初等音楽教育における創造性の育成 : 創造的音楽学習の理論と実践をめぐって
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(2) 《. 目. 次. 》 1. はじめに一……一…………一・…一一一一. 第1章. 「創造性」とは何か・…一一・…一………一・・………・…・…一一一一一一一. 第1節 創造性に対する諸定義・…一・一一・一國…一一一・一・一一…・一一一…一…一一. (1} マスローの「自己実現の創造性」・・一…一一……・…一一一……一・一・ (2) 恩田彰の「創造性」の定義…・一…一・・一一・…一……一…一一一一一一・………・・…・. ③ ファンジェの「創造」の定義……一…一・一・一…一一一一…一一…一… (4》 ロジャースの「創造性の三基準」 ・……………一…一一・……一…一・一『. ⑤ トーランスの「創造性」の定義…一…一一・…一一…一……一一一一一一 ⑥ギルフォードの「因子」説一一……・…一一…一一一一一一一一……一一一・・……一…一一 《7)その他の学説一・・一一・・一一一・…・一一…一…一一一…一一一・一一一一一一…一一一一一…一…・一一. (8》大脳生理学的見地から見た「創造性」 ・一・一……一一一…一………一 第2節 創造の過程一………・・一一…一一一…一…・…一一一…一一一一・一一一一・…一・…一………一一. 第1項 ウォラスの4段階一一…一一一一・一一一一一一一一一一一…一一一一…・一一一一一…・一一一一. 第2項 創造の過程と問題解決一一…一……一…一一…一一………一一一一…一……一一 第3節 創造性の開発・育成一一・・一一………一一一…一一……一…一一……・…・一一…. 第1項 幼児・児童期における創造性の発達……一・一一一…・一一一…一 (1》 幼児期一…・一…一一…一一…一一一一……一一…一…一一一・一一…一一一…’…’JJ……一 (2》 児童期一一一…一一……一一一一一…一…一……一…一……一…一一一…一一一…一一一…・一一…一. 第2項 産業界における創造性教育の方法…・一一…一一一一…一一……一 (1》 ブレイン・ストーミング…・一一…一一一國・…一………一一一一一一一……・…一 ② KJ法…一一…一一・…・一…一…一一一一一……一一一…一一………’…r“曹’…一一… (3》 シネクティス………一一一一・一・・一一一…一一一……・一一一…・・……一一…一……“……’. 第3項 学校における創造性教育・一…一・一一一・・一一一一一一一一・………一 第4項 教師の創造性について一一・・…一…一一・…一………一…一一…・………一”一一一 第4節 音楽科教育における創造性一一一…一・一一…一・一…………一…一一一・・一・・一一…一. 第1項 「創造性の育成を目指す音楽教育」の先行研究一一 第2項 音楽の営みと創造二一一一・…一一一一…一一……………・…:…一一一…一…一. 第3項 音楽教育における創造性の意義一一一一・一一一一…一・一一一一一一…. (1}音楽教育の意義と目的一一…一 (2》音楽教育と創造性…・一一一…一……・…一一一・一…一・ 第1章への注…一一…一一一一一…一一一一…・一一一一一一一…・一. 「創造性」の視点から見た日本の音楽科教育の理念の変遷 第2章 明治期……一・一一一…一甲・・…一一一一一…一……一一一一一…・…一・一一…一・…一……・ 第1節 第2節大正∼昭和前期一・一一…一一一一一一一一…一一・・一・……一・一一一一一・一一一・…一一・一 第3節国民学校時代…………一一一一一一一…・一一…一一・…一…・・…一一一・一一……一…一. 第4節 戦後の「学習指導要領」に見られる創造性の理念一一. 第1項 終戦から学習指導要領成立までの過程………一…・…一・一一. 第2項 「学習指導要領」に見られる創造性の理念……・…一 (1》 昭和22年版(試案)・一…一・一…一一一一一…一…一…一一一…一・一一一 (2》 昭和26年版(試案) …一P一…一一・…一一・一一…・一一……一・…一一………・一. 3 4 5 6 8 9. 11 13 15 16 18 20 22 26 27 28 29. 30 30 32 32 33 39 40 40 42 43 44 45 51 53 56 64 69 69 72 72 74.
(3) (3》 昭和33年版(告示) 一…一一一…一一一……一一…一一 (4> 昭和43年版一…一…一一…一一…一・…一一・…一一一一 ⑤ 昭和52年版一一…一一…一一一一一一…一一…一一一一一一一…一…. (6》現行学習指導要領(平成元年版)一一……一一 第2章への注…一一……一・一一・一一一一…一…・・一一一一’・・一一一一…’…一…. 第3章 日本における「創造的音楽学習」の試み 第1節. 「創造的音楽学習」提唱の契機とその背景…一……一・…一. 第1項 従来の音楽教育に見られる諸問題改善の視点から 第2項 「創造的音楽学習」とは一一一一一…一一一一…一一一…一 第3項 「創造的音楽学習」の定着の背景と誘因一…一一一一一一…… (1}. S.N.コールマンの実践一一一…一・・…一……一…一・・一一一一・. (2>. カール・オルフの来日…………一…・…一…一・……一一一一…一一…一・一・…一一. 〈3}. ジョン・ペインター、ピーター・アストン共著. (4}. マリー・シェイファー. rSound and Silencel (1970) 一一一. rThe Rhinoceros in the Classrooml(1975). 第2節. アメリカ,イギリスにおける 「創造的音楽学習」の動向一一一一一……一一. 第1項 第2項 イギリス………一一…・……一一一一一・・…一…・一一……一一一一…一一一一一…一一 「創造的音楽学習」の事例分析一一…一一一……一一一一一…一…一一一・一 第3節 (1》 平成3年度。全日本音楽教育研究会全国大会く鹿児島大会〉 アメリカ…一…・………一一一一………一…_一___一.._一一一一_.一一_.一__.一. (第29回・九賠楽鮪確大会)平成3年11月21日の授業実践より ・一・一… (2》 平成5年度。第31回九州音楽教育研究大会(熊本大会〉. 平成5年11肛7日の授業実践より ……一 第4節 「創造的音楽学習」の実践の意義と問題点一一・一一……一・ 第1項実践における意義一・…・一一一一・一一一一一一一一・・一一一一一一一・一…. 第2項 実践における問題点と改善点一………一……・一一一一…一一一一一一・一・ 第3章への注一…一一一一・一一・一一・一……一一一一’一…’”’一一畠……’…’……一”一一一一”一”一…’”…. 第4章 「創造的音楽学習」の実践試案 第1節 音楽科における創造活動……一一一一・一・一一…一一一一…・…一一一一一一一. 第2節. 「音楽づくり」を主体にした学習過程の構想…・…一一. 第1項 「音楽づくり」のタイプ 一・…・…一一一……・…一一一一一・一. 第2項 「音楽づくり」を取り入れた指導過程の構想一一一一一一一 第3節 指導試案一・…一一一一一一一一一…一一一一一一一………一一一一一・……一一一…・…一一…・一一. 第4章への注・一一一一一一…一一一一一…一……一一…’一’…”一一一一’…………’”…一……. おわりに 参考文献一覧…・………. 資料. 77 78 82 85 92 95 95 98. 101 102 103 104 106 108 108 110 1i5 115 120 124 124 126 136 139 143 143 145 148 152 153 157 165.
