博士(獣医学)田原口智士 学位論文題名
オーエ スキー 病ウイルス前初期蛋白の構造と機能 学位論文内容の要旨
オ ーエ スキ ー病 ウイ ルス
(AD¥りが 感染し た細 胞に おい て最 初に 発現する 前初期(IE) 遺伝子産物である分子量180 ,000 ダルトンの蛋白をIE180 と呼ぷ。
IE180
は
ADVの 前 期 およ び 後 期 遺 伝 子 プ 口 モ ー タ ー に作 用し て転 写を 活性 化す る一 方、
IE遺 伝子 の転 写を 抑制 する。 この 様に 相反 する それ ぞれの機 能ド メイ ンを 明ら かに する ため に、 一連の 欠失
IE遺 伝子 を作 出し た。それ ぞ れ の 欠 失 遺 伝 子 の発 現 産 物 が 前 期 チ ミ ジ ン キ ナ ーゼ
(tk)遺伝 子、 後期
gX遺 伝予 およ びIE 遺伝 子の プ口 モー ターに 及ぼ す影 響を ク口 ラム フェニコ ール アセ チル トラ ンス フェ ラー ゼ発 現系を用いて解析した。また、IE180 が 転写 調節 因子 とし て機 能を 発揮 する ために は核 に局 在す る必 要が ある。こ れら の欠 失IE 遺伝 子を 導入 した 細胞 を螢光抗体法によって解析し、IE180 の 核への局在に関与する部位を検索した。
IE180
のアミ ノ(N) 末 端の
132ア ミノ 酸残基を欠失した変異体は、tk および
gX遺 伝子 プロ モー ター に対 する 転写 活性化 作用 を欠 いて いた 。カ ルポキシ ル(C) 末 端379 アミ ノ酸 残基 を欠 失さ せた変異体はIE180 と同様の転写活性化 作用 を示 した 。C 末 端側 の560 ア ミノ 酸残基 を欠 失さ せた 変異 体に は転写活 性 化 作 用 を 認 め な かっ た 。 以 上 の 成 績 か ら 、 転 写 増強 作用 に与 る領 域が
IE180の1 .460 アミノ酸残基の内、1 から1 ,081 番のアミノ酸配列内に存在する ことが判った。
IE180
のC 末 端側
379ア ミノ 酸残 基を 欠く 変異 体は 、IE180 と 同様 にIE 遺伝
子の 転写 を抑 制し た。 ℃末 端側 の560 アミノ酸残基を欠く変異体は、IE 遺伝
子の 転写 を抑 制し なか った 。IE180 の
N末端側の453 アミノ酸残基を欠く変異
体は
IE180より さら に強 い転 写抑 制作 用を示した。N 末端側の617 アミノ酸残
基を 欠失 させ た変 異体 は転 写抑 制作 用を失 った 。ま た、
C末 端お よびN 未端
双方から各々
379および453 のアミノ酸残基を欠失させた変異体は強い転写 抑制作用を示した。以上の成績は、IE180 の454 から1 .081 アミノ酸配列内に
IE遺 伝 子 の 転 写 を 抑 制 す る 領 域 が 存 在 す る こ と を 示 す 。
IE180の核への局在は塩基性アミノ酸から成る核移行シグナルによるもの と考えられる。IE180 分子には464 〜468 番と930 〜934 番に塩基性アミノ酸ク ラスター(RRKRR) が存在する。IE180 のC 末端側の510 アミノ酸残基を欠く変 異体は
IE180と同様、核に局在したが、C 末端側から560 アミノ酸配列を欠 く変異体は、核に局在しなかった。この変異体は930 '‑‑934 番の核移行シグ ナルを欠く。しかし、この変異体からC 末端側をさらに271 アミノ酸残基、
計831 アミノ酸を欠失させた変異体は核内に検出された。一方、C 末端側の
1,157 アミノ酸残基を欠く変異体は核と細胞質の両方に検出された。この変 異体 は464 番 からの
RRKRR配列を欠く。次に、各々のRRKRR 配列を含む部 位を欠失させた変異体を作出した。IE180 の333 から575 番のアミノ酸配列を 欠失させた変異体は核に局在した。一方、C 末端側の900 から950 番目のアミ ノ酸配列を欠失させた変異体は細胞質に留まった。従って、IE180 の900 から
