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博士(医学)石橋義光 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)石橋義光 学位論文題名

     重 症 呼 吸 不 全 に 対 す る ECh/IO くExtracorporeal IVIembrane Oxygenation)

および ProstagrandinI2 誘導体の効果に関する実験的検討

学位論文内容の要旨

1研究目的

  今 日, 人工 呼 吸器 では 救命 し得 な い重 症呼 吸不全に対してExtracorporeal Membrane Oxygenation (ECMO)の研究 と臨床応用がなされ,これ による救命例の報告も多くなってき ている。本研究では,ECMOの有効性と限界を明確にするため実験的に重症呼吸不全犬を作製し,

こ れ に 対 し てpumplessA一Vbypass,V一Abypassの ほ か ,V―AbypassにProstaglan‑

dinI2誘 導体 であ るOP―41483を投 与 し, 特にThromboxaneA: とProstaglandinI:の変 動の面より比較検討した。

1|対象と方法 1.実験方法

  雑種成犬20頭(10〜20kg)を用い,気管内挿管を行い,Fio:O.5,呼吸回数20/min,一回換 気量1 0施/kgで陽圧調節呼吸を行った。

  1)重症呼吸不全 犬(GI,n= 5):リノール酸O.s樹/kgを経気管的に注入して重症呼吸     不全犬を製作した。

  2)pumplessA―Vbypass施 行群(GII,n二二5):右 大腿動脈へ脱血チューブを左 外頸     静脈へ送血チューブを挿入し,人工模型肺(CapioxIIl. 6cnf)を用い,リノール酸注入1時     間後よりA−V bypassを開始した。

  3)V−A bypass施 行群(Gm,n二二5):右大 腿静脈,左外頚静脈に脱血チューブを右大     腿動脈に送血チューブを挿入しV―A bypass回路を装着した。人工肺はCapioxIIl. 6cnfを     用い,ポンプは 遠心ポンプを用いた。リノール酸注入1時間後よりV―A bypassを開始し     た。

(2)

  4) V―A bypassにOPー41483(PGI2誘 導 体 ) 投 与 群(GIV,n‑5) : 本 群 で はGIIIと     同 様 の 実 験 下 に ,OP―41483をVーAbypass開 始 と 同 時 に 連 続 投 与 し 肺 動 脈 圧 が15mm     Hg以 下に な るよ うに 調 節し た, 各 群と も手 術 操作 修了 後 にへ パリ ン2紺 /kgを 投与 し た。

2.測定項目

  (1)心電図,動脈圧(平均血圧),中心静脈圧,肺動脈圧(平均肺動脈圧)(2)血液ガス,(3)ヘマ ト ク リッ ト, 血 小板 数, (4) 血 小板 凝集 能 ,血 小板 粘 着能 ,(5)6―KetoPGFla, Thromboxane Bエ (1)〜 (5)にっ いてはりノール酸 投与前,投与直後,さらに投与後1時間毎に測定した。測定値 はmean土SEMで示し,t検定にてP<0. 05を有意差有りとした。

  (6)病理組織学的 検討:各群の実験 犬の死亡後,肺の病 変部をヘマトキシリンエオジン染色にて 病理組織学的検討を行った。

  結  果

川循環動態,血液ガス

  GIではりノール酸注入前にはPa0:は297土33. 5mmHgであったが,注入1時間後にはl 01.6土22.5mmHgに低下し,その後も経時的に低下した。PaC02は,注入1時間後で63.5 土2. 3mmHgへ上昇し,その後は80〜90mmHgで経過した。血圧は経時的に低下した。

  cnでは,A宀Vbypass施行 中,:Pa0エ120〜130mmHg,PaCO:35〜50mmHgで経 過した。A→V bypassの流量は開始直後400〜600m 1/minであったが,血圧の低下に従い 流量も低下した。

  G皿では,V―A bypass施行中,Pa0120〜130mmHgで経過した。肺動脈は注入前に15 mmHgであっ たが,注 入3時 間後で19mmHgに上昇しその後20mmHg以上の値で経過し た。V―A bypassの流量は血圧を80〜lOOmmHg程度に維持するように400〜1000ml/min で調節した。