(4) はじめに. 近年我が国の科学技術の進歩と経済発展は、物質的に豊かな社会を形 成するとともに、情報化、国際化、都市化、価値観の多様化、高齢化な ど、社会の各方面た大きな変化をもたらすに至った。このような状況の 下、学校教育も、その社会的変化に子どもが対応し得るよう、変容が求 められている。. 我が国が明治以降目指したものは、欧米先進国に追いつくことであっ た。その結果、今日の科学技術の幾つかの分野では世界の最先端に立つ に至った。それだけに、今後は自らの手で新しいものを創っていくこと が更に要求されると考えられる。すなわち、学校教育にも質的な改善が 求められ、個性や創造性の育成が従来以上に重視されてきているのであ る。. そこで、今回の小学校新学習指導要領改訂の基本方針㈲には、 「社会. の変化に主体的に対応できる能力の育成や創造性の基盤を培うことを重. 視するとともに、自ら学ぶ意欲を高めるようにすること」とあり、それ を受けて音楽教育においても、「表現」領域に「音楽を作って表現でき るようにする」という項目を新たに設け、「創造的な活動」の推進が図 られている。また、「創造的音楽学習」と名付けられた新しい試みが提 唱され、その研究や実践例が報告されている。これは、これまでの知識 ・技能を重視した教師主導型の授業によって、 「音楽嫌い」の子どもが. 増えたという反省に立ち、子どもの個性や創造性を重視した子ども中心 の音楽教育への大きな転換を図ろうとする意図のものである。. 筆者も、この「創造的音楽学習」の実践例を、いくつかの先進校の研 究授業で実際に参観した。そこで、楽しそうで生き生きとした子どもの. 一1一.
(5) 姿を発見したことは印象的であった。しかし、同時に、実際に週2時間 の授業でどこまで達成可能かという時間的制約の問題や、楽しさを先行 するあまり基礎的基本的な知識・技能の習得が充分か否か、また、教師 の指導性や授業の目的が明確につかめない、ひいては「創造性」とはい ったい何なのかなど、いくつかの疑問も感じたのである。つまり、この 「創造的音楽学習」は、 「創造性の育成」という理念としては十分に容. 認されながらも、その「創造性」の捉え方が広義で、実践の場において も「創造性」の統一的な理論の体系が完成されているとは言い難いよう に思われる。. 以上のような疑問をもとに、本論文では、 「創造性」とはいかなるも. のかを心理学的あるいは教育学的に分析した上で、今日行なわれている 「創造的音楽学習」にみられる諸問題を指摘するとともに、今後の「創 造的音楽学習」の在り方について模索し、その基礎理念を構築していき たいと思う。. 一2一.
(6) 第1章. 「創造性」とは何か. 今日、科学、技術、教育、芸術などの各分野で、また現代社会に生き ていくためにも、あらゆる角度から「創造性」が重視され、その開発、. 育成の必要が叫ばれている。しかし、この創造性という言葉は、あまり にも広く、漠然と使用されているため、その概念規定には統一的な見解 がなく、非常に多義的である。例えば、日本創造学会においても、それ ぞれの一会員が自分の専門分野で一つの定義をしているが、そこには統 一的な見解が見られないといった状況である。ωこのことが、教育現場 では「創造性」の重要さは認識されながらも、実践に移す場合に種々の 困難な問題を提示する原因となっている。. では、いったい「創造性」とは平なのか。最初に言葉の意味から探っ てみたいと思う。 まず大漢和辞典(翻轍編大修門店)を見ると、創造の「創」は、「はじめ る」、 「はじめて」、 「はじめて造る」とある。したがって、創造には 「はじめてっくる」、 「つくりいだすこと」の意味が当てられている。. 広辞苑(mmm》によれば、創造とは「新たにつくること」、「新しいも. のをつくり始めること」とあり、さらに日本国語大辞典では、「新しい ものを自分の考えや技術などで初めてつくりだすこと」とある。 英語の“create” (動詞)について見ると、“Bring into existance’ (Oxford English Dictionary)とあり、 「無から存在状態を現出する」. ということになる。この語の形はフランス語でも同じである。またドイ ツ語では、創造(動詞)は“schaffen”であり 原意は(木を) 「削っ てある形に整える」である。. 要するに創造とは初めてっくることである。従って「創造性」あるい. 一3一.
(7) は「創造的」とは、上記の性質を備えた状態を指す意味になるであろう。. しかしこのような辞書的な意味では、その応用面での意味内容はわから ない。そこで、この創造性の本質について、心理学、教育学などの面か ら迫っていき、ひいては音楽教育における創造性とは何かを考察してい きたい。. 第1節 創造性に対する諸定義 人間の創造性に関する研究は、必ずしも新しいことではないが、創造 性を学問的な研究テーマとして、心理学的立場から集中的に、精力的に 研究が始められたのは、1950年頃ギルフォード(Guilford J.P,)を 中心として、実証的な研究が開始されてからである。ce} それ以後、創 造性に関して、心理学者たちがさまざまに研究し、定義を下してきたが、. 従来の創造性に関する研究は、もっぱら天才といわれる人々の創造性を 対象としたものであった。しかしマスロー(Maslow,A.H.1959)が、創造. 性を「特別な才能の創造性」と「自己実現の創造性」とに分類したこと によって、一般の人々の自己実現の手段としての創造性も研究対象にな った。マトゥセック(Matussek,P.1974)によれば、 「創造性は遺伝され. た才能にも、環境にも、生育史にもよるものではなくて、万人の持つ自 我の機能である」{Siという。かって、社会が危機に遭遇した時、その危. 難を救い、問題を解決すべく天才が現われ、またその出現を期待する欲 求が強く起こったものである。しかし、社会や文化の構造が複雑化し、 産業や技術革新の速度が早くなるにつれて、単に天才という個人の創造 性に頼るだけでは十分でなくなった。そこで、すべての人々に潜在する 能力としての創造性に、しかもその能力を組織して発揮する創造性に期 待を寄せる傾向が強くなってきたのである。このようにして創造性は、. 一4一.
(8) 学問的にも社会的にも、その解明と開発の問題が要請されるようになっ た。中でも特に、 「自己実現の創造性」は、現在の教育現場でも最も強. く要求されているものの一つである。それ故、本節ではマスローを中心 に、特に教育の場で適用可能な定義を取り上げて考察してみたい。. (1》マスローの「自己実現の創造性」. 先にも触れたように、マスローは創造性を「特別な才能の創造性」と 「自己実現の創造性」に分類している。前者は天才とか科学者、発明家、. 芸術家など特殊な人たちに見られる創造性で、その創造活動は、社会的 に新しい価値を持つかどうかで評価される。これに対し後者は、誰にも 備わっていて、その活動は必ずしも社会的に評価されるものとは限らな いが、その人にとって新しい価値ある経験である。ただし、この活動が 専門家に注目され、さらに深められ、より高次の活動を促すきっかけと なった場合には、前者への移行が可能である。そこで、子どもの創造性 は後者に属するといえよう。これが成長と教育および環境によって「特 別な才能の創造性」に発展すると考えられる。また、この「自己実現の 創造性」は、たとえばただ単に、主婦が、すばらしい料理をつくり、楽 しい家庭をつくり、立派な妻であり母であるということにもあてはめら れるtaという。. このような創造性の本質的な面は権威などに左右されず、自由な物の 見方、考え方にある。彼のあげる自己実現者の特性は、大胆さ、勇気、 自由、自発性、明敏、統合、自己受容などであり、これらの人格特性が 一般的創造性を可能にし、またこれらの人格特性が創造的人格や創造的 生活のなかに出現するという。さらにマスローは、創造性を支えるもの として「健康な人格」をあげている。 「人間はそれぞれ異なった性格、. 一5一.
