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雑誌名 奈良教育大学紀要. 自然科学

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

紀伊半島中央部に分布する岩脈のK‑Ar年代

著者 和田 穣隆

雑誌名 奈良教育大学紀要. 自然科学

巻 48

号 2

ページ 7‑14

発行年 1999‑11‑10

その他のタイトル K‑Ar Ages of Dikes m Central Kii Peninsula, Southwest Japan

URL http://hdl.handle.net/10105/1454

(2)

奈良教育大学孝己要 第48巻 第2号(自然)平成11年 Bull Nara Univ. Educ,Vol.48, No 2(Nat.), 1999

紀伊半島中央部に分布する岩脈のK‑Ar年代

和 田 穣 隆 (奈良教育大学地学教室) (平成11年4月28日受理)

K‑Ar Ages of Dikes m Central Kn Peninsula, Southwest Japan

Yutaka WADA

(Departmei乙t of Earth Sciences, Nara University of Education, Nara 630‑8528, Japan)

(Received April 28, 1999)

Abstract

Six new K‑Ar ages for Tertiary dikes in central Kii Peninsula, Southwest Japan, were determined. The four

K‑Ar ages from quartz porp恒'ry, dacite and andesite dikes are between 14.5 to 15.2 Ma, showing a good

agreement with the ages both of the Outer Zone Granitoids including Kumano and Online AcidiC Rocks, and

of the Setouchi lTolcamc Rocks piでviously reported. A K‑Ar age indicating ll 0 Ma from an andesite dike is

the voun酢st one m ages previCmsly reported in this area. This might suggest that the duration of Miocene

igneous activity in this でa was slightly longer than that known before. Although a sample from a rhyolitic

tuff dike shows 3/.3 Ma in age, abundance of sandstone. mudstone and shale xenoliths within the dike indicates that this age is probably of a host rock The preferred orientation of these five Miocene dikes is WNW‑ESE. This direction in central Kn Peninsula is different <7im.. direction from that in southern Kii Peninsula showing N‑S direction after 15 Ma.

Kev Words: K‑Ar age, dike, Kn Peninsula. Miocene

は じ め に

奈良県から和歌山県にかけての紀伊半島中央部外帯に は付加体地域の層序学的研究に伴って多くの中〜小規模 な火成岩脈が存在することが知られている.しかし,そ れらの大部分は地理的位置が隔離されているため互いの 関係が明らかでないことが多い.したがって,それらの 火成活動の時間的関係を野外で直接理解するのは困難で ある.

本地域および周辺では火成岩の放射年代測定が特に近 年多く行われるようになった.しかし測定の対象は室生 火砕流堆積物(宇部ほか, 1996),熊野酸性火成岩類 (Hasebe et ai, 1993;角井はか, 1998)といった大規 模な告体についてであり,小規模な岩体については報告 例がない.

キーワード: K‑Ar年代,岩脈,紀伊半島,中新世

また,本地域から報告されている岩脈には石英斑岩と ひん岩,そして少数の粗粒玄武岩という比較的珪長質な ものと苦鉄質なものの両方が存在する(大和大峯研究グ ループ, 1981; 1992; 1994こ 三宅ほか, 1985;志井田は か, 1989).ところが熊野・人峯酸性火成岩類といった 大規模な火成岩体を構成するものにはそのようなより苫 鉄質な岩体は知られていない.これらが同時期に形成さ

れたものかどうかは特にLtj性〜苦鉄質な岩体についての 報告が少なく,あまり明確でない.

岩脈は応力場の推定によく用いられる(中村, 1969;

Nakamura, 1977).岩脈の卓越する分布方位から水平 圧縮応力軸方位(uHLll,)を推定し,岩脈の形成年代か らその時代の占応力場を推定するというものである.こ の手法を用いて西南口木外帯でも新生代の応力場の変遷 を推定する試みが幾つかなされているが(小体, 1979;

(3)

fn ffl 穣 降

D40 500m

Figurel Sampling locations of six dated dikes. These location maps were made by using Digital Map 25000 {Map Image) published by Geographical Survey Institute. In original geographical maps 1 :25,000 by Geographical Survey Institute, the areas of D4 and D7, D20, D30 and I〕31, and D40 are

"Yamato‑Kashiwagi", "Atarashi", "Yanase", and "Hosshinmon", respectively.