  GIVでは,V―AbypassとOP−41483投与後Pa0:は150mmHg以上で経過した。肺動 脈圧は注入4時間後までは15mmHg以下に調節された。OP一41483投与量は20〜200ng/

kg/minであった。

(2) Ht,血小板数

  Ht,血小板数はGI,GHともに大きな変動を示さなかった。cm,GIVでは,ともにバイ パス開始後より滅少傾向を示した。

(3)血小板凝集能,血小板粘着能

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(3)

血 小 板 凝 集 能 はGIVに お い てGmよ り 抑 制 され る 傾 向 が み られ た 。 血 小 板粘 着 能 はGm,G IVと もに大きな変動はみられなかった。

(4)  TxBユ,6一KetoPGF,

  GIで は り ノ ー ル 酸 注 入 前TxB2270土57pg7ml6―KetoPGF,。275土20pg/mlで あ っ た が ,TxBエ は 注 入1時 間 後 よ り 上 昇 を 続 け ,4時 間 後 に1956土316pg/mlと な っ た 。6− KetoPGF,。は2時間 後562士84pg/mlと なった 後は低 下した 。

  Guで は り ノ ー ル 酸 注 入 後 ,TxBよ は 上 昇 し ー3時 間 後 に1645土231pg/mlと な っ た 後 低 下 し た 。6−KetoPGF,。 は1時 間 後510土54pg/mlと 上 昇 し , そ の 後 は 低 下 し た 。   G niで は ,V一Abypass施 行 中TxB: は500〜900pg/ml,6―KetoPGF,。 は300〜 400 pg/mlの 間で経 過した 。

  G IVで は り ノー ル 酸 注 入 後,TxB: は3時 間 後 ま で上 昇 し953土248pg7mlとな り , そ れ 以 降950pg7ml前 後 の 値 で 経 過 し た 。 ま た6−KetoPGF,。 は3時 間 後 で673土60pg/mlと な り ,それ 以降 も上昇 傾向を 示した 。

  Gm,GIVのTxB: はGI,GIIに 比 し 低 値 を 示 し た 。GIVの6一KetoPGF,″ は2時 間 後 以降Gmに比し て高値 をとり ,3時間後 以降 は有意 差がみ られた 。

(5)  6―KetoPGF,。/TxBz

  GIではり ノール 酸注入 前1.19土O.28であっ たが, 注入 後1時 間で0.35土0.07に低下し,そ の 後 は 経 時 的に 低 下 し た 。cnで は り ノ― ル 酸 注 入 後O.4前 後 で経 過 し た 。Gmで はり ノール 酸 注入後0. 5〜0.6の間 で経過 した。GIVで はりノール酸注入後2時間まで低下しO,59土0.08と な りその 後上 昇し, 注入後8時 間後に は1. 04土O.27とな った。

◎ 生存時 間

  平 均生 存時間 はGI:3.1土0.5時間 ,Gn: 5.0土O.4時間,Gm:9.0土0.9時間,GIV: 15.1 土5.9時 間 で あ っ た 。GI,G且 ,Gniは有 意 差 を も って 生 存 時 間 の延 長 を 認 め た。GIVはG IIIに比 し生存 時間 の延長 がみら れるが 有意 差は見 られな かった 。

◎ 病理組 織学 的所見

  重 症呼 吸不全 犬の肺 の病理 組織 は自血 球の浸 潤と肺 細小血 管の 血栓形 成,そ れによ る周囲組 織 の 壊 死 が みら れ 最 終 的 に出 血 性 肺 梗 塞の 像 を 呈 し た 。ま た ,ECMO施 行 群 にお い ても同 様 で あった 。

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IV考  察

1. pumplessA―Vbypassの効果

  呼吸不全の初期においては生体の血圧も十分にあり,バイパス流量も最高30〜40mE/kg/min と心拍出量の約40〜 50%の補助循環が可能であり血液ガスは良好に維持された。しかし呼吸不全 が進行し微小肺循環の障害から肺動脈圧が上昇する状態においては,右心負荷を増大させ有効な 補助手段とはならなかった。

2.V―A bypassの効果

  VーA bypassはA―Vbypassに比し,装着手技が煩雑で あるが,右心系の負荷にな ること はなく,循環動態の悪化に対してもバイパス流量の調節により対処できる点より補助循環として の非常に有効な手段である。しかし,本実験tま平均約8時間のV―A bypassであったが,血液 の破壊は明らかであり,長時間の補助循環を行なう場合,血液破壊の予防は非常に大きな問題で ある。

