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コンピュータを活用したキャリアガイダンスに関する研究 : キャリア情報探索・活用能力の育成

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(1)コンピュータを活用したキャリアガイダンスに関する研究 一キャリア情報探索・活用能力の育成一. 学校教育専攻 生徒指導コース. 小林. 正晃. 1研究目的 〈研究1>. ソフトウェアやインターネヅトの有料サイトで提. コンピュータを活用したキャリアガイダンスの. 供され,学校教育の場でも活用されている。対象. 先進事例である諸外国のコンピュータ援助型のキ. は,高校生,大学生,成人が中心であるが,. ャリアガイダンスシステム(ComputerAssisted. DISCOVERには中等学校向けの, CHOICESに. Career Guidance System:CACGシステム)につ. は小学生向けのシステムもある。. いての基礎的研究を行う。. 5つのシステムに共通する構成要素としては,. 〈研究2>. (1)導入(システムの説明や利用のガイドなど). 職場体験学習を題材とした中学校の進路学習プ. (2)自己評定(ユーザ}が職業興味などの個人特性. ログラム及びコンピュータを活用した教材の開発. をアセスメントツールによって自己評定する。). を行って,中学生のキャリア情報探索・活用能力. (3)キャリア情報(適職・教育訓練情報の検索). を育成する。. があげられる。北アメリカの3つのシズテムは, さらに次のモジュールがある。. 2研究内容 〈研究1>. 世界的に有名なシスデムであるアメリカの. (4)意思決定(キャリア意思決定のプロセスを学び,. 職業等の選択肢の絞込みに関する情報を得る。) (5)計画と準備(キャリアプランの作成や目標の実. SIGI PLUS, DISCOVER,カナダのCHOICES. 現に向けて具体的な準備の仕方を学ぶ。). と、比較的回しいシステ、ムであるシンガポールの. 5つのシステムの比較から,各システムの特徴. JOBS2,オーストラリアのCareer Vbyageを調査 し,CACGシステムの共通点や各システムの特徴 を明らかにする。 〈研究2>. が次のように見出きれた。. SIGI PLUSは意思決定に至るガイダンスのプ ロセスを重視しており,独自の職業情報が多い。. DISCOVERはアメリカのキャリアガイダンスの. (1)開発した進路学習プログラムやデジタル教材. 理論の適用が随所で見られ,また,マルチメディ. をもとに公立中学校において実践研究を行う。. ア化への対応が進んでいる。CHOICESは収録職. (2)評価については,質問紙調査の結果による生徒. 業数が多く職業情報の種類も豊富である。また,. 集団への効果測定と,作業実績サンプル群(ワー. システムのウェブベース化が進んでいる。JOBS2. クシート類)と評価表を用いたポートフォリオ評. はアジア初のシステムのセカンドヴァージョンで,. 価によって生徒個別の事例分析を行う。. 簡便なシステムではあるが,比較的職業情報の種 類が多くわかりやすい。Career Vbyageは個人特. 3諸外国のCACGシステム〈研究1> 諸外国ではキャリアガイダンスの理論に基づい たガイダンスの流れに沿ったシステムが開発され,. 性と適職を明示することを重視している。実際的 な仕事の条件を自己評定のアセスメントに用いて, 障害者にも対応できるシステムとなっている。.

(2) 4 実践研究(以下〈研究2>). 習開始時と終了時の2回,質問紙調査を行った。. 千葉県公立中学校の2年生を対象に,職場体験. 調査結果について因子分析を行ったところ,進路. 学習を核にした進路学習プログラムを実施した。. 学習診断票Aは「将来の進路の見通し」・、「進路. (1)事前学習(2001年6月16日一7月17日). 選択」・「進路先適応」・「進路情報」・「自己. 17時間に及ぶ事前学習では,単なる職場体験の. 理解」・「勤労観」の6因子を抽出し,進路成熟. 準備にとどめずに,活動を通して職業理解や自己. 尺度は「自分の将来像」・「自己実現的態度」の. 理解を深めることをめざした。その特徴として,. 2因子を抽出した。次に,因子ごとの総点を求め,. 1)進路学習の授業や集会でのガイダンスにおい. 事前・事後調査の平均値の差の検定を行った。ま. て,プレゼンテーションソフトやウェブページ. ず,男女別のt検定では,進路学習診断票Aにつ. を活用したデジタル教材を作成して,使用した. いて,男女で「進路先適応」,「進路情報」で有. こと. 意な上昇が見られた。また,男子の「将来の進路. 2)CACGシステムにも適用されているJ. L.. の見通し」,「自己理解」でも有意な上昇が見ら. HollandやD. J. Predigerの理論を応用して職. れた。進路成熟尺度については,男子の「自分の. 業分類や職業適1生の理解を図る学習を展開した. 将来像」で有意な上昇が見られた。さらに,学級. こと. ごとのt検定では,進路学習診断票Aの「進路先. 3)体験先の事業所の開拓・依頼から当日の打合. 適応」が3学級,「進路情報」が2学級,「将来. せや事前学習のための事前訪問まで生徒自ら行. の進路の見通し」が1学級で有意な上昇が見られ. つた。. た。また,進路成熟尺度では1学級のみ「自己実. 4)体験先の事業所への自己紹介カードを履歴書. 現的態度」が有意に上昇した。以上から,事前学. 風のものを作成したり,職場体験当日のアタシ. 習プログラムの職場体験の事前指導的な活動が. ゲントやトラブルを想定した対処法を考える危. 「進路先適応」の面で,また,職業理解の学習や. 機対応シミュレーションを行うなど,従来の実. 職業調べが「進路情報」の面で生徒に好ましい変. 践には見られないものを取り入れた。. 容をもたしたものと考えられる。本研究が目標に. (2)職場体験学習(2001年7月一8月:夏休み). 夏休みに3日間の職場体験学習を56事業所で 実施した。筆者も対象校の職員と見回り,記録を とった。. (3)事後学習(2001年9月14日一9月18日). おいた進路情報の理解と活用の面でねらいが達成 したと判断している。. (2)進路学習プログラム全体の評価. 事前から事後までの一連のプログラムについて 生徒のワークシート類の事例分析から評価を行っ. 事後学習では,通りいっぺんのまとめで終える. た。その際,職業教育・進路指導研究会(1998)の. のではなく,事前学習からの一連の活動の「ふり. 進路指導で育成すべき4つの能力領域と12の下. かえり」の場を設け,コンピュータを活用したデ. 位能力を,評価の観点とした。その結果,生徒が. ジタルポートフォリオをつくる活動も取り入れた。. プログラムのどの段階で,どんな能力が示す課題 に取り組んだか明確になり,教師が生徒理解を深. 5 実践研究の評価 実践研究の評価を,生徒の進路発達の側面から. め,適切な助言を行ったり,次の指導の方針を立 てていくことができることが明らかになった。. 数量的な評価と質的な評価を行った。 (1)事前学習プログラムの評価. 日本進路指導協会(1997)が開発した「進路学習. 診断票A」と「進路成熟尺度」を用いて,事前学. 主任指導教官. 上地 安昭. 指導教官. 八並 光俊.

(3) 学位論文. コンピュータを活用したト. キャリアガイダンスに関する研究 一キャリア情報探索・活用能力の育成一. 兵庫教育大学大学院 学校教育研究科 学校教育専攻. 生徒指導コース. MOOO53D 小林正晃.

(4) 目次 1. 1 問題の所在と研究計画. 1. 1.1 進路指導の現状と課題 1.1.1 進路学習の改善・充実の必要性. 1. 1.1.2 啓発的経験の重視と課題. 4. 1.1.3 進路情報とコンピュータの活用. 5. 8. 1.2 研究計画と研究の視点 1。2.1 研究目的. 8. L2.2 研究の視点. 8 11. 1.2.3 研究計画. 2 外国におけるコンピュータ援助型のキャリアガイダンスシステム 2.1 欧米のCACGシステム 2.1.1 CACGシステムの概略と開発の歴史. 13 13 13. 2.1.2 SIGI, SIGI P:LUS. 14. 2.1.3 DISCOVER. 16. 2.1.4 CHOICES. 29. 2.1.5 まとめ. 38 41. 22 シンガポールのCACGシステム 2.2.1JOBSの概要と開発経過. 41. 2.2.2 JOBS2. 47. 2.2。3 JOBS2の評価. 64. 2.3 オーストラリアのCACGシステム. 67. 2.3.1 Career Voyageの概要. 67. 2.3.2 導入(lntroduction). 69. 2.3.3 1nterest Guide. 70. 2.3.4. 82. Job. Suggestions. 89. 2.4 まとめ 2.4.1 システムの総合的な比較. 89. 2.4.2 JOBS2とCareer Voyageの特色. 96. 2.4.3 日本版CACGシステム開発の留意点 2.4.4 CACGシステムの活用法. 97. 3 日本の進路指導におけるコンピュータの活用. 98 105 105. 3.1 先行研究. 3ユ.1 日本労働研究機構の研究・開発. 105. 3.1,2 その他のシステムの研究・開発. 117. (1).

