あともう少しで夏休みですが、計画は決まっ ているでしょうか。長期の夏休みは、学生の特 権です。どうぞ有意義に過ごして下さい。
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前回のメタファーの話は、いかがでしたでしょ うか。我々がいかに日常的に無意識の内にメタ ファーを使っているかを実感出来たのではない でしょうか。
Q:前回は比喩による意味変化としてメタファー (metaphor:隠喩)を取り上げて説明してい ただきました。
A:今回はメタファー以外の比喩表現について お話ししたいと思います。一つはメトニミー (metonymy:換喩)です。
Q:前回の参考文献の終わりの方で紹介されて いましたね。どのような表現方法か、もう 少し詳しく教えて頂けますか?
A:メトニミーとは近接性に基づく比喩表現の ことです。ニュースなどで「それは永田町 の論理だ」と言ったりしますが、この場合 の「永田町」というのは単なる地名ではな く「政界」とか「政治家」という意味です。
Q:永田町には首相官邸や国会議事堂があるの で、そこから「永田町」と「政界」の間に 近接関係が生じるわけですね。
A:そうですね。「ちょっと手を貸して」という ように「手」という人の体の一部分で「人」
全体を表すのもメトニミーです。
Q:英語でも“Lend me a hand.”と言いますね。
A:夏目漱石の『坊ちゃん』に「赤シャツ」と いうニックネームで呼ばれる教頭先生が登 場しますが、この「赤シャツ」もメトニミー です。
Q:「赤いシャツ」という衣服で「赤いシャツを 着た人」という人物全体を表すということ ですね。
A:他にも「村上春樹を読んだ」とか「トヨタ に乗っている」のように「作者」で「作品」
を表したり、「会社」で「製品」を表したり するのも同様にメトニミーです。
Q:「やかんが沸騰している」という表現もメト
ニミーですか?
A: はい。「容器」で「内容物」を表すメトニミーで す。「鍋を食べる」も同じです。また特定の 状況でメトニミーが生じる場合もあります。
有名な例文として“The ham sandwich is waiting for his check.”(あのハムサンド ウィッチが勘定を待っている)というのが あります。ここでの“the ham sandwich”
は「ハムサンドウィッチを注文した客」と いう意味です。
Q:なるほど、面白いですね。他にも比喩の表 現形式はありますか?
A: 種(下位概念)で類(上位概念)を表すような 包 含 関 係 に 基 づ く 表 現 を シ ネ ク ド キ (synecdoche:提喩)と言います。「ごはん を食べる」のように「ごはん」という種で「食 事」という類を表す表現です。「花見」はそ の反対で「花」という類で「桜」という種 を表します。
Q:京都で「川」といえば「鴨川」、日本で「山」
と言えば「富士山」のことですが、これも シネクドキでしょうか。
A:その通りです。
Q:では最後に参考図書をお願いします。
A:『レトリックと認識』、野内良三著、日本放 送出版協会(2000年)です。
今回の参考文献はNHKブックスのため、分か りやすく解説されていると思います。(請求記号 は801.6‖Nou) 本書は「Ⅰシネクドキと認識」、
「Ⅱメトニミーと認識」、「Ⅲメタファーと認識」
など、7つの項目から構成されています。冒頭部 分ではシネクドキ、メトニミー、メタファーの 順に例を示しながら、簡潔に説明されています。
そして身近な例を用いつつ、レトリックの様々 な側面に迫ります。同じ「食べる」でも「ごはん」
の場合はシネクドキ、「鍋」の場合はメトニミー と区別されているのは、言われなければ気が付 かないのではないでしょうか。本書で普段は意 識することが少ない比喩の世界に潜り込んでみ てはいかがでしょうか。
にゅうがく なおや
(福井工業大学准教授・英語学・英語史)
ふじい たつや(司書・課長補佐・アジア関係図書館)
入学 直哉、藤井 達也
言語学、はじめの一歩 (20)
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