(9) 価値観、行動様式を持っており、外観の諸要因に対しあるがままに認知 し、あるがままに反応行動が行なえれば、独自の創造性となって表れる はずである。しかし、実際の生活環境の中では、様々な障害や圧力があ って、これを保持することは難しいとしている。そして、創造性が健康 な人格を基礎として表出されるならば、創造性は五つの様相をもつ」IO) としている。 つまり彼は、. (1》創造性は、外界を「あるがまま」に認識する能力によって達成さ れる。. ②創造性は、外界に対し「あるがまま」に自己表現をすることによ って達成される。 (3》自己実現の創造性は、 「素朴な精神状態」の中に示される。. (4自己実現の創造性は、 「曖昧なるもの、未知なるものを恐れない」. 人格特性の中に認められる。. ㈲自己実現の創造性は、相互に対立し、矛盾する人格の「統一」の 上に成立する。. と考えているのである。. このマスローの「自己実現の創造性」の研究は、教育の分野において 大いに貢献することになった。特に、価値の多様化と人間阻害が進む産 業社会では、彼が言う意味での自己実現が教育の重要な任務の一つとな る。. ②恩田彰の「創造性jの定義 心理学者恩田彰によると創造性の定義については次の通りである。 一一. @6一.
(10) 創造性とは、ある目的達成または新しい場面の問題解決に適し たアイデアを生み出し、あるいは新しい社会的、文化的(個人的 基準を含む)に価値あるものをつくり出す能力およびそれを基礎 づける人格特性である。⑥. この定義に関して、考察すべき点が二つある。第一点は、 「新しい…. 価値あるもの」という点で、第二点は、「能力および…人格特性」とい う点である。. 第一点の「新しい…価値あるもの」には、成人の場合と子どもの場合 とでは、全く異なった基準が考えられる。つまり成人の場合は、その新 しさの評価は社会にとって、少なくとも評価する集団にとって新しいと いう社会的基準が用いられ、他方子どもの場合は、生み出されるアイデ アや物が個人によって新しいという個人的基準が用いられる。. 第二点の「能力および…人格特性」について、これは、創造性を能力 つまり創造力とそれを基礎づける人格特性という二つの面からとらえて いる点でたいへん興味深い。. 創造性を能力つまり創造力としてみた場合には、成就性、すなわちで きあがった能力としてみるか、可能性、すなわち潜在的能力としてみる かの二つの見方がでてくる。. 成就性としてみると、創造的思考や直観(intuition)との関連が問題 になる。創造的思考とは、創造活動に際して働く思考のことで、広義に は「新しくて価値のある着想を生み出すような思考」をいい、狭義には 「芸術や科学、技術などの分野で文化的・社会的に新しくて価値のある 着想を生み出す思考」をいう。{n自己手段としての創造性の育成をめざ 一7 一一.
(11) す場合には前者の立場をとる必要がある。この創造的思考は、創造的想 像(過去の経験により得られた心像を再構成して新しい心像パターンを つくること)とだいたい同じものと考えられている。つまり創造性は、 思考と想像(imagination)の両方の機能をもっていることになる。実際、. 創造性開発技能法は、主として想像力の訓練によって、たくさんの豊富 なイメージを思い浮かばせ、それをさらに思考力によって具体化し、現 実化、合理化させるという方法がとられている。つまり、新しいイメー ジやアイデア(着想)の芽を直観力が生み出し、それを想像力が展開し、. 思考力がそれを確かめ、検討するのである。すなわち創造的思考は、一 般に直観→想像→思考または想像→直観→思考の過程をとる。⑧. 次に人格特性の面から見ると、創造性は情意的傾向が強く、動機づけ と関係が深いので、単に能力の概念としてだけでは説明しにくい点があ る。創造性に関係のある人格特性としては、自主性、自発性、熱中性、. 積極性、冒険的、固執性、機敏性、興奮性、精力的、自己主張、決断力 関心の広さ、好奇心、好みの複雑さ、あいまいさ、寛容さ、解放性、攻 撃性、支配性、独立性、自己統制、柔軟性などがあげられる。⑨創造性 は単一の人格特性ではなく、これらのいくつかの因子によって構成され ている複合的なものである。創造性を創造的態度とみる見方があるが、. これは、創造的欲求・意欲と関係が深い。つまり創造的態度は、可能性 としての創造力を支えるものとして創造性の重要な側面であると考えら れる。. ㈲ファンジェの「創造」の定義 ファンジェ〈Fange, E. K. Von)は、 「創造」の定義として. 一8一.
(12) ①創造者とは、既存の要素から彼にとって新しい組合せを達成 する人である。. ②創造とは、この新しい組合せである。. ③創造することとは、既存の要素を新しく組み合わせることに すぎない。(10》. という三つをあげている。この定義から、創造とは、それまでの概念や 様式などを基礎として、それらを再構成したり、結合させたりして、現 状よりも優れたものを創り出すことになる。つまり創造とは「無」から 「有」を創りだすことではなく、その基礎となる要素は過去の経験によ. ってある程度蓄積されているか、あるいは新たに学習されなければなら ないということになろう。後でも述べる通り、経験の蓄積は創造性を育 成するための音楽学習の基礎となる思われるので、この定義は特に重要 である。. (4》ロジャースの「創造性の三基準」. ロジャース〈Rogers,C. R)は創造性の内容について、特定の内容に限定. していない。 「絵をかくことであれ、シンフォニーを作曲することであ. れ、人殺しの新しい機械の工夫であれ、科学的理論の展開であれ、人間 関係の新しい手続きの発見であれ、あるいはまた心理療法において自分 自身の新しい人格形成の創造であろうと、創造的過程ということにおい て根本的相違はない」と考える。そこで彼は次のように創造的過程を定 義する。創造的過程とは、 「一方においては個人の独自性、他方におい. てはその素材、出来事、あるいはその人の生活環境から生いたつ、ひと つの新しい関係の産物が出現してくる出来事」(1 1}である。さらに、彼. 一9一.
(13) はこの定義について次のような但し書きをつけている。. ①「良い」創造と「悪い」創造の区別はしない。 ②創造の程度の「高い」「低い」を区別しない。. 創造性の主要なバネは、心理療法で「なおる力」と考えられるものと 同じもので、自己自身を実現する傾向、自己の潜在的素質がそうである ものになる傾向である。あらゆる人が、拡大し伸張し発展し成熟しよう とする衝動を持つ。それはどんな人にも必ず存在し、発掘を待っている。. ロジャーズは「大きな社会的価値をもっと認められるようになった多く の創造と発見、というよりむしろその大部分は、社会的価値よりも個人 的興味ともっと関係する目的によって動機づけられている」という。こ う考えると創造性の「良い」 「悪い」 「高い」 「低い」の区別は困難で. ある。ここに、教育現場で、いわゆる創造的学習・授業を展開する祭に 留意すべき、重要な要素のひとつが示されている。 さらに彼は、 「その人が経験のすべてに対して開放的であった場合に. は、その人の行動は創造的であり、そしてその創造性は本質的に建設的 だ」とする。それならば建設的創造性の人はどんな用件を備えているか。. 彼は次の3つをあげている。. ①経験への開放性・伸長性. ②評価の内面的根拠 ③諸要素・諸概念とたわむれる能力. ①は、過去の「経験」が創造性の重要な要素の一つであり、さらにそ. 一10一.