Tablel The geometric characters of dikes in central Kii Peninsula.

dikeNo.locality,.,jrocktypestrikedipwidth(m) longitudeJ*

Nakaoku,   34 20'11"N quartz

Kawakami (Nara) 136 04'50"E porphyry N70W     60S      30

Nakaoku,    34 19'51"N

Kawakami (Nara) 136。 03'30"E andesite EW      85S 0.2‑0.5

D20 Kashio, Yoshino   34 22'19"N

(Nara)    135 55'02"E andesite N70W    80N‑80S

D30Usut c霊,Hanazono

kayama)霊003書O?LandesiteN30W60S>2‑3 Ainoura, Koya   34。 09'43"N

(Wakayama)  135 36'41"E dacite N60E     70N o.4

D40

Mikoshi‑pass, Nakahechi (Wakayama)

33。 50'37"N rhyolitic

135 42'06"E tuff N60W     85E     2‑4

(4)

紀伊半島中央部の岩脈の年代

Table 2 Results of K‑Ar dating.

・・11JISOtOpiCageW^rad

samplemineralanalyzed.‑‑,,,,,nn y(Ma)(scc/grXI0‑5)。Arr,%K

D4   potassium feldspar 15.2±0.8

D7      whole rock    14.5±0∵7

D20     whole rock ll.0±0.8

D30      whole rock    15.2ア0.6

D31     whole rock    14.6±1.0

D40   potassium feldspar  37.3±1.9

0.355       59.6 0.359        54.2

0.149       62.5 0.150       64.1

0.024

0.024       30.9

0.071       70.8 0.074       72.9

0.028       31.6 0.029       34.4

l.C

1.10       87.8

Constants for the calculation are as follows: A β‑4.962×101  人e‑0.581xlO‑'Vr‑', 仰K/K‑1.167xlO"'atom%, and抑Ar/邪Ar atmosphere‑295.5 (Steiger and J丘?er, 1977).

Tsunakav.,a、 1986こ 山元, 1991),本地域でその推定に 用いることのできた形成年代の明らかな岩脈は従来非常 に少なかった.また岩脈の分布は紀伊半島の南部にやや 偏っている.

以上のことから本研究では紀伊'I'島中央部である奈良 県中部から和歌山県北部にかけての地域に分布する珪良 質〜中性の火成岩からなる計6枚の岩脈についてK‑Ar 年代測定を行ったので報告する.

岩脈の記載

Figurelに岩脈のfez置を示す.これらのうち,これま で報告がないものはD4. D30, D31, D40であるが, D30 とD31は山本俊哉氏によって兄いだされたものである.

また, Tab]ヒ1に岩脈の走向・傾斜・幅を示す.

D4は石英斑岩質である.分布地域についての詳細な 地質は報告されていないが,筆者の観察では母岩は泥質 岩および砂岩であり,岩脈との境界付近で熱変成を受け ている.岩脈は母岩との境界付近で流理が明瞭で,走向 方向の気泡が伸長しているのが観察できる.申し、付近は 母岩に近い部分に比べ結晶サイズが粗粒である.冷却節 理はあまり明瞭でない.

D7は安山岩からなる.梅田・粉川(1954)の「奥瀬 戸の新期火成岩脈A」に相当する.彼らによると岩脈の 母岩は輝縁凝灰岩であり,また大和大峯研究グループ (1981)によればここでの母岩は秩父音のB層に属する.

露頭では岩脈に沿って母岩は変化し,輝線凝灰岩の下位 では砂岩・泥質岩が母岩となる.それらは水平に近い勇 断による割れE]の発達が著Lく,岩脈の貫入形態はその

構造に左右されて,場所によっては水平方向に1m以上 蛇行してoffsetしている.母岩との境界付近ではそれに 平行な流理が非常に明瞭である.気泡は肉眼的には見ら れない.冷却節理はあまり明瞭でないものの,割れ方の パターンか岩脈の中心に近い部分とより外側で異なり, 冷却に二つの段階があったと思われる.