950番目までのアミノ酸配列内に核への移行に関与する部位が存在すると考 えられる。IE180 のC 末端側560 アミノ酸残基を欠失させた変異体が転写調節 作用を示さなかった理由は、この変異体が核に局在しなかったためであろ う。
以上の成績から、IE180 の転写活性化作用には、IE180 のN 末端に存在す
る34 酸性アミノ酸部位、454 〜696 番目のDNA 結合ドメインおよび930 ‑‑934
番目の核移行シグナルが必要であること、およびIE 遺伝子の転写抑制作用
には
IE180の454 ‑‑696 番目のDNA 結合ドメインおよび930 〜934 番目の核移行
シグナルが必要であることが判った。
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
オー エスキー 病ウイ ルス前初期蛋白の構造と機能
オ 一 工 ス キ ー 病 ウ イ ル ス(ADV)の 前 初 期 蛋 白(IE180)は 、ADVの 初 期 お よ び 後 期 遺 伝 子 プ ロ モ ー タ ー に 作 用 し て 転 写 を 活 性 化 す る 。 一 方 、IE180は 前 初 期(IE)遺 伝 子 の 転 写 を 抑 制 す る 。 こ の 様 に 一 見 相 反 す る 機 能 に 関 与 す る 部 位 が 、IE180分 子 上 の ど こ に 存 在 す る か を 明 ら か に す る た め に 、 ー 連 の 欠 失IE遺 伝 子 を 作 出 し て 解 析 し た 。
欠 失 遺 伝 子 が 発 現 す る 変 異 体 が 初 期 の チ ミ ジ ン キ ナ ー ゼ 遺 伝 子 、 後 期 のgX遺 伝 子 お よ び 前 初 期 のIE遺 伝 子 の 転 写 に 対 す る 作 用 を ク 口 ラ ム フ ェ ニ コ ー ル ア セ チ ル ト ラ ン ス フ ェ ラ ー ゼ 発 現 系 を 用 い て 解 析 し た 。 そ の 結 果 、1,460ア ミ ノ 酸 残 基 か ら 成 るIE180分 子 の 、1か ら 1,081番 の ア ミ ノ 酸 配 列 内 に 初 期 お よ び 後 期 遺 伝 子 の 転 写 増 強 作 用 に 与 る 部 位 が 存 在 す る こ と が 判 明 し た 。 ま た 、IE遺 伝 子 の 転 写 を 抑 制 す る 部 位 は454か ら1.081ア ミ ノ 酸 配 列 内 に 存 在 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。
ADV遺 伝 子 の 転 写 は 核 で 起 こ る の で 、IE180が 転 写 調 節 機 能 を 発 揮 す る た め に は 翻 訳 後 、 核 に 移 行 す る 必 要 が あ る 。 欠 失IE遺 伝 子 を 導 入 し た 細 胞 を 螢 光 抗 体 法 に よ っ て 解 析 し た 結 果 、IE180の 核 へ の 移 行 に は930か ら934番 目 ま で のRRKRR配 列 が 関 与 す る こ と が 判 っ た 。
IE180の 前 期 お よ び 後 期 遺 伝 子 の 転 写 活 性 化 に は 、 そ の ア ミ ノ 末 端 に 存 在 す る34酸 性 ア ミ ノ 酸 か ら 成 る 配 列 、454〜696番 目 のDNA結 合 ド メ イ ン お よ び930〜934番 目 の 核 移 行 シ グ ナ ル が い ず れ も 必 要 で あ る と 考 え ら れ る 。 ま たIE遺 伝 子 の 転 写 抑 制 に はIE180の454〜 696番 目 のDNA結 合 ド メ イ ン お よ び930〜934番 目 の 核 移 行 シ グ ナ ル が 関 与 す る も の と 考 え ら れ る 。
以 上 の 成 績 か らADV遺 伝 子 の 転 写 調 節 に 関 与 す るIE180分 子 の 機 能 ド メ イ ン が 明 ら か と な っ た 。 本 研 究 で 得 ら れ た 結 果 は 、 ウ イ ル ス の 増 殖 を 転 写 レ ベ ル で 制 御 す る 戦 略 を 開 発 す