(14) の「経験」に対しては開放的でなければならないことを指している。. ②は、おそらく最も根本的な条件で、創造性の価値・基準の根拠が自 分自身に内在することを意味している。. 成果の価値は、創造的人間にとっては、他人の称賛や批評によるもの ではなく、自己自身によるものである。何はともあれ自己を満足させる ものをつくったのか、それは自分の一部分なのであるか、すなわち、私 の感情なのか、私の思想なのか、私の苦痛なのか、それが問題となるの である。. ③について、これは思い立つままに観念や色や形や関係とあそぶ能力 を指していると思われる。つまり、要素を不可能な配列にすり替えてし まったり、乱暴な仮説をつくってみたり、日常慣れたことを疑惑的にし たり、ばかばかしいことを表現したり、あるものを他の形式に直してみ たり、ありそうもないものに変形させたりすることである。予感が現わ れ、生活に対し創造的で新しく意味深い見方がでてくるのも、このよう な自発的な試行錯誤と模索によるのである。. ⑤トーランスの「創造性」の定義 創造性の研究で多くの著書や論文を出しているトーランス(Torrance, E.P)は、 r創造性についての科学的見地とそれの成長に影響する要因』. という論文で、創造性を次のように定義している。. 創造性とは、問題や欠陥や知識におけるギャップや要素の欠如 や不調和等に敏感になり、困難点を見付け、解決を探し、推測を なし、欠陥についての仮説を作り、これらの仮説をテストし、再 テストし、そして多分仮説を修正して再テストし、そして最後に. 一11一.
(15) その結果を伝達する過程である。(12). この定義に続いて、. この定義は人間の自然の過程を述べているもので、各段階に強 い人間の要求が含まれている。もしわれわれが、何か不完全さ、. 不調和を感知するならば、緊張が起こり、不愉快になり、その緊 張を解消しようとする。ありきたりの方法では解消できないので、. われわれは探求し、診断し、推測し、操作することによって、普 通の明白な解決を避けようと試み始める。推測または仮説が、テ ストされ修正され再テストされるまでは、われわれの不快は続き、. さらにわれわれの解決(発見)を誰かにしゃべるまでは、緊張は 解消しない。この定義によってわれわれは、創造過程を促進した り阻害するところの能力の種類や、知的機能やパーソナリティの 特性を、操作的に規定できるようになる。この定義は、創造過程 から生ずるところの生産物(所産)の特性を明らかにするし、創. 造過程をもっとも成功的にやれる人の特性や、創造を促進する条 件を明らかにすることもできる。この定義はまた、創造という語 の歴史的使用法とも調和するし、科学的、文学的、演劇的、人間 関係的創造に、一様に当てはめることができる。(13). つまり、トーランスの考えによると、創造は問題解決の一種にほかな らないということになる。したがって、なんらかの問題を見いだし、そ こで心理的緊張が生じ、いろいろと問題を診断したり原因や解決法を探. 求して仮説を立てて問題を解決し、そこで緊張が取り除かれるという過. 一12一.
(16) 程であって、このメカニズムは一般の問題解決とほぼ同じである。しか し、ただここで注意しなければならないことは、一般に問題は、その解 決の仕方が一様ではなく、ある問題は比較的ありきたりの方法ででも解 決できるであろうが、創造性はこれらの問題解決とは別種のものである、. というわけである。したがって、創造は問題解決であるが、その逆、す なわちすべての問題解決が創造である、とはいえないことになる。. ㈲ギルフォードの「因子」説 ギルフォード(Guilford,」.P.》は、創造性に関する多くの研究にお. いて、他とは異なった方法をとった。彼は創造能力の本質についていく つかの仮説を推し進め、創造性の本質そのものを取り上げようとしたの である。. ギルフォード(Guilford,1950)は、《問題に対する広範な感受性》が. 創造性の必要条件であることを発見した。つまり彼によると、問題を感 知して始めて創造的思考は始まる、というわけである。また彼は、認識. 機能としての創造性は知能とは区別されるべきであるとし、更に創造性 で重要なのは拡散的思考であるとした。ギルフォードのいう創造性の能 力因子をまとめると次の図のようになる。(14》. 1. 問題に対する広範な感受性. 2. 流暢性(fluency). a.連想の流暢性 b.言語の流暢性 C.表現の流暢性 d.観念の流暢二. 一13一.
(17) 3 柔軟性(flexibility). 創造性. a.自発的柔軟性 b.適応の柔軟性 4 独自性(originality). a.非凡性 b.遠隔連合 c.たくみさ 5 具体性(elabolation) 6 再定義(redefjnitjon). ギルフォードの因子に対する批判として、ヒルガード(Hilgard,E.R.. 1959)は、 「美的な感受性」と「運命感」がそこに欠けていることを指 摘している。この点については、ゴーグ(Gough, H. G.1957)が、創造的な. 性格と動機についての因子分析を行い、次の5因子を見いだした。それ は「知的能力」、 「せんさく好き」、 「認知の柔軟さ」、 「美的な感受. 性」、 「運命感」である。ヒルガードは、この因子の方が豊かであると. いっている。美的な感受性とは、エレガントな形や観念、複雑な高度の. ハーモニー、表現のメディアの型に対する洗練された好み、あるいは審 美感をいい、運命感とは、自分自身の未来の価値、正当さ、成功に対し て、信念のようなものがはっきり定まっていることを意味する。. 一般に言われている「創造性テスト」とは、上の図のようなギルフォ ードの因子の中から、測定因子として、いくつかを取り上げてテストす るものが一般的に多く、それは次のような観点について測定される。. ①流暢性(思考の速さ) 一一. @14一.
(18) 一定の時間にどれくらいたくさんのアイデアがでるかを見る。. ②柔軟性(思考の広さ) どのくらい多方面にアイデアが広がっているかを見る。. ③独自性(思考の独自さ〉 人があまり出さない価値あるアイデアを見る。. ④推敲性(思考の深さ) アイデアがどれだけ具体的に、明確にとらえられているかを 見る。. しかし、ここで測定される創造性とは、その意味があらかじめはっき りしているわけではないので、テストを実施し、そこから得た評定がそ の人の持つ創造性の全てであるとは断定しがたい。またこれらの項目の 相関性についても不明である。そこで、テストを行なうよりは、一人の 人間を目の前にして、その考えや仕事ぶりから「創造的であるかどうか」. を総合的に評定したほうがよいことがある。この評定は、評定する側の 主観に左右されることも多く、何を基準にして「創造的」としょうする か常に疑問が残るかもしれない。しかし、創造性とはどういうことかと 尋ねられて、即座に答えられない人でも、日常、創造的なものとそうで ないものとを区別しながら生活を送っている。であるから、この創造性 テストは、その時のテストの結果のみでその人の創造性を判断するので はなく、これから先伸びていく可能性としての創造性を開発・育成して いくための一つの材料として活用されるべきではないかと思われる。. (7}その他の学説. 黒田正典は、 「創造性」について次のように説明している。. 一15一.