(5) 121. 3.2 先行事例. 3』2.1 民間企業の進路指導関連ソフトウェア. 121. 3.2.2 進路指導関連ウェブページ. 125. 3.3 申学校の進路学習へのコンピュータの活用. 132. 3.3.1 先行実践. 132. 3.3.2 実践研究の計画. 137. 4 職場体験学習を核とした進路学習プログラムの実践. 140 140. 4.1 研究対象校と生徒の実態. 4ユ.1研究対象校と地:域の概要. 140. 4.1.2 研究対象校の進路指導. 141. 4.1.3 対象学年の実態. 145. 4.1.4 コンピュータ環境. 146. 4.2 進路学習プログラムの概要. 147. 4.3 進路学習プログラムの実践. 149. 4.3.1 事前学習. 149. 4.3.2 職場体験学習当日. 183. 4.3.3 事後学習. 185. 192. 5 進路学習プログラムの評価 5.1 進路指導・職場体験学習の評価と本研究における評価計画. 192. 5.1.1 進路指導の評価. 192. 5.1.2 職場体験学習の評価. 195. 5.1.3 本研究における評価計画. 199. 5.2 質問紙の選定. 199. 5.3 進路学習プログラムの効果測定. 200 200 204 207 210. 5.3。1測定尺度の構成及び調査の実施 5.3.2 調査結果の分析1一因子分析 5.3.3 調査結果の分析2一平均値の差の検定 5.4 進路学習の事例分析. 218. 6 総合考察. 218 219 219. 6.1 課題の設定について. 6.2 研究1について. 6.2.1 CACGシステムの共通点 6。2.2 各システムの特徴 6.2.3 日本の学校進路指導への示唆. 220 221 223. 6.2.4 課題. −(i).

(6) 223. 6.3 研究2について 6.3.1評価結果の分析とプログラムの検討. 223. 6.3.2 モデルプランの作成. 224 224. 6.3.3 研究2の課題. 引用.参考嬬_覧. 226. Appendix. 234. A 進路学習診断票A. 235. B進路成熟尺度. 238. (皿).

(7) 1 問題の所在と研究計画 本研究は、コンピュータを活用したキャリアガイダンスについて、次の2つの研 究から成り立っている。. (1)諸外国における先進事例であるコンピュータ援助型のキャリアガイダンスシ ステム(Computer・Assisted Career Guidance System)についての基礎的研究 (2)コンピュータを活用して、職場体験学習における実践プログラムと教材の開発. を行い、その評価を行う実践的・実証的研究 (1)のコンピュータ援助型のキャリアガイダンスシステムは外国では1960年代から 開発が始まった。初期は高校生や短大生のためのシステムだったが、現在では、小 学生から成人までを対象にした種々のシステムが開発され、学校教育でも活用され ている。しかし、この面で日本の状況は遅れており、2001年にようやく総合的なシ ステムが開発されたばかりである。第2章で、今回初めて日本で紹介するものも含 めて、外国のシステムの現状を報告し、その比較検討を行う。(2)については、来年 度から導入される総合的な学習の時間を視野において、「生き方」と「情報」を融合 した実践プログラムと教材の開発をめざした。第4章以降でその報告を行う。 次に、コンピュータを活用したキャリアガイダンスについて研究を行うに至った 理由について述べていくこととする。. 1.1 進路指導の現状と課題 1.1.1 進路学習の改善・充実の必要性. その第1は、進路学習の課題からである。中学校進路指導の状況については文部 科学省が全国調査を行っており、学習指導要領の改訂に合わせてほぼ10年ごとに 調査を行っている。最も新しい調査報告書1は1999年に出され、筆者も調査研究協 力者会議委員として関わった。文部省は、平成元年版の中学校学習指導要領(1989). で初めて生き方の指導としての進路指導を示し、平成5年2月の文部事務次官通知 により脱偏差値・脱業者テストを図った。この調査には、その後の中学校進路指導 の実態を把握するねらいもあった。 調査報告書によると、学級担任の進路指導についての悩みとして、「生徒の進路意. 識や進路選択態度に望ましい変容がみられない」をあげる教員が約4割おり、平成 5年と比較して「生徒が将来の生き方や進路について真剣に考えるようになった」 に対して「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」と回答した学級担任は約3 分の1しかいない。また、次ページのFig.1.1・1.2に示すように、中学3年生が「進. 学先の選択にあたって特に参考になった事柄」及び、中学校卒業者が「中学校卒業 直後の進路選択で特に役立った事柄」は、「学校でのテストの結果や各教科の成績」 1文部省初等中等教育局 1999 中学校における進路指導における総合的な実態調査報告書. なお、この報告書は(財)日本進路指導協会から『中学校進路指導の改善の現況と今後への期待』 という書名で刊行され,市販されている。. 1.

(8) 9. 学校でのテストの結果や各教科の成績 学校外で受けた模擬テストの結果 適性や興味などに関する検査の結果 学級活動での生き方や進路に関する学習 職場体験や社会人の講話. ボランティア活動 部活動や生徒会活動 中学校の先生との相談. 塾の先生との相談 両親など家族との相談 友人や先輩との相談 高校など上級学校の見学や体験入学 高校など上級学校の先生の話 学校案内やパンフレット. その他 ・. 0. 5. 10. 15. 20. 25. 35. 30. (注)該当するものについて2つまで回答. 40. 45. (%). Fig.1.1 進学先の選択にあたって特に参考になった事柄(中学3年生). 学校でのテストの結果や各教科の成績 学校外で受けた模擬iテストの結果. 適性や興味などに関する検査の結果 学級活動での生き方や進路に関する学習 職場体験や社会人の講話 ボランティア活動 部活動や生徒会活動 中学校の先生との相談 塾の先生との相談 両親など家族との相談 友人や先輩との相談 高校など上級学校の見学や体験入学 高校など上級学校の先生の話 学校案内やパンフレット 特に役に立ったことはない その他 0. 5. 10. 15. 20. 25. 30. 35. 40. 45. (注)該当するものについて2つまで回答. (%). :Fig.1.2 中学校卒業直後の進路選択で特に役に立った事柄(卒業者). 2.

(9) や「学校外で受けた模擬iテストの結果」をあげる割合が高かったのに対し、「学級活 動での生き方や進路に関する学習」をあげる割合は小さい。このことは、未だに学. 力とのマソチングが進路選択のポイントとなっており、生徒の進路選択行動に学級 活動での進路学習が寄与していないことを示している。 では、教員の側から見た学級活動の現状はどうだろうか? Fig.1.3及び次ページ のFig.1.4は文部省の全国調査の学校調査結果である。. 進路指導の諸計画は,計画どおり実施されている 進路指導主事を中心とする校務分掌組織が確立され,機. 能している 教員は進路指導に関して理解し、協力している 教員は進路指導に関する研修等に積極的に参加し,指導. 力の向上に努めている 教員は指導案の作成や教材の工夫など指導の改善・充実. に努めている 教員は進路指導に関する情報を収集し,活用している 学校は進路にがかわる啓発的体験活動を実施している. 進路指導を実施するための時間は確保されている. 進路指導のための予算は確保されている 保護者は学校の進路指導に関して理解し,協力している 0. 10. 20. 30. 40. 50. 60. 70. 80. 90. 100. (注)該当するものすべてについて回答. (%). Fig.1.3 学校における進路指導の現状評価. Fig.1.3の進路指導の現状評価では「教員は指導案の作成や教材の工夫など、指導の. 改善・充実に努めている」と回答した学校は38.6%、:Fig⊥4の進路指導主事の重 点的取組事項に「進路学習のための指導案や教材・資料の作成・提供」と回答した 割合は6.9%で、ともに各設問のワースト3項目に入っている。また、学級での進. 路指導で担任が重視している事項では「生き方にかかわる進路学習の充実」が 59.5%で選択肢中トップであるにもかかわらず、「指導案の作成や教材の工夫など,. 指導の改善・充実」は5.4%と回答率が低い。これは進路学習が重要だという認識 がありながら、その取り組みは不十分であることを示している。以上をまとめると、 3.