D20は安山岩質である.大和大峯研究ケル‑プ (1994)ではひん岩岩脈と記載され,四万十帯横尾層の 砂岩泥岩互層に貫入している.岩脈は母君との境界付近 で急冷縁が見られ細粒となり,中心部ではやや粗粒であ る.冷却節理は明瞭で,母岩との境界付近では節理の間 隔が狭いか,中心部では広くなり塊状である.気泡は多 い.岩脈は1つのoffsetによって雁行配列した2つの segmentに分けられている. offsetより東側のsegment では最大径10数cmの異質岩片が非常に多く見られるの に対し,西側ではあまり見られない.

D30は安山岩である.四万十帯目高川層群花園層の貢 岩に貫入している.塊状で冷却節理は明瞭でない.その 他の内部構造も露出が悪く明らかでない.

D31はデイサイトからなる. D30と同様に四ノ子上帯日 高川層群花園層の頁岩に貫入している.母岩との境界付 近で急冷縁が形成されている.冷却節理は明瞭で,中心 部が比較的節理の間隔か広く,母岩との境界付近で狭く なっている.

D40は流紋岩質凝灰岩からなる.母岩は四万十累青苗 無用層群に属する砂岩泥岩互層とされる(徳岡ほか,

1981).ほぼ垂直な露頭面において,上郡はやや花弁状 に開いているように見え,下部での母岩との境界はほぼ 垂直である.急冷縁は明瞭にあり,また冷却節理は境界

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10

Mtkasayama Andesite Nijo Group

Muro Volcanic Rocks Takamiyama Acidic Rock

Omine Acidic Rocks

Kumano Acidic Rocks

This study (dikes)

和 田 穣 隆

1

^│ K‑Arm飢hod fi写」Fisson・蝣trackmethod

」;J2    :  l >

LIl ‑ll.一

̲一一、.上‑.I‑  一 一。.̲

4 I

10    11    12    13    14    15    16    17    18 (Ma)

二==

Figure2 Radiometric ages of igneous rocks in Kii Peninsula. Ranges of published ages are presented with the measured number for each igneous body. The data presented in this study, except one data aged

ll.0 Ma, is in good agreement with previously reported ages within 12‑16 Ma. Age data are from Shibata and Nozawa (1967), Tatsumi et al. (1980), Itaya et al. (1982), Matsuda et al. (1986), Agency of Natural Resources and Energy

Yoshikawa (1997), and Sumii et al. (1998).

に平行なものが目立っ.ところどころに泥岩の異質岩片 (最大径1 cm程度)が含まれている.

K‑Ar年代測定結果

K‑Ar年代測定のための試料は先述した6岩脈の露頭に おいて採取した直径20cm程度の塊から得た.室内にお

いてその新鮮な部分を岩石カッターで切り出した後, Teledyne Isotopes杜にK‑Ar年代測定を依頼した.試料 のうち, D4とD40については偏光顕微鏡観察によりカ リ長石が多く認められたため,それらを分離し年代測定 をおこない,それ以外は全岩試料について年代測定をお

こなった.

Table2に測定結果を示す.これらのうち, D20とD30 は放射性起源の‑Arの割合が30%程度と低く,他の試料 に比べ得られた年代値の精度は落ちる.これら二つの試 料については方解石・緑泥石によって気泡が充填され変 質の程度が他の試料に比べ高いようであり,全岩試料に よる年代測定に影響した可能性がある.他の試料につい ては‑Arの割合が高く充分信頼できる年代値と考えられ る.得られた年代値はD4 ・D7とD30・D31で14.5±

0.7‑15.2±0.8 Maを示し,約15 Ma前後に集中する.

D20は11.0±0.8 Maとやや若い.これらの値に対し, D 40は37.3±1.9 Maと他の年代データに比べ非常に古い.

