もうすぐ待ちに待った夏休み。皆さん、もう予定 は決まっていますか。夏の間にまとまった休みを取 れるのは、学生の特権です。日頃の忙しさから離れ て、じっくり読書してみませんか。
Q:前回から英語の歴史についての話が始まりまし た。入学先生は英語学・英語史がご専門とい うことですが、英語の歴史に興味を持つきっ かけは何だったのでしょうか?
A:英語史に初めて触れたのは、学部1回生の頃に 大修館書店のスタンダード英語講座というシ リーズの中の『英語の歴史』を読んだ時だと 記憶しています。著者は渡部昇一先生です。
Q: 何か心に響くものがあったのですね。
A:それまで英語と言えば受験英語しか知らなかっ たので、英語の歴史物語にすっと引き込まれ た感じでしたね。その後、講談社現代新書と して出版されていた中尾俊夫先生の『英語の 歴史』を書店で見つけてすぐに購入して読み ました。
Q:ありがとうございます。では本題に戻ります が、前回のお話では英語の歴史は5世紀中頃に 始まるということでした。
A:はい。それ以前のブリテン島の状況はと言いま すと紀元前6 ~ 7世紀頃にヨーロッパ大陸から 渡来して来たケルト民族が定住していました。
彼らはケルト語を話していました。
Q:ケルト民族ですか?日本でも90年代にケルト ブームが起きましたね。ケルト語は今でも話 されているのですか?
A:ケルト語系の言語であるアイルランド語や ウェールズ語は現在でも用いられています。
私は過去に何度かウェールズを訪れる機会が ありましたが、イングランドから一歩ウェー ルズに入ると道路標識などはウェールズ語と 英語の併記になりますし、現地の人々が日常 的にウェールズ語で会話しているところも目 撃しました。
Q:ケルト民族の末裔ですね。
A:はい。彼らは歴史上、何度かヨーロッパ大陸か らの侵略を受けることになります。例えば紀元 前55年と54年の2回に渡り、ケルト民族の一派 であるブリトン人を討伐するためにローマの 武将であるジュリアス・シーザーが軍を率い てブリテン島にやって来ました。また紀元後 43年にはローマ皇帝クラウディウスが約4万の 軍隊を率いて侵略し、ついにはスコットラン
ド以外のほぼ全域をローマの支配下に置きま した。これにより先住民のケルト民族は「ロー マ化」されました。
Q:ローマ化とは何ですか?
A:生活様式の様々な面でローマの影響を受けるこ とです。ブリテン島におけるローマの支配は 紀元後410年まで続きますが、その間にキリス ト教がもたらされましたし、先住民でも上流 階級の人々の間ではラテン語が話されるよう になりました。
Q:なるほど。言語面でも影響を受けたわけですね。
A:そうですね。410年にローマによる支配は終わ りますが、その約半世紀後にブリテン島はま た別の民族による侵略を受けることになりま す。この話は次回にしたいと思います。
Q:ありがとうございました。では参考文献です が、冒頭に挙げていただいた2冊はいかかで しょう?
A: はい、分かりました。『英語の歴史』、渡部昇一著、
大修館書店(1983年)と『英語の歴史』、中尾俊 夫著、講談社(1989年)ですね。私が学部生の頃 に読んだ本なので出版されてから随分経ちま すが、後者は装丁も新たになって今でも書店 で手にすることができると思います。
今回は入学先生が、この分野に興味を持たれる きっかけとなった本を紹介して頂きました。前者は 渡部昇一先生のスタンダード英語講座第3巻で、ペー ジ数は269と、結構なボリュームです。後者は講談 社現代新書ですので、最初に手にするなら、こちら の方が良いかもしれません。両者とも平易な内容で はありませんが、初学者にも分かりやすいように配 慮されています。
英語の歴史というと、私は語形変化をイメージし てしまいますが、実はそれを話す民族の歴史や文 法、意味、更には社会言語学など、多岐に亘る事が 理解できます。この夏の一冊に加えてみてはいかが でしょうか。
前者『英語の歴史』、渡部昇一著、大修館書店の 請求記号は830.8||Suta||3で第1閲覧室にあり、後者
『英語の歴史』、中尾俊夫著、講談社の請求記号は 830.2||Nakで本館書庫に配架されています。
にゅうがく なおや
(福井工業大学准教授・英語学・英語史)
ふじい たつや(司書・主幹・アジア関係図書館)
入学直哉、藤井達也
言語学、はじめの一歩 (32)
図書館員の文献紹介と 資料の活用
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