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雑誌名 奈良教育大学教育工学センター研究報告

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(1)

奈良教育大学学術リポジトリNEAR

被服製作の教育効果の進歩 −VTRの適用を通じ て−

著者 中谷 和

雑誌名 奈良教育大学教育工学センター研究報告

巻 10

ページ 1‑11

発行年 1987‑03‑16

その他のタイトル Some developments of teaching effects for making garments of fabrics. −through the practice of VTR.−

URL http://hdl.handle.net/10105/4574

(2)

被服製作の教育効果の進歩

‑ V T Rの適用を通じて ‑

中 谷   和 (家 政 科)

Some developments of teaching effects for making garments of fabrics.

‑ through the practice of VTR. ‑ Abstract

Applying VTR, I have been studying how to attain educational effects for making garments of fabrics.

The VTR films were for teaching the third class of junior high school, and they produced good results than any other previous teaching method.

Key words : VTR film, teaching effects.

I は じめに

家庭科教育の独自性が実践教育であるという点から、色んな形態の日常生活に必要な生活技 術と技能の定着が期待されるのは当然のことである。この生活技術・技能の蓄積と発展過程か ら得られた技術的思考力が、工夫創造の能力や、実践的態度を確立していくことになる。従っ て、技術・技能学習は決して無意義な時間浪費や遊びではない。他教科によって獲得した多く の学力と共に、全ての教育がめざす人間性、 ∴類の幸福に貢献する総合的な能力の養成に繋が

るものである。

ところが、技術・技能教育の現状は、前報で著者が触れたように、急激な生産生活様式の変 動と子供の生活の歪み、指導の困難性などが複雑に絡み合って、充分な成果を収めていない。

そこから、今回の「教育審議会中間まとめ」にみられるような、必修からの削除、つまり技能 教育の見直しがなされたものと考える。この現状を克服するためには、技能教育を如何に効果 的に展開していくかと云う問題の解決と、その遂行以外に方策はない。

すなわち、指導内容と指導法を検討し、創意工夫によって改善することである。

指導法の改善例とLT2ラ視聴覚機器の導入が屡々考えられる。既に教育現場において、その 有効性も確認されている。

そこで、今回、家庭科被服領域の中で、男女共修と指導の徹底が最も困難とされる被服製作

‑ 1 ‑

(3)

中 谷   和

(被服構成実習)に焦点を当てて、ビデオ教材を自作し、実際に中学校での授業に適用して、

その教育効果を試してみた。

Ⅱ被服教育におけるビデオ教材利用の実態

これまでの調査によると、被服教育における視聴覚教育は決して充実しているとは云えず、

特にVTRの利用率はOI]Pやスライドよりも低い。これは授業にそのまま使えるような適切 なテレビ番組や市販教材が少ないこと、既製教材が学習者や指導者の要求に対応しきれていな い証嫁である。殊に今ある視聴覚教材の大部分が講義専用のものであることから、被服製作実 習用のビデオ開発が急がれる。

皿 ビデオ製作

労働による疲労を回復させる一つの条件として着衣があげられるが、身体の発育と活動の顕 著な中学生に休養と被服との関係を考えさせ、関心を深めるのに、日頃寝間着として着用して いる「パジャマの製作」を取りあげる意味は大きい。全国の中学校3年生で、現在学習させて いるところが多く、単一的な技術題材を断片的、狐立的に扱うよりは、包括的・実際的な題材 をとり上げることにした。

被服製作のビデオを製作しようとする時、

① 全体の作業の流れを理解させる(作品製作の全過程提示)

④ 指導しにくい部分を解り易くする(部分拡大、示範用)

⑨ 課題学習の場合の事例を提示する。

④ 指導のための参考資料とする(部位別、布別縫代始末の方法、衿型など)

のようなビデオ内容が考えられる。これらのことが、はぼ同時に満たされるように心梯げ、次 のような指導目標を定めた。

0 教育的内容を充分含み、文化遺産として伝承価値のある水準の高い技能学習にする。

0 知識を獲得するだけでなく、観察や分析・総合などの思考活動を通して、理解と判断力 と実践力を養う。

0 生活に必要な技術・技能を学ばせ、今後の衣生活経営に生かされるように、既習の縫製 技術・技能を基盤にして発展性を持たせる。

以上の指導目標にそって、

0 基本的技能を明確にし、最低授業時数で押えるべき必要事項を示す。

。 教え込みを極力避け、主体的実践的態度を促す。

0 中学校指導要領に基づき、できるだけ具体的に拡大した表現を用いる。

0 学校及び生徒の実態、生徒の個性、能力の伸長を考え、弾力性を持たせる。

0 原理、構造などの知識理解と技能面の知識が連緊され、定着するように、実験的内容を 豊富にとり入れる。

0生徒に親近感を持たせ、学習する雰囲気を楽しくする。

ー 2 −

(4)