D40が他の試料に比べ著しく古い年代であるのは,こ の岩脈が凝灰岩であり鏡下でも泥岩・頁岩・砂岩の岩片

(1992), Hasebe et al. (1993), Uto et al. (1996), Error bars for the data of this study indicate 2a.

が確認できるほど外来の捕獲岩片を含んでいることから すれば,分析したカリ長石も外来の捕獲結晶である可能 性がある.一方で,母岩である四万十累宥音無川層群の 砂岩泥岩互層の年代は始新世前期の可能性が高いとされ

る(徳岡はか, 1981;中沢ほか, 1987).以上のことか らD40は質入経路途中の物質を取り込み,得られた年代 値が岩脈形成年代を示していない可能性が高い.

岩脈の年代と火成活動

今回得られたD4・D7・D30・D31のK‑Ar年代は, これまでに報告されている紀伊半島の火成岩体の放射年 代とほぼ一致する(Figure2).紀伊半島における火成 岩体の年代値は熊野(14±2 Ma: Shibata and Nozawa, 1967; 13.8±0.4‑14.7±0.5 Ma:通産省資源 エネルギー庁, 1992; ll.8±3.2‑18.0±2.0 Ma: Hasebe et al, 1993; 14.2±0.2‑14.4±0.2 Ma:角井はか, 1998)大峯(14±2 Ma: Shibata and Nozawa, 1967;

ll.6‑15.6 Ma: Itaya et ai, 1982)・高見山(12.8±

0.8 Ma:柴田ほか, 1988)室生(15.3±0.6‑17.5±0.9 Ma: Matsuda et al., 1986; 14.44±0.16 Ma:芋都は か, 1996)二上山(13.0±0.7 Ma:巽ほか, 1980; 14.8

±0.3‑15.4±0.3 Ma:吉川, 1997)三笠山(13.1±1.2 Ma:巽ほか, 1980)ではぼ12‑16 Maの期間に大部分 が集中する.したがって,これらの岩脈は外帯花属岩類 および瀬戸内火山岩類とほぼ同時期の産物であったと考

(6)

紀伊半島中央部の岩脈の年代

えられる.

以上の岩脈4試料のうちD4・D31は珪長質であるが D7・D30は安山岩である.外帯火成岩類は一般的に王圭 最質で,より苦鉄質な瀬戸内火山岩類と地理的には分布 が異なるが,紀伊半島では大規模な珪良質火成岩体と小 規模なより苦鉄質な岩体が混在して同地域に分布する.

外胃珪長質火成岩類は苦鉄質マグマと地殻物質が反応す ることによってできるとする考え方(高橋, 1980;

Nakada, 1983)に従えば,両者が時空的に共存するの は構わない.しかし,その場合,紀伊半島外箱で大規模 な岩体は珪長質のみで,小規模な岩体には珪良質なもの もより苦鉄質なものも産することや,他の地域で報告さ れている大規模な岩体中の苦鉄質包有物が紀伊半島の岩 体では報告されていないことの理由が問題となる.これ らのことはこの地域でのマグマの物理的性質による地表 への移動のしやすさの違いを反映しているのかもしれな い.一方で,外帯珪長質火成岩類は地殻物質が直接部分 溶融して形成されたとする考え方(村田, 1984;吉田は か, 1993)もあり,紀伊半島に点在する中性〜若鉄質小 規模岩体が苦鉄質マグマと地殻物質の混合物なのか,也 殻物質の部分溶融度の差によってできたものなのかを明 らかにすると同時に,分布・存在様式の特異性を明らか にしていく必要があるだろう.