(19) 創造性の源泉は「ひっかかる能力」である。興味と疑問にどこ までも拘泥する力である。興味と疑問への「固執」は創造性の基 本条件である。創造的な人は、多くの人がよく考え直すこともな く受け入れ、ただ記憶し、ただ使っていることに疑問を感じる。 そしてその疑問に「ひっかかり」、その疑問を解くことに「固執」. する。創造的な人は一般人が満足している事物に疑問を感じ、い つまでもひっかかる。そして、積極的に自分自身が満足できる新 しいものをつくり出すことに固執する。発明・発見は常にそのよ うなものである。 (15}. つまり、彼は、新しいものを創り出す際には、既存の事物に対する不 屈の問題意識が重要で、しかもそれが持続的でなければならないことを 説いている。. ⑧大脳生理学的見地から見た「創造性」. 創造性は脳とどのような関係があるのか。医学者、時実利彦の説で考 えてみよう。. 大脳の中心にはA.頭頂葉、後頭葉(知覚・理解)、B.側頭葉(記 億)、C.前頭葉(思考・創造・意志・情操)があり、それぞれ働きを. 分担している。この中でAとBは高等動物にもあるが、Cは人間のみに ある。つまり前頭葉の発達した人間のみが未来に向かってなにか新しい ものを創り出す能力を備えているのである。なぜこのようなことがわか ったか。昔、 「前頭葉切り」という精神障害者に対する手術が行なわれ. たという。この手術を受けた人間は、知能や記憶力はほとんど変わらな かったが、無感動、意欲の喪失、自発性の欠如、情操の貧困があらわれ. 一一. @16一.
(20) た。つまり、前頭葉を切除することによって現われる現象は「思考力や 創造性や意志力や情操の精神の減退あるいは消失にほかならない」〔16} ことになる。. このように「創造性」とは、思考・意志・情操と深く関わり合ってお り、分かちがたい働きである。人間は、情操の心にかかわって「思考し、. 意図し、強い意志力を働かして行動しているのであって、この一連の行 動を創造行為といい、これを支える精神を創造性という」(17)。 つま り、 「創造性」とは知・情・意で表現された我々人間の高等な精神活動 の代名詞であり、人間らしさを特徴づける、広くて深い概念である。. 以上いくつかの定義を取り上げたが、これらは多少とも立場や強調点、. あるいは創造性の捉え方そのものを異にしているので、これらをもとに して筆者自身の一つの定義をつくるのは大変困難である。しかし、さま ざまな定義で述べられていることにいくつかの筋道をつけて整理してみ ると大略次のようになろう。 「創造性」とは、. 「自分にとって何か新しいものを作り出す意欲と能力」である。しかも. それは、誰もが持ち備える潜在的能力であり、育成・開発が可能なもの である。さらに「創造する」とは、 「過去の経験や知識、アイデアなど を、新しい目標のもとに統合し直す過程」そのものであり、「問題解決」 の手段である。. 「創造性」は、人間文化発達の源泉であり、豊かな人間性の育成や個 人の「自己実現」に欠かせないものである。ここに、現代の教育現場で 「創造性の育成」が重視される理由がある。. 一一. @17一.
(21) 第2節 創造の過程 「ものを見る・考える」という行為は極めて日常的なものであるため、 私たちはその意味をことさら取り立てて詮索し’たりすることはない。し. かし「創造」とは、何か新しいものをつくり出す、生み出すことであっ て、ありきたりの行動とは違ったように感じられるものである。また、. 一般に「創造」といえば、画期的な芸術作品や驚異の発明を考え、一般 人の行動とは次元の異なるものを連想しがちである。しかし、日常生活 においても創意工夫が必要であることには異論がない。 「創造」的行為. をこの立場に立って解釈すれば、これは人生や家庭を考え、自分の生き 方、考え方に関係のある事柄に還元されることが容易に理解できるであ ろう。. 「創造」をこの二つの方向から捉える傾向は、それぞれ関心の対象が 異なっていることから生じている。この二つの方向とは、創造の「所産」 か「過程」の何れかに重点を置くかの問題である。. 創造の所産に関心を向ければ、その所産は特殊な才能があったからこ そ可能であったと考えがちである。一方、創造の過程に関心を置けば、 ある状況に置かれた時に、「自分はどうずればよいか」を思案するよう になる。このように創造性は「所産」と「過程」の二つの則面を持つ。. では学校教育においては、どちらの立場を重視すべきであろうか。当 然後者である。. 創造の所産に注目する場合は、その新しいものは時として「異様であ る」という印象を与えざるを得ないことがある。(18}それは好奇心をそ そることもあるだろうし、気味悪く思われることもあるだろう。しかし、. 既存のものとあまりにもかけ離れたものは、関心の将外に出る。その場 合は、もはや「新しいもの」ではなくて、単に「異様なもの」としてし. 一18一.
(22) かかえりみられない。この点では、所産の新しさは、適度の新しさを持 つものでなければならず、それゆえに創造の所産の定義は曖昧になって くる。また、創造の所産の新しさは、創造した人の「個人的次元のもの」. と無関係には考えられない。その人にとって新しいものは、他の人にと っては新しくないかもしれない。客観的な新しさを判定することは、も ちろん重要なことであるけれども、実際には厳密にその判断を下すこと は不可能である。また、その所産が他に転用可能か否か、さらに高次の 創造の基礎となり得るか否かも疑問である。この点でも、所産の定義は 曖昧になる。. そこで「創造性」という言葉は、所産の性質を指すのではなくて、過 程の性質を指すものとされる。しかも、所産を一応度外視するところか ら「創造のポテンシャル」という考えを含めて「創造性」と見なければ ならない。(19). 一方、創造の過程に注目するとき、創造は、全人格的な活動であるこ とが明らかになる。すると、すべての人々について期待される創造とは、. 生活の仕方にほかならず、人生そのものであるということができる。こ の点で、創造とはマスローやロジャースのいう「自己実現」の活動であ るといえる。. もちろんこの「所産」と「過程」の二つの側面は、たがいに全く無関 係であるとはいえない。過程の理解と解決の仕方で、結果の評価は変わ るであろうし、結果の評価がどうであるかによって、過程の理解が左右 されると思われるからである。. 本節では、創造の過程を考察する。この「創造の過程」については多 くの研究者がその過程を種々の位相に分け、それぞれの位相を分析する ことによって理解しようと試みた。その中で、創造性のあらゆる領域で. 一19一.
(23) 用いられ、しばしば多少の変更を加えただけで踏襲される学説は、ウォ ラス(Wallas, J.1962》によって提唱された学説である。. 第1項 ウォラスの4段階 ウォラスは創造の過程を次のような4段階に分けた。. 1.準備期(preparation》. 問題があらゆる方面から検討される。 2.あたため期(incubation). 問題について、意識的には考えをめぐらしていないが、 無意識の力が働いている。 3.啓示期(illumination). 突然に、問題を解決するアイデア(着想)がひらめく。 4.検証期(verif董cation). アイデアの妥当性が吟味され、明確な形をとった思想が 完成する。. こうした段階は、はっきりとその境界を区別できるはずはなく、重な りあったり、順序が前後したりする場合もあり得る。 以下、上記の段階にそって補足を加えながら考察していく。. (1》準備. ニュートンは、どうして万有引力を発見したのかと尋ねられたとき、 「いつもその事を考えていたから」と答えたという。問題を解くために は長時間の努力が続けられる。今までに体得した知識や技能を適用して. 一20一.
