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雑誌名 奈良教育大学教育工学センター研究報告

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Academic year: 2021

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

教科教育(美術科教育)に教育工学機器の利用を如 何にするか −美術科教育に主としてV・T・Rの 利用をした実践報告−

著者 鈴木 寛男

雑誌名 奈良教育大学教育工学センター研究報告

巻 1

ページ 49‑53

発行年 1978‑03‑25

その他のタイトル How to Use Machines of Educational Technology in Subject Education (Education through Art) 

−Report of Practice Using VTR mainly in Education through Art−

URL http://hdl.handle.net/10105/4699

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‑美術科教育に主としてV‑T‑Rの利用をした実践報告‑

鈴木寛男(美術科教育教室)

How to Use Machines of Educational Technology in Subject Education (Education through Art)

Report of Practice Using VTR mainly in Education through Art Hiroo Suzuki (Department of Education through Art)

Abstract

It is important problem requiring immediate attention to reinforce curriculum and methods of subject education in teachers college. This paper reports methodes of useing VTR and their result mainly in education of art course.

including student teaching.)

They were confirmed to be much efficient and the further problems were considered in relation to OHP, 8mm projector and opaque projector.

Key words: Education through Art VTR

I.研究の目的

教員養成大学において教科教育を充実強化していくことは,目下の重大事であり,あらゆる 方法が検討され研究され実践が進められているO教育工学センターが設置された理由も言うま でもなくここにある。

私の担当する美術科教育においても,以前より強い関心を持っていたが,本年度研究部設置 とともに標記のような研究をはじめた。

また,教科教育と教育実習との関係は非常に密接であって,常に表裏の関係にあるものであ る。しかし,教育実習が付属校又は協力校など大学の教室外で行われるために,とかく連絡の 不充分からくるマイナス面が多い。何とか改善しなければとの日頃の関心が,この研究をはじ めた一つの目的でもあったO

美術教育の展開の中心は,表現という手の運動をもとにした造形活動を基盤としている。言 葉や文字による'=ミニケ‑ションより,直接視覚を通じて(場合によっては触覚で)の指導が 効果的である。

そこで視覚伝達の媒介としての光学機器の必要性がはやくから注目され実際にとり入れられ

て来た。

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鈴 木 寛 男

一方では,表現活動という学習そのものは,直接五感による即物的か舌動であるために「実 物主義」という映像を軽視するという矛盾した志向も存在することも事実である。スライドに よる作品の再現,複製写真による鑑賞などいずれも実物には遠く及ばないのは勿論である。し かし,実物主義が限られた教室の授業において限界のあることは言をまたない。写真版による か,スライドによるかの視覚的な映像,すなわち写真機又は幻灯機の利用は既に常識とされ,

美術の学習になくてはならないものとなり,大きい成果を上げて来た。

特に最近テレビの驚異的な発達により視覚伝達の重要性が問題にされ,最も近いところにあ る教科としての美術教育において,早急に対応がなされ射ナればならない。このような使命の あることは,本研究の目的としての重要な柱である。

そこで,今回の実践は,最近とみに注目され盛んに利用されているⅤ・T・Rの効果について その実験を報告するとともに,問題点を指摘してみたいと思う。なおⅤ・T・Rと関連ある他の 機材についてもふれてみることにした。

Ⅱ.研究方法

1 主に使用した機材

(1)ビデオカセットによる録画装置とテレビモニター

(2)ポータブル,ビデオカメラ装置 照明器具類

(3)8,‰カメラと映写装置

(4)カラースライド製作装置と映写機

(5)実物幻灯機

(6)0・H・P

(7)カセットテープコーダ

(8)ビデオカセットテープ,ビデオオープンテープ,8%フイルム,リバーサルカラーフィル ム,カセットテープなど

2 V・T・Rの特性

Ⅴ・T・Rが他の視聴覚教育機材の中で,特に秀れていることは,言うまでもなく録画の容易 さ,動きがそのまま収録されうることなどであり,つまり音響と明像の同時即時性にある。さ らに,簡単に再生することができ反復が自由である。このように記録性の高さや構成演出の可 能性において他を大きくリードしている。

Ⅴ・T・Rのテープには従来のオープン式と,最近開発されたカセット式とがあり,カセット にも専門用と,家庭にも普及している一般用がある。今回の実験は簡易なカセットの一般用を 主として使用した。私の研究室に機械の設備があって身近かなものであるという理由からであ る。教育工学センターには新しく専門的をスタヂオが設備され自由に録画できるように整備さ れたので今後はもっと秀れた録画が可能になっていくと思われる。

