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博 士 ( 医 学 ) 狩 野 吉 康

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 狩 野 吉 康

学 位 論 文 題 名

B 型 お よ び C 型 慢 性 肝 炎 に 対 す る IFN 療 法 の 作 用 機 序

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

目的インターフェ口ン(IFN)の抗ウイルス作用機序として,2 ―5 オリゴァデニル酸合 成酵素(2−5 AS)によるウイルス蛋白の合成阻害が考えられている。一方,B型肝炎におい ては, 感染肝細 胞膜表面 のHBV関連抗 原とHLA一classI(classI)抗 原とを標 的抗原と した細胞障害性T細胞によってB型肝炎ウイルス感染肝細胞が障害され,それがウイルス排除機 構のーっとして考えられている。

  そこで筆者はウイルス性慢性肝炎の自然経過およびIFN療法時に,肝細胞において2―5AS 活性およびclassI抗原の発現がどの様に作働しているのかを検討するため,肝細胞の代用と してB型 お よ びC型 慢 性 肝炎 の 末梢血 単核球(PBMC)2ー5AS活 性および 末梢血リ ンパ球 (PBL)表面HLA抗 原の発現 を検索し ,B型およ びC型肝炎に 対するIFNの 作用機序 を検討 した。

対 象 およ び 研 究方 法1) 対象:HBe抗 原陽性B型 慢性肝炎50例,HCV抗体 陽性C型慢 性肝   炎20例 ,お よ びIFN療 法 を施 行 し たHBV―DNAポ リ メ ラー ゼ(DNA−p)陽 性B型 慢 性   肝炎24例とHCV―RNA陽性C型慢性肝炎37例とを対象とした。

2)PBMCお よ び血 清2―5AS活性の 測定:PBMCを 分離後, 細胞を融 解し遠心 後の上清 を   酵 素液とし, 栄研2―5Aキットにて測定した。血清2―5AS活性は血清50彫1を用いて栄   研.2―5Aキットにて測定した。

3)PBL classI抗原 の 測 定:PBMCを 分離 後 ,lXl06個に 調整しRPMI1640培 地に孵置 ,   っいでclassI抗原のモノクローナル抗体を加えてインキュベートし,さらに螢光標識二次抗   体を加えてインキュペートし,洗浄後,フ口ーサイトメトリー(FCM)にてりンパ球表面の   螢光強度を測定した。classI抗原の発現はPBLl個あたりの平均螢光強度(任意単位,AU)   で表示した。

4) 肝細胞classI抗原 の測定: 肝組織を 直ちにperiodate一lysine−paraformaldehyde     (PLP)液にて固定後,―80℃にて保存して凍結切片を作成し,酵素抗体法にて染色した。

  肝細胞膜classI抗原の染色は,I:染まらない,u:一部の細胞で始まる,m:大多数の細     ‑ 77―

(2)

胞で染まる,IV:び漫性に染まる,の4段階で測定した。同時にPBL classI抗原を測定し   て比較検討した。

5)HCV―RNAとHCV genotypeの 測 定 :HCV―RNAは 血 清 よ りacidguanidium―   thiocyanate−phenol一chloroform (AGPC)法に てRNAを抽出 し,逆転 写を行いcDNA     を作成し,5 非翻訳領域の2組のprimerを用いてtwo stage polymerase chain reaction     (PCR)を行 って測定した。HCV genotypeはコア領域に各々genotypeに特異的な4種類   のprlmerを設定し,PCR産物のサイズからI〜W型に分類した。

6)B型 慢 性肝 炎 例 のIFN療 法時 の 血 清2―5AS活 性,PBL classI抗原の 測定:dま たは   ロ―IFNを投 与 し ,経 時的に血 清2―5AS活性,PBL classI抗原を測 定した。DNA―p   の陰 性 化と 血 清2ー5 AS活性 お よびPBL―HLA抗 原 の関 係 に っい て 比較 検 討 した 。 7)C型 慢 性肝 炎 例 のIFN療 法時 の 血 清2一5AS活 性の 測定:aまたはロ ―IFNを4週間 連

´ 続 投 与 し ,HCV―RNA陰 性 化 と 血 清2一5AS活 性 の 関 係 に っ い て 比 較 検 討 し た 。 結 果1)B型 お よ びC型 慢 性 肝 炎 のPBMC2−5AS活 性 :B型 慢 性 肝炎 ,C型 慢性 肝 炎 で   は健常成人に比較して高値を示した。IFN治療例では,投与直後よりその活性は上昇を示し,