被服製作の教育効果の進歩−VTRの適用を通じて−

など、諸点に留意しながら台本を作成し、それを基に具体的に「パジャマ製作」の絵コンテ を画き、撮影セットを準備して撮影を行なった。絵コンテの一部を図1−3に示す。

1包 えりのつく り方   (単位 印)

− 3 −

(5)

中 谷

l  l  l  l l  l  l  l

l  l  l  l  l l  l  l  l  t

U

 

r A

イ東リ

3回 切りこみの入れ方(冊立cm)…一 今ぐ 建値の串東

撮影は教育工学センター内スタジオでSONYカメラを用いて行った。同一カットについて、

照明、カメラの位置、縫製用兵他教具の配置などを変えて幾つかの場面を撮影した。

全項目を撮影後、縫製順序に合うように台本にそって、画像をダビングし、編集した。

編集には、先と同様教育工学センター内の閉回路調整室にあるSONY−J9およびSONY−

J7でダビングし、編集デッキSL0−383および自動編集コントローラーRM−440を使用 した。

ビデオ製作に要した日時は昭和60年8月末日から約1ケ月で、所要時間約48時間である。

完成したビデオ教材「パジャマの製作」の縫製部分の内容は次の通りである。

。柚つけ     17分45秒     0袖下、脇縫い   8分40秒

。袖口の始末   1分40秒     0裾縫代の始末   4分20秒 0衿つけ     14分10秒     0ボタン穴かがり  9分10秒 写真1−6は自作ビデオの映像写真を示したものである。

写真1手縫いによる穴かがり 写真2 ジグザグミシンによる穴かがり

4

(6)

被服製作の教育効果の進歩−VTRの適用を通じて

写真3 ボタン穴明きのあけ万

写真4 穴かかりの方法(手縫いによる)

5

ノミを使って かがり糸を切 らないように 穴を明けます。

ボタン穴のま わりに芯糸を 渡します。

糸はボタン穴 の30倍ぐらい 用意しておき

ましょう。

(7)

中 谷   和

写真5 ボタン穴かがり

写真6 出来上がり

口はきちっと、つまって いる方がきれいですね。

ボタン穴の鴫 までくると、

放射線状にか がっていきま

す。

Ⅳ試作ビデオの適用結果 1)視聴方法

試作した教材は、教師の立場で模索しながら撮影したものである。果たして中学生や大学生 にどのように受けとめられるのであろうか。その教育的効果を検討するために本学付属中学3 年生女子全員と教育学部家政科学生全員の視聴を試みた。付属中学では既に「パジャマ製作」

学習が進行中であったので、視聴内容が学習前(1組と4組)と学習後(2組と3組)になる 2グループに分けて、各々異なった学習形態で適用した。1時間の授業の最初に各縫製の要所

一 6 −

(8)

被服製作の教育効果の進歩−VTRの適用を通じて−

を視聴させ、その後作業にとりかからせた。時間中は出来るだけ個人別指導と示範はさし控え ることにした。家政科の学生には教材内容を一括視聴させることにして、回生毎に1グループ 5−9名で5回に分けて実施した。

2)視聴後のアンケート結果

ビデオ教材製作の主目的の達成と指導目標に到達できたかどうかを検証するために、

① 試作ビデオに対する評価に関すること

② 学習内容の難易度について

㊥ 今後への学習発展の可能性に関すること などのアンケート調査を実施した。

図4は、調査内容の一部とその結果を示している。

4図 アンケートの結果

中 学 生 大 学 生

80  60  40  20  0      0   20  40  60  80 100脚

l        l        l 1 ) 画 像 の 鮮 明 度

⊂ コ

1 , 4 組 6 ヨ

2 , 3 組

N \ \\\

見 や す か っ た

大 体 見 や す か っ た

普   通

や ヽ見 に く か っ た

見 に く か っ た

l

l

2 ) 音 声 の 明 瞭 度

\ \\ \ \ \ \ \

l L \ \\\ \ \

は っ き り 聞 こ え た

大 体 勧 こ え た

普   通

や ゝ聞 こ え に くか っ た

聞 こ え に く か っ た

l

一 7 …

(9)

中 谷

手で

l      l      I      I                                      】       】       I      l      】       l 3 ) 話 す ス ピ ー ド

早     い

や ゝ早 い

普     通

や ゝ遅 い

遅     い

l l

l \ \ \ \  \ \  \ \  \ \ \ \ \ \\

4 ) ビ デ オ の 内 容 の 難 易 度

難   し   い

や ゝ難 し い

普     通

や ゝ や さ し い

や さ し い

l l

l\  \ \  \ \  \  \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \

5 ) 縫 製 手 順 の 理 解 度

l

よ く わ か っ た

大 体 わ か っ た

ど ち ら と も 云 え な い

や ゝわ か り に くか っ た

わ か り に く か っ た

l

l\ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \\ l

− 8 −

(10)

被服製作の教育効果の進歩−VTRの適用を通じて ̄

防)1(カ 80  60  40  20  0      0  20  40  60  80 100脚

l      l      I      I      l                          I      】       l      I    l 6 ) 視 聴 時 の 感 想