Ⅴ・T・Rのテープの利用方法として大別すれば次の二つがある。一つは一般の放送局より放

映されるものを選択録画する方法と,自主番組を製作録画する方法とである。

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3 V∴T・Rテープの録画

Ⅴ・T・Rテープを録画するには,毎日放送されているテレビ番組を収録する方法と,自主製 作する二つの方法がある。前述したように,まづ前者についてのべていくことにする。

学校教育向けの放送は毎日のように豊富に流れているが,大学の教室への利用には,時間と 場所の障害があって,いきおいテープに収録しておいて,後で自由に再生する方法が最も適し ている。そのためには,日常にテープをプールして置くことが必要であって,例えばその装置 が比較的身近にあること,タイマーなどの装置が用意されていることなどが,前もって準備さ れていかすればならない。幸いテープは録画と消画が簡単でありほとんどの番組が再放送をす

るので,収録に際してとくに注意すべきむずかしさはない。

教育番組だけでなく,家庭向きの車にも大変有効なものがあり,特別番組,ドキュメンタリ ー,インタビュー番組など自主番組ではとうてい考えられないものが毎日のように放送されて いる。最近は教育に関するもの,美術に関するものの多いのには驚く程である。叉婦人教養番 組などでの編集は非常に親切丁寧であり,専門家による直接の指導ができるのはすばらしいこ

とである。本年利用したものでは,水墨画言由絵などがあるが後述する。

次に自主製作について述べてみたい。

本年度は主として二つの作品を作って研究してみた。一つは中学校の美術の教育実習を記録 したこと,もう一つは大学の図工教材研究の共同製作グループ研究の発表の録画である。前者 では1時間テープ4本と後者では1時間もの5本を使用した。後で結果の所で詳しく述べたい。

4 8りん映画,0・H・P,スライド等の利用

Ⅴ・T・Rによる再生,録画はまだ他に比較すれば,設置や機材の移動などまだ困難点がある ので,例えば8㌢ん映画による録画も併用することにした。Ⅴ・T・Rの録画は野外でも可能であ

るが,8㌢んの撮影は非常に簡単に収録することができる。付属中学校の教育実習中の運動会の 記録などがそれであって,これは,編集してビデオにすることも可能である。同時に学生自ら 機材に慣れることも大切なねらいでもある。

又,スライドの自主製作を美術教育法に課し鑑賞教育の生きた実習としての学習を計画実行 した。

0・H・P,実物幻灯機については,教材研究と教育実習において大いに利用することができ た。

Ⅲ.研究結果

1 放送番組の録画テープ利用

Ⅴ・T・Rの利用が教育効果を上げるだろうとの予測は以前より度々莫証されてきており放送 教育の研究など注目していたが,今回実際に自分で経験することにより,その成果の大きいの

に驚いている。

「水墨画」NHKが婦人向に製作したもので人気もあり再放送されたものである。水墨画は

私の直接の専門ではないのでこのテープを実習の中に取り入れてみた。以前は黒板に筆をつけ

て学生に見せたりしていたが,今回はⅤ・T・Rで先づ導入部とし,その製作過程をくわしく丁

寧に再生してみせた。その成果は一目瞭然であった。その道の専門家であり実際に初歩の生徒

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鈴 木 寛 男

を指導するという形をとって進行するので,学生の理解ははやいし興味も深めることができた。

重要な所は度々繰返し反復して見せることができるのでさらに効果は大きかった。水墨画の独 特な筆使いなどを詳細に知ることができたのはビデオならではのものといわざるをえない。

同じような技術指導のテープで成功したのに「油絵の描き方」がある。これは専門であるが,

私自身の参考になるだけでなく,学生にも,微細に丁寧に教えることの大切さを再認識するこ とができた。ビデオでは時間的経過を自由に編集できるため油絵の如く制作過程を重視する指 導には非常に有効であり又反復再生の価値は,指導上の効果をさらに大きいものとした。

中学校課程の美術科教育法の指導の中で特に印象的であったテープを二,三紹介してみたい。

学生の理解の困難な抽象作家の作品の指導にビデオを使用した例である。

菅井 汲氏(在仏)のもので,やはりNHKのものである。単純明快な単色の作品が大写し になり,続いて作者本人のインタビューがはじまる。「自由に表現するためには形も色も最も 単純でかすればならない。単純に制限すればする程,其の自由な表現ができる」との言葉に学

