いよいよ夏休みが近付いて来ました。どの様 に過ごすか、計画は決まっているでしょうか。
社会に出ると、これだけまとまった休みを取る のは殆ど不可能です。貴重な夏休み、どうぞ目 的意識を持って、有意義に過ごして頂きたいと 思います。
図書館では夏休みの期間中、お盆前後と日曜 日、土曜日の一部の閉館を除いて、基本的に8月 は9時〜 16時、9月は秋学期の授業開始日前日ま で9時〜 17時の開館となっています。外は暑い毎 日ですが、図書館では涼しく快適に過ごすこと が出来ます。詳しい開館日程については、本号 の最終ページか、図書館のホームページで確認 して下さい。
Q:前回は200号記念ということで言語学を学ぶ 意義についてお話して頂きましたが、今回 は前々回の話の続きをお願いします。確か 意味についてのお話でした。
A:そうですね。前々回は一つの単語が複数の 意味を持つ多義語についてお話ししました。
今回はその延長で多義文について紹介した いと思います。
Q:多義文ということは一つの文が複数の意味 を持つ文のことですね。
A:はい。あいまい文とも呼ばれますが、こ こ で い う「 あ い ま い 」 はvagueで は な く ambiguousです。つまり、文が表す意味が 漠然としていて分かりにくいのではなく、A ともBとも解釈できる文のことです。
Q:AとBの解釈は明確なのにどちらの意味にも 取れる文のことですね。確かこの連載の第 8回目に構造的多義性の話が出たと思います が、それが多義文のことですね。
A:ずいぶん前の話になりますが、文は階層構 造を成しているという話の流れで多義文に ついて少し触れましたね。確か“John hit a man with a stick.”という例文を出した 記憶があります。
Q:この文は「ジョンは杖で男を叩いた」と「ジョ ンは杖を持った男を叩いた」という二つの 意味に解釈できるので多義文なわけですね。
A: はい、ただし前置詞句を文頭に移動させて
“With a stick John hit a man.”とすると 前者の解釈にしかなりません。多義文が生 じる原因はほとんどの場合、文の構造の捉 え方が関わっていると言えます。
Q:他にも例はありますか。
A:“Time flies like an arrow.”を機械翻訳に
掛けたら「時バエは矢を好む」と訳したと いうエピソードがあります。
Q:機械ならではの解釈ですね。
A:人間なら「時バエ」というハエなど存在し ないことを知っていますし、ハエが矢を好 むことなど常識では考えられないことも 知っていますので、このような解釈はまず しませんね。また多義文であったとしても 前後の文脈から一つの解釈だけを導くこと もできます。
Q:日本語でも多義文はありますよね。
A:代表例は「警官は自転車で逃げた泥棒を追 いかけた」ですね。自転車に乗っていたの は警官か泥棒かという点であいまいなわけ です。
Q:でも日常会話なら「自転車で逃げた泥棒を 警官は追いかけた」とか「逃げた泥棒を警 官は自転車で追いかけた」とか言うように 思いますが。
A:言語はコミュニケーションの手段ですので、
聞き手に意味が正確に伝わるように話し手 はなるべくあいまいさが生じるのを避けよ うと努力するわけですね。
Q:ありがとうございました。では最後に参考 図書をお願いします。
A:『学校英文法プラス—英語のより正確な理解 に迫る—』、中野清治著、開拓社(2012年)です。
第11章「あいまいさの引き金」で多義文が 扱われています。
本書はサブタイトルにある通り、「英語のより 正確な理解に迫る」事を目的としています。英 語をある程度学習している人を対象に、14の章 について文法的に詳しく解説が行われています。
よく知っている用語の他に、聞き慣れない用語 も出てきます。伝統的な学校文法では扱ってい ない領域です。例えば不定詞は知っていても、
遡及不定詞や分離不定詞という用語はいかがで しょうか?
出来る限り多くの例文を用いて解説を進めて いますが、その中には多くのジョークが取り上 げられています。無味乾燥な解説に終始するの を避けるためという配慮です。
夏休みに本書で、じっくりと英文法を見つめ 直してみてはいかがでしょうか。
にゅうがく なおや
(福井工業大学准教授・英語学・英語史)
ふじい たつや(司書・係長・アジア関係図書館)
入学 直哉、藤井 達也
言語学、はじめの一歩 (16)
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