(10) 教員の進路学習の改善・充実への取り組みが不足しているため、進路学習が生徒の 進路選択行動に寄与せず、生徒の進路意識の向上をもたらしていないという図式が うかびあがる。ガイダンスの機能を果たすべき学級活動における進路学習の充実の ため、教材の開発や工夫が強く求められる現状である。. 進路指導の諸計画の立案と実施 進路指導に関する校内組織の円滑化や指導・助言 校内における進路指導の研修計画の立案 進路指導関係の施設・設備などの管理・運営. 学校外の関係諸機関や家庭への働きかけやや連携・協力 生徒との進路相談など,生徒への直接的・専門的な指導. 進路学習のための指導案や教材・資料の作成・提供. 進路指導に関する情報資料の収集・作成・提供. 進学や就職に関する事務 0. 10. 20. 30. 40. 50. 60. (注)該当するものについて2つまで回答. (%). Fig.1.4 進路指導主事の重点的取組事項. 1.1.2 啓発的経験の重視と課題. 第2は、進路指導における啓発的経験:の重視と課題である。これは文部科学省の 施策の影響が大きい。平成5年に文部省は、中学校で業者テストや偏差値を使用す ることの廃止と本来的な進路指導に立ち返ることを強く求めた。平成6・8年度、9・11. 年度には、各々全国約60箇所の地域を指定して「中学校進路指導総合改善事業」 を実施し、その実施校は地域と一体となった進路指導め実践研究を行い、特に職場 体験など啓発的体験学習が盛んに行われた。各都道府県・指定都市の実施校の研究 実践が周囲の学校にも影響を与え、職場体験学習などを取り入れる中学校が増えて きた。その後も文部科学省は平成12・13年度に全国49の地域を指定して「キャリ ア体験等進路指導改善事業」を実施し、推進地域では中学校の職場体験学習や高等 学校のインターンシップなどが取り組まれている。さらに、「教育改革国民会議最終 報告」の提言を受けて、文部科学省は21世紀教育新生プラン(レインボープラン) を策定した。その7つの重点戦略の1っに、多様な奉仕・体験活動で心豊かな日本 ノ 人を育むことが掲げられている。この中で、全国60地域で中高生職場体験事業を 4.

(11) 実施したり、地域で子どもを育てる緊急3ヶ年戦略「全国子どもプラン」を推進し たり、「子どもゆめ基金」を創設している。「全国子どもプラン」は、完全学校週5 日制の実施に向けて、学校が休みの土曜日などに、子どもたちが様々な体験活動を 行えるよう、地域で子どもを育てる環境等を整備するものである。その一つに「子 どもの商業体験∼子どもインターンシップ∼」がある。「子どもゆめ基金」も職場体. 験など子どもの体験活動等の事業を行う青少年団体など民間の団体に助成するもの である。この2つは社会教育の面から職場体験等の体験活動を推進する施策である。. また、平成10年度から兵庫県で始まった「トライやる・ウィーク」がマスコミ でも好意的に取り上げられて、他県にも波及し、近年では複数日もしくは複数回の 職場体験:学習や社会体験学習に取り組む自治体や学校が増えてきており2、総合的な. 学習の時間の中で職場体験学習を実施する学校も少なくない。 しかし、その一方で、「その学習から何を得たのか、それをどのように生かして いくのかが漠然としていて計画的に進められていない」3という指摘や「イベント的 な実践が指摘され形骸化を心配する声」4、「意義が十分に理解されないままに実施 されているのではないかという懸念」、「体験の成果が十分に生徒の力に結びついて いないのではないかという懸念」、「せっかくの体験が進路選択に生かされていない という問題」5も指摘されるところである。職場体験学習など啓発的体験のプログラ ムの中身が問われる状況になってきている。 1.1.3 進路情報とコンピュータの活用. 第3は、進路情報とコンピュータ活用をめぐる情勢である。進路指導について、 中学校学習指導要領(平成元年版及び10年忌)では「生徒が自らの生き方を考え 主体的に進路を選択することができるよう、学校の教育活動全体を通じ、計画的、 組織的な進路指導を行うこと。」と総則に規定されている。生徒が主体的な進路選択 をしていくためには、進路情報の活用が重要になってくる6。進路情報について文部 省(1978)も「進路指導の重要な機能の一つ」であり、「生徒の進路設計や進路の選択・. 決定、卒業後の適応や自己実現の可能性の発見に不可欠の意義をもつものである」7 としている。その際、学校にもコンピュータが導入されて、インターネットへの接 続が可能になっていく状況では、コンピュータや情報通信ネットワークを抜きにし た進路情報は考えられないだろう。中学校学習指導要領(平成10年版)でも、総 則で「各教科等の指導に当たっては、生徒がコンピュータや情報通信ネットワーク 2平成11年度の兵庫県教育委員会の調査によると,21都府県・13市町村において「トライやる・ ウィーク」を参考とした取り組みを実施または計画中である。 3安井克彦 2000 これからの教育と生きる力の育成 愛知教育大学進路指導研究会 「進路 指導の理論と方法」に関する研究(報告書),5−15、. 4堀川博基 2000 啓発的体験活動の指導 仙崎武編著 キャリア教育読本(教職研修総合特 集142),教育開発研究所,182・186.. 5仙崎武監修 進路力を育てるネットワーク編著 2001 中学生の進路力を育てる総合的な生 き方の学習プラン 実業之日本社 6平成8年度全国中学校進路指導研修のシンポジウムにおける永井順手氏の発言 7文部省 1978 中学校・高等学校進路指導の手引一情報資料編一 (財)日本職業指導協会 5.

(12) などの情報手段を積極的に活用できるようにするための学習活動の充実に努めると ともに、視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図ること。」と述べ、. 総合的な学習の時間の例示内容の一つに「情報」をあげている。文部科学省は「教 育の情報化(ミレニアム・プロジェクト)」8で、学校でのコンピュータ・インター ネットの活用を推進している。本研究はこれに対応するものである。 進路指導にコンピュータや情報通信ネットワークを活用する利点として、(1)最新 の情報をいつでも入手できること、(2)情報を蓄積していくことができ、情報の統合 化や共有が容易であること、(3)同一のものを複数の人間が同時に使用することがで きること、(4)紙製の資料やワークシートなどと異なり、破損・劣化・紛失の恐れが 少ないこと、(5)生徒が興味を持ちやすいことなどがあげられる。. 次に、進路情報や教育の情報化に関するデータを示す。まず、栃木県中学校教育 研究会進路指導部会(2000)9は、平成11年12月に県内各地区の抽出校において、中 学1−3年生1322名を対象に「進路に関するアンケート調査」を実施した。Fig⊥5 は「あなたは、就きたい職業をどのようにして知りましたか。」の、Fig.1.6は「あ なたは、自分の将来を切り開くにあたって、先生にどんな援助をしてもらいたいと 考えていますか。」の回答結果である(ともに回答の選択肢は2つ選択する)。. 就きたい職業を考えた機会. 先生に援助してもらいたいこと. i ; i l. 織匠 ヒ2年. 新聞や雑誌. ?專。_滋雨. テレビ番組. ?R年 @_.._._申_,..__三_. … @ i i. 家族や友人 繻恣黶E. 職業の情報の提供 壽灘蘇一心鰍’一‘. 生き方の学習の充実. i. W::::1:llllli〕liI. 部活動の充実灘欄. 進路の学習. 人生に役立つ学級活動の充実 撃奄戟c1…i……{i:::i::1::i::::. i i i. i i i. l. l. 量. 自分で調べて. 自分で考える時間の設定 弐一幅’葦. 進路首祭の時間の充実 ’. 職場見学や体験 iil. ;. 親身な卒業後の指導 棄錨:. その他 (%1. その他. 0 1.0203040506070 『『. O. 10 20 30 40 50 60. (%). Fig.1.5 就きたい職業を考えた機会. :Fig.1.6 先生に援助してもらいたいこと. 8ミレニアム・プロジェクトでは,2001年度までに全ての公立小・中・高校がインターネットに 接続でき,2005年度を目標に全学級のあらゆる授業において教員,生徒がコンピュータを活用で きる環境を整備することなどをめざしている。 9栃木県中学校教育研究会進路指導部会 2000 全体会基調提案・将来の進路を生き生きと展 望し,自己の生き方を探求できる進路指導 第26回関東甲信越地区中学校進路指導研究協議会 栃木大会研究紀要,15・28.. 6.