  投与期間を通じて高値を維持した。

2)肝組織classI抗原とPBL classI抗原発現の比較

    PBLclassI抗原は肝細胞でのclassI抗原の染色性別に,(I)平均520. 3AU,(n)平     、

  均552. 7AU,(m)平均928. 3AU,(IV)平均1095. 5AUと肝細胞でのclassI抗原の染色   の増強に平行して強く発現した。

3)B型およびC型慢性肝疾患のPBL亠classI抗原発現

    B型慢性肝炎,C型慢性肝炎のclassI抗原は,健常成人に比較して高値を示した。IFN   治療例ではclassI抗原発現はさらに増強していた。

4)IFN添加培養PBMCの2―5AS活性とclassI抗原発現

  d―IFNの 濃度依存 性にその活性は上昇したが,ア‑IFNでは僅かであった。PBL classI   抗原発現は両IFNで濃度依存性に増強した。

5)IFN投与 時 の 血清2―5AS活性 お よ びPBLclassI抗原 発 現―B型 慢 性 肝炎 ー :血 清2   ―5 AS活性およびPBL classI抗原のIFN投与前値は有効群と無効群の比較で差を認めな   かった。血清2ー5 AS活性はIFN投与にて上昇し,有効群で高値が認められた。PBL class   I抗原発現はIFN投与にて増強したが,その程度は有効群と無効群とで差を認めなかった。

6)IFN投 与 時 の 血 清2―5AS活性 ―C型 慢性 肝 炎 ―: 血 清2−5AS活 性 はRNA陰 性化 群   で高 値を示し たが,推計 学的には 有意でな かった。HCV−RNAの陰性化はgenotypemお     ―78―

(3)

よびIV型では90%と高率であったが,genotypen型では35.1%であった。genotype皿型では   2―5 AS活性 とRNA陰 性化 に一 定の 傾向を 認め なか ったが,genotypeH型では2―5AS   活性高値例にRNA陰性化を多く認めた。

考按ウイルス性慢性肝炎患者の肝細胞classI抗原の染色性とPBL classI抗原発現とは関 連す るこ とが 示唆 され た。Bおよ びC型慢性 肝炎 ではPBMC2―5AS活性およびPBL class I抗原発現は健常成人に比較して高値であり,B型慢性肝炎の急性増悪時にはPBL classI抗 原お よびPBMC2ー5AS活 性は 高値 を示 し,GPTの 改善 に伴って漸減した。これらの事よ り,B型慢性肝炎では自然経過中に内因性にIFNが産生され,HBV関連抗原とclassI抗原 とを標的抗原とした細胞障害性T細胞による肝細胞障害と2―5Aシステムを介したHBVの増 殖抑制とが働いている事が示唆された。

  B型慢 性肝炎 にお けるIFN療法時の血清2―5AS活性とPBL classI抗原発現との検討で は,血清2―5 AS血清は有効例で高値を示したが,PBL classI抗原発現には一定の傾向が認 めら れず ,IFNの抗 ウイ ルス 状態 の指 標と して は2―5AS活性の有用性が示唆された。

  一 方,C型慢 性肝 炎で はIFN投 与時 の血清2―5AS活 性とHCV―RNA消失 の検 討か ら,

genotypemおよ びIV型の 症例では,2―5ASの誘導の程度に関わらず大部分の症例でRNA は 陰 性 化 が 認 め ら れた 。u型 の症 例で はRNA陰性 化例 は35.1% で,genotype間でIFN 治療に対する反応性の異なることが認められた。H型の症例では2―5 ASの誘導が良好な症例 においてRNA陰性化率が高く,血清2一5AS活性と抗ウイルス効果とは密接な関連を示した。

結論B型およびC型慢性肝炎に対するIFN療法の作用機序を検討し,以下の結論を得た。

  1)PBMCのHLA抗原の発現は,肝細胞のHLA抗原発現の指標になることが示唆された:

  2)B型 慢性肝 炎で は, 経過 中に 内因 性にIFNが 産生 され,HBV関連抗原とclassI抗原     とを標的抗原としたCTLによる肝細胞障害と2―5Aシステムを介したHBVの増殖抑制     が働いている事が示唆された。

  3)B型慢性肝炎のIFN療法では血清2―5AS活性が,抗ウイルス状態の有用な指標と考     えられた。PBL classI抗原の発現とIFN療法の効果とには一定の傾向が認められなかっ     た。

  4)C型慢性肝炎のIFN療法では,HCVgenotypeによって効果に差があり,ni型,IV型で     良好 であ った 。n型 では2―5 AS活性の 高値 例でHCV−RNAの消 失例 が多 く,2→5     AS活性は抗ウイルス効果を反映していると考えられた。

79―

(4)

   学 位 論文 審 査の 要旨 主査   教授   宮山竒   保 副 査    教授    葛巻    暹 副 査    教授    皆川 知紀

I.研究目的

  イン ター フェ ロン(IFN)の抗 ウイ ルス 作用 の機 序と して,2 ―5 オリゴアデニル酸合成 酵 素(2ー5AS)に よ るウ イル ス蛋 白 の合 成阻 害が 考え られ てい る。 一方 ,B型 肝炎 にお いて は , 肝 細 胞 膜 表 面 のHBV関 連 抗 原 とHLAclassI(class I)抗 原 を 標 的 抗 原 と し た 細 胞 障 害性T細胞による感染肝細胞障害がウイルス排除機構のーっとして考えられている。今回の研究 で は ウ イ ル ス 性 慢 性 肝 炎 の 自 然 経 過 お よ びIFN療 法 時 に , 肝 組 織 に お い て25AS活性 およ びclassI抗原の発現がどの様に作働しているのかを検討するため ,肝細胞の代用としてB型お よ びC型 慢 性 肝 炎 の 末 梢 血 単 核 球(PBMC)2亠5AS活 性 お よ び 末 梢 血 リ ン パ 球(PBL)表 面HLA抗 原 の 発 現 を 検 索 し ,B型 お よ びC型 肝 炎 に対 するIFN療 法の 作用 機序 を検 討し た。