3.PGIよ誘導体(OP一41483)の効果

  OPー41483はPGI2の誘導体であ り,その半減期は70分でPGI2の3分より長く,血圧の降下 作用も弱い。本実験では,TxA2の作用に拮抗し,@血小板凝集抑制,@肺血管拡張,さらに◎

V―A bypass施 行 中 に お け る 血 小 板 , 赤 血 球 な ど の 保 護 作 用 に 期 待 し 使 用 し た 。   TxBユはTxAよの最終代謝産物で あり,TxAよは血小板より産生されて,血小板凝集亢進な どの作用を持ち,呼吸不全の病態において重要な役割を果たすと考えられている。これに対し6

―KetoPGF,。 はPGI2の 最 終代謝産物であり,PGI2は血 管内皮より産生されて,TxAzに拮 抗した作用を持ち,肺循環の恒常性を保っと考えられている。

  このことより6ーKetoPGF,″とTxBユの比をみると,OP−41483を投与することで 内因性 のPGIよの増加がみられ,その比拭術前の1.Oに復したことより,肺毛細管が不可逆的障害を受 ける 前においてはThrombxaneなど による肺血管の攣縮に対し,OP―41483により肺血管の拡 張がもたらされ,内因性のPGI2の産生の場が確保されることによるPGIエの増大とともに呼吸 不全状態における悪循環が抑えられたと考えられた。

V結  論

1.重 症 呼吸 不全 に対しECMOを行 うことでPa02,PaC02は良好 に維持された。しかし,循   環不全が加わった場合,A―V bypassではPa0よ,PaCOよを良好に保っことは困難であった。

  VーA bypassでは循環動態のコントロールが可能であった。

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(5)

2.呼 吸 不全 犬にECMOを 施行 し 有意 に生 存 時間 の延 長 がみ られ た 。

3, 呼 吸 不 全 犬 に お い て ,PGIユ/TxAユ の 比 は 低 下 し ,ECMOだ け で はPGIユ/TxAユ の 比 の 低 下 は 阻 止 し え な か っ た 。 し か し ,V―A bypassにPGIエ 誘 導 体 を 投 与 す る こ とでPGIユ / TxAよ の 比は 増大 し ,そ の値 は 約1.0と な った 。

4. PGIエ誘 導体 投与により非投 与群に比ベ生存時間 が延長する傾向が みられ,より長時 間のEC‑

MOが可 能で あ った 。

学位論文審査の要旨

  今 日 , 人 工 呼 吸 器 で は 救 命 で き な い 重 症 呼 吸 不 全 に 対 し てExtracorporeal Membrane Oxygenation (ECMO)の応用が行われ,これによる救命例も報告されている。

  本 研 究 で は ,ECMOの 有効 性と 限 界を 明確 に する ため 実 験的 に重 症 呼吸 不全 犬 を作 製し , こ れ に 対 し てpumplessA― Vbypass, V―Abypassの ほ か ,V一 AbypassにProstaglan‑

dinI: 誘 導 体 で あ るOP一41483を 投 与 し , 特 にThromboxaneAユ とProstaglandinIよ の 変 動 の面より比較検討した。

  実 験 方法 は, 雑 種成 犬20頭 (10〜20kg)を 用 い, 気管内挿管し陽圧 調節呼吸を行い,リ ノール 酸を 経 気管 的にO. smE/kgを 注入 し重 症 呼吸 不全 犬 を製 作し た 。実 験犬20頭は5頭づっの4っの グ ル ー プ に わ け , @ 重 症 呼 吸 不 全 犬 群 (GI) で コ ン ト 口 ー ル 群 , ◎pumplessA―Vbypass 施 行 群 (G皿 ) , ◎V―A bypass施 行 群 (Gm) , @VーA bypassにOP―41483(PGI: 誘 導 体 ) 投 与 群 (GIV) と し た 。OP亠41483はV―Abypass開 始 と 同 時 に 連 続 投与 し 肺動 脈圧 が15 mmHg以 下に なる よ うに 調節 し た。 人工 肺 はCapiox rii. 6cnf, ポン プは 遠心ポンプを用 いた。

