奈良教育大学学術リポジトリNEAR
教育工学機器を教科教育(美術科教育)に如何に利 用するか。 −OHPとアニメーションによる、映 像と美術科教育についての研究−
著者 鈴木 寛男
雑誌名 奈良教育大学教育工学センター研究報告
巻 3
ページ 91‑95
発行年 1980‑03‑08
その他のタイトル HOW TO USE MACHINES OF EDUCATIONAL TECHNOLOGY IN SUBJECT EDUCATION (EDUCATION THROUGH ART) A Study of Moving Images by Means of OHP and Animation in the Education through Art
URL http://hdl.handle.net/10105/4665
如何に利用するか。
OHPとアニメーションによる、
映像と美術科教育についての研究‑
鈴木寛男(美術科教育教室)
HOW TO USE MACHINES OF EDUCATIONAL TECHNOLOGY IN SUBJECT EDUCATION (EDUCATION THROUGH ART)
A Study of Moving Images byMeans of OHP and Animation in the Education through Art
Hmoo Suzuki (Department of Education through Art )
Abstract
Towards a practical argumentation for the improvement of children's imagination and creative
power by introducing shadow pictures (using Ofが) and animation (using 8 mm cinecamera)into teaching materials of education through art.
Key words:
Education through Art OHP and animation
(I) 研究 員 的
教育の場において、学習指導を効果的にするために、コミニュケ‑ションの過程を改善する ことはきわめて重要であり、これを研究することは、教師の責務といえるだろう。そのコミニ ュケ‑ションの媒体として、教育工学機器を導入する効果について、特に教科教育の立場から 研究実践を進めていく。
前回(教育工学センター報告)第‑号においては、主としてVTRの利用について研究報告 したが、今回はOHPと8ミリカメラによるアニメ‑ションを利用した教材についてその問題 を報告することにする。
91
鈴 木 寛 男
(II) 研究方法
(a)OHPによる教材
OHPが、教室に利用され始めてまだ日が浅いにもかかわらず、その普及には目を見はるも のがある。かつて、このように急速に普及した教育機器はなかった。OHPは、スライドと違
ってフイルム面が大きく、自由に字や図や絵などを記入することができ、また重ね合わせたり、
動かしたりすることもできる。映画のような動きをもたせることは無理だが、左右や上下の移 動、流れる感じをシートを重ねて表現する方法、色彩の変化など種々の表現が可能である。映 画やスライドの映写には暗室が必要であるが、OHPの場合は普通の教室で充分に使用できる。
このような特性に加えて、TPシートの作製も容易であるなどの利点を考えるならば、子供が 直接参加する教材として開発することも考えられ利用範囲の広いことが大きな魅力である。
手による影絵というのがある。きつねや犬らしい影を障子に写し出す。これの現代版とでも いえるのがOHPによる影絵教材である。単なる影絵と違うところは、切りぬいた絵にセロハ ン紙による背景を重ねて演出効果を高める点にある。そして背景を移動したり、いくつも重ね
この方法を、教材化するには二つのことが考えられる。一つは、従来の方法として教師が作 製して子供に与える方法と、子供がこの方法に自ら参加して発表という形での教材として成立
させる方法である。ここでは後者の子供がOHPによる自主番組を作る事により自分連で映像 と言葉による物語を演出するという場合を考えてみた。造形表現はどうしても固定された映像 に止まり変化が少ない。幼稚園や小学校低学年でよく取り上げられた「紙芝居」などに見られ るように、映像が動かないための欠点をOHPによる影絵では動きの効果で補うというのであ る。この教材の利用は、前に述べたOHPの特性に着目して光の映像として拡大させたもので ある。なお、幼稚園と小学校中学年までに適した教材としての考案である。
(b)8ミリカメラによるアニメーション教材
現代の子供達は生まれた時から、テレビに囲まれた生活を送って来た。いわゆる「テレビッ 子」としてアニメーションと共に成長してきたといっても過言ではない。このことの是非につ いては今回特に取り上げるつもりはない。ただ中間発表の時、現代の子供が異常に視覚的に発 達していることが取り上げられた。この問題は、現代の教育の中で大いに検討されなければな らないことである。子供の視覚が発達することが問題ではなくて思考の発達とのバランスが問 題である。よくいわれるように、受け身の子供ではなく自分から進んで表現をする意欲的な子 供が期待されているのである。今はこの問題はひとまず今後の課題としておき、アニメーショ