(13) Fig⊥5が示すように、テレビ番組や家族、友人からの情報をもとに就きたい職業を 考えている生徒が多く、進路の学習や職場見学や体験といった学校の進路指導の影. 響はやや少ない。しかし、2・3年生の25%程度は、職場見学や体験を通して職業 を考えている。啓発的体験学習に取り組む機会や生徒が増え、それを活用した進路 学習が充実すれば、学校の進路指導が将来の職業を考える重要な機会となる可能性 があると考えられる。また、:Fig.1.6が示すように、進路に関して先生に援助しても. らいたいこととして、多くの生徒が職業や高校の情報の提供をあげている。進路情 報の提供が生徒のニーズになっていることを語るデータである。 いま一つは、学校におけるコンピュータやインターネヅトの活用の実態である。. 文部科学省は平成12年度の「学校における情報教育の実態等に関する調査結果」 を2001年9月に発表したlo。調査結果によると、中学校における教育用コンピュ ータ1台当たりの生徒数は10.3人であり、整備計画達成時の5.4人に1台という目 安から見た進捗率は50。3%である。このうち、Windows95以上のマルチメディア 対応のコンピュータの割合は89.9%である。ネットワーク対応状況やLAN整備率、 インターネット接続率はそれぞれ99.2%、10。3%(コンピュータ教室は86.2%)、. 89.3%である。ハードや環境は年々整備が行われていくので心配はないが、課題は 活用面である。中学校の場合、「コンピュータを操作できる教員」は79.9%なのに 対して、「コンピュータで指導できる教員」は36.0%に過ぎない。また、インター ノ ネット利用したことのある教員は73.9%なのに対して、インターネットを利用して 授業を行ったことがある教員は20.3%に過ぎない。担当教科別に見た「コンピュー タで指導できる教員」は技術(93.6%)、理科(56.3%)、数学(49.9%)の割倉が高いが、. 他教科は概ね20・30%代である。インターネヅトを利用して授業を行ったことがあ る教員は、技術科が71.4%のほかは10%前後から30%前後の割合である。このよ うに教科によるばらつきが見られる。なお、中学校教員が平成12年度中に情報教 育に関する研修を受けた割合は82.1%であった。活用面についてまとめると、個人 としてはコンピュータやインターネヅトを利用できる中学校教員が多いが、授業で の活用までには至っていない実態が示されている。会計検査院の検査結果でも「二 言・中学校間において、コンピュータ教室の利用時間数やコンピュータを利用した 授業内容に大きな開きが生じていたり、利用計画等の内容に差異が生じていたりな どしている事態は、多額の国費を投入して整備しているコンピュータ教室等の効果 的な活用の面からみて、改善の必要があると認められる。」として、文部科学省に改 善を求めている11。コンピュータやインターネヅトが使用できれば、即授業で活用 できるわけではないが、いずれにせよ教員のコンピュータ活用能力が問われている のである。. 10文部科学省ウェブページの報道発表一覧のベージ(2000年9月1日付) online(2001)http:〃www.mext.go.jp/b_menu/houdou/13/09/01091.htm1. 11会計検査院ウェブページの検査結果のページ online(2001)http:〃www.jbaudit.go.jp/gaiyou12/frt10.htm. 7.

(14) 1.2 研究計画と研究の視点 1.2.1 研究目的. 以上3点から、本研究では、コンピュータを活用したキャリアガイダンスに関す る研究として、次の2つの研究を行う。 研究1では、コンピュータを活用したキャリアガイダンスの先進事例である諸外 国のコンピュータ援助型のキャリアガイダンスシステムについて基礎的研究を行う。 研究2では、職場体験学習を題材とした進路学習プログラムを開発し、コンピュ ータを活用した教材開発を行って、中学生の進路意識の向上をめざすこととする。 1.2.2 研究の視点. キャリアガイダンスとしての進路指導では、主体的な進路選択能力や自己を生か す能力の育成が重要である。そこで、育成すべき能力を「職業教育・進路指導研究 会」(代表・仙崎武)の研究成果12に求めた。この研究で言う能力は、「ある課題へ の対処能力(competencies)のことで、訓練によって習熟するもの」である。Table 1.1、. Table 1.2に示すように、進路指導によって育成すべき能力として「キャリア設計能 力」、「キャリア情報探索・活用能力」、「意思決定能力」、「人間関係能力」の4つの. 能力領域を定め、下位に12の能力を設定し、具体的な能カラベルをつけている。 Table 1.1 進路指導によって育成すべき能力(概略) 能力領域 キ・ヤリア設計能力. 能力ラベル. 能力1 生活上の役割把握能力 能力2 仕事における役割認識能力 能力3 キャリア設計の必要性及び過程理解能力. キャリア情報探索・. 能力4 啓発的経験への取り組み能力. 活用能力. 能力5 キャリア情報活用能力 能力6 学業と職業とを関連付ける能力 能力7. 意思決定能力. キャリアの社会的機能理解能力. 能力8 意思決定能力 能力9 生き方選択能力 能力10 課題解決・自己実現能力. 人間関係能力. 能力11 自己理解・人間尊重能力 能力12 人間関係形成能力. 12職業教育・進路指導研究会 1998. 文部省研究委託調査研究・職業教育及び進路指導に関す. る基礎研究(最終報告). 8.

(15) Table 1.2は、 Table 1.1で示した「進路指導によって育成すべき能力」の能力領域. と能力ラベルの説明、中学校での活動モデルを付したものである。. Table 12 進路指導によって育成すべき能力(詳細). キャリア. 中学校. 能力(ラベル)とその説明. 能力領域. 生活上の役割把握能力. ・日常の生活や学習と将来の生き方との. 設計能力. キャリア設計は毎日の生活の延長線上. キャリア設. にあり、生活の役割を把握し、その関連. 計の必要性. を示す能力. に気づき、. 仕事における役割認識能力. 関係を理解する。. ・将来の夢を実現するため、向上心をもつ。. ・自己の役割と社会との関係が理解できる。. それを実際. 仕事には様々な役割があり、それぞれが. ・仕事に関する役割を認識する。. の選択行動. どのように関連し、変化しているかを認. ・社会における様々な仕事の関連や変化に. において実. 識する能力. ついて理解する。. 現するため. キャリア設計の必要性及び過程理解. の諸能力. 能力. ・進路計画の必要性、見直し、修正等過程が理 解できる。. 計画的に人生を歩み、夢をかなえていく ためにキャリア設計の必要性を理解し、. 実際の選択行動過程を認識していく能. ・希望の進路に対して計画を立て、イメージが 描ける。. ・自己を生かせる生活設計を将来を予想して立 てられる. 力. ・自己の使命を考える。. キャリア. 啓発的経験への取り組み能力. ・係・委員会活動などを通して仕事の取り組み. 情報探索. 実際の体験を通して現実のキャリアの. 活用能力. 世界を見つめる能力であり、それに取り. キャリアに. 組む能力. 関係する幅. 方が理解できる。. ・職場体験等を通して職業に就いている人たち の生活や考ネ方、必要な技能がわかる。. キャリア情報活用能力. ・情報源を見いだし、調査活動ができる。. 広い情報源. キャリアに関する情報を知り、発達段階. を知り、様. に応じた活用を行い、仕事と社会とを関. 通して、必要な情報を評価し、整理できる。. 様な情報を. 連付けながら、自己と社:会への理解を深. ・得られた情報を必要に応じ創意工夫し、提示、. 活用して自. める能力. 分と仕事・. ・職場体験や上級学校体験入学等の調査活動を. 発表できる。. 学業と職業とを関連付ける能力. ・学んだこと、体験したことが、将来何らかの. 社会との関. 学校で学ぶことが、社会生活や職業生活. 係づけを通. でどのように関連し、機能するかを知. して、自己. り、学校教育を理解していく能力. と社会への. キャリアの社会的機能理解能力. 形で役に立つことが理解できる。. ・産業構造や社会の変化の様子がとらえられ. 理解を深め. キャリアに関する情報を、社会における. るための諸. その必要性やその機能の面で理解し、キ. 能力. ャリア設計につなげる能力. 9. る。. ・変化に対応していく職業や仕事を理解する。.

