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雑誌名 奈良教育大学紀要. 自然科学

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

Dioscoreaceaeの粘質物について?

著者 池尾 和子

雑誌名 奈良教育大学紀要. 自然科学

巻 15

号 2

ページ 19‑25

発行年 1967‑02‑28

その他のタイトル Mucilaginous Substances of Dioscorea batatas DECNE. fo. tsukune MAKINO

URL http://hdl.handle.net/10105/3295

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奈良教育大(自然)第15巻 昭和42年 Bull. Nara U.Educ. (Nat.), Vol.15, 1967

Dioscoreaceaeの粘質物について Ⅱ

池  尾  和  子 (奈良教育大学化学教室)

(昭和41年9月30日受理)

Mucilaginous Suもstances of Dioscorea batatas DECNE.

fo. tsukune MAKINO Kazuko IKEO

(Department of Chemistry, Nara University of Education, Nara, Japan) (Received September 30, 1966)

1. There are included two kinds of combination of K+ in the mucilaginous substances of Dioscorea batatas Decne. fo. tsukune MAKINO.

2. The liberation of K+ from the mucilage is suppressed in the presence of Na+ and little aHected by anions.

3. The composition of the mucilaginous substance obtained by ethyl alcohol is C: 37.20, H: 6.02, N : 2.80 and K: 5.75% and, in addition, it contains minerals such as S, P, Ca, Mg and Na.

4. There was identified glucosamine, of which the content was the richest in the mucilage obtained by ethyl alcohol. Similar tendency was observed with the content oJ uronic acid.

5. The anthocyan included belongs to Delphinedin type.

緒      昌

前報1において"つくねいも(Dioscorea batatas DECNE. fo. tsokune MAKINO)"の粘 質物の粘性が,含有されているKに関係があるのではないかと推定された.そこで,粘質物中の Kの挙動その他につき研究を進めたので,ここに報告する.

実 験 と 結 果

1.試料の調製‑‑‑Me*1, Mh!℡及びMa*2の試料の調製法は前報の通りである.

1.前報の=Dioscoreaceaの粘質物日を第I報とし今回を第I報とする。

2. *1*2 *3Me,Mh及びMAとは前報で報告したりつくねいもりの磨砕粥状物を3倍容の 水中で膨潤させ,一昼夜放置後,遠心分離により,上意液を分離し,その上背液を三分 し,夫々エチルアルコール,塩酸及び酢蕨を添加する事により,それぞれの粘質物の沈 殿を得るo各沈殿をェテルエーテル及び,エチルアルコールで数回洗浄し真空乾燥させ た粘質物の粉末をM官, MH及びMAの省略記号をもって表示する0

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池 尾 和 ‑J‑

2. Me, Mh及びMAの中のKの含有量は,前回の報告の通りであるが, ME中のKの含有量が MH及びMA中のKの約10倍量であった.これは, MH及びMAを調製する過程において, 沈毅剤として塩顧及び酢酸を用い,それぞれの沈殿剤の酸性により,粘質物中のKが,上境 '液中に遊離するものと推定された.そこで,新たにME及びMHを調製し,その際ME及び

MHの沈殿を遠心分離して得た際の上達液中のKを炎光分光分析により定量した. MEの上 澄液中のKの含有量は260mg/7でMI壬の上澄液中のKは2600mg/7であった.

3. Meの0.5gづつを10mlの水に入れ,一方は常温で,他方は徐々に加熱し沸騰水中で20分 間擦拝放置させた.両者共充分に膨潤させた後,常温のものと,沸騰させたものを,それぞ れ遠心分離し,各上位液中のKをカリボールによる重量分析により定量した.熱水中のKの 含有量は,常温で膨潤させたものの約1.5倍の含有量を示した.

4. 1M‑KCl溶液中にMEを加えて膨潤させ,充分放置した後,再び遠心分離により上澄液を 得た.叉同じくIM‑NaCl溶液中にMEを加え,上記と同じ様な操作で上澄液を得た.

1M‑KCI溶液中のK含有量と,MEを1M‑

表1.各溶液中のKの含有量

K の 濃 mEq/ 」

lu‑Kcimm 1M‑KCl溶液中 せf'ヒ濡鞭 1M‑NaCl溶液

にMEを膨潤さ  984.50

lM‑NaCl溶液中MEを膨潤 た上澄液

表2(a). 0.4%水溶液中のKの含有量

\\I Kの濃度 mEq//

3.05

NaCl溶液中で膨潤させた上澄液中のKと を比較定量した.又IM‑NaCl溶液中のK含 有量とIM‑NaCl溶液中にMEを膨潤させ た上澄液についても,同じく炎光分光分析 により, Kの含有量を比較定量した.結果 は表1の通りであった.