生は驚き「そのためには私は三度の食事とも献立を一定にしている‥‥Jというあたりの作家の 独特の表情から,生活をかけた制作の厳しさに実際ふれたような身近かさがあり理解を深める

ことができる。これなどもⅤ・T・Rならではのものである。

やはりNHKのドキュメンタリーで放送された青森県のある障害児学級での共同制作による 版画の指導「虹の上をとぶ船」を学生に見せるとどの学生も深い感動を覚え,教育の重要性を

強く認識していくことを見ることができる。さすがその編集が立派で子供がその障害をのりこ えて制作に集中していく様子,そのテーマのすばらしさ,共同制作ならではの連帯感,版画の 刷り上った時の感動は見るものも共に感激することができる。現有のテープの中でも最も重要

なものの一つである。

その他,NHK制作の「お母さんの勉強室」の中で,幼児教育のためのテープ「幼児の絵に あらわれた心」「幼児の絵をどうみるか」「友達の顔」「物語の絵」「幼児の想像力」「手づくり の遊び」など小学校,幼稚園課程の教材研究,絵画制作の指導になくてはならぬ立派なテープ である。

2 自主製作録画テープの利用

教育実習中の教育実習生の指導の実際を記録し,後で再生することによって,授業を分析,

診断反省するために種々の記録機器が考えられる。今回はテープレコーダーで実習生の授業を 全部記録させることにした。

中学校の美術の授業では,言葉による説明の部分は,主として導入や,まとめの部分になる ことが多いし,個別指導の所は記録が困難である。その上生徒の造形活動の様子を記録するた めには,映像を必要とする。そこで比較的安易な8%映画による記録を併用することにした。

カラーフィルムの上質なものがあるので教室での撮影も容易になった。私の手元には録音つき 81‰カメラがなかったので,普通のカメラによったため充分な記録にならなかったし,テープ レコーダーとの併用という不便を感じている。将来は優秀な録音付カメラによる記録をし,場 合によってはビデオテープに録画も可能であるので携帯の便利な8%カメラの利用が今後ます

ます必要となってくるだろう。ただ8,‰カメラの大きな欠点としては,即時に再生することが できないことである。授業の分析をその日のうちに行うことの必要な教育実習などの記録では

重大な障害である。そして又,授業の撮影では撮影中のモーターの音と撮影のために生徒に近

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づくことによる授業妨害の関係が問題点である。ビデオのカメラの持つ特性は8%カメラによ る記録を充分カバーするもので,特に再生の即時性と反復の安易性は,大きな成果を上げるこ とができた。

次に図工教材研究のグループ研究の中で子供が「作った」ものをどうして「使う」かという 研究発表を記録した。これは次年度の学生の研究に参考にさせるということだけでなく,後の 評価にも利用できたし,学生自身が授業のビデオによる記録という経験を学習し発表そのもの

に一つの緊張を呼ぶという面でも大きな効果を上げることができた。

その他の機器について簡単にふれてみる。0・H・Pを図工教材研究の研究発表(前述)で発 表の際に「紙しぼい」をフイルムにかき,ベーブサードを併用して拡大映写することをやって みせたが,長いフイルムを移動してバックを動かせるなど,なかなか効果のある利用である。

その他,中学校の美術科教育法の学習の中で鑑賞用のスライド作成の実習をとり入れてみた が,今の学生が思ったより写真機の取扱いの不慣れであることに驚いた。影写の技術露出に対 する知識の不足が目立ち,今後の指導上の問題点である。同じようにテープレコーダー,8−‰

カメラの使用などについても,学生自身が積極的に慣れる機会を作る必要がある。

Ⅳ.今後の課題

1,Ⅴ・T・Rは,現在まだ日進月歩の速度で開発中の機器であるため,種々の問題がある。

例(1)テープの様式が販売社によって異なる。

(2)ビデオデッキの機構も次々と新しいものが販売され,旧式が使用不可能になるとい うようなこともある。

(3)現在では付属機具も多く,携帯に不便であり取り扱いもむずかしい。

(4)機材ならびにテープの価格が高価である。

(5)大学の現状では,モニターの設備がまだ充分でないため教室での使用に不便がある。

2,今回の研究は試行的を段階であり,高価な機材をもっとも有効に利用する方策について は,まだ研究を深める具体的研究が必要である。

3,前述のように,Ⅴ・T・R利用は,非常に有効なものであるが,現状の学生の指導の実情

からみれば,カメラ,0・H・P,スライドなど従来も多く利用され,教育工学機器として

の基本的なものの研究,実習も同時に拡大充実していく必要がある。

参照

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