(24) みること、過去の経験を思い起して役立てること、何度も失敗を繰り返 すこと、これらが創造の準備になる。このような努力は、必ずしも論理 的、組織的ではないが、意識的であって、常に注意がそこに働いている。 この特徴は「没頭」(saturation, immersion)という言葉で呼ばれている。. ②あたため. これは、卵をあたためて艀化するのを待つという意味である。このあ たため期には二つの問題がある。一つは、失意の時期と呼ばれるように、 意識的に問題を解くことができないとなれば、劣等感にも悩まされるし、. ノイローゼの症状も現われてくることである。もう一つは、突然の啓示 がこのあたため期を終わらせるのであるが、ひらめきは精神が疲労して いないときにやってくるという経験者と、逆に、意識的な努力のあとで 精神が疲れているときにやってくるという経験者がいることである。問 題を忘れたとき問題の解決が与えられるという者もある。(2。》. あたため期は、意志的でないという意味で受動的である。したがって それは突然のインスピレーションを受け容れる体勢にあることであり、. 精神が開放的であることを必要とする。この自由な精神の境地に達する のに、禁欲主義的な態度と快楽主義的な態度とがあるように思われる。. ㈲啓示 インスピレーション、あるいは洞i察(insight)の時期ともいわれる。. これは予測ができない。一瞬の光明が射し込み、解決の示唆を得る。そ れまでは不可能であったことが、突然に可能になり、それまでは使うこ とのできなかった技術が、突然使えるようになる。仕事を成就した感じ とともに、緊張は解け、それまでの苦労が報いられる。ウォラスによれ 一21 一一.
(25) ば、光明は一種の前兆に続いてやってくる。啓示の前に、何かが今にも やってきそうだという感じがする、というのである。これは「告示」 (intimation)と名付けられている。. 啓示期の重要な問題は、啓示が、言語による思考ではなくて、視覚的 なイメージや技術によって表されることが多いことである。 また、こ. のイメージはすべてがはっきりしたものではなく、ぼんやりした何かで あることの方が多いという。(21). (4)検証. 再び、技術的な面から反省がなされる。インスピレーションによって 得られたアイデアは、外的な現実に照らして吟味される。こうした反省 的、批判的態度がなければ、社会に対して伝達可能な、社会的に価値あ るものを生み出すことができない。また、この時に二次的な洞察が起こ って,前の洞察を支持することもある。. 第2項 創造の過程と問題解決 前節で、トーランスによる創造性の定義について触れた。その定義か らもわかるように、彼は創造の過程を「問題解決の過程」の立場から述 べていた。. 佐伯正一は、 『創造的学習の理論』の中で、トーランスの著書『創造 能力の指導』から、 「創造の過程」について大要、以下のように要約し ている。(22》. 多くの研究者が創造の過程について述べているが、それらは大 体、準備、二化(あたため)、閃き(啓示)、改訂(検証)とい 一一 22一.
(26) う四つの段階をみつけている。この段階の流れは、おおよそ次の ようなものである。すなわちまず最初に、 「必要または不足の感 知」、 「手当たり次第の探求」、 「問題の明瞭化またはくぎづけ」. が行なわれる。それから準備の時期が来て、読み・討議し・探求 し・多くの可能な解決を作り、続いてこれらの解決法のよい点や 悪い点を批判的に分析する。こういつたことから新しいアイデア が、つまり洞察や閃きが生まれる。最後に、アイデアの最終的選 択と完成のために、もっとも見込みのある解決を評価するべく実 験が行なわれる。かかるアイデアが、発明・科学上の理論・改善 された生産物や方法・小説・作曲・絵画・新しいデザインなどに 具体化されるであろう。. これで見ると、トーランスは、問題解決的過程と一般的な創造の過程 とを巧く結びつけていることがわかる。すなわち後者の準備段階の前に、. 問題の感知や明確化という問題把握の作用を位置付け、次にいろいろ方 法を模索したり、その長短を分析したり、新しいアイデアを直観的に生 み出す段階、つまりあたためと啓示の段階がくるが、これは問題解決過 程でいうと仮説をつくる段階に相当するし、最後にそういったアイデア を実験的に確かめたり、あるいはそのアイデアに基づいて、実際の生産 物を作ったり、美術作品や文学作品や曲を作ることは、問題解決の立場 から見ると「検証」にあたる。. つまり、問題解決的な立場からの創造過程と、一般的にいわれている 創造過程とは、決して背反するものではなく、結局同じ筋道を考えてい ることになり、大胆にいえば前者における仮説の段階のメカニズムを詳 しく示すために、後者ではあたため、啓示という段階として特徴づけた. 一23一.
(27) ということもできよう。したがって、両者を総合的にとらえると、創造 段階として次のような段階を考えるのがよいと思われる。(23}. (1》問題感知の段階. (2》問題の明確化の段階. ㈲準備の段階 (41艀化(あたため)の段階 (5》閃き(啓示)の段階. ⑥検証の段階 (7》伝達の段階 …… この段階は、芸術的創造や文学的創造におい. て特に意味を持つものと考えられる。また教育. の場においても、自らの解決方法が、たとえば クラスメイト等に客観的な形で承認されること により、子どもに達成感、満足感を味わわせる 意味でも重要であると考える。. 以上の諸段階は、創造過程全体に通用する図式として考えられたので あるから、創造活動の内容によっては、一部が脱落したり、またはきわ めて弱いものになったりするであろう。たとえばヴェルトハイマーは、 次のようにいっている。. 一般に問題解決は、問題状況S、から、問題が解決された状況 S2へ向かっての進行であるが、 S、がほとんど、または全く役割. を演じないような過程が存在する。美術や音楽における創造過程 のように、過程は創造されるべきS、のある特徴を直観することか. 一24一.
(28) ら始まる。芸術家はその結晶化、具体化、または完全な実現によ って駆り立てられる。(24}. ここに、数学や科学等とは異なった、必ずしも問題の感知や明確化を 伴った段階的学習が要求されない芸術創造の特徴がみられる。芸術の創 造においても、ある程度各人固有の問題意識があり、その問題意識は、. 既成の作品や自然現象や社会現象などに触発挙れて生ずるであろう。け れどもその問題意識は、科学などの創造における問題意識とは性質が異 なるものである。したがって芸術の創造では、㈲以下の段階が顕著にな るものと考えられる。. 一一. @25一.
(29) 第3節 創造性の開発・育成. 前述のとおり、現代社会は科学技術の急速な発達によって、あらゆる 面で恩恵を受けているが、反面、物質的にも、精神的にも問題を生み出 し、また国際的にも、激しい科学技術の競争や、政治的、社会的摩擦に よる緊張が高まり、そのため将来の生活に希望を託しながらも、なお一 抹の不安が感じられるばかりか、逆に科学技術の進歩が人類滅亡の危機 すら招来している。. このような中にあって、人類が末長く生き延び、精神的にも物質的に も、より豊かに満足のいく生活、すなわち幸福な人生を保障していくた めには、これら科学技術の高度な発展によってもたらされる問題を、さ らに創造的な態度で解決し、そこから新たに出てくる希望がかなえられ るような創造活動が行なわれることがますます必要になってきた。これ らの社会の要請に基づいて、人間の創造性の育成・開発への期待はさら に高まる一方である。. このような状況の下、学校教育も、そのような社会的変化に子どもが 対応し得るよう、変容が求められている。すなわち、学校教育における 個性や創造性の育成が従来以上に重視されてきている。このことは、現 行の平成元年度版の小学校新学習指導要領改訂の基本方針㈲の、 「社会. の変化に主体的に対応できる能力の育成や創造性のi基盤を培うことを重 視するとともに、自ら学ぶ意欲を高めるようにすること」にも表されて いる。これは、従来の教育が、一定の知識を教え込み、児童生徒がそれ を記憶することに偏ってきたことに対する反省に立ったものである。そ れを受けて、各教科においても、これからの社会の変化に主体的に対応 できるようにするため、思考力、判断力、表現力などの育成が重視され、 一一. @26一.
