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言語学、はじめの一歩 (11)

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Academic year: 2021

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 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございま す。これからどの様な学生生活が始まるのか、

楽しみにしておられる事と思います。

 さてこのコーナーは、言葉を科学的に分析す る言語学を、分かりやすくお伝えしようとスター トしました。今まで不思議に思っていた事が納 得出来たり、新しい発見があればと願っていま す。言語学に少しでも興味を持って頂ければ幸 いです。バックナンバーは、図書館のHPから 読むことが可能です。具体的には、図書館ホー ム ペ ー ジ の ト ッ プ ペ ー ジ(http://www.kufs.

ac.jp/toshokan/index.html) か ら、「 デ ジ タ ル図書館報」へ進んで下さい。第186号から連載 しています。

 では、始めましょう。

Q:前回、前々回は言語習得についてでした。

A:統語論の話に戻りたいと思います。今回は 情報の構造や伝達という視点から文法現象 を明らかにしようとする機能文法について お話したいと思います。

Q:情報の構造とは何ですか?

A:文の中には聞き手にとって既知の情報と未 知の情報が含まれています。この情報のま とまりが情報構造です。既知の情報を旧情 報、未知の情報を新情報と言います。旧情 報とは話し手が会話の場面において「聞き 手もすでに知っている」と判断する情報で、

新情報とは話し手が「聞き手はまだ知らな い」と判断して会話の中に初めて提示する 情報です。

Q:具体例を挙げて説明していただけますか?

A:例えば、“When did John break his leg?”

という問いに対する答えとして自然なのは、

(a)“He broke his leg yesterday.”、(b)

“Yesterday he broke his leg.”のどちら でしょうか?

Q:(a)ですね。(b)は少し不自然な感じがします。

これに情報構造が関係しているのですか?

A:はい。“When did John break his leg?”

に対する答えですから、“he broke his leg”

は旧情報で“yesterday”は新情報になりま す。談話は「既知から未知」に流れるのが 自 然 で す。 つ ま り、(a)は“He broke his leg(旧 情 報)+yesterday(新 情 報).”で す か ら情報の伝達としては自然です。ところが (b)は“Yesterday(新 情 報)+he broke his leg(旧情報).”ですので不自然に感じられる わけです。

Q:なるほど。では“What happened yesterday?”

という問いに対してなら、今度は(b)が自然 な応答になるわけですね。

A:そうですね。英語は旧情報を先に出して、

新情報を後に置く傾向があります。受験英 語 で“She put a hat on.” と“She put on a hat.”はどちらも正しいが“a hat”を 代名詞“it”に置き換えた場合、“She put it on.”とは言えても“*She put on it.”とは言 えないと習います。代名詞は典型的な旧情報 ですので先に出さないといけないわけです。

Q:これは以前から疑問に思っていましたが、

情報構造が関係していたわけですね。この様 に説明されると、すんなり理解出来ますね。

A:日本語の助詞の「は」と「が」の使い分け も新情報と旧情報の違いで説明されること があります。例えば、昔話は「昔々あると ころにおじいさんとおばあさんが住んでい ました。おじいさんは山へ芝刈りに、おば あさんは川へ洗濯に・・・」と始まります。日 本語では「が」は新情報を表し、「は」は旧 情報を表すので、物語に初めておじいさん とおばあさんが登場する時は「おじいさん とおばあさんが」となり、二回目に出てく る時は既知の情報ですので「おじいさんは」

あるいは「おばあさんは」となります。

Q:なるほど。この「は」と「が」の使い分け は日本に長く住んでいて流暢な日本語を話 す外国人でも、時々間違えるのを耳にしま す。助詞がない言語が母国語の人たちにとっ ては難しいのでしょうね。では最後に参考 文献をお願いします。

A:『談話と情報構造』、神尾昭雄、高見健一著、

研究社出版(1998年)です。

 本書の所蔵データは、次の通りです。

請求記号:801.09‖Nich‖2 資料ID:443599 配架場所:本館第一閲覧室

 今回ご紹介頂いた参考資料は「第Ⅰ部 情報の なわ張り理論:基礎から最近の発展まで」と、「第

Ⅱ部 情報構造と伝達機能 - 省略、後置文、数 量詞遊離」の二つから構成されています。今回 のテーマは、後者の内容です。

 第1章 省略、第2章 後置文、第3章 数量詞遊離 の構成となっていて、耳慣れない用語もあると 思います。少し難しく感じられるかも知れませ んが、解説も付されているので、少しずつ読み 進んでみてはいかがでしょうか。今まで考えも しなかった事に、気が付くと思います。

 にゅうがく なおや

(福井工業大学准教授・英語学・英語史)

ふじい たつや(司書・係長・アジア関係図書館)

入学 直哉、藤井 達也

言語学、はじめの一歩 (11)

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