博士(医学)堤 明人 学位論文題名
Regulation of protein kinase C isoform proteinsln phorbor ester‑stimulated Jurkat T lymphoma cells.
( ジ ャ ー カ ッ ト T細 胞 中 の プ 口 テ イ ン キ ナ ー ゼC(PKC) アイ ソ フォ ー ム蛋 白 のフ ォ ―ボルエ ステル(PMA)によ る調節)
学位論文内容の要旨
[目的] プロテイン キナーゼC(PKC)の活性化はT細胞活性化の過程中の重要な ー ステ ッ プで あ る。 イン ターロイキ ン2(IL2)レセ プターの発 現、IL2の 産生、
細胞増殖 の開始などにPKCの活性化が必須であることが知られている。一般的に、P KCは細胞の細胞質分画に存在し、その活性化にともない細胞質分画から細胞膜分画に 移動し、その後プロテアーゼにより分解されると考えられている。PKCは実際には単 一の酵素ではなく、少なくとも8個の異なるアイソフオームよりなり、それぞれロヽpi、 pn、ア、d、c、ぎ、ワと呼ばれている。これらのアイソフオームはカルシウム・脂 質依存性、各種細胞における分布などに差異があることが知られており、免疫系におい てもそれぞれのアイ゛ソフオームが独自の役割を果たしている可能性がある。そこでPK Ca、p、 ア、ぷ、c、fに特異的な 抗体を用い て、ポピュ ラーなヒトT細胞のモデル であるジ ャーカット 細胞におけ るPKCアイ ソフオーム の発現とPKC活性化物質フオ ーボルエステル(PMA)による各アイソフオームの挙動をウエスターンブロット法にて検 討した。
[方法]細胞は主にJurkatT細胞を用いた。一部Bmb/cマウス胸腺細胞を用いた。細胞 は蛋白分解酵素阻害剤存在下にVonexにより破砕し遠心分離により蛋白質を分離した。
蛋白濃度測定後、同一量にてポリアクリルアミドゲル電気泳動をおこない、ニトロセル ロース膜に転写した。これに抗PKCアイソフオーム抗体を反応させ、二次抗体を用い てバンドを可視化した。
[ 結 果] 図1: ウ サギ 免 疫抗PKCa、d、 £ およ び モ ノクロ、ー ナル抗PKCp抗体 の特異性をウエスターンブロット法により示す。ジャーカット細胞よりの蛋白抽出物に て ロ ー み は80kD、cは90kDにノ ヾ ンド カq食 出 され た 。PKCアは 検 出さ れ なか っ た。 図2:抗PKCf抗体 の特異性を ウエスターンブロット法により示す。購入した 抗体では2本の特異的バンドがみられるが、我々の施設でアフイニテイー精製をおこな って得た 抗体では1本のバンドがみられる。検討の結果、この1本のバンドのみがPK Cぎであることがあきらかとなった。
図 .3:PMA処 理 によ .りPKCロ、p、 おおよびcは用量依 存性に減少 するが、PK Cfは 影 響 さ れ な い 。1ー50nMのPMAと と も に ジ ャ ー カ ッ トT細 胞 を 培 養 し たの ち、細胞より蛋白質を抽出しウエスターンブロット法によりPKCアイソフオームを検 出 し た 。PKCさ お よ び £ はPKCロ お よ びpと比 較 する と ややPMA抵 抗 性の 傾 向を 示した。PKCfはPMAによる減少はまったくみられなかった。
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図4:PKCアイソフオーム蛋白の細胞内における分布。ジャーカット細胞を細胞質 成分と細胞膜成分とに分画したのち、蛋白質を抽出し、ウエスターンブロット法により PKCアイソフオームの分布を検討した。図に細胞膜分画/細胞質分画の比を画アイソ フオーム別に示す。PKCぷは他のアイソフオームに比し細胞膜分画に多く分布し、ま たPKCcにも 同様 の傾向 がみ られ た。PKCぎは ほぽ全 量が 細胞質分画に存在した。