表2(b). NaOH溶液中のKの含有量

\\」 Kの濃度  mEq//

ME l孟外NaOH溶液中 0.20 Mu j諾N‑NaOH溶液中 0.051

・かではMHは膨潤せず器Nでやっと膨潤した 5. Me及びMHを共に0.4?水溶液として

テフロンのホモジナイザーで乳化し,遠心分離により.その上意液を得,溶液中のKを炎光 分光分析により定量した,更にNaOH水溶液中に膨潤させ,上記と同じく,それぞれ上澄夜

中のK含有量を定量した.結果は表2の(a),(b)の通りであった.

6. Me, Mh及びMAの赤外吸収スペクトルを, KBr錠剤法及びNujol‑Mull法で測定したが 三つの粘質物中の構造上の特筆すべき相異点はみられなかった.ペプテッド結合としてのア ミドの第I, Ⅱの吸収,カルボン懐,その他会合のOH,遊離及び会合したNHの共通した 吸収が鎮著に読み取れた.

6. 1.粘質物のアセテル化:Mh, Me及びMAの各試料を0.5gづつ秤量し,アンプルに挿 入し無水酢酸2mlを添加し,各アンプルを封じた. (助剤として適当なものが得られ ず,今回は無水酢懐のみ使用)各粘質物につき1‑5時間まで1時間毎にアンプルの加 熱時闇を変え,夫々のアセテル化物を得た.加熱後,ガラスフィルターで渡過し,水洗

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〇ioscoreaceaeの粘質物について Ⅱ 21

後,更に酸性を除去する為に,漣過残査に少量の水を加え,コロヂオン膜中で透析を行 ない後,真空乾燥して,それぞれの粉末を得た.

6.1.2.各粘質物のアセテル化物の1‑ 5時間の毎1時間間隔でアセテル化された試料各々に つき,赤外吸収スペクトルを測定した. 3時間以上アセチル化された試料と3時間アセ テル化された試料の赤外吸収スペクトルは殆んど差異がなく, 3時間でアセテル化は, ほぼ完了したものと判定した.

6.1.3.各粘質物の3時間アセチル化されたMe, Mh及びMA中のKの含有量を炎光分光分 析により定量するも,いづれも含有量は0値であった.

7.前報の中でME及びMI王のそれぞれの灰分中のKの含有量が,灰化前より増量した結果と なったのは,灰化が,不充分であったと,一応考えられたが,これにつき本実験を行った.

前報の灰化実験の最初に白金ルツボを使用するも,粘質物は白金ルツボを犯すので,以後磁 性ルツポを使用した.使用したルツボは◎即のものである.

灰化温度につき400‑C以下で灰化させないとKやNaが揮発するかと考えたが, 400oC以下 では灰化せず700oCでやっと灰化され,白い灰分となった.使用した電気炉は,富士電機工 業株式会社製品2. 6KW型変圧酎寸のCH‑1050型である.

7. 1.前報と同じ磁性ルツボで実験した.前掛こおける灰化は,灰化温度及び時間を定量的 に取り扱わなかったので,今回は灰化温度を700‑C, 800oC, 900oC及び1000oCとし て● 灰化時間も1時間及び2時間とLTz. Me, Mh及びMAの各温度に於ける灰化後

の灰分の重量は7000 ‑1000‑Cの間では(0.1%以内の差)殆んで変らなかった.

7. 2.次に灰分中のKの含有量の定量法につき検討した.磁性ルツボは前記と同様◎

印を使用した.

既知のKを含有する無機及び有機化合物について 400oC, 500‑C, 600‑C及び700oC で各検体を灰化させた. 500oCで灰化させた灰分中のKの含有量は,高温の為かKの含 有計算値より減少し,逆に600oC以上では灰分中のKの含有量は500oCより高温にもか かわらず, Kの含有量は計算値よりも増量した.これはルツボの和英中のKが潜出して

来るものと考えられた.そこで磁性ルツボによる灰化後の灰分中のKの定量は,不可能 と思われた.上記のKの定量はカリボールによる重量分析による.

次に粕薬に関係のない石英ルツボを使用してMEを灰化させた.

7. 3‑石英ルツボ中で, MEを700oCと800oCでそれぞれ2時間灰化させた.結果は800 ocで灰化させた灰分中のKの含有量は,同じく700‑Cで灰化させた灰分中のKの約音量

に等しかった.