(30) とりわけ、創造性の基礎を培うためとして、新たな発想を生み出すもと になる論理的思考力、想像力、直観力も重視されてきている。. 人間は、本来創造的であるという見方がある。だから子どもの中に可 能性として秘められている創造性を開発するには、創造活動を盛んに行 なわせて、それによって創造の喜びを体験させ、創造性が自分にあるこ とを自覚させる必要がある。さ.らに創造性の開発を促進する条件を整え、. 阻害する条件を取りのぞいてやることが必要である。また、創造性を育 成するには、しだいに高度の文化に接触させ、訓練によって高めていく 必要がある。. 一口に「創造性の開発・育成」とはいっても、すでに見てきた通り、 その創造性そのものが、曖昧で非常に多義的に捉えられているため、そ の重要性は容認されながらも、実践に移す場合には困難な問題を提示し. ているのは事実である。しかし、第1節でも述べたように、創造性は人 間文化発達の源泉であり、人間生活の向上、豊かな人間性の育成や個人 の自己実現にとって欠くことのできないものであることは異論の余地が ない。したがって、創造性を助長する思考方法は、あらゆる教科、さら には学校教育全体の中で開発していかなければならない重要課題であり、 教育の本質にかかわる根本問題なのである。. そこで、本節では一般に「創造性教育の原理」と言われ、また実際に 実施されている「創造性開発法」を取り上げ、それらが学校教育でどの ように援用され得るかを考察していきたい。なお、音楽教育の場合への 適用の可能性に関しては次節で触れることにする。. 第1項 幼児・児童期における創造性の発達 創造性は知能と比較して一様には発達せず、多少のでこぼこがでてく. 一27一.
(31) るという。 トーランス(Torrance, E. P)の研究によると、幼稚園の時期. で3歳、4歳半では伸びるが、5歳になると急に落ちる。小学校では1 年から3年まで急速に伸びるが、3年から4年にかけて、また6年から 中学1年にかけて、また高校2年から3年にかけて少し下降するという のである。(25》この落ち込み、下降の時期を見ると、いずれも身体的成 長過程期に対応しており、多少の心身のバランスがくずれ、興味の変化、. 上級学校への移行、環境の変化、教科内容の増大、複雑化といった文化 の変化に原因があると考えられている。 (1}幼児期. 幼児期の創造性に関する研究は、主に幼児の創造的想像力に注目した ものが多い。このことは、幼児期が、いわば想像力の最も発達する時期 だからである。 リボー(Ribot,T.A.)によれば、幼児期には想像力が飛躍的に発達し、. その生活は非現実の世界が支配的になり、合理的な推理力が遅れてゆっ. くり成長する。また、想像力は4歳と4歳半との間にいちばん発達し、 5歳ごろになると低下するといわれている。なお創造的想像力の能力は、. 3歳半から4歳半に頂点に達し、5歳ごろになると低下するといわれて いる。{26). 先のトーランスの研究とリポーの研究を総合的に捉えた場合、創造性 の伸びる時期と想像力の伸びる時期とが一致しており、この点で、創造 性を育成する上で、想像力がいかに重要な役割を果たすかがわかる。こ. のことは、先の第1節で触れた恩田彰の見解とも一致する。つまり、こ の時期に幼児の想像力をうまく伸ばしてやることが、後の創造性の発達 によい影響を与えることになるであろう。. 幼児の遊びを見ていると、幼児は好奇心旺盛で、遊びの世界に自分を. 一28一.
(32) 投入し、熱中し、すっかり我を忘れて遊びと一体となる。しかも、その 遊びの中には創意工夫が行なわれており、特に「ごっこ遊び」などは想 像と結びついていることはよく知られている。これこそまさに創造活動 であり、創造的行為であり、遊びの進行が創造のプロセスである。その プロセスを経て、幼児は自己実現を可能にするのである。このように考 えてくると、とりわけ幼児の創造性を考える場合、遊びのなかに見られ るような創造的行為による創造活動を盛んに行なわせることによって自 己実現を図ることが、創造性開発の根本といえるであろう。 ②児童期. 先にも述べたように、トーランスは小学校3年から4年にかけて、創 造性が著しく低下することを指摘している。この理由としては、生理的 変化、仲間集団への同一化、画一・化への集団的圧力ならびに教育内容の. 増大、複雑化などの要因が相互に絡み合って、創造性の発現が抑制され ることが考えられる。しかし、この時期には、幼児では想像力が著しく. 伸びるのに対し、論理的思考が伸びてくるので、このことを創造性の豊 かな発達につなげる必要があると思われる。 この時期の特徴について、リゴン(Ligon, E. M.)の研究(27》によれば、. 6∼8歳の子どもは創造的想像力も現実的になり、遊びも細部にわたっ. て表現しようとするようになり、好奇心も発達し続ける。8∼10歳に なると、創造的技能も発達し、自己特有の能力を創造的に使えるように. なる。また10∼12歳の子どもは、探索を好み、とくに女の子は書物 やごっこ遊びを、男の子は直接経験を好むようになる。この時期は読書 が大切な時期で、落ち着いて長時間本を読んだり考えたりすることがで きるようになる。読書が想像や思考力の育成に役立っことは言うまでも ない。またこの時期には、美術的、音楽的適性が急速に発達してくると 一29一一.
(33) いう。.(28) そこで、この時期には、自分のアイデアや技能を試してみ. る機会を与え、それを発表させるようにしむける必要がある。特に音楽 の場合にはいろいろな音楽に接する機会を与えることも必要になってく ると思われる。. 第2項 産業界における創造性教育の方法 産業界では、創造性開発の手段がいろいろと考えられているが、これ らは主として想像力、次に直観力の開発に重点を置いている。第1節で も触れたように、創造的思考は、直観→想像→思考の過程をとるので、. 創造干すなわち創造的思考力を伸ばす方法が、直観→想像、すなわち一 見何もないところがら新しいイメージやアイデアの芽を直観力が生み出 し、想像力がそれらを自由に統合し、展開していくという発想法に重点 が置かれるようになってきたのである。. では実際にどのような方法で行なわれているか。いくつかの開発法を 取り上げてみる。 (1)ブレイン・ストーミング(29》. このブレイン・ストーミング法(以下BS法とする)は、創造性開発 法として最も一般的に用いられている方法である。このBS法は1941年 に、オズボーン(Osbom, A. F)が、アイデアを容易に出させるために案出. した集団討議法の一つである。この方法は一切の権威や固定観念を排除 し、受容的でなごやかな雰囲気の中で、自由に思いついたことを何でも 口に出し、それらのアイデアの中からより具体的なアイデアを取り出そ. うとするものである。このBS法は、想像力、拡散的思考、創造的想像 力を養うのにょいとされる。この方法が従来の討議法と違うところは、. 参加者のメンバーが個人としてアイデアを出すというより、一つの集団. 一30一.
