長いようで短かった夏休みも終わり、学園に は活気が戻って来ました。今年は不安定な気候 で、夏を充分に楽しめなかったという人も居る のではないでしょうか。一方図書館は例年の通 り、お盆前後等の休館日を除いて開館していま した。殆ど毎日通う利用者も居て、私の学生時 代を思い出して恥ずかしくなりました。
さて、前回のつづきと参りましょう。
Q:前回、前々回の二回に渡って比喩について お話しいただきました。
A:比喩の表現形式としてメタファー、メトニ ミー、シネクドキを取り上げました。
Q:それぞれの違いについて説明していただき ましたが、例えば「パーティーに顔を出した」
という表現がどれに当てはまるのかを考え たとき、一瞬混乱してしまいます。今回は 復習の意味で、もう一度三つの形式を整理 したいと思います。
A:メタファーは類似性に基づく比喩です。「目 玉焼き」がその例でしたね。
Q:卵の黄身を「目玉」に喩えているわけですね。
A: 「彼女は医者の卵だ」の「卵」もメタファー です。一人前(=成鳥)になる前の状態を「卵」
に見立てているわけです。メタファーは「あ るものを別のあるものに見立てること」と 考えればよいと思います。
Q:なるほど。単に形状が似ているということ ではないわけですね。
A:次にメトニミーですが、これは一部で全体 を表したりする近接性に基づく比喩です。
先ほどの「パーティーに顔を出した」の「顔」
はメトニミーです。
Q:「顔」という体の一部で「人」全体を表すわ けですね。
A: 「いなりずし」もメトニミーです。これには「油 揚げ→きつねの好物→(きつねは)稲荷神の使 い」という二重の近接関係が働いています。
Q:なるほど。抽象的な近接関係もメトニミー になるわけですね。
A:最後にシネクドキですが、これは包摂性に 基づく比喩です。つまり「含む―含まれる」
の関係です。「医者の卵」はメタファーでし たが、「卵かけごはん」の「卵」はシネクド キです。「卵」という上位概念で「鶏卵」と いう下位概念を表しています。
Q:今回は復習でしたので、最後に復習テスト をお願いします。
A:次の文章の中にメタファー、メトニミー、
シネクドキがそれぞれ一つずつ用いられて います。それを考えてみてください。
「昨日の日曜日は10時に起きて、ごはんを 食べた後、夕方までテレビを見ていました。
せっかくの休日なのに時間を無駄にした気 分になりました」
Q:まず「ごはん」がシネクドキですね。「ごは ん(=お米)」で「食事」を表しています。そ れから「テレビ」がメトニミーだと思います。
テレビ本体を見るのではなく「テレビの画 面に映っている映像を見る」わけですから。
ただメタファーがどれかわかりません。
A:メタファーは「時間を無駄にした」です。「時 は金なり」というメタファーに基づいてい ます。お金を無駄遣いするのと同じように 時間を無駄遣いするということです。
Q: 「時間」を「お金」に見立てているのですね。
今回で比喩の仕組みが把握できました。
A:「比喩の仕組みを把握する」もメタファーで すよ。これについては次回お話しします。
Q:分かりました。では最後に文献をお願いし ます。
A: 『ことばは味を超える : 美味しい表現の探 究』、瀬戸賢一編著、海鳴社(2003年)と、
その続編『味ことばの世界』、瀬戸賢一 [ほか]
著、海鳴社、(2005年)の2冊です。
今回の参考文献は、味にまつわる様々なこと ばを色々な角度から見つめ直します。身の回り でよく使われることばなので、「なるほど、そう いうことだったのか!」と納得する点が多いと 思います。特に難しい専門知識がなくても、今 まで解説して頂いた点を知っていれば充分楽し める文献です。なお、『ことばは味を超える : 美 味しい表現の探究』は請求記号は814‖Set、資 料IDは525756です。『味ことばの世界』の請求 記号は814‖Ajik、資料IDは525755です。共に本 館の第1閲覧室に配架されているので、是非手に 取ってみて下さい。
にゅうがく なおや
(福井工業大学准教授・英語学・英語史)
ふじい たつや(司書・課長補佐・アジア関係図書館)
入学 直哉、藤井 達也
言語学、はじめの一歩 (21)
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