(16) 意思決定. 意思決定能力. ・いくつかのものを比較検討し最適なものを論. 能力. 意思決定に伴う責任を受け入れ決定へ. 理的に判断、決定していく過程が理解できる。. 進路選択で. のプロセスを理解する能力。様々な葛藤. ・葛藤を経験することにより、判断、決定には. 遭遇する. 場面の複数の選択肢から、選択時に最善. 様々な葛藤. の決定を行う能力. ・自分の悩みを整理し、最善の決定に向け、お. に直面し、. 複数の選択. 互いに相談できる。. 生き方選択能力. ・さまざまな職業を理解し、その職業に就いて. 肢を考え、. 憧れから現実へ進行するなかで、自己の. 選択時に納. 生き方にそった職業やその他の諸活動. 得できる最. を選択していく能力. いる人の生き方が理解できる。. ・自分の興味・適性等の関係で生き方を比較検. 討することができる。そして、実現性が検討. 善の決定を し、その結. 責任がともなうことが自覚できる。. できる。. 課題解決・自己実現能力. ・課題を見いだし、解決していくことができる。. 果に対処で. 自己理解を深め、自己実現を推し進める. きる諸能力. 過程で直面する課題を設定し、それに真. ・自己の役割を考え、自分のやるべきこと、人 のためになることを実行していく。. 摯に取り組み解決する能力. 人間関係. 自己理解・人間尊重能力. ・自分の良さや自分の成長が理解できる。. 能力. 自己理解を進め、他者との関連で成立す. ・自分の非を認めたり受け入れたりできる。. 自己と他者. る自分の行動を、キャリアとの関連で理. ・自分のことを他人に表現したり、他人を尊重. の両方の存. 解する能力であり、その過程で他者を尊. 在に関心を. 慰する心を養う能力. ・自分の言動が他人におよぼす影響を理解でき. 持ち、様々. な人々との. できる。. る。. 人間関係形成能力. ・他人の良さや感情が理解できる。. 関係を築き. 他者から受ける自己への様々な影響を. ・同年齢異年齢にかかわらず、他者との関わり. ながら、自. 理解し、人間関係を形成しながら自己の. の中で他者を受け入れたり、協調したり、尊. 己を生かし. 成長を遂げていく能力. 敬することができる。. ていくため. ・コミュニケーションが図れる。. の諸能力. ・お互いに支えあっていくことの必要性が理解 できる。. ・リーダーとフォロアーの立場が理解でき、相 手と協力し、チームで仕事ができる。 ・新しい環境や人間関係に適応できる。. このうち、職場体験学習が直接かかわるのは能力4である。次に、コンピュータを 活用した進路学習で育成すべき中心的な能力を考えると、能力5・7は認知的な側 面であり、コンピュータの特性を生かして促進することが期待できる能力である。 逆に、能力2・4・10・11・12は情意的な側面をかなり含むものであり、実生活の 中で他者とのかかわりやふれあいによって高めていくべきもの(能力11・12)や、 実際の活動や体験によって高めていくべきもの(能力2r4)であるので、能力を高. 10.

(17) める手段としてコンピュータはふさわ」しくない。残る能力1・3・6・8・9はコンピ. ュータが部分的には促進できる能力と判断した。以上から、コンピュータを活用し た職場体験学習実践プログラムで育成すべき中心的な能力領域を、能力4・5・7を 含む「キャリア情報探索・活用能力」に置くことにする。この能力領域は、コンピ ュータ援助型のキャリアガイダンスシステムにも関連が深いものと予想される。 1.2.3 研究計画 〈研究1>. コンピュータ援助型のキャリアガイダンスシステムとして世界的に有名な北米の. 3つのシステム(アメリカのSIGI PLUSとDISCOVER、カナダのCHOICES)に ついて先行研究をもとに内容や特色、共通点を探る。ただし、先行研究で扱ってい るシステムのヴァージョンは古いので、各システムの開発元のウェブページ等から 最新情報を収集する。比較的新しいシステムであるシンガポールのJOBS2やオー ストラリアのCareer Voyageは、日本で紹介されていないソフトウェア(CD・ROM) であるので、実際に現物を操作しながら内容を調べ、その詳細を報告する。また、 北米のシステムと比較をすることによって、それぞれの特色を見出す。さらに、今 後予想される日本版のシステム開発の留意点やシステムの活用法について考察し、 私見をまとめる。 〈研究2>. 1)目標と内容 中学生のキャリア情報探索・活用能力の育成を主たる目標とし、デジタル教材も 活用して職場体験学習の事前から事後までの実践プログラムを開発し、その効果測 定及び事例の検討を行う。. 2)研究対象校 千葉県A市立:B中学校(平成12年度から夏休みに3日間の職場体験学習を始め、 13年度は進路学習やボランティア活動を総合的な学習の時高等で実施している。). 3)対象生徒 第2学年4学級(男子68名,女子74名,計142名) 4)実践研究 対象二二2学年職員との打合せの上で,直接・間接に実践への介入を行う。 (1)指導計画の作成. (2)学級活動や総合学習の指導案・教材・資料の作成準備 (3)学級活動や総合学習での授業実践. (4)学級担任が行う学級活動の授業の参観・記録 (5)学年集会の立案. (6)学年集会での生徒への指導 (7)個別生徒への指導・助言・援助 (8)連絡調整. (9)体験先事業所など外部との折衝. 11.

(18) 引用文献 堀川博基 2000 啓発的体験活動の指導 仙崎武編著 キャリア教育読本(教職研 修総合特集142) 教育開発研究所,182−186. 文部省 1978 中学校・高等学校進路指導の手引一情報資料編一 (財)日本職業指 導協会(現・日本進路指導協会) 文部省 1989 中学校学習指導要領 大蔵省印刷局 文部省 1998 中学校学習指導要領 大蔵省印刷局 文部省初等中等教育局 1999 中学校における進路指導における総合的な実態調 査報告書 (財)日本進路指導協会 1999 中学校進路指導の改善の現況と今後への期待一中学 校における進路指導に関する総合的実態調査報告から一 仙崎武監修 進路力を育てるネットワーク編著 2001 中学生の進路力を育てる 総合的な生き方の学習プラン 実業之日本社 職業教育・進路指導研究会 1998 文部省研究委託調査研究・職業教育及び進路指 導に関する基礎研究(最終報告) 栃木県中学校教育研究会進路指導部会 2000 全体会基調提案・将来の進路を生き 生きと展望し、自己の生き方を探求できる進路指導 第26回関東甲信越地区中 学校進路指導研究協議会栃木大会研究紀要,15−28. 安井克彦 2000 これからの教育と生きる力の育成 愛知教育大学進路指導研究 会 平成10・11年度文部省教職課程における教育内容・方法の開発委嘱研究 「進 路指導の理論と方法」関する研究(報告書),5−15.. 12.

(19) 2 外国におけるコンピュータ援助型のキャリアガイダンスシステム コンピュータを活用した進路指導を考える際、外国において学校教育でも活用さ れているコンピュータ援助型のキャリアガイダンスシステム(ComputerAssisted Career Guidance System,以下CACGシステム)が参考になると思われる。. CACGシステムは1960年忌後半からアメリカで開発が始まり、その後カナダ、 ドイツ、イギリスといった欧米諸国での開発が進んだ。90年代にはオーストラリア やシンガポールでも開発が行われた。この面での日本の対応は遅れており、2001 年に、日本労働研究機構によって日本版CACGシステムが完成したばかりである。 欧米のシステムについてはこれまで日本労働研究機構や大学入試センターの関 係者によって研究や紹介が行われてきた。それら先行研究をもとに、本章第1節で 欧米のシステムについて概観する。比較的新しいシンガポールやオーストラリアの システムについては日本ではほとんど紹介されていないため、第2節ではシンガポ ールの、第3節ではオーストラリアのシステムについて報告し、それらの比較など を第4節で述べることとする。. 2.1 欧米のCACGシステム 2.1.1CACGシステムの概略と開発の歴史 室山(2001)によると、CACGシステムはマキシシステム(Maxi System)とミニシ ステム(Mini System)に大別される。前者は、適性検査の実施と検査の出力、職業. 情報の提供、適性との照合、将来のキャリアプランの作成など総合的なガイダンス 機能を持つシステムである。後者は、適性検査や職業情報の提供など、キャリアガ イダンスの機能の一部分をコンピュータが行うものである。ミニシステムの典型的 な例に適性検査のコンピュータ版がある。欧米では、職業選択の援助を目的とした 非常に多くのミニシステムが開発され、販売されている。. 世界で最初に開発が始まったアメリカにおけるCACGシステムの発展の歴史に ついてJoAnn Harris・Bowlsbeyは次の4期に分けている。13 (1)1960年代:コンピュータを活用したキャリアガイダンスの試行. 60年代後半に、アメリカにおけるキャリア発達の代表的な理論家であるD.E.. SuperがIBMの研究者とともにCACGシステムを開発した。 60年代は、著名 な理論家が独自の理論を発達させ、それに基づいたガイダンスシステムが開発さ. れた。特に、67年からボウルズビィによって開発されたDISCOVERはその後も 多くの改訂を重ね、現在でもアメリカでよく利用されているシステムである。な お、この時期のシステムは高校生とコミュニティ・カレッジの学生を対象として おり、大型汎用コンピュータ上で動くシステムであった。. 13ここでの記述は,主としてボウルズビィの著作を紹介した松本(1996),室山(1992,1998)をまと めたものである。. 13.