(34) がアイデアを出すという点で行なわれることである。アイデアは共同作 業の結果と考える。この方法の特徴は、アイデアを出している時は批判 をしないということである。ある程度アイデアを出してから批判をする. のである。またBS法では、次の4っの規則を守らせる。. ①批判厳禁. アイデアについてすぐいいか悪いか批判しない。. ②自由奔放. アイデアは奔放なものほどよい。. ③量を好む. アイデアの数が多ければ多いほど、その中にいいものが 入る可能性は大きくなる。. ④統合改善. 自他のアイデアを組み合わせて、さらによいアイデアに 発展させるように努める。. 討議の人数は、リーダー1名、セクレタリー1名、メンバーは2∼20 名が最も効率がよい。性別、能力、性格はバラエティーに富んだ方がよ. く、時間は10∼20分がよいとされる。このBS法では、アイデアを 絞りだすというより、むしろ浮かんできやすいような条件を作るのであ る。. 以上の規則は、頭の回転をよくするためで、その抑制となる条件を取. りのぞこうとしている。そして、④の結合と改善の規則は、先の第1節 でふれた、ファンジェの「創造とは、既存の要素を新しく組み合わせる ことにすぎない」という基本的な創造の実践理論になっている。この方 法はアイデアを自由1こ出せるばかりでなく、参加する人々の人間関係を 良くし、自発性、創造性はもちろん協調性をも高める。. またこの方法は、先に述べたギルフォードの創造性因子の中の、流暢 性と柔軟性に力点を置いていることがわかる。. 一31一.
(35) (2》KJ法(30》. この方法はアイデア開発技法として、川喜田二郎氏が提唱したもので ある。この方法は、バラバラな知識を紙切れを用いて組み立てていく方 法である。これには、類別化する手続きと関係配置を生み出す手続きと が含まれている。. このKJ法と先のBS法を比べると、BS法はメンバーがアイデアを 話せばよいのに対し、KJ法は個人的に書くというやりかたをとる。ま. た、KJ法はBS法のように討議法を含んでいるが、BS法は主として 拡散的思考を中心とするのに対し、KJ法は集中的思考を中心としてい. る。BS法は想像を駆使するが、KJ法では論理的思考を用いる。そこ ではじめはBS法でアイデアを出しあい、これをKJ法でまとめていく と、創造的思考を伸ばすのにょいと思われる。 (3》シネクティクス(31). シネクティクスという言葉は、ギリシャ語からきたもので、異なった 一見関連のない要素を結び付けるという意味である。すなわち、違った 要素を結びつけることによって創造する方法で、ゴードン(Gordon, W. J.. J.)が開発したものである。この方法では次の3っの類比を活用する。. ①人格的類比. 自分自身がそのものになって、その中から物を考え、感じることで ある。. ②直接的類比. 既存の知識や経験的法則を未知の物に当てはめることで、他にそれ に似たものがないか考えてみることである。. ③象徴的類比 一32 一一.
(36) 問題を記述するのに物的な非人格的なイメージを思い浮べる。. 以上、産業界における創造性開発法として代表的な3っをあげてみた が、これらの方法を学校教育に援用する際には、これらの技法の原理を. 活用しながら、学校やクラスの実態に見合ったものに修正したり、諸方 法を統合したりする必要があると思われる。. 第3項 学校における創造性教育 先に、創造性教育は、教育における根本問題であると指摘した。では、. 教育と創造性の関連がどのように重視されているのであろうか。 佐野靖氏は、 「創造性と表現技能」(32》の中で、確固とした教育学の. 伝統を持つドイツ(旧西ドイツ)に目を向け、関連する資料・文献に即 して、教育における創造性育成の重要性について、大約以下のように論 及している。. まず、ローガー(Y. Roger)の論文『創造性と学椥(Kreativitat. und Schule)よると、創造的に活動するということは、新しい対 象をつくること、新しい統合や新しい解決を見いだすことである。 そしてこれは特定の専門領域にとどまらず、学校教育全体の中で 促進していかなければならない。つまり、あらゆる科目や領域が、. 実際に創造的活動の契機をもたらすことができるような学校教育 が望まれるのである。そのためには、学校が許容する雰囲気を持 つこと、生徒を「学習する者」というよりむしろ「思考する者」. としてとらえることが必要である。そして、創造性の道を歩むと いうことは、個々の人格をそれぞれに発達させること、若者たち. 一33一.
(37) の建設的な協力・参加を誘うこと、 「より多く持つ」というより は、 「より存在する」という意味において彼らを成長させること. なのである。創造性育成のためには、ローガーが主張するするよ うに、子どもの内部に創造性が可能となるような諸条件、つまり 望ましい環境や適切な教育的態度や措置などを学校全体が持つこ とが不可欠なのである。. 次に、旧西ドイツの教育全体の方向性を示した『教育制度に関する構 造計画』の「学習目標段階と学習目標領域」より、. 低次から高次にいたるいずれの学習目標段階において、本質的 原理の把握、自主的な構成力、転用や転移の能力、問題解決的思 考や発見的態度など、自主性や創造性に関わる諸能力の育成・発 達が強調されているのである。. 以上の例からもわかるように、創造性を育成することは、人間性の全 面的発達につながるキーポイントであり、そのためには、あらゆる局面 から創造的活動へのアプローチが可能となるような教育実践の場を構築 しなければならない。. では、実際にわが国の学校教育ではどのようにして創造性の開発・育 成が行なわれているか。学校教育の現場では、想像力や拡散的思考の開 発に力を入れているところが多く(33》、一般に連想→想像力→創造的思. 考のプロセスで、まず連想の練習をし、次に想像力の訓練をして、創造 的思考の育成を図っている。. 一34一.
(38) しかし、創造性を養う場合に念頭に置いておかなければならないこと は、創造性は知識などのように、一定の内容のものを習得させる形では、 養われないことである。このことに関して、スミス(James A.Smith)は、. 「創造性そのものは教えられない。それは歴史を学習させたり、野球を. 実際にやってみせたり、するようなわけにはいかない。それは、愛のよ うに、生れつき持っており、発展するところの資質であって、発展させ られうるだけである」といっている。教育学の用語を使えば、実質陶冶 ではなく、形式陶冶だといってもよいであろう。ある内容を考えさせる のではなく、考え方を養うことである。つまり、学力増進と同じような 考え方で創造性にアプローチすることは適当でないということである。 ここに創造性教育の難しさがあるわけだが、そうなると、創造性という ものは、さまざまな学習場面や生活場面で養われなければならないこと になる。言い換えれば、創造性を養うには、さまざまな側面からアプロ ーチしなければならないのであるが、それらのアプローチの基本になる 条件や原理としては、どんなことがいえるであろうか。 ロジャースは、この条件を二つに大別している。(34》一つは心理的安 定で、もう一つは心理的自由である。. 前者の心理的安定に関して、彼は、さらに三つの条件を考えている。 その三つとは、. ①ひとりひとりの子どもが無限の価値をもつものと認めること。 ②外部から評価をしないこと。. ③感情移入的に子どもを理解すること。 である。. 後者の心理的自由とは、子どもは、自分の内心を自由に表現する機会 を持たなければ、創造性は育たないという意味である。 一35 一一.
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英国のギルドホール音楽学校を卒業。1972