8.無機成分:成分元素としてC,H,O,N,S及びPはすべての粘質物について共通に検出さ 表5(a).粘質物中の無機イオン

\\I検出された無機イオン

Me Fe二Ca ,Mg ,Na二K+

3 メ‑     2 ‑‑ト     JI

Mh Fe ,Ca ,Na ,K Mg2'⊥はMEにのみ顕著であった。

表5(b).粘質物の灰分中の無機イオン

\J検出された無機イオン

3 ‑‑ト     2 +     ⊥    ‑ト

Me Fe ,Ca ,Na ,K

Mh iFe ,Ca二K⊥

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22 池 尾 和 子

れた.尚ME及びMff中の無機イオンとしては,表5(a)の通りであった.また ^それぞ れの灰分中に検出された無機イオンは表5(b)の通りであった. (痕跡は認められるも明ら

かに検出されなかったものは除く)

9. Nの定量:セミミクロケルダール法により,ME及びMH中よりそれぞれ2.80%及1.12%

LjN‑l'Tt吊しナ∴

10.ウロン酸の童: Tollens反応(ベンゼン層の吸光度測定)及び フロログルシン法等によ り定量した.ウロン酸の含有量は共にMEが一番多く,次にMa, Mhであった.

(定量値に多少の差異が見られたが,上田及び佐々木2の報告中のウロン酸の定量値につき 炭顧法とフロログルシン法とでも,定量値の差が大きいとあった.ウロン酸の定量法につい ては,今後の検討を進めたい)

ll.ゲルコサミンの定量: Elson‑Morgan法により(530mju.の吸光度測定)定量を行った.

結果は表6の通りであった.尚アミノ糖の定量実験前に,アミノ酸の阻害を考慮し,あらか じめトリクロ‑ル酢酸溶液で除蛋白処理後 Elson‑Morgan法により定量するも,グルコサ ミンの吸収は殆んど見られなかった.

そこで除蛋白処理を省略して得た結果が表6の通りであった. (従来阻害物と考えられていたア ミノ酸,ウロン酸其の他ベント‑ズやへキソ‑ズ等が温存しても呈色に阻害を起さないと考えられた. ) 12.糖分の定量:アンスロン法及びソモギ‑ネルソン法により,全糖量及び還元糖の定量を行

った.結果は表6の通りであっtz. (前報のME中のアンスロン陽性物質81.4%はMEに含有き れるグルタミン酸等の脱アミノ処理を省略LT=ための吸収値のずれと推定された)

表6.粘質物中に含有される全糖量,還元糖及びゲルコサミン

\  r 全 糖 量 L 還 元 糖:ゲルコサミン ME ‑ 148.0 mg/g 10.5 mg/  52.0 mg/g Mh  244.0 mg/gI 28.0 mg/g  33.0 mg/g

Ma 109.0 mg/ 22.0 mg/g  26.5 mg′g

13.アミノ酸の定性:Me, Mh及びMAを先づNagarse分解を行い,次に酸及びアルカリ分 解を行った溶液より,T.L.C.法 P.P.C.法,電気泳動法及び各特性反応より,アミノ酸の 定性を行った.結果は表7の通りであった.

表7.粘質物中に含有されるアミノ酸

・  .蝣i r t' <‑        、

ラ二ン,バリン,ロイシン,イソロイシン ・t " ン,スレオニン,メチオニン,フェ二

‑ルアラ二ン,ト・)プトファン,グ.)シン,アスパラギン酸,グルタミン酸,リジン,ヒ スチヂン,オルニテン,アルギニン,プロリン

アラニン,バリン,ロイシン,メチオニン,グリシン,セリン,シスチン,アスパラギン酸, グルタミン酸,リジン,オル二チン

アラ二ン,バリン,ロイシン,メチオニン,グリシン,セリン,システン,アスパラギン酸 ゲルタミン懐,リジン,オルニテン,プロリン

14.前報において粘質物中のアントシアンが検出されたと報告したが, MHを塩酸加水分解し た際得られたアントシアンを抽出定性し,紫外線吸収スペクトル及びP.P.C.法によりデル

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Dioscoreaceaeの粘質物について Ⅱ 23

フィニディン系のアントシアンであると同定された.尚アントシアン中のメトキシル基を, クロモトロピック酸反応によるスポット試験を行うも,結果は陰性であった.尚アントシア ン中にKの含有きれている事は前報の通りであった.

