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言語学、はじめの一歩 (22)

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Academic year: 2021

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Q:前回はメタファー、メトニミー、シネクド キについての復習でした。

A:最後に復習テストとしてそれぞれの用例を 文章中から探し出してもらいましたが、メ タファーの例が見つけられませんでしたね。

Q: はい。「時間を無駄にした」がメタファーだ とは気付きませんでした。

A:実は「時間を無駄にした」のような表現が メタファーであることを示したのはジョー ジ・レイコフ(George Lakoff)とマーク・ジョ ンソン(Mark Johnson)という二人の学者 です。彼らは1980年に出版されたMetaphors We Live By(邦訳『レトリックと人生』)とい う本の中で新たなメタファー論を展開しま した。これによりメタファー研究が大きく 変わりました。

Q:どのように変わったのですか?

A:それ以前はメタファーというのは文学作品 や詩などで文体を豊かにするために用いら れるレトリックとして扱われてきました。

Q: 高校の頃にそのように教わった気がします。

A:ところがレイコフとジョンソンは先ほどの 本の中で、メタファーは文学作品などで用 いられるレトリックという特殊なものでは なく、日常言語の中にあふれていることを 豊富な例を挙げて証明しました。

Q:今までメタファーだと意識していなかった 表現が実はメタファーだったということで すね。

A:その通りです。このレイコフとジョンソン のメタファー論では我々は社会的あるいは 文化的な経験などを基盤にして、抽象的な 概念をより具体的な概念によって理解して いると考えられています。冒頭の「時間を 無駄にした」という表現ですが、これは TIME IS MONEY(時間はお金である)と いうメタファーが基盤となっています。つ まり我々は「時間」という抽象的概念を「お 金」という別の具体的概念で理解している ことになります。

Q:私たちの社会の中では「時間」も「お金」

と同様に限られた貴重なものだからですね。

A:レイコフとジョンソンは上で挙げた本の中で TIME IS MONEYを基盤としたメタファー の 例 と し て、You’re wasting my time.

(君はぼくの時間を浪費している)、This gadget will save you hours.(この機械

装置を使えば何時間も節約できる)、How do you spend your time these days?

  (この頃どんなふうに時間を使っているの)、

I’ve invested a lot of time in her.(彼女に は随分時間をさいてやったよ)などを示し ています(日本語訳は渡部他(訳)より引用)。

Q:確かにこうやって改めて例を示されると、

「時間」を「お金」として捉えていることが 分かります。特に最後のinvestを使った例 はそう感じます。

A:そうですね。TIME IS MONEYのようにあ る概念を別の概念を通して理解するメタ ファーは「概念メタファー」と呼ばれます。

概念メタファーの話はまた次回以降にした いと思います。

Q:今回は少し内容が難しい感じがしましたが、

大変興味深い話でした。では参考文献をお 願いします。

A: 先 ほ ど お 話 し し たMetaphors We Live By、

George Lakoff and Mark Johnson 著、

The University of Chicago Press (1980 年)とその邦訳『レトリックと人生』、渡部昇 一、楠瀬淳三、下谷和幸訳、大修館書店(1986 年)を挙げておきます。認知言語学における メタファー研究の出発点となった一冊です。

 今回の洋書の参考文献(請求記号:401‖Lak 資料 ID:468705 配架場所:本館書庫2F)が出 版されたのは1980年ですので、それほど古い物 ではないと知り、驚いているのは私だけでしょ うか。内容的には専門書ですので、理論的で固 苦しく感じると思いますが、難解な図などは無 く、簡潔に記述されています。一度原書にトラ イしてみてはいかがでしょうか。

 その邦訳(請求記号:801.6‖Lak 資料ID:

453239 配架場所:本館第1閲覧室)も挙げて頂 いているので、こちらを先に読んで、その後に 原書に当たるというのも手ではないでしょうか。

 メタファー研究が大きく変わるきっかけと なった本書、少しでも気になったら手に取り、

目次や最初の数ページに目を通してみてくださ い。何かが変わるきっかけになるかも知れませ んよ。

 にゅうがく なおや

(福井工業大学准教授・英語学・英語史)

ふじい たつや(司書・課長補佐・アジア関係図書館)

入学直哉、藤井達也

言語学、はじめの一歩 (22)

図書館員の文献紹介と資料の活用

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