D20のK‑Ar年代は11.0±0.8 Maであり,誤差を考慮 してもこれまで知られている紀伊半島の火成岩体の年代 に比べやや若い.この岩脈はsubophitic組織をもつ安山 岩(ひん岩)からなり,今回測定した岩脈の中では岩石 組織の点から明らかに異質であるが,同様な岩質の岩脈 は大和大峯研究グルーブ(1981, 1998)や志井田ほか (1989)でも報告されており数は少なくない.志井田は か(1989)は層序と貫入関係からこの告種の岩脈を大峯 酸性火成岩類と同時期かやや後に貫入したと考えた.今 回得られた年代値はこのことと矛盾しないが, ll Ma 頃まで安山岩質の火成活動か生じていたという報告はこ れまでない. D20周辺では同じ東西走向の流紋岩質火砕 岩岩脈や石英斑岩岩脈が分布しており(大和人峯研究グ ル‑プ, 1994),かりにそれらがD20と同時期の産物で あれば,成因的関係も今後明らかにする必要かある.

応力場の変遷を論ずる一つの方法として岩脈の走向か よく使われる(中村, 1969; Nakamura, 1977).この手 法では火成活動の年代すなわち岩脈の形成年代を知るこ とが不可欠である.紀伊半島地域においてはこの手法を 用いて古応力場についての議論か小林(1979) Tsunaka1,va (1986)山元(1991)によってなされてい

る.小林は潮岬複合火成岩類に伴うとされる玄武岩岩脈 およびその周辺に分布する石英斑岩岩脈をもとに, Tsunakawaは熊野酸性火成岩類と同時期と見なされた 潮岬北方の石英斑岩岩脈群の走向に基づき,山元は

ll

Tsunakawaと同じ熊野酸性火成岩類に伴う石英斑岩岩 脈をもとに,それぞれ13‑15 Maの紀伊半島の応力場を 推定した.これらの報告で,小林(1979)は潮岬の東側 でN‑S,西側ではNNW‑SSE方向の水平圧縮応力軸 (cTi,mォ)を, Tsunakawa (1986)および山元(1991) は‑10‑方向のuHma、をそれぞれ推定している.以上の ように,これまでの報告では紀伊半島の南部地域は131 15 Ma頃には島弧の伸びに直交するほぼ南北方向の圧 縮応力場であったと推定されている.これは当時の西南 日本全体として推定されている古応力場(Tsunakawa (1986)の第IV期(12‑15 Ma),あるいはLLt元(1991)のN 2期(7‑15 Ma))と調和的である. 15 Ma以前の時期 には島弧に平行な方向の圧縮応力場であったとされる (Tsunakawa, 1986;山元, 1991).

今回年代の得られている岩脈の走向は,紀伊半島中央 部に分布し測定数も少ないか,その多くが南北性という よりはむしろD31を除きWNW‑ESE走向すなわち東西性 である.その説明として, (1)岩脈の年代は応力場が変 化したとされる15 Ma墳前後の値を示しているので, 応力場の変換期の様子を示している (2)岩脈の位置は 貫入以前からあった断層の近くであり,不連続面が存在

していたことによる応力場の局所的な変動を示している, (3)特にD4‑D7の分布域とやや南方の大台ヶ原LJ」を含む 台高地域では岩脈が一見環状に分布しているように見え (天和大峯研究ブル‑プ, 1981),火山体の一部を示して いる,という二つの可能性が考えられる.

(Dの可能性については西南日本の時計回り回転運動 すなわち日本海の拡天がいっどれくらいの期間で起こっ たのかか明らかになる必要かある. Otofuji et al.

(1985)は古地磁気学的研究により14.9 Ma頃の60万年 間に回転運動か起こったとj三張した.その後,芋都ほか (1996)はOtofui'i et al.が統計処理に用いた試料の一 つ,室生火山岩の噴出年代を精度良く決定し,西南円本 の回転運動は少なくとも14.5 Ma以降に起こったことを 明らかにしている.もしそうであれば,今回得られてい る岩脈の年代値はD4・D7・D30・I)31で14.5 Ma以前 であり, Tsunakaw,a (1986)の第1「期,山元(1991)の N1期の応力場に相当するのかもしれない. D20に関し ては年代が11 Maと若く,応力場の変換期という考え 方はできない.次の(2)に示すように局所的な応力場を 反映している可能性がある.いずれにせよ,回転運動の 期間が明らかになった上で,本地域の岩脈方位と年代を 詳細に検討する必要があるだろう.