ECMOはりノール酸注入1時間後より開始した。

  測定項目は(1)心電図,平均動脈圧,中心静脈圧,平均肺動脈圧,(2)血液ガス,(3)ヘマトクリッ ト , 血 小 板 数 , (4) 血 小 板 凝 集 能 , 血 小 板 粘 着 能 ,(5)6ーKetoPGF…ThromboxaneBよ で あ り,(1)〜(5)にっいてはりノール酸投与前,投与直後,さらに投与後1時間毎に測定した。各群の

   

辺 物

田 劔

授 授

教 教

査 査

主 副

(6)

実験犬の死亡後,肺の病変部をへマトキシリンエオジン染色にて病理組織学的検討を行った。

  結果は ,pumplessA一Vbypassにより呼吸不全の初期においては生体の血圧も十分にあり,

バイパス 流量も最高30〜40mE7kg/minと心拍出量の約40‑‑ 50%の補助循環が可能であり血液 ガスは良好に維持された。しかし呼吸不全が進行し微小肺循環の障害から肺動脈圧が上昇する病 態 に お い て は , 右 心 負 荷 を 増 大 さ せ 有 効 な 補 助 手 段 と は な ら な か っ た 。   VーA bypassは,装着手技が煩雑であるが,右心系の負荷になることはなく,循環動態の悪 化に対してもバイパス流量の調節により対処できる点より補助循環として非常に有効であった。

し か し , 長 時 間 の 補 助 循 環 を 行 う 場 合 , 血 液 破 壊 の 予 防 は 大 き な 問 題 で あ っ た 。   6―ketoPGF,。/TxB2はGIではりノ ール酸注入前1.19土0.28であったが,注入後1時間 でO. 35土O,07に低下し,その後は経時的に低下した。cnではりノール酸注入後0.4前後,G皿 ではりノール酸注入後O.5〜O.6の間で経過した。GIVではりノール酸注入後2時間後まで低下し O.59土0. 08と な り そ の 後 上 昇 し て 注 入 後8時 間 後 に は1.04土O.27と な っ た 。   平均生存時間はGI:3.1土O.5時間,GIL: 5.0土O.4時間,Gm:9.0土O.9時間,GIV:15.1 土5.9時間であった。GI,Gu,GIIIは有意差をもっ て生存時間の延長を認めた。G‑IVはG

―flIに比し生存時間の延長がみられたが有意差はなかった。

  重症呼吸不全犬の肺の病理組織は自血球の浸潤と肺細小血管の血栓形成,周囲組織の壊死がみ られ最終 的に出血性肺梗塞の像を呈した。またECMO施行群においても時間的差は有るが同様 であった。

  以上よ り次の結論が得られた@重 症呼吸不全に対しECMOを行う ことでPa02,PaCOヨは良 好に維持 された。しかし,循環不全 が加わづた場合,A―V bypassではPa0.z,PaC02を良好 に保っことは困難であった。

  V一A bypassでは循環 動態のコント口ールが可能で あった。@呼吸不全犬にECMOを施行 し有意に 生存時間の延長がみられた 。◎呼吸不全犬においてPGI2/TxAZの比は低下し,EC‑

MOだ け で はPGI2/TxA.Zの比 の低 下は 阻 止し えな かっ た 。し かし ,VーAbypassにPGI: 誘導体を投与することでPGI:/TxAよの比は増大し,その値は約1.0となった。@PGI:誘導体 投与によ り非投与群に比べ生存時間 が延長する傾向がみられ,よ り長時間のECMOが可能で あった。

  口頭発表において劔物教授より人工呼吸器の条件,バイパス回路の血栓予防法,呼吸不全犬モ デルの肺 病理組織,長時間ECMOを可能にするための問題点,また石橋教授よルリノール酸の 構造とその投与方法,OP―41483の代謝産物などにっいて質問があったが,申請者はおおむね妥

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(7)

当な回答をなした。また両教授には個別に審査を頂き,合格と判定された。本研究は重症呼吸不 全犬モデルを作製しこれにECMOを行いその有効性と問題点を明らかにするとともに,PGIよ 誘導体であるOP―41483を用 いることで長時間ECMOの可能性を示唆したものであり,学位の 授与に値するものと考える。

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参照

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