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博士(医学)三浦 淳 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)三浦   淳 学位論文題名

抗うつ剤投与のラット脳ドパミン受容体発現に対する影響 学位論文内容の要旨

  抗うつ剤は以前より,セ口トニン(5‑HT)やノルアドレナリン(NA)の神経終末への再取 込み阻害,あるいは神経終末におけるモノアミン酸化酵素阻害により,シナプス間隙の 5−HTやNAを増加させることで臨床効果を発揮すると考えられてきた。しかし,動物に 抗うつ剤を投与すると,前頭前野の細胞外ドパミン(DA)濃度も増加することが示され,DA 作 動 系 も 賦 活 す る こ と が 示 唆 さ れ て いる 。 さら に 抗う つ 剤 を反 復 投与 す ると , apomoriphineやmethamphetamineな どDA受 容体 作 動薬 に よる 移 所 運動 量 増加 作 用 が増強されることから,反復投与によりDA作動系に行動感作が生じると考えられている。

分子生物学的研究により,行動感作の機序の1っとして,シナプス後膜におけるドバミン 受容体発現の上昇が想定されるようになった。しかし,抗うつ剤反復投与による影響を受 ける脳部位やドバミン受容体サブタイプに関しては不明な点が多い。そこで,本研究では,

薬理学的プ口フイールの異なる抗うつ剤をラットに反復投与し,精神機能との関連が想定 されている前頭皮質,側坐核,線条体における,ドバミンDl,D2,D3受容体発現に及ぽ す 影 響 を , Western blot法 と Northern blot法 を 用 し ゝ て 検 討 し た 。   抗う つ 剤と し ては ,5―HTとNAの再 取込み阻害 薬であるamitriptyline (20mg/kg BW), 選 択的NA再 取 込 み阻害薬で あるdesipramine (20mg/kg BW), 及び低用量 では 細胞 外DA濃度を増 加させるこ とで抗うつ 効果を発揮すると考えられているsulpiride (10mg/kg BW)を用 い ,それ ぞれ1日1回, 腹腔内投与 した。最終 投与4時間後に断 頭 し,直ちに前頭皮質,側坐核,線条体を取り出した。

  Western blot法には, 蛋白膜分画 を作製してSDSーPAGEを行い,二ト口セル口ース 膜に転写した。一次抗体としてウサギ抗ラットDl受容体(DIR)抗体,ウサギ抗ラットD2 受容 体(D2R)抗体 ,ウサギ抗 ラットD3受容 体(D3R)抗体を用いた。二次抗体にはHRP標 識抗 ウサギIgG抗体を用い,反応後ECLキットTMを用いて化学発光させ,特異的シグナ ルをX線フィルムに露光した。

  Northern blot法には,total RNAを精製し,アガ口一スゲル電気泳動を行い,ナイ□

ン 膜 に 転 写 した 。 内部 標 準と し てはGAPDH mRNAを 用 いた .DIR mRNA.D2R mRNA, GAPDH mRNAに 対 し て は ,[32P] dCTPで 標 識し たcDNAプ口 ー ブを 作 製し て ハイ ブ

(2)

  リダイゼーションを行い,特異的シグナルをX線フィルムに露光した。D3R mRNAに対 しては,[32P]UTPで標識したcRNAプ口ーブを作製してハイブリダイゼーションを行っ た後, RNas eAで処理し,特異的シグナルをX線フィルムに露光した。得られたシグナ ル は,画像解 析プ口グラ ムMCID−M2を用いて 解析した。なお,D1R,D2R,D3RのmRNA シグナル強度はGAPDHmRNAシグナル強度で補正した。

  統計学的解析は,Westemb10t解析の結果は,対照群と各薬剤投与群との間で比較し,

t検定を行 った。Northemb10t解析の結果は,各群間の比較は一元配置分散分析を行っ た.いずれもpくO.05の場合を統計学的に有意とみなした。

  Westemblot解 析の 結 果,D1RとD2Rは それ ぞ れのnativeformの みが検 出された。

D3Rは単量体の他,四量体も検出されたため,それらのシグナル強度を合計して比較検 討 した。Amitriptyline投与後,前頭皮質におけるD2R蛋白量が有意に増加していたが