(20) (2)1970年代:情報提供システムの誕生と発展. 情報システムの成長にともなって進路情報の収集と提供を中心に発展した。こ の時期のシステムは、地域に密着した良質な職業情報や労働市場の情報を提供す ることを目的としていた。システムの利用対象も中学生から成人にまで広がった。. また、72年忌らM.R. Katzによって開発されたSIGIはDISCOVERと同様、 後に多くの改訂を経て、現在でもアメリカでよく利用されている。 (3)1980年代:キャリアガイダンスと情報提供システムの並存と融合. 情報提供の機能に加えてガイダンスの要素が付加された。すなわちマキシシス. テムの登場である。当初、ガイダンスシステムとして開発されたDISCOVERに も情報提供システムが付加された。システムの対象者もさらに拡大し、軍隊の隊 員、退職者や離転職者、11−14歳の中等学校の生徒、キャリアアップをめざす有 職者もシステムを利用できるようになった。また、ハード面でも汎用コンビュー タからマイクロコンピュータへの移行が行われ、CACGシステムがスタンドアロ ン型のコンピュータでもネットワーク型のコンピュータでも利用可能となった。 (4)1990年代:新しいテクノロジーを活用したシステム. システムの内容的な構造変化はほとんど見られないが、めざましい技術革新の 成果がシステム開発に導入された。具体的には、CD・ROMドライブを装備したコ ンピュータの普及、コンピュータグラフィックスの技術的な発展、コンピュータ によるビデオや音声などの画像音声処理機能の付加などがあげられる。これらに よりマルチメディアのプレゼンテーションが可能になり、システムが生き生きと した魅力的な情報を提供できるようになった。. アメリカ以外では、70年代にはカナダでCHOICESが、80年代にはイギリスの PROSPECT(HE)やドイツのCOMPAS、 coBer等が開発され、日本でも紹介されて いる。本稿では、世界的に有名なアメリカのSIGI(SIGI PLUS)やDISCOVER、カ ナダのCHOICESをとりあげ、システムの構成に着目するとともに、最新の情報を 収集していこうと思う。 2.1.2 SIGI, SIGI PI.US. SIGI(Sys七em of lnteractive Guidance and Information)はアメリカのETS. (Educational Testing Service)14に所属するKa七zによって1970年代に開発され. たシステムである。その後、改訂が重ねられ、ミニコンピュータからパーソナルコ ンピュータに移植されるにいたって、名称もSIGI P:LUSになった。 SIGI PLUSに ついては、Katz(1988)、柳井他(1990)、松本(1995)、室山(1998)の文献を参照し、. ETSのSIGIのウェブページ正5で最新の情報を収集した。 14ニュージャージー州プリンストン市郊外にある公共教育研究機関であり,日本でもよく知ら れるTOEIC(Test ofEnglish for International Communication)やTOEFL(Test ofEnglish as a. Foreign Language)を開発・実施している教育テスト機関(非営利団体)である。 150nline(2001)http:〃www.ets.org/sigi/index.htm1. 14.

(21) SIGIは主として大学生の進路決定を援助するためにつくられたシステムであり、. 全米の約1000箇所の大学等で利用されている。1987年には、高校生向けにコンピ ュータを用いないワークブックのCareer Focusも開発されたが、2001年現在では、 大学生のみならず高校生や求職者・転職者もシステムの対象としている16。システ ムの構成は、Table 2.1に示すように9つのステップ(セクション)から成り立っ ている。ユーザーは、一連の流れに沿ってすべてのステップを利用することはもち ろん、自分に必要な部分のみを選択することができるようになっている。 Table 2」 SIGI P:LUSの構成 SIGI PLUSの紹介と説明。簡単な手引きの説明、システム全体の概観と. 1)Introduction (導入). ユーザー個々のニーズに応じて推奨する使用方法が提示される。. 2)Self−Assessment 価値観(仕事に関連する価値)・興味(知識面と活動面)・技能(得意不得 (自己評定). 意)についてユーザーが自己評定を行う。. 3)Search (職業の探索). 2)の項目や学歴・教育・訓練、収入の大小についての回答をもとに250の職. 業の中から適職を検索する。検索は、ユーザーにとって望ましい面を持つ 職業を探す方式と避けたい面を持つ職業をはずす方式がある。希望職業が 提示されなかった場合はその理由を調べることができる。. 4)InforInation (職業情報の提供). 3)でユーザーが設定した2つの職業について全部で27の情報が提供され る。〔職務内容、作業環境、必要とされる教育・訓練・個人特性・技能・経験、. 給料、得られる満足感、雇用状況、情報源など〕 5)Skills. 希望の職業で要求される技能を有しているかをユーザーが自己評定する. (技能). と、その回答から希望職業との適合性について全般的な評価が示される。. 6)Preparing (準備). 7)Coping (問題対処法). 希望職業に就くために必要な教育・訓練の内容や準備すべき点について情 報が示され、そのような準備が可能かどうかをユーザーが自己評定する。. 希望の職業に就くまでに起こることが予想される様々な問題にいかに対 処すべきかを解説する。〔時間の使い方、費用・経済的援助やローン、家 族の扶養施設、資格試験、見習い期間など〕. 8)Deciding (決定). 9)Next Steps (次の段階). 上記の情報から新たに絞り込んだ3つの希望職業を定め、それらを(1)報 酬、(2)就業可能性の面で比較する図が示される。. 上記より就きたい職業を1つ定め、その職業に就くまでの種々の積み重ね のステップを提示する。〔目標の設定、進むべき教育機関、伸ばすべき技 能、その職業で要求される職務を遂行できるか、その職業に就くための人 的なネットワークの築き方、履歴書の書き方〕. 注) 柳井他(1990)、松本(1995)、室山(1998)およびSIGIのウェブページをもとに作成. 160nline(2001)http:〃www.ets.org/sigi/hsstdnt.html・http:〃www.ets.org/sigi/jobseekrhtm1. 15.

(22) システムは毎年プログラムとデータが更新される。Table 2.1の作成の際に参考に. した柳井他は1988年に、松本は1992年にETSを訪問してSIGIを調査している。 この時期のSIGIの構成と現行版の構成は基本的に変わっていない。 先行研究に見られるヴァージョンからの大きな変更点として、ステップ1とステ ップ3にテック・プレップの情報が組み入れられたことがあげられる。テック・プ レソプ(tech prep)は、 technical prepara七ionの略で、高校の後半2年間とコミュニ. ティ・カレッジやテクニカル・カレッジの2年間を結びつけるプログラムである。 高校での教科教育と職業技能を養成するコミュニティ・カレッジ等の実用的・応用 的な教育を連携させ、4年間の連続したカリキュラムの中で生徒のキャリア教育上 の移行を円滑にすることをねらっている。このプログラムは、改正カール・D・パ ーキンス職業教育法(1990年)に関連したテック・プレップ法に基づくもので、90 年代のアメリカにおいて行われたキャリア教育の中の特徴的な実践の一つである17。 SIGIのウェブページではテソク・プレップ・プログラムの例として、農業、人文科 学、ビジネス・インフォメーションサービス、工学・工業、健康・ヒューマンサー ビスをあげている18。. 2.1.3 DISCOVER DISCOVERはアメリカのACT(American College Testing)19によって開発が行わ. れた。その中心人物がHarris・Bowlsbeyである。 DISCOVERについては柳井他 (1990)、松本(1992a,1995)、松本(1996)、室山(1998)、 Gibson&Mitchell(1999)の. 文献を参照し、ACTのDISCOVERのウェブページ20で最新情報を収集した。 DISCOVERは開発当初、高校生とコミュニティ・カレッジの学生のための進路 決定の援助を目的としたシステムであった。その後、多くの利用者を対象として種々 の異なるヴァージョンが作られた。松本(1992a,1995)は次の5種類を挙げている。 DISCOVER for Junior H:igh/Middle Schools. DISCOVER for High Schools DISCOVER for Collage and Adults DISCOVE:R for Organizations. DISCOVER for Retiremen七Planning. 室山(1998)はこれらに加えてDISCOVER Multimediaが開発されていることを紹 介している。. 17. eック・プレップについては,三村(2001),吉本(1998)に説明がある。また,リン・オールソン. 著,仙崎監修,渡辺・三村翻訳の『インターンシソプが教育を変える』にはその実例が載っている。 18. Online(2001)http://www.ets.org/sigi/s2.htm1. 19ACTはアイオワ市郊外にあり,長年にわたってアメリカにおける各種適性検査や大学進学の ための選抜試験AAP(ACT Assessment Program)の開発作成にあたっている機関である。メリー ランド州ボルチモア郊外にACT DISCOVER CENTERがあり,ここでDISCOVERが開発された。 20. Online(2001)http:〃www.act.org/discover/index.htm1. 16.

