暑かった夏休みも終わり、キャンパスには活 気が戻ってきました。皆さんは、どの様な夏を 過ごされましたでしょうか。夏期休暇中も足繁 く図書館へ通う姿を、人数は少ないものの今年 も見受けました。
では、言語学のお話の続きを...
Q:前回は統語論とはどのような研究分野かに ついて説明していただきました。
A:統語論に限ったことではありませんが、言 語の研究は様々な理論的枠組みで進められ ています。統語論では生成文法や機能文法 などがあります。前者はチョムスキー理論 とも呼ばれます。
Q:アメリカの言語学者ノーム・チョムスキー 博士によって提唱された理論ですね。この 連載の第 2 回目でも触れましたが、チョム スキー教授は1987年に来日された際、本学 で講演されました。チョムスキー理論とは どのようなものですか?
A:チョムスキーは人間がどのようにして言語 能力を獲得するのかという問いに対して、
重要な仮説をたてました。人間はどうやっ て言葉を覚える、つまり母語を獲得すると 思いますか?
Q:周りの大人の話していることを聞いて、そ れを真似するのではないでしょうか?
A:確かにヒトは産まれる前、つまりお母さん の胎内にいる時から、周囲の音や声を聞き、
産まれた後も当然、周りの大人たちの言葉 に反応します。ただ、周囲の大人たちが話 している言葉を真似るだけで言語を習得す るわけではありません。
Q:どういうことでしょうか?
A:普通、幼児は 4 、5 歳くらいまでに母語を 獲得すると言われていますが、その過程で 決して大人が犯さないような間違いをする ことがあります。例えば、英語が話されて いる環境で育った幼児は言語習得期のある 時期、goの過去形をgoed(正しくはwent)、
take の 過 去 形 を taked(正 し く はtook)と 言ったりすることがよく知られています。
Q:大人の真似をしているのではなく、動詞の 過去形は「原形+-ed」という規則を習得し たわけですね。
A:そうです。もちろん、時間が経つと動詞の 規則変化と不規則変化は正しく習得されま す。また、子どもは今まで一度も聞いたこ とのない文を作り出すこともできます。
Q:子どもが母語を獲得するのは、単に周囲の
大人の話している言葉を真似しているだけ ではないわけですね。
A:はい。チョムスキーは人間にはどんな言語 であれ、それを母語として獲得する言語機 能が生得的に(=生まれながらにして)遺伝子 の中に組み込まれているという言語生得説 を主張しました。そして、人間が言語を獲 得する以前の言語機能の初期状態を普遍文 法と言います。チョムスキー理論が目指す のは、この普遍文法の解明です。
Q:生成文法の考え方とは、例えばどのような ものですか?
A:前回お話ししたような「文は単語が直線的 に並んでいるのではなく、階層構造を成し ている」というのは生成文法の基本的な考 え方です。生成文法は初期の「標準理論」
から「GB理論」を経て、現在は「極小主義」
という枠組みで研究がなされています。50 年以上に渡り、大小の理論的変遷を繰り返 して発展してきた分野です。
Q:難しそうですが、最後に参考図書をお願い します。
A:はい。易しい順に次の三つを挙げておきます。
『生成文法がわかる本』、町田健著、研究社 出版(2000年)、『ベーシック生成文法』、岸本 秀樹著、ひつじ書房(2009年)、『生成文法』、
渡辺明著、東京大学出版会(2009年)。
今回ご紹介頂いた参考文献の所蔵情報は、下 記の通りです。
『生成文法がわかる本』
請求番号:801.5‖Mac 資料ID:461396 配架場所:本館第一閲覧室
『ベーシック生成文法』
請求番号:801.5‖Kis 資料ID:537537 配架場所:本館第一閲覧室
『生成文法』
請求番号:801.5‖Wat 資料ID:550205 配架場所:本館第一閲覧室
請求番号の数字の部分が三冊とも同じなのは、
同じ分野の本だからです。他にも閲覧室や書庫 に、多くの類書が所蔵されています。この801.5 という番号をキーにして、言語学の書籍の探索 に出掛けませんか?
にゅうがく なおや
(福井工業大学講師・英語学・英語史)
ふじい たつや(司書・係長・アジア関係図書館)
入学 直哉、藤井 達也
言語学、はじめの一歩 ( 9 )
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