考    察

1.前報に述べた様に"つくねいも"の粘質物をエチルアルコールによる粘質物(Me)塩酸に よる粘質物(Mh)及び酢酸による粘質物(Ma)と三種調製した.この三種の粘質物につ いて,水に対する反応を検べた結果, MEは水中に膨潤し,粘桐な液となるのに反し, Mh は水に膨潤し難く, MAも水中では殆んど膨潤しなかった.然しMH及びMAを水と反応 させる際,少量のアルカリ(KOH等)をPH8位になる様に添加すれば, MHもMAも 溶液となり,それ等の溶液は粘性をもつようになった.一方, Me, Mh及MAのKの含 量を定量した結果は前報の通りで, MEはMHやMAの約10倍のKを含有していた.

以上の事より, MEがMHやMAに比べ 水中で膨潤し,粘性を有するのは何かこのKの 含量及びKの結合様式に関係があるのではないかとの推定のもとで,本実験を行った.

2.先づ"つくねいも"より, ME及びMHを得る際の遠心分離時のそれぞれの上達液中の Kの含有量は, ME及びMH中のKの含有量に反比例し, 1対10の値であった. MH及び MA中のKの含有量がMEに比べて少いのは,沈殿剤(塩酸及び酢酸)の酸性の為に, Kが 上澄液中に遊離きれ,粘質物としての沈殿物中に含有されなかったと推定されたが,この考

え方の正しい事が裏付けられた.

3. Meの水溶液中に溶出されたKの量は,熱水中で検出されたKの量に比べ,少量であった.

4. Mh中に含有されるKは,懐で分解されずに沈殿したもので,必ずしもイオン状態のもの とは判定し難く,糖蛋白としての粘質物(高分子化合物)中に包接化合物の様に, Kが包接 されているのか,または,高分子中にKを包接する空間があり, Kを外部より包接(又は吸着) するかという推定で次の実験を行った.

1M‑KCl溶液中に, MEを膨潤させ,その上澄液中のKを定量し, 1M‑KCI溶液中のKの含有 量を比較した.結果は, MEの膨潤液中のKの含有量が増加した.また同様に, lM‑NaCl溶 液中にMEを膨潤させ,上記と同様にIM‑NaCl溶液中のKと, MEを膿潤させたNaCl浴 夜中のKとを定量したが NaCl溶液中には, Kは共に検出されなかった.

1M‑KCl溶液中でMEを膨潤させた結果,元の1M‑KCl溶液中のKよりKの含有量が増加し た実験結果より次の事が考えられた.一つは高分子中にKは少量包接されたが, MEが多量 の水分を吸収した為に相対濃度が濃くなったと考えられ,他方では, ME中ではKを保持す る力が強く, Kの放出も包接(又は吸着)も行われず,ただMEがKCl溶液中の水分の み吸収したとも考えられた・故にこの事実からのみでは何の判断も出来なかった.更に1M NaCl溶液中では, Kイオンは全然検出されなかった.この事は, 3と同時に5の中で考察

・i'iI'1

5・次にMEとMHの水及びNaOH水溶液に対する,膨潤の様子とKの定量を行った.水に膨 潤しにくいMHは,約0.4",水溶液の濃度で,やっと膨潤とも,分解ともわからない状態に

なるので,共に0.4%水溶液中のKの含有量を比較した.水と反応して膨潤しやすいMEでも ,含有量の約音量のKを溶液中に放出したに止り, MHは全含有量Kの約15%のKを放出し

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24 池 島 和 子

たにすぎない.またNaOH水溶液に対するMEとM壬壬の反応は, MEはHoN‑NaOH水溶 液で膨潤するもMEはVsoN‑NaOH水溶液中では変化がなく徐々にNaOH水溶液の濃度

を増し, i%oN‑NaOH水溶液にやっと膨潤したので表2(b)の様な結果となった. ME はi/50N‑NaOH水溶液中では水溶液中に放出したKよりも,ずっと少量のKを溶出してい

るにすぎず, MHはL7/50NのNaOH水溶液で膨潤したが, y5oN‑NaOH水溶液に比べて, アルカリ性も強いと思われているのに水溶液中に放出したよりもやや少量のKのみを放出し たに止まる.以上3,4及び5の結果を総括し,もう一度検討すれば,次の事が明らかにな った. MEとMnが水と反応した際, MEは含有量の約50%のKを上澄液中に放出するも,そ の残りの約50%のKは,膨潤した粘質物中に保持され,遠心分離した際も,上澄液中には放出 きれなかった. MHについても,水と反応し,約15%のKを水中に遊離させるも,残り約85%