(23) 2001年現在では、DISCOVER StandardとDISCOVER for Middle Schoolsの2 つに整理統合されている。前者は高校生・大学生・成人が対象であり、後者は中等 学校と中学校の生徒が対象である。なお、現行版は1997年にリリースされた。 システムの構成については、前掲の先行研究ではTable 2.2の構成となっている。. Table 2.2 DISCOVER for Collage and Adults(旧ヴァージョン)の構成 1) BegiRning the Career. システムの導入。ユーザーがチェックリストに答えることによ. Journey. り、システム利用についての簡単な説明とシステム全体の概観. キャリア探しの旅の始まり. と個々のユーザーのニーズに応じた進め方が推奨される。(職 業選択についての基礎知識の提供). 2)Learning about the World of Work. 12の職業群について知識を学習する。DISCOVERが採用して いるACTの職業分類体系World−of−Work Mapを説明する。. 仕事の世界について学ぶ 3)Le.arning about Yourself. ユーザーの興味・能力・価値観・過去の経験について自己評定. 自分自身について学ぶ. を行い、自己理解を深める。. 4)Fillding Occupation. 3)の結果及び想定する学歴や仕事の特性等から、適職リストの. 職業を見つける. 検索・表示を行う。ユーザーは自分の関心のある職業がリスト にない場合はその理由を調べることができる。. 5)Learning about Occupation 4)の適職リストの中の各職業について詳しい情報を表示する。. .職業について学ぶ. 職業の情報を見ながら、ユーザーは10以内に職業を絞り込む。. 6)Making Educational Choice 5)で絞り込まれた職業に就くために必要とされる詳しい学校 教育コースの選択をする 7)Planning Next Steps. 次なるステップを計画する. 歴情報や教育内容を表示する。. 特定の職業に就くためにふさわしい教育コースの情報に基づ き、教育や訓練のための詳しいリスト(適している大学・訓練 校・各種学校)を作成する。また、奨学金など助成金や実際の 職業の探し方の説明もあり、その中で応募書類の書き方や面接 のプロセスについても学ぶ。. 8)Planning Your Career. キャリアを計画する. 人生での役割の複合体としてキャリアをとらえることを学び、 現在と将来の望ましい状態を示して、それに近づくために自分 の将来計画を作成する。. 9)Making Transition. 移行する. 今後生じてくることが予想される問題(課題)に対する対処法 について学ぶ。. 注) 柳井他(1990)、松本(1992a,1995)、松本(1996)、室山(1998)から作成. なお、Gibson&Mitche11(1999)によると、DISCOVER for High SchoolsはTable 22の1)から7)までの構成であり、DISCOVER for Junior High/Middle Schools は、1)Ybu and the World of Work,2)Exploratory Occupations,3)Planning for. 17.

(24) High Schoolの3つのモジュールによる構成となっている。. 1)DISCOVER Standard 2001年現在のヴァージョンはFig2.1左のようにマルチメディア化によりビジュ アルな画面となっている。Fig.2.1右はメインメニューの画面であるが、従来のヴァ ージョンとは構成が異なるように見える。. wgIω轟蜂. 湖. 簸ゴ. wα{K. c撃縫瓢. Fig.2.1 オープニング〔エントランス〕画面(左)とメインメニュー画面(右). メインメニューは建物の平面図になぞらえて、システムの概観〔サイトマップ〕を 示している。システムは大きく4つの部分(HALL)に分かれている。システムの利 用法としては、ユーザーが利用したい部分に直接アクセスする方法と、最初から各 モジュールを順番に使っていく方法がある。後者はガイダンスの流れに沿うもので あり、図の右下の部分(HALL 1)から時計回りに進んでいくことになる。この図を書 き直し説明を加筆したものがTable 2.3である。. Table 2.3 DISCOVER Standard(現行版)の構成 HALL1)1.eam about Self&. 自分自身について興味・能力・価値観の面から自己評定し、概. Career (自分自身とキャリア. 略を得る。人生での役割の複合体としてキャリアをとらえるこ. について学ぶ). とを学び、どのような設定でガイダンスを受けるか選択する。. HAL、L2)Choose Occupations 目録(Inventories)やWorld・of・Work Map(WWM)、仕事の特性. (職業を選ぶ). から適職を見つける。. HALL3)Plan My Education. 職業やWWMから専攻(教育内容)を見つけ、教育機関の条. (自分の教育プランを立てる) 件検索を行い、奨学金など助成金についての情報を得る。 HALL4)Plan for Work (仕事のプランを立てる). 見習い制度やインターンシップ、軍隊で仕事を学び、なおかつ 生計を立てる方法を知る。理想とする職業を価値観等から絞り 込む。履歴書の書き方や面接の受け方など求職の準備をする。. 18.

(25) Table 2.2・2.3を一瞥すると、現行版は旧ヴァージョンに比べて構成がすっきりと. まとまった印象があるが、旧ヴァージョンから引き継いでいる内容や機能も少なく ない。たとえば、Table 2.2の3)とTable 2.3のHALL1)のユーザーの興味等を検査. する部分では、ともにACTが開発したUNIACT Interest lnventoryが用いられ、 この他にCAI(Career Assessment Inventory)、 CDM(Career Decision・Making System)、COPS(Cali£ornia Occupational Preferellce Survey)、Kuderの興味検査、 OVIS(Ohio Vocational lnterest Survey)、 SDS(SelfDirected Search)などの興味検. 査や、能力検査であるDAT(Dif£erential Apti七ude Test)を使用することも可能であ. る(松本1992a,1995、柳井他1990、 Fig.2.2)。興味等の検査結果はFig.2.3のよ. うにWorld・ofWork Map上に示される。これはACTの職業分類を視覚的に表現し たもので、円中央の十字型の軸は、職業の対象(何を取り扱うか)と人の志向性(何. 相手の仕事を好むか)を示している。円の上方はデータ(DATA)、下方はアイデア や観念(IDEAS)、左方は人(PEOPLE)、右方は物(THINGS)を扱う職業である。各職. 業はアルファベットで表される26の職業グループ(Job FamilyまたはCareer Area)と6つの職業群(Career Cluster)のいずれかに属する。 World・of・Work Map. Fig.2.2 DISCOVER Standardの興味検査(Interest Inventory). :Fig.2.3 DISCOV:E:R Standardの興味検査結果とWorld・of・Work Map. 19.