図5: 長 期PMA処 理 に よ るPKCア イ ソ フ オ ー ム 蛋 白 の 変 化 。50nMのPMA存 在下にジャーカット細胞を長期にわたり培養し、その後細胞質成分と細胞膜成分とに分 画したのち、蛋白質を抽出し、ウエスターンブロット法に.よりPKCアイソフオームの 分 布 を 検 討 した。PKCaおよ びpはほ ぼ完 全に消 失し た。PKCおお よぴ £は細 胞膜 分画にわずかに残存している。図3に示した短期培養の結果と同様、PKCづおよぴ£
はPKCaお よ びpと 比 較 す る と や やPMA抵 抗 性 の 傾 向 を 示 し た 。PKCぎ は 変 化 し なかった。
図 6: PMA処 理 に よ るPKC蛋 白 の 移 動 。 300nMの PMA処 理 に よ るPKCア イ ソフ オー ムの 挙動を ウエスターンブロット法により検討した。PKCロ、p、cはP MA刺激 によ り速 やかに 細胞質分画より細胞膜分画に移動した。―方、PKCdおよぴ fは移動しなかった。
図7:よ り生 理的 な刺 激であ るPHA刺 激に よる 影響 を検討するためPHAあるいは 抗CD3抗体刺激によるジャーカット細胞内カルシウム濃度の測定をおこなった。抗C D3抗 体 に よ る 最 大 の 細 胞 内カ ル シ ウ ム 濃 度上 昇は5メg/mlで得ら れた が20,ig
/mlのPHA刺激より濃度上昇の程度は低かった。
図8: 図6と同様 にPHA刺 激に よるPKC蛋白 の移 動を検 討し たが 、各 アイソ フオ ー ム と も 移 動 は あ き ら か でな か っ た 。 抗CD3抗 体にて も同 様の 結果 であっ た。
図9:PMAあ る い はPHA刺 激に よ る ジ ャ ー カ ッ ト 細 胞 中のPKC活 性 の 挙 動 を検 討 し た 。PHA刺 激 に てPMA刺激 よ り 軽 度 で はあ るが あき らか なPKC活 性の細 胞質 から細胞膜分画への移動が検出された。
図10: マ ウ ス 胸 腺 細 胞 を用 い て 図6と 同 様に 高濃度PMA刺 激によ るPKCア イソ フオーム蛋白の挙動を検討した。ジャーカット細胞と同様にPKCa、pおよぴ£の速 や かな 移動 が観 察され たが 、PKCfは移 動し なか った 。マウス胸腺細胞にはPKCさ は検出されなかった。
[ 考 案 ]PMA刺 激 に 対 しPKCaお よびp蛋 白 は ほ ぼ 従 来PKCに っき 文 献 上 記 載 されているとうりの挙動を示した。一方PKCお、c、fはそれぞれ異なった挙動を示 した。PKCぶは非刺激時にすでに細胞膜分画に多く存在し当初から活性化されている 可能性が考えられた。またPKC£も他のアイソフオームと比し細胞膜分画に存在する 比 率が 高く 、そ の機能 が注目される。PKC£はPMA刺激に耐性であると報告されて いるが今回の結果では他のアイソフオーム同様、PMA刺激により速やかに細胞膜分画 に移動したのち蛋白量が減少しており、以前の報告と異なっている。PKCfは構造上 PMA結合部位を持たないことが報告されており注目されている。ジャーカット細胞、
胸 腺細 胞の 両者 におい てPKCfはPMAに影 響さ れずフ オー ボルエステル以外の物質 により活性化される可能性が考えられた。このようにPKCのアイソフオームがそれぞ れPMA刺激により異なった挙動を示すこと、また非刺激状態での存在部位が異なって いることはこれらアイソフオームがりンパ球活性化の過程においてそれぞれ独自の役割 を果たしていることを示唆する。最近我々はマウス胸腺細胞、脾T細胞、B細胞でPK Cアイソフオーム蛋白の発現量が異なることを観察しており、このことも同様の可能性 を示すと考えられる。
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
Regulation of protein kinase C isoform proteinsln phorbor ester‑stimulated Jurkat T lymphoma cells.