(pくO.05),他の部位では変化が認められなかった。D1R,D3R蛋白量はいずれの部位でも 変 化がみられ なかった.Desipramine投与後,前頭皮質におけるD1R蛋白量が有意に増 加していたが(pく0.05),他の部位では変化が認められなかった。D2R,D3R蛋白量はいず れの部位でも変化が認められなかった。Sulpiride反復投与後はいずれの受容体サブタイ プ,いずれの部位においても変化が認められなかった。

  Northernb10t解析で は,D11ミmRNA,D21ミmRNAはいずれの部位でも検出可能であっ た が,変化は 認められな かった。D3mlRNAは前頭皮 質,線条体ではシグナルが非常に 微 弱であっ たため,側 坐核のみで 解析を行っ たが,有意 な変化はみ られなかっ た。

  抗うつ剤反復投与のドバミン受容体発現に対する影響は,しばしば線条体と側坐核で検 討 され,側 坐核でD2RとD3Rのm耐乢Aや蛋白発 現が亢進す るという報 告が多いが ,前 頭皮質で検討した報告はこれまでほとんどない。前頭皮質は,中脳皮質辺縁系ドバミン神 経 系の投射部 位の1つ であり,情 動や意志発 動などを司っていると想定されている。

ん11itriptylineが前頭皮質D2R蛋白量を増加させ,desipramineが前頭皮質D1R蛋白量 を増加させたことは,抗うつ剤が前頭皮質のドパミン神経機能を亢進させることを示唆し ているのかも知れない。三環系抗うっ薬であるamitriptylineとdesipramineが異なるド バミン受容体サブタイプの発現を調節した機序に関しては不明であるが,前者が5ーHTと NAの再取込み阻害を有するのに対して,後者はNAを選択的に再取込み阻害するという,

薬 理学的プ 口フイール の違いと関 連している のかも知れ ない。また ,今回の検 討で sulpirideではいずれの部位でもドパミン受容体発現に変化がみられなかったが,supiride に は5→HTやNAの 再 取 込 み 阻 害 能 が な い こ と と 関 連 し て い る の か も 知 れ な い 。   前頭皮質は,中脳皮質辺縁系ドバミン神経系の投射部位のーつであり,その機能不全は 快楽の喪失や精神運動抑制といったうつ病の中核症状をもたらすと考えられている。本研 究で,amitriptynneとdesipramine投与後,前頭皮質のドバミン受容体蛋白量が増加し たことは,抗うつ作用と何らかの関連があることが示唆される。しかし,前頭皮質のDl 受容体とD2受容体の機能に関しては不明な点が多く,さらなる検討が必要と思われた。

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

抗うつ剤投与のラット脳ドノヾミン受容体発現に対する影響

  抗 うつ 剤は 以前 より , シナ プス 間隙 のセ ロト ニン (5HT)やノ ルア ドレ ナリ ン(NA)を増加さ せ る こ と で 臨 床 効 果 を 発 揮 す る と 考 え ら れ て き た 。し かし ,動 物に 抗う つ剤 を反 復投 与す る と , ド パ ミ ン(DA)受 容 体 作 動 薬 に よ る 移 所 運 動 量 増加 作用 カミ 増強 され るこ とか ら,DA作 動 系 を も 賦 活 す る と 考 え ら れ る よ う に な っ た 。 そ の 機 序 の1っ と し て , シ ナ プ ス後 ドパ ミン 受 容体 発現 の上 昇が 想定 さ れて いる 。本 研究 では ,抗 うつ 剤の 反復 投与 によ るド ノ くミ ン受容体 発現 に及 ぼす 影響 を, 脳 部位 別に ,各 受容 体サ ブタ イプ に特 異的 ・定 量的 な方 法 で検 討した:

  抗 う つ 剤 と し て は ,5HTNAの 再 取 込 み 阻 害 薬 で あ るamitriptyline (20mg/kg BW), 選 択 的NA再 取 込 み 阻 害 薬 で あ るdesipramine (20mg/kg BW), 及 び 低 用 量 で は 細 胞 外DA濃 度 を 増 加 さ せ る こ と で 抗 う つ 効 果 を 発 揮 す る と 考 え ら れ て い るsulpiride (10mg/kg BW)を 用 い 、 そ れ ぞ れ11回 , 腹 腔 内 投 与 し た 。 最 終 投 与4時 間 後 に 断 頭 し , 直 ち に 前 頭 皮 質 , 側 坐 核 , 線 条 体 を 取 り 出 し た 。 各 脳 組 織 よ り 蛋 白 膜 分画 ,お よびtotal RNAを精 製し ,Western blot法 ,Northern blot法 に よ り , ド パ ミ ンDlD2D3受 容 体 蛋 白 量 ,mRNAレ ベ ル を 検 討 した 。