n.対象および研究方法     、

  1)対象:B型慢性肝炎74例 ,C型慢性肝炎57例を対象と した。

  2)PBMCお よ び 血 清2ー5AS活 性 の 測 定 :PBMCを 融 解 し 遠 心 後 の 上 清 を 酵 素 液 と し ,   血清は凍結保存血清を用いて栄研2ー5Aキットにて測定した。

  3) PBL classI抗 原 の 測 定 :PBMCを 分 離 後 ,RPMI1640培 地 に 孵 置 後classI抗 原 の モ     ノクローナル抗体を加えてインキュペートし,さら に螢光標識二次抗体を加えてインキュ     ベー トし ,洗 浄後 ,フ 口ー サイ トメ トリ ーに てり ン パ球 表面 の螢 光強 度を測定した。

  4)肝 組 織classI抗 原 の 測 定 : 凍 結 切 片 を作 成し ,酵 素抗 体法 にて 染 色し た。 肝細 胞膜     classI抗 原の 染色 は,I:染 まら ない ,I:一 部の細胞で染まる ,m:大多数の細胞で染     まる ,IV:び 漫性 に染 まる ,の4段階 で判 定し た。同時にPBL classI抗原を測定して比   較検討した。

  5)HCV―RNAとHCV genotypeの 測 定 :HCV−RNAは 血 清 よ りacid ‑ guanidium―     thiocyanate―phenol―chloroform法 に てRNAを 抽 出 し , 逆 転 写 を 行 いcDNAを 作 成     し ,5 非 翻 訳 領 域 の2組 のprimerを 用 い てtwo stage polymerase chain reaction     (PCR)を 行 っ て 測 定 し た 。HCV genotypeは コ ア 領 域 に 各 々genotypeに 特 異 的 な4種     一80―

(5)

類のprlmerを設定し,PCR産物のサイズからI〜W型に分類した。

皿.結  果

  1)PBMC2−5AS活性およびPBL classI抗原発現:

    B型慢性肝炎,C型慢性肝炎では健常成人に比較してPBMC2ー5AS活性は高値を示し,

  PBL classI抗原 は強 く発現した。IFN治療例では,さらにPBMC2―5AS活性の上昇,

PBL classI抗原発現の増強を認めた。

  2)肝組織classI抗原とPBLclassI抗原発現の比較

    PBL classI抗原は肝細胞でのclassI抗原の染色性別に平均で,(I)520. 3AU,(u) 552. 7AU,(m)928. 3AU,(IV)1095. 5AUと肝細胞でのclassI抗原の染色の増強に平行   して強く発現した。

  5)IFN投与 時の 血清2―5AS活性およびPBL classI抗原発現ーB型慢性肝炎―:血清     2−5 AS活性 はIFN投与にて上昇し,有効群(DNA―p陰性化群)で高値であった。

    PBL classI抗原発現はIFN投与にて増強したが,その程度は有効群と無効群(DNA―p     持続陽性群〕とで差を認めなかった。

  6)IFN投 与 時 の 血 清2一5AS活 性‑C型 慢 性 肝 炎 ― : 血 清2―5AS活 性 はHCV一     RNA陰性化群で高値を示したが,推計学的には有意でなかった。HCV―RNAの陰性化     はgenotypemおよびIV型で高率であった。gerotype皿型では2―5AS‑活性高値例に     RNA陰性化を多く認めた。

IV.結  語

  1)PBLのHLA抗原の発現は,肝細胞のHLA抗原発現の指標になることが示唆された。

  2つB型慢性肝炎では,経過中に内因性にIFNが産生され,HBV関連抗原とclassI抗原     とを標的抗原としたCTLによる肝細胞障害と9‑・5Aシステムを介したHBVの増殖抑制     の働いている事が示唆された。

  3)B型慢性肝炎のIFN療法では血清2ー5AS活性が,抗ウイルス状態の有用な指標と考     えられた。PBL classI抗原の発現とIFN療法の効果とには一定の傾向が認められなかっ     た。4)C型慢性肝炎のIFN療法では,HCVgenotypeによって効果に差があり,m型,

    1V型で 良好で あっ た。H型では2―5AS活性の高値例でHCV−RNAの消失例が多く,

    2―5 AS活 性 はIFNに よ る 抗 ウ イ ル ス 状 態 を 反 映 し て い る と 考 え ら れ た 。

81ー

(6)

,以上より,本研究は博士(医学)の学位論文として妥当なものと判断される。

‑ 82

参照

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