( ジ ャ ー カ ッ ト T細 胞 中 の プ ロ テ イ ン キ ナ ― ゼ C(PKC) ア イ ソ フ ォ ー ム 蛋 白 の フ ォ ー ボ ル エ ス テ ル (PMA) に よ る 調 節 )
PKCの 活 性 化 はT細胞 活 性化 の 過 程中 の 重要 な ー ステ ッ プ であ る 。イ ン タ ーロ イ キ ン2(IL2) レ セ プ タ ー の 発 現 、IL2の 産 生 、 細 胞 増 殖 の 開 始 な ど にPKCの 活 性 化 が必 須 で ある こ とが 知 ら れて い る。 一 般 的に 、PKCは 細 胞 の細 胞 質 分画に 存在し、
その活 性化にと もない細 胞質分画 から膜分画 に移動し 、その後 プロテアーゼにより分解 さ れ る と 考 え ら れ て い る。PKCは 実際 に は単 一 の 酵素 で は なく 、 少な く と も8個の 異 なるアイソフオーム,よりなり、それぞれa、pi、[3II、y、6、£、ぎ、ワと呼ばれている。
これら のアイソ フオーム はカルシ ウム・脂質 依存性、 各種細胞 における分布などに差異 がある ことが知 られてお り、免疫 系において もそれぞ れのアイ ソフオームが独自の役割 を 果た し て いる可 能性があ る。本研 究ではP KCoc、p、y、6、£ 、ぎに特 異的な抗体 を 用 い て 、 ポ ピ ュ ラ ー な ヒトT細 胞 の モデ ル であ る ジ ャー カ ット 細 胞 にお け るPKCア イ ソ フ オ ー ム の 発 現 とPKC活 性 化 物 質PMAに よ る 各 ア イ ソ フ オ ー ム の 挙 動 を ウ エ ス タ ーンブロット法にて検討した。
I. 材料と方 法
細 胞は主にJurkatT細胞を用 いたが、一部Balb/cマウス胸腺あるいは脾細胞を用いた。細 胞 は蛋白分解酵素阻害剤存在下にVortexにより破砕し遠心分離により蛋白質を分離した。
蛋 白濃度測 定後、同 一量にてポ リアクリ ルアミド ゲル電気 泳動をおこない、ニトロセル ロ ー ス 膜に 転 写し た 。 これ に 抗PKCア イ ソフ オ ーム 抗 体 を反 応 さ せ、二次 抗体を用 い て バンドを 可視化し た。
II. 結 果 と 考 察
1) ジ ャ ー カ ッ トT細 胞 に お い て 、PKCa、p、6、eお よ び ぎ が 検 出 さ れ た 。PKCyは 夫
紀 雄 隆 知 輝 池川 橋 小皆 石 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副
検出されなかった。
2)PKCaとpは 主に細 胞質 分画 に存 在しPMA刺激に より 速や かに 膜分画 ヘ移 動し 、 16時間後にはほぽ消失した。
3)PKC8と £ は よ り 大 き な 部 分 が 膜 分画 に存 在し 、PMA刺 激に よりPKCeの 膜分 画 への移動が見られた。両アイソフオームとも16時間後には蛋白量の減少が見られた。
4)PKCぎ は 主 に 細 胞 質 分 画 に 存 在 し 、PMA刺 激 に よ る 影 響 を 受 け な か った 。 5)PMA存 在下 に長期 にわ たル ジャ ーカッ ト細 胞を 培養 した場 合PKCaお よびDは ほ ぼ 完 全 に消 失 し た 。PKC8お よ びcは 膜分 画に わず かに 残存し てい た。PKCぎは 変 化しなかった。
6)PHA刺 激 に よ っ て は 、PKC活 性 の 膜 分 画 への 移 動 は 観 察 さ れ た が 、PKC蛋 白 の移動は各アイソフオームとも検出されなかった。
7)マウス胸腺細胞におぃてもほぽ同様の結果が得られた。ただし、PKC8は検出され なかった。
8)マウス胸腺細胞、脾T細胞、および脾B細胞では各アイソフオーム蛋白の発現量が 異なっていた。
PMA刺 激 に 対 しPKCocお よ びD蛋 白 は ほぼ従 来PKCに っき 文献 上記 載され てい る とうり の挙 動を 示し た。一 方PKCさ 、c、ぎ はそ れぞれ異なった挙動を示した。PK Cおは非刺激時にすでに膜分画に多く存在し当初から活性化されている可能性が考えら れた。またPKC£も他のアイソフオームと比し膜分画に存在する比率が高く、その機 能が注 目さ れる 。PKC£ はPMA刺 激に 耐性で ある と報告されているが今回の結果で は他のアイソフオーム同様、゛PMA刺激により速やかに膜分画に移動したのち蛋白量が 減少し てお り、 以前 の報告 と異 なっ ている 。PKCぎは構造上PMA結合部位を持たな いことが報告されており注目されている。ジャーカット細胞、胸腺細胞の両者において PKCfはPMAに影響 され ずフ オーボ ルエ ステ ル以 外の物 質に より 活性 化され る可 能 性が考 えら れた 。こ のよう にPKCの アイ ソフ オー ムがそれぞれPMA刺激により異な った挙動を示すこと、また非刺激状態での存在部位が異なっていることはこれらアイソ フオームがりンパ球活性化の過程においてそれぞれ独自の役割を果たしていることを示 唆する 。更 にマ ウス 胸腺細胞、脾T細胞、B細胞でPKCアイソフオーム蛋白の発現量 が異なることも同様の可能性を示すと考えられる。
III.審査の概要
口頭発表に際し皆川教授よりPKCyの機能および検出されなかった理由に関して質疑 があったが、申請者はおおむね適切な答弁をした。また、副査の皆川教授、石橋教授に よる本研究に関する審査と面接を受け、合格と判定された。
以上により、本論文は学位授与に値するものと判定した。