「−

l\\\  \  \   \  \

t\\ l  \  \  \  \  \  \\\

楽   し   い

わ り と 楽 しい

ど ち ら と も云 え な し

や ゝ退 屈

退     屈

l

7 ) 被 服 領 域 で の V T f〜利 用

l \\\\\\\

t

も っ と 利 用 し た い

利 用 して もよ い

ど ち ら と も云 え な い

あ ま り利用 した くな い

利 用 し た くな い h \  \  \\\\\\\\\ l

8 ) 被 服 領 域 で の V T R 利 用 希 望 分 野

被 服 製 作

手 芸 、 染 色

被 服 整 理

衣 料 学

衣   生 活

\  \  \  \  \  \  \ l

ー 9 一

(11)

中 谷   和

捌∞ 80  60  40  20  0        0  20  40  60  80 100脚

l      l      l      I      l                          l      l      l      l      l 9 )家 庭 科各 領 域 で の V T R 利 用希 望

l l\  \  \  \  \\\

N \ l  \  \  \  \  \  \

食     物

保     育

住     居

家 庭 電 気

家庭 機械

8),9)は複数解答を含む

図4の1),5)より映像は大体見やすかったことがわかる。2),3)からは音声もほぼ 明瞭で、話すスピードも恰度良かったことが確認できる。又、4),5),6)からはビデオ の内容が中学3年生には適当であったと思われ、視聴時の精神的作用も軽快者が予想以上に多 かったことなどを考え合わせると、ビデオ試作の成績は良好であったと云える。次に、7),

8),9)からは被服領域でのVTRを利用した学習を希望するものが多く、特に手技の理 解に役立つビデオ教材を圧倒的多数が求めていることをうかがい知ることができる。なお、被 服領域以外の食物や保育の領域でもビデオ学習は支持されており、これらの領域で今後ビデオ 製作を進め、生徒の学習意欲に応える必要がある。

0 10 20 30 40 50 50 70 80 90100(鴛)

柚つけ 袖下、脇縫い 袖口始末

裾の始末 衿つけ ボタン穴かがり

45.5 膨 冤 勿 勿 ・;

. . i 33・3  膨 ; 新 例 簿 王手 3

53. 6   膨 鍛 探 ㌶ 三日  「 牟 ∴ 亘1

ヽ . ニ 15. 5 縮 彫 鑑 搬 捌 ㌫: て ; 21・ ぷ 9.4

・由 ■ ■ 脈 鵜 杉 喜・ 幸 二

□きれいにできた匠ヨ、きれいにできなかった 四できた  慮訂でき、なかった

5図 技能成績(各段階における縫製の評価)

ー10 −

(12)

被服製作の教育効果の進歩−VTRの通用を通じて−

図5はVTRを利用した指導効果を測るもので、各要所における縫製目標の到達度を生徒の 自個評価と教師の総合評価で判断し、その達成率を示したものである。

VTR教材を利用すると従来の教科書説明と板書及び示範による学習に比べて、理解が速く、

授業時間内で完壁な縫製作業が成立し、大部分の生徒が学習目標に到達したと云える。これは、

内容が余り思考を要しない単純技能であり、テレビの拡大された映像の方が、示範に比べて細 かい動作が見やすかった為と考えられる。即ち、技能成績の良否は学習経験の有無や理解力の 程度とは関係なく、VTR視聴による学習効果とみなすことができる。例えば、手縫いによる

「ボタン穴かがり」のようなむつかしい技法でさえ、68%以上の者がきれいに完成し、約91%

がその手法をマスターした訳で、これは技能学習にVTR教材が有効であることの証明になろ う。しかし、現状ではビデオに授業の全てを頼ることは無理であり、ビデオを如何に利用する かは教師の力量を待つしかない。

Ⅴ ま と め

被服製作は指先運動をもとにした造形活動が基盤であり、視覚による指導が文字や言糞での 指導よりも遥かに効果的であることを再認識した。今回の教材開発と実践の中で、多くの貴重 な知見が得られた。

1.どのように良質のVTRを製作しても、縫製技術の伝授は示範指導の効果には及ばないと 云われているが、その考え方には誤解があるように思われる。

2.縫製技術の指導の最良の方法は示範とVTRの併用である。

3.個人的伝承指導が強く要求されるような縫製作業においては、教師の責任と負担は余りに も大きい。そこで、VTRの使用目的を教師の側に有効に作用するよう配慮することで、指 導の徹底とその成果が期待できる。

4.被服教育分野でのより一層拡大、充実した視聴覚教材の開発が必要である。

5.VTRを使った授業を推進するためには、必要な教室の施設・設備が充実されなければな らない。

以 上

参考文献

1)中谷 和、田中恒子:視聴覚機器の利用による技能教育の効率化、奈良教育大学教育工学 センター研究報告、第7号(1984.3)

2)野口道子:家庭科学習におけるVTRの効果(第一報)、日本家庭科教育学会誌、第16号

(1976,3)

lllll一

参照

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