ンの持つ教材としての積極的な意味に焦点をあてて考察を進めてみる。
子供は、固定した映像ではなく動く形を求めている。紙芝居やスライド更にはOHPによる 映像に満足できず動く形を求めてくるのである。動く形、これがアニメーションということに
なる。アニメーションを製作するには、次のようないろいろな方法が考えられている。
●セルアニメ
アニメーションの代表的な手法である。動きを表現するための多数の絵(動画)を透明なセ ルロイド板の上にトレースして仕上げることからこの名称がついている。透明であるので、複 数のセルロイドを重ねて一つの画面をっくることができる。これによって背景を容易にいれる
ことができ、分業によって多くの絵を仕上げる利点をもっ。
●/ヾ−ノヾ−アニメ
作者の絵そのままをフイルムに撮影する方法 長編ものに適しない。
●切りぬきアニメ
キャラクターを切りぬいて背景の絵の上におきながら撮影する手法である。(Fig5、6参 照)
●シネカリグラフィ
フイルムの一コマーコマに直接手で像を描きこんでいく手法
●立体アニメ
いろいろな物体をつかったアニメで人形アニメが代表的でねんどなど可塑的なものをつかっ て簡単につくることもできる。
以上いづれの方法をとるにしても、カメラによってつくられたフイルムが必要である。今回 は、操作が簡単で費用も少なく入手しやすい8ミリカメラを使用して研究した。
アニメーションとは、生命のないものが作者の意図によって生きているように動かされた映 画又は手法である。生きて動くということで画面の中のキャラクターが自分の意志でその時々
93
鈴 木 寛 男
の感情や考え方によってある個性をもって行動するという点である。アニメーションは、空想 から出発して、想像によって発展し、時間も空間も人為的に創り出される映像の世界である。
この点が造形・美術教育の教材として、大きく注目される理由である。
Fig6
(III) 研究結果
(a)OHPによる教材
紙芝居やベーブサード等に比べ光学機器による拡大された新鮮な映像が子供の大きな魂力と なって興味を呼び光学機器の持つ特性を充分に発揮し予想以上の効果を示した。
教材としては、幼稚園あるいは小学校低学年に通していると思われる。この教材を授業に取 り入れるにあたっては、グループ学習として展開させることが好ましい。それぞれ適当な題材 を選び、姓の代表者を選出すること、班の代表は、製作の計画を作り、登場人物(動物)の製 作者と背景製作者の分担をきめる。背景には、セロハン紙を使用すると安価で簡単である。水 性又は油性のサインペンを中心に描くが色セロハン又はカラーテープ等を併用すると面白い。
(b)8ミリカメラによるアニメーション教材
カメラの撮影技術、撮影設備などの関係から、小学校では、教材として困難な点が考えられ る。クラブ活動では充分に活用できると思われる。中学校及び高等学校においては、青年期を むかえた生徒の表現欲求に答える教材として大きな関心を呼ぶことができた。
本学学生の教材研究においてグループ研究として課した結果、製作学生は自分達の描いた桧 や作品が映像を通して動くということに極めて高い興味をもって活動した。このアニメを見た 学生達は、自分達でアニメの出来ることに強い驚きをもった。工夫次第によってはねんどによ る動く人形等のように簡単にアニメができることを学び、アニメが専門家のみによって製作さ れ極めてむづかしい技術と時間を要するものであるという既成の概念を打ちやぶることができ た。
(Ⅳ) 議論 結論 今後の課題
国産のテレビアニメ第一号の「鉄腕アトム」が生まれてから20年になろうとしている現在で は、このアトムをはじめとして数々のテレビアニメをみて育った若者たちが、自分達の手でア ニメーションをつくろうという時代になってきた。アニメーションが、テレビを通じて子供や 一般大衆の生活や文化に与える影響はますます大きなものになっている。しかし、アニメーシ ョンが、放送資本やスポンサーのコマーシャルリズムに利用されている現状では、作品の内容 技術は、ともするとないがしろにされがちである。このような問題と我が国の視聴覚教育をど のように関連して考えて行くか大きな課題が残されている。OHPをっかいあるいは、アニメ ーションによって教師と子供とのコミニュケーションを効果的にするだけでなく、子供自らが このような光学機器を利用して自ら創造的な世界に遊び、これを人に伝えるということの教育 的意義を再認識したいものである。勿論動かない映像にも限りない創造がある。動く映像とそ れにともなう言語あるいは音楽との総合的な表現活動が今後の視聴覚教育ないしは造形美術教 育の重要な課題となるであろう。
(Ⅴ) 文 献
00HPのすべて
21世紀教育の全編 小学館(1979)
○アニメ ーショ ン
月岡貞夫 著 美術出版社(1972)
○映画論講座(第3巻) 合同出版(1977)
○アニメーションの本
アニメ6人の会編著 合同出版(1979)
○テレビアニメ大行進
辻 真先 著 集英社1979)
95