(2)については,岩脈の貫入方向は断層などの不連続 面の存在によってそれに平行に変化することが知られて いる(例えば, Pollard, 1973; McGuire and Pullen, 1989).今田測定した岩脈の近傍に存在する梁瀬断層 (D30・D31),中央構造線(D4 ‑D7 ‑D20)を考慮す

(7)

12 和 田 穣 隆

れば,それらが貫入方向に影響して東西性の岩脈を形成 した可能性がある.特にD20周辺に分布する岩脈群(大 和大峯研究グループ, 1994)やD4・D7周辺に分布す

る東西性の岩脈群(大和大峯研究グループ, 1981;和田, 未公表)の存在は,南北圧縮であるとされる15 Ma以 降の応力場が中央構造線近傍では成立せず,中央構造線 という不連続面が影響していた可能性を強く示唆する.

一方で,同じD4 ‑D7周辺に分布する東西性の岩脈 群のうち,火砕岩岩脈といわれるものは走向が中央構造 線近傍で東西であるが南方では南北走向へと変化し(大 和大峯研究グループ, 1981),一見環状岩脈の一部をな しているように見える.このような環状岩脈は大規模な カルデラ火山でよく見られ,紀伊半島では熊野酸性火成 岩類で知られている(荒牧・羽田,1965;荒牧, 1965;

三浦, 1998). (3)については,このような環状岩脈の一 部である可能性があるため,形成時の広域応力場を反映 した方位になっていないことが考えられるが,この火砕 岩岩脈については大まかな分布以外,形成過程をはじめ としてよくわかっていない.

ま  と  め

紀伊半島中央部に分布する6枚の岩脈の形成年代を求 めた.それらの年代は37.3 Ma, 14.5‑15.2 Ma, ll.0 Maである. 37.3 Maのものは流紋岩質凝灰岩からなる 岩脈であるが,捕獲岩片・捕獲結晶の多さから岩脈の貫 入年代を示していない可能性か高い. 14.5‑15.2 Maの ものは石英斑岩・デイサイト・安山岩からなる.これら の形成時期は西南日本外青の花南岩類や瀬戸内火山岩類 のそれと一致する. ll.0 Maのものは安山岩であるが, この時期の火成活動は紀伊半島では知られておらず,火 成活動の起こっていた期間かこれまで考えられていたよ りやや新しい時代まで継続Lていた[I摘巨性がある.また これらの岩脈の方位と形成年代から推定される古応力場 はこれまで推定されていたものとは必ずしも一致しない.

謝 辞

/分析対象の岩脈の一部は地学教室卒業生である山本俊 哉氏が和歌山大学教育学部大学院在学中に見出されたも のである.山本氏には岩脈の位置を教えていただいただ けでなく,現地案内もしていただいた. Figurelの作成 では"Generic Mapping Tools" (http://w¥¥,W.soest.

hawaii.edu/wessel/gmt.html)を用いた"Online Map Creation'つhttp: //wl.vw.aquanus.geomai∴de/omc/O を使用した.なお,本研究の一部に平成10年度文部省科 学研究費補助金(課題番弓10740239)を使用した.

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付録 測年試料の岩石記載

D4 含サクロ石キンセイ石石英斑岩(奈良県川上村中 奥)

斑晶は石英(0.2‑5mm),斜長石(く0.5‑3mm),カ リ長石(1.2‑7nroi),黒雲母(0.2‑2mm)と,少量のキ ンセイ石(約0.5mm) ザクロ石(2.5mm)を含む.石英 は自形〜半白形で融食形のものもある.斜長石は自形な いし半白形でアルイバイト双晶が見られる.カリ長石は 自形ないし半白形で叔晶を示す.黒雲母は自形であり多 色性‑ロ‑が見られるものの,大部/分は緑泥石化してい る.以上の4種の鉱物が集斑をなす.キンセイ石は白形 である.ザクロ石は半白形で, ‑T‑rj形あるいは融食形の 石英が周囲に品出し集斑をなしているように見える.

