ って行 ない, 各蛋白 質と も10〜 103n呂/紺 の範囲 で再 現性良 く標準 曲線が 得ら れた。

  第3章覚醒 下未 哺乳新 生豚の 消化管 から の牛初 乳蛋白 質の移 行   1)リン パ液, 血漿中 への 牛初乳 蛋白質 の移行

  脂 肪 を 除 去 した 牛 初 乳 を 未哺 乳 新 生 豚 の十 二 指腸に 投与(40mE/kg体重 )する と,投 与後4時 間 でり ン パ 液 及 び血 漿 中に 牛初 乳蛋白 成分が 出現し てく ること が電気 泳動法 によっ て明 らかに なった 。初 乳投与 前のり ンパ液 中蛋白質濃度は非常に低いため,投与後のりンパ液中の泳動パ夕一

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ンは牛初乳のパターンを良く反映した。このことは,消化管からの初乳蛋白質の移行を解析する ためにりンパ液を用いることが有効であることを示唆している。

  また,仔牛では初乳蛋白質の移行は全て胸管リンパを介したものだと報告されていたが,新生 豚においては血液中へも初乳蛋白質の移行が確認されたことから,仔牛とは異なる血管系の関与 が明らかになった。

  2)リンパ液中への牛初乳蛋白質の移行速度

  牛初乳投与後3時間 以内でりンパ液中へのIgGの移行速度は速やかに最大(4.7土1.3mg/15 min/kg体重)に達し,その後5時間まで変動が見られた。SPの移行速度はゆっくりと増加し,

投与後5時間目で最大に達した(1.O土O. 3mg/15min/kg体重)。カゼインの移行速度は,IgG やSPよりも著しく遅かった。また,リンパ液への移行速度に大きな変動が見られないカゼイン の移行速度を基に,15分間でりンパ液中に移行してくるIgG:カゼイン比と初乳中のIgG:カ ゼイ ン比 を 比較 する と, 投与後3〜6時間のりンパ液中には,IgGが著しく高い比率(pく 0. 01及びO.05)で移行してきていることが明らかになった。また,SP:カゼイン比にっいても 同様な比較を行ったがIgG:カゼイン比で見られたような著しく高い値は見られなかった。

  3)血漿中に移行した牛初乳蛋白質濃度の変化

  血漿中のIgG濃度は ,牛初乳投与後徐々に増加し,投与後5時間目で平坦値(2.5土O.9g/ L)に達した。また,SP濃度は投与後3時間目で平坦値(O.2土0.08g/L)に達した。カゼ イン濃度はゆっくりと 増加し,投与後4時間目で平均値(0. 01土O.001g/L)に達した。投与 後4時間目でのIgG濃度 は,カゼイン濃度の128倍であり,SP濃度に比較しても11倍も高かっ た。

  投与後6時間まで直線的に増加するカゼインを基に,投与した初乳中のIgG: SP:カゼイIン の濃度比を算出すると15:4:1であった。一方,血漿中の濃度比を算出すると,IgG:カゼイ ン比は牛初乳のそれよ りも著しく高く(pく0.05),SP:カゼイン比は投与後4,5,6時間で 牛初乳中のそれよりも有意に高かった(pぐO.01)。

  以上の結果から,1)未哺乳新生豚の消化管から移行する牛初乳IgGの移行速度は,リンパ 液を介した系が血液を 介した系よりもかなり速い,2)リンパ液及び血液中に吸収されたIgG 濃度は,3っの初乳蛋 白質最も高く,両液中のIgG:カゼイン比は初乳中のIgG:カゼイン比 よりも有意に高い。3)血液を介した初乳蛋白質(IgG,SP,カゼイン)総量は,リンパ液を 介 し て 移 行 し た 初 乳 蛋 白 質 総 量 よ り も 多 い , こ と が 明 ら か に な っ た 。   このことは,非選択的だと考えられてきた新生豚の消化管からの受動免疫機構にもIgGに対

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する選 択性が あるこ とを示 唆す るもの であり ,低ア ーグ 口ブリ ン血症 で生まれてくる豚にとって 合目的 的であ ると思 われる 。また,仔牛では確認されていナょかった消化管からの高分子物質の新 た な 移 行 経 路 が 確 認 さ れ た こ と は , 比 較 生 理 学 的 に み て 非 常 に 興 味 深 い も の で あ る 。

学位論文審査の要旨

  脊椎動 物の新 生子は ,母 親から 免疫グ 口ブリ ン(IgG) を受け 取っ て,抗 病性を獲得している。

母 体 か ら新生 子へ の抗体 の移行 には4型が 知られ てい るが,H型 に属す る牛や 豚でtま, 抗体は 母 体 から 胎仔期 に移行 せず, 低― アグロ ブリン 血症の 状態で 生ま れてく るため ,新生期に初乳を摂 取 し , 消 化 管 か ら 初 乳 中 のIgGを 吸 収 す る こ と が 生 理 的 に 大 き な 意 義 を 有 す る 。   本研究 におい ては, 新生 仔豚の 消化管 からの 牛初 乳蛋白 質の移 行特性 を明ら かにするために,

胸 管リ ンパ液 と血液 を同時 採取 する実 験系を 確立し ,高感 度免 疫酵素 抗体法 の改良を行った。こ れ ら の 方法を 用い て,未 哺乳新 生豚の 消化 管内に 投与し た牛初 乳蛋白 質(IgG,small proteins お よ び カ ゼ イ ン ) が り ン パ 液 と 血 液 中 に 移 行 す る 経 過 を 測 定 し , 次 の 結 論 を 得 た 。   1) 未 哺乳 新 生 豚 の 消化 管 か ら 移 行す る 牛 初 乳IgGの 移 行 速度 は , リ ンパ 液を介 した 系が血 液 を介 した系 よりも かなり 速い 。

  2)ル ン パ 液 お よび 血 液 中 に 吸 収さ れ たIgG濃 度 は ,3っ の 初 乳 蛋 白質 中 最 も 高 く ,両 液 中 のIgG:カゼ イン比 は初乳 中IgG:カ ゼイン 比より も有意 に高い 。

  3) 血液を 介し て移行 した各 初乳蛋 白質の 総量 は,リ ンパ液 を介し て移 行した 初乳蛋 白質総 量 よ りも 多い。

  新生豚 の消化 管から の高 分子物 質の移 行が非 選択 的であ る従来 の考え の背景 には,消化管から の 高分 子物質 の移行 の選択 性を 論ずる 際の定 義が研 究者の 間で 一致し ていな かったことが大きく 関 わっ ている と申請 者は考 察し ている 。申請 者は, 高分子 物質 の選択 性は定 量的に比較されるべ き だと いう立 場に立 ち,多 数の 成分の 混合物 である 初乳を 新生 豚の消 化管に 投与する方法を採用

夫 郎

之 守

富 茂

昌 悦

野 岡

藤 田

菅 波

斉 原

授 授

授 授

   

   

教 教

教 助

査 査

査 査

主 副

副 副

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し,蛋白質成分の移行量を比較する手法を取った。

  本研究の結果は,新生豚の消化管からの受動免疫機構にもIgGに対する選択性があることを 示唆するものである。低―7グ口ブルン血症で生まれてくる豚において,この特性は特に重要な 機構である。また,仔牛では確認されていなかった消化管からの高分子物質の新たな移行経路,

すなわちりンパ液を介さずに直接血漿へ移行する経路が確認されたことは,比較生理学的にみて も価値のある所見である。審査員一同は,申請者桐山洋子氏が博士(獣医学)の学位を受けるの に十分な資格を有するものと認めた。

参照

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