(26) は旧ヴァージョンからDISCOVERの目玉の一つである。Fig.2.3のWorld・of・Work Mapの中のDATAIIDEAS, PEOPLEITHINGSの軸(次元)はD. J. Predigerの理 論(Work Tasks Dimensions)21に基づくものであり、また、6つのJob ClusterはJ.. LHollandの6類型に対応するものである22。なお、 Fig.2.3左の暮暮にはA・W・ V・U・Tの職業グループを表す符号があるが、新旧のヴァージョンでアルファベッ トの符号が表す職業グループが多少異なる。これは2001年に改訂が行われたため である23。そこで、先行研究が扱っている1988・1989年用(1988年と記載)のヴァー ジョンと比較できるように次ページのTable 2.4に示した。. 他にも新旧ヴァージョンに共通する内容として、Table 2.2の8)とTable 2.3の. HALL1にあるキャリアのとらえ方の学習があげられる。これはスーパーが提唱し た:Fig.2.4のライフキャリアレインボー(キャリアレインボー、人生経歴の虹)で. ある。スーパーはキャリアを職業だけに限定せず、人生には各段階において子ども・ 学生・余暇人・市民・労働者・家庭人・親などの役割(life role)があり、様々な役割. の複合体としてキャリアをとらえた。これらの役割の果たし方や同時に演じる役割 のバランスのとり方がその人のライフスタイルを決めるとしている。 状況的決定因:間接的一直接的 社会構造 歴史的変化. 維持. 社会経済的組織・状況. 纏、「「 P. 、 」. 「. 雇用訓練 学 校 地域社会 家 庭. 余暇入 学生 子ども. 騨量 D財. 、、. 欲求・価値 一般的・特殊的適性. 生物学的遺伝. 一ある男性のライフ・キャリアー 「22歳に大学を卒業し,すぐに就職26歳で結婚して,27歳で1児の父親 となる。47歳の時に1年聞社外研修。57歳で両親を失い,67歳で退職,78歳の時妻を失い81歳で生涯を終えた。」 D.E.スーパーはこのようなライフ・キァリアを概念図化した。. Fig.2.4 スーパーのライフキャリアレインボー 出典)文部省 1992 中学校・高等学校進路指導資料第1分冊個性を生かす進路指導をめざして 海文堂. 21プレディガーはDISCOVERの開発者の一人である。わが国の職業分類は,IDEASを除くDPT (データ・人・物)によって分類する考え方が支配的であり,これは日本労働研究機構が発行し ている職業レディネス・テストにも採用されている。日本においてプレディガーの考えを取り入 れているものとしては佃・渡辺(1996)があげられる。. 22ホランドの6類型については,本章第2節で詳述する。また,SDS(Self・Directed Search)とい. う職業興味検査はDISCOVERで利用可能と既述したが,これはホランドが開発したものである。 230nline(2001)http:〃www.act.org/wwm/research,htm1. 20.

(27) Table 2.4 DISCOV:ERの職業分類の比較(旧・新ヴァージョン). 1988年 Job ClusterとJob Family 1. 2001年 Career ClusterとCareer Area 1. 対人折衝を含むビジネス. 管理及び販売. A. マーケティングとセールス. A. 雇用関連サービス. B. 経営と企画. B C. マーケティングとセールス 経営. D 規制と保護に関わる仕事 2. 2. 事務処理に関連する仕事 C. 事務処理に関連する仕事. E. 記録及びコミュニケーションに 関連する事務. コミュニケーション及び記録に 関する事務. D E. 財務関連業務. F. 財務関連業務. 貯蔵及び発送に関する業務. G. 区分及び発送に関する業務. F. 事務機器及びコンピュータ操作. 3. 3. 技術職. G. 車両運転及び修理. H. 技術職. H. 乗り物の運転操縦とその関連. 製造と保守管理. I. I. 農業及び天然資源に関する仕事. J. コンピュータと情報の専門職. J. 細かい手作業の仕事と関連サービス. K. 製造と保守管理. K. 家庭・事務機器の修理. L. 細かい手作業の仕事とその関連. L. 工業機械の操作及び修理. M. 工業生産と加工の仕事. N. 機械と電気の専門職. 4. 4. 科学関係の仕事. 農業、林業とその関連. 科学・技術関係の仕事. M. エンジニアリングと関連諸技術職. O. エンジニアリングと技術職. N. 医療関連専門職と関連技術職. P. 自然科学者と科学技術者. O. 自然科学者と数学者. 医療技術者. P. 社会科学者. Q R S. 社会科学者. 5. 5. 芸術関係の仕事. 医療の診断と治療. 芸術関係の仕事. Q R. 応用芸術(視覚的芸術). T. 応用芸術(視覚的芸術). 創造的・上演(演技)的芸術 応用芸術(文筆及び弁舌). u V. 創造的・上演(演技)的芸術. S 6. 6. 社会的サービスの仕事. 応用芸術(文筆及び弁舌). 社会的サービスの仕事. T. 健康管理一般に関係する仕事. W. 健康管理に関係する仕事. u. 教育及び関連サービス業務. X. 教育. V. 社会及び行政的サービス業務. Y. 地域の公的サービス. W. 対個人的・接客サービス業務. Z. 個人サービス. 左:柳井他(1990)に加筆修正したもの. 右:DISCOVERのウェブページから. DIscov:ERではFig.2.5のキャリアレインボーが画面に現れる。虹の各色は、下か 21.

(28) ら「息子・娘(子ども)」、「学生」、「労働者」、「配偶者」、「家事をする人」、「親」、. 「余暇人」、「市民」の人生における7つの役割を表している。それぞれの虹の色が Fig.2.6の虹にも対応している。 Fig.2.6はあるユーザーの回答を反映した結果が示. されている。DISCOVERのキャリアレインボーについては先行研究でも詳しい説 明が見られないため、画面から表示されている内容を推定することにする。. Fig.2.5 DISCOVERのキャリアレインボー. i欝響. 騨鐵. [簗簗鎖i. 騨ρ. Fig.2.6 Making Ybur Own Career Rainbow. 22.

(29) Fig.2.6の虹の下にはユーザーの回答結果欄がある。欄の左側には各役割(LIFE ROLES)のスコアの表がある。上から市民:10、余暇人:15、親:5、家事をする 人:0、配偶者:10、労働者:30、学生:15、息子・娘:5、合計が90である。欄 の下方のTotal Hours Usedと書かれたゲージは90を指し示している。このゲージ. の最大目盛は100ではなく120である。おそらく、一日24時間の中で各役割に費 やす時間をユーザーに回答させ、その合計が90であり、これを時間に換算すると 18時間ということであろう。したがって残りの6時間は睡眠時間と見られる。では、. なぜ最大目盛が24ではないのだろうか。これも推測だが、一年12ヶ月、約360日 を意識してのものであり、ひと月額30日で換算して考える場合も容易である。各 ライフロールのスコアは虹の各色の幅にも反映され、最もスコアの高い労働者の色 が最も幅が広く描かれ、スコアが0の家事をする人の虹は描かれていない。これを 見てユーザーは自分のライフロールは働くことの比重が高いと視覚的にわかるであ ろう。回答結果欄の中ほどにはもう一つのゲージがあり、L、ife Role;Studentの値. が15を指している。下の合計のゲージと比べることにより、全体の中での学生(学 習する者)としての役割の比重を視覚的に判断できるようにしてあるのだろう。お そらく、左側の表の各ライフロール名の部分がボタンになっており、それをクリッ クすると各ライフロールのスコアが中ほどのゲージに示されると思われる。. 以上見てきたように、DISCOVERはアメリカのキャリアガイダンスの理論家・ 研究者の理論や研究成果を取り入れて開発されたシステムであることがわかる。 次にTable 2.3のHA:L:L2やHA:L:L3の内容も見ておこう。 HA:LL2は検査結果か. ら適職を検索するモジュールであり、Fig.2.7がその画面である。左図にはアルファ. ベット順に職業名が並んでおり、右側にあるバーを下にスクロールしていくと右図 の画面が出てくる。この中から[COUNSELOR(SCHOOLICOLLEGE)】を選ぶ。. Fig.2.7 Finding Occupations. クリックすると次ページのFig.2.8左が現れる。ここにはスクールカウンセラーの 仕事の内容や環境、使用する用具の説明が簡潔に書かれている。また、Fig.2.8右の. ように、実際働いている人のカラー写真(静止画)を見ることができる。. 23.

(30) ヒ璽. 降口_. Fig.2.8 職業情報画面(例 スクールカウンセラー) Fig.2.8左では【Description】のタブが開いているが、そのすぐ右の【Related Occ】の. タブを開くとFig.2.9左のスクールカウンセラーに関連する職業リストが示される。 Fig.2.8左やFig.2.9左の画面から【Training1のタブを開くと、Fig.2.9右のその職業. に就くのに必要な教育訓練や資格・関連する専攻(学問や科目)・昇進に関する情報 が現れる。ここで【Psychology, Genera11をクリックするとFig.2.10の画面が現れ. Fig.2.9 関連職業リスト(左)と教育訓練等の情報(右). Fig.2.10 州ごとの養成機関〔大学等〕のリスト(左)とアイオワ大学の情報(右). 24.

参照

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