のKは, MHの粘質物中に保持きれている事より=っくねいも"の粘質物中のKは同じ型で 結合しているのでなく,一部は放出されやすい型で,他方は強く吸着保持(叉は包接)され

ている型の二種類があると思われた.更にKCl溶液中にMEが膨潤し,上澄液中のKが, 元のKCl溶液中のKより増加している事より, KがME中に少々包接されたか,また全然包 接されなかったか不明だと前項で述べたが,次のNaCl溶液中とNaOH溶液中のME及びMil の挙動を眺め,次の事が明らかになった. Naイオンがあれば,粘質物中のKの放出が抑制

きれる. NaCl溶液中ではKは全然検出されず, NaOH溶液中でも,水中よりもKの放出 は阻害きれた.そこでNaイオンがあれば,粘質物中のKは,溶液(Na+を含む)中には放 出しないか,又は少々しか放出きれない,この時 陰イオンのCl やOH には余り関係がな いようであった.

6. Me, Mh及びMAの赤外線吸収スペクトルは,三種の粘質物の構造上の相違を知る為に 吸収を読み取ったが,差異は認められなかった.今後アセテル化した粘質物(Kを含有しな い)をKイオンを含む溶液中に浸漬し, K十の吸着が起るか,又K十の吸着がおこれば,その K十を包接した(叉は吸着)アセテル化物を乾燥後,再び水溶液中に浸潰し,その時,水溶

液中にK+が放出されるか,又は全然Kが放出されない場合は, Kが包接保持されたと推定 出来る事になり,今後の研究に期したい.

7・ウロン酸は本実験結果より,粘質物全体に含有きれている事が判った.ウロン酸の‑COOH のHがK(叉はNa)と置換し‑COOKが粘性に関係があるのではないかと推定していたが, ME中にウロン酸が一番多量に含まれていた事は,いくらかこの推定にプラスの結果を暗示

した.尚,鈴木等3の研究によれば,タメイモの粘質物の粘性の低下防止にカプリル憩ソー ダ‑や,サルチル酸ソーダ‑が効果があると報告されているが,それ等の塩中の‑COONa が粘性に関連があるのか,またはNaイオンがKの遊離を抑制する為に粘性の低下防止に効 果があるとも考えられた。

8・実験結果によれば, MEにおいて,ゲルコサミンの含有量が一番多かった. MEの加水分 解液を除蛋白し,その上澄液中よりは,グルコサミンが陰性であった,この事はゲルコサミ

ンが粘質物中で遊離の状態で存在するのではなく,蛋白部分と結合した状態にあると推定さ れた.

9.前報において粘質物中にアントシアンの存在を推定し,本実顔に於ては,それがデ)i/フイ

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Dioscoreaceaeの粘質物について Ⅱ 25

ニディン系のアントシアンと同定した.高橋悌蔵4の報告申,一年芋の塩酸による蛋白質(粘 質物を含む)の沈殿物を生成する過程において,呈色する物質は,同じくこのアントシアン 系の色素と思はれた.

10. Kの定量の場合,灰化温度は400oC以下でないと,定量が不可能である事が判った.

総    括 1.粘質物中のKの結合状態には, 2種類ある.

2.粘質物中に含有されているKは, Naイオンによって遊離が抑制される.

3.エチルアルコールによる粘質物の組成は, C:37, 20%, H:6.02%, N:2.80%及びK:5.75

%で,其の他に無機成分として, S, P, Ca, Mq及びNaを含む.

4.粘質物中にゲルコサミンが確認され,その含有量は,エチルアルコールによる粘質物中に一 番多い.ウロン酸含有量も同様の傾向を示す.

5.含有アントシアンは,デルフイニディン系である.

終りに本研究に御助言をいただき,炎光分光分析の便宣をお与え下さった奈良県立医科大学鳥 居健三教授,元素分析及び赤外線吸収スペクトルを実施して下さった京都大学農学部三井哲男教 授並びに中島稔教授,赤外線吸収測定に御協力いただいた奈良女子大学理学部竹村富久男助敬 撹,並びに河原重信先生に感謝の意を表します.

引 用 文 献 (1)池尾 和子:奈良学芸大学紀要12 15 (1963)

(2)走冒栗壷搾・・薬学76 745 (1956)

(3)鈴木周一他: EI本化学会第1時会98 (1965)講演予講築 く4)高橋 悌蔵:濃 化4191 (1928)

参照

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