Q:英語の歴史は44₉年に始まるということでした ね。
A:はい。英語の歴史は44₉-₁₁50年までを古英語 期、₁₁50-₁500年までを中英語期、₁500-₁₉00年 までを近代英語期、₁₉00年以降を現代英語に 区分されます。
Q:古英語とは、どのようなものですか?
A:古英語は現代英語とはまったく異なる姿をして いました。例えば、ドイツ語などのように名詞 は性・数・格に応じて屈折変化をします。つ まり、主語や目的語などの文法関係は語順で はなく名詞の屈折によって表されるわけです。
Q:綴りや発音はどのようなものだったのですか?
A:古英語ではæやðなど現代英語では使用されな い文字も使われていました。また文字と発音 は原則的に一対一の対応関係にありました。
Q:つまり、いわゆるローマ字読みをしていたと いうことですね。ところで現代英語に古英語 の痕跡などは見られるのでしょうか?
A:はい。たとえば、三単現の-sや仮定法で出て くるIf I were youのwereなどは古英語の動詞 の活用形の名残りです。また所有格の-’sは名 詞の単数・属格の屈折語尾-esに由来します。
Q:面白いですね。では中英語はどうでしょう?
A:古英語から中英語への移行期に当たる₁066年に ノーマン・コンクエスト(Norman Conquest) という英語史上の重要な出来事が起きます。
Q:英語史上の重要な出来事とはどういう事です か?
A:イギリスの王位継承を巡る争いが生じ、イギリ ス貴族のハロルドがノルマンディ公ウィリア ムに破られてしまいます。その結果、フラン ス語を母語とするノルマン人がイギリスを支 配することになり、これ以降、約300年に渡り、
イギリスの議会や教会、教育の場でフランス 語が公用語として用いられるようになりまし た。
Q:公用語が変わるというのは、一大事ですね。
A:イギリスにおけるフランス語支配を顕著に表し ているのが、ox(牛)―beef(牛肉)、swine(豚)
―pork(豚 肉)、sheep(羊)―mutton(羊 肉)な どの家畜名と料理名の対立です。いずれも前 者は英語、後者はフランス語です。
Q:どういうことですか?
A:家畜の世話をするのがイギリス人で、それを料 理として食べるのが領主のノルマン人という
ことです。
Q:なるほど。そういうことですか。
A:中英語期には他にも政治、法律、商業、服飾等 に関係する大量のフランス語の語彙が英語に 入ってきました。しかし、₁4世紀に入るとイ ギリスとフランスの間で百年戦争が起き、フ ランス語が敵国の言語となったことなどを契 機として、イギリスで英語がその地位を取り 戻していきます。そしてイギリスルネッサン スとともに近代英語期が始まります。
Q:ありがとうございました。では参考文献をお願 いします。
A:『はじめての英語史 : 英語の「なぜ?」に答え る』、堀田隆一著、研究社(20₁6年)です。
今回のお話では、古英語は現代の英語とはかなり 趣が異なっていたということが分かります。そして ノーマン・コンクエストによりフランス語が公用語 になるなど、英語の激動の時代と言えるのではない でしょうか。言語はそれだけで成立しているのでは なく、歴史と深く関わっていることがよく理解でき ます。
今回の参考文献では、先ず「いかにして英語は現 在の姿になったのか?」と題して、英語史を概説し ています。その後は「発音と綴字に関する素朴な疑 問」、「語形に関する素朴な疑問」など、英語を学習 している時に思う素朴な疑問を扱っています。例え ば「なぜdebt, doubtには発音しない<b>がある のか?」という具合です。
本書の趣旨は、通常であれば学習中に素朴な疑問 を思いついても、規則だからと決め付けて深く考え ないような事柄に、英語史を通して光を当てる事に あります。皆さんもこれまで英語を学習してきた中 で思いついた素朴な疑問が、きっと見つかりますよ。
今まで規則だと割り切っていた事の背後には、実は 深い意味があることを教えてくれ、英語の幅を広め てくれる一冊です。
請求記号: ₈30.2||Hot 資料ID: 6₁4347
配架場所: 第一閲覧室(ベストセラーコーナー)
にゅうがく なおや
(福井工業大学准教授・英語学・英語史)
ふじい たつや(司書・主幹・アジア関係図書館)
入学直哉、藤井達也
言語学、はじめの一歩 (₃₄)
図書館員の文献紹介と 資料の活用