  Western blot解 析 で は ,amitriptyline投 与 後 , 前 頭 皮 質 に お け るD2受 容 体(D2R)蛋 白 量 が有 意に 増加 して いた が (p<005) ,線 条体 ,側 坐核 では 変化 が認 めら れな か った 。D1受容 (DIR)D3受 容 体(D3R)蛋 白 量 は い ず れ の 部 位 で も 変 化 が み ら れ な か っ た 。Desipramine 与後 ,前 頭皮 質に おけ るDIR蛋白 量が 有意 に増 加し て いた が(p〈0.05),線条体,側坐核では 変 化 が 認 め ら れ な か っ た 。D2RD3R蛋 白 量 は い ず れ の 部 位 で も 変 化 が 認 め ら れ な か っ た 。 Sulpiride反 復 投 与 後 は い ず れ の 受 容 体 サ ブ タ イ プ , い ず れ の 部 位 に お い て も変 化が 認め ら れ な か っ た 。Northern blot解 析 で は ,DIR mRNAD2R mRNAは い ず れ の 部 位 でも 検出 可能 で あ っ た が , い ず れ の 薬 剤 に よ っ て も 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た 。D3R mRNAは 側 坐 核 の み で 解析 でき たが ,有 意差 は みら れな かっ た。

  抗 うつ 剤反 復投 与の ド ノく ミン 受容 体発 現に 対す る影 響は ,し ばし ば線 条体 と 側坐 核で検討 さ れ て い る が , 前 頭 皮 質 で 検 討 し た 報 告 は こ れ ま で な い 。Amitriptylineが 前 頭 皮 質D2R

司弘 雄       充邦 山岡 代 小 吉 田 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

(4)

白量を 増加させ ,desipramineが前頭 皮質DIR蛋白 量を増加させたことは,抗うつ剤が前頭 皮質のドパミン神経機能に影響を及ぼし,うつ病の症状のーっとしての前頭葉機能の低下を 改善している可能性が考えられた。

  質 疑 応 答で は ,吉 岡 教 授から ,@抗う つ剤の単 回投与によ るCREBを介し た転写亢 進の 可 能性 , ◎ 前頭 前 野に お ける ドパミンDl,D2,D3受容 体の発現比 ,◎D3受容 体の四量 体 の生体内での働き,@蛋白サンプルに細胞質内蛋白が含まれていないか,◎抗うつ剤の作用 機 序に お い て, ド パミ ン 系へ の影響は 最終共通 経路か,◎Dl受容体とD2受容体の どちら が重要 か,につ いて質問 があった 。これに 対して申請 者は,@先行研究では単回投与では CREBに 変化 が な かっ た こと ,◎受 容体オー トラジオ グラム法な どの報告 によると ,Dl受 容 体とD2受容 体 は同 程 度 に発現 している が,D3受容 体は比較的 少ないこ と,◎D3受 容体 の四量体の機能に関しては,これまで全く議論されておらず,今後の検討に興味がもたれる こと,@本研究は膜分画のみを精製しており,intemalizeした蛋白は含まれていないこと,

◎抗うつ剤のドパミン作動系への影響は,薬理作用の重要な一側面をあらわしているとは考 え られ る が ,最 終 共通 経 路か どうかは 不明であ ること,◎Dl受容体とD2受容体は ともに 重要であろうことを回答した。次いで田代教授から,desipramineとamitriptylineを用いた動 物の行 動実験と ,bromocrlptmeとpergolide以外のドパミン受容体作動薬の抗うっ効果に関 して質問があった。ニれに対して申請者は,移所運動量の研究や強制水泳試験を用いた研究 で,抗うつ剤の反復投与でドパミン作動系が賦活されることが報告されているニと,ドパミ ン受容体作動薬であるcabelIgolineがうっに対して有効である可能性が臨床的に考えられて いることを回答した。

  この論文は、抗うつ剤であるdesipramineとamitriptylineの反復投与により,前頭皮質ド パミン神経系が賦活される可能性をはじめて示したという点で高く評価される。今後、受容 体発現亢進の機序をさらに追究することで抗うつ剤の作用機序が解明され,うつ病の治療法 がさらに進展することが期待される。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院研究科における研鑚と併せ、申請者が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。

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