石基は完品質で微花南岩質で石英・斜長石が口立っ.

一部に微文象組織(micrographic texture)が見られる.

また気泡も見られるが方解石か充填していることが多い.

D7 単斜輝石安山岩(奈良県川上村中奥)

斑晶は斜長石 ォ0.1‑3.3mm),単斜輝石 KO.1‑2.8 mm),少量の不透明鉱物(0.2mm程度)からなる.斜長石 は自形で長柱状ないし立方体状であり,斜長石・単斜輝 石と集斑をなす.またアルバイト双晶のものが多く,累 帯構造も見られる.一部には角の取れた融食形のものが 且られ,またガラス包有物を含んでいるものがある.早 斜輝石は白形〜半日形で長柱〜短柱状である.一部は融 食形であり,双晶を示すものもある.比較的大きなもの は斜長石を取り込んでいるものがあり,オフイティック 組織(ophitic texture)の断片であるように見えるも のかあるが,その1一部は緑泥石化Lている.

石基は半品質間粒状組織であり,気泡が多く見られる.

石基鉱物としては短冊状でアルイバイト双晶を示す斜長 石,長柱状の単斜輝石,粒状ないし針状の不透明鉱物, および変質したガラスからなる̲ 斜長石には急冷結品に

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14 fi! IH 穣 陣

特徴的な形態を示すものが見られる.

D20 単斜輝石安山岩(奈良県吉野町樫尾)

斑晶は斜長石CO.9‑2.8mm),単斜輝石(0.5‑1.3mm), 少量の不透明鉱物ォ0.2‑0.4mm)からなる.斜長石は

自形・長柱状でアルバイト双晶を示すが,累帯構造は顕 著でない.単斜輝石は自形〜半白形で長柱状〜短柱状で ある,集片双晶や累帯構造を示すものがあり,砂時計構 造をもつものが見られる.一部は集斑状である.不透明 鉱物は四角形,針状,あるいは不定形である.

石基は完品質なサブオフィティック組織で,長柱状の アルバイト双晶を示す斜長石や単斜輝石からなる.気泡 が見られるが方解石・緑泥石に充填されている.花梅岩 起源と考えられるゼノリスが多く見られる.

D30 無斑品質安山岩(和歌山県花園村臼谷)

流理の発達した完晶質石基からなる.石基に含まれる 鉱物は,自形短冊状でアルバイト双晶・弱い累帯構造の 見られる斜長石,針状・長柱状・短柱状の全て緑色の鉱 物に変質した単斜輝石(?),粒状〜四角形の不透明鉱物 からなる.

D31単斜輝石斜方輝石デイサイト(和歌山県高野町相 ノ浦)

斑晶は全て微斑晶で,斜長石ォ0.1‑0.5mm) 斜方 輝石(0.2‑0.6mm) 変質した単斜輝石と思われる鉱物 (約0.3mm)からなる.斜長石は自形短冊状で,アルバイ

ト双晶・弱い累帯構造を示す.斜方輝石は自形棒状であ る.変質した単斜輝石と思われる鉱物は自形で八角形で ある.

石基は流理の顕著な隠微品質石基であり,填問状組織 をもっ.気泡も見られるがその一部は方解石に充填され ている.

D40 含白雲母黒雲母流紋岩質凝灰岩(和歌山県中辺路 町二越峠)

含まれる鉱物・岩片は石英・カリ長石・斜長石・黒雲 母・白雲母・不透明鉱物・泥岩・貢岩・砂岩である.カ リ長右はバ‑サイト構造や微斜長石構造が発達している.

斜長石にはアルバイト双晶か発達し,一都にはミルメカ イト構造も見られる.黒雲母・白雲一触ま変形か著しい.

少量の不透明鉱物は多角形である.いずれも粒径は2mm 以FIで,半白形が多い.マトリックスには少量のガラス が認められる. Y字形のものも認められ,いわゆる bubble l.vail形のガラス片と考えられる.

参照

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