るという。 トーランス(Torrance, E. P)の研究によると、幼稚園の時期
で3歳、4歳半では伸びるが、5歳になると急に落ちる。小学校では1 年から3年まで急速に伸びるが、3年から4年にかけて、また6年から
中学1年にかけて、また高校2年から3年にかけて少し下降するという のである。(25》この落ち込み、下降の時期を見ると、いずれも身体的成 長過程期に対応しており、多少の心身のバランスがくずれ、興味の変化、上級学校への移行、環境の変化、教科内容の増大、複雑化といった文化 の変化に原因があると考えられている。
(1}幼児期
幼児期の創造性に関する研究は、主に幼児の創造的想像力に注目した ものが多い。このことは、幼児期が、いわば想像力の最も発達する時期 だからである。
リボー(Ribot,T.A.)によれば、幼児期には想像力が飛躍的に発達し、
その生活は非現実の世界が支配的になり、合理的な推理力が遅れてゆっ くり成長する。また、想像力は4歳と4歳半との間にいちばん発達し、
5歳ごろになると低下するといわれている。なお創造的想像力の能力は、
3歳半から4歳半に頂点に達し、5歳ごろになると低下するといわれて
いる。{26)
先のトーランスの研究とリポーの研究を総合的に捉えた場合、創造性 の伸びる時期と想像力の伸びる時期とが一致しており、この点で、創造 性を育成する上で、想像力がいかに重要な役割を果たすかがわかる。こ のことは、先の第1節で触れた恩田彰の見解とも一致する。つまり、こ の時期に幼児の想像力をうまく伸ばしてやることが、後の創造性の発達 によい影響を与えることになるであろう。
幼児の遊びを見ていると、幼児は好奇心旺盛で、遊びの世界に自分を
投入し、熱中し、すっかり我を忘れて遊びと一体となる。しかも、その 遊びの中には創意工夫が行なわれており、特に「ごっこ遊び」などは想 像と結びついていることはよく知られている。これこそまさに創造活動 であり、創造的行為であり、遊びの進行が創造のプロセスである。その プロセスを経て、幼児は自己実現を可能にするのである。このように考 えてくると、とりわけ幼児の創造性を考える場合、遊びのなかに見られ るような創造的行為による創造活動を盛んに行なわせることによって自 己実現を図ることが、創造性開発の根本といえるであろう。
②児童期
先にも述べたように、トーランスは小学校3年から4年にかけて、創 造性が著しく低下することを指摘している。この理由としては、生理的 変化、仲間集団への同一化、画一・化への集団的圧力ならびに教育内容の 増大、複雑化などの要因が相互に絡み合って、創造性の発現が抑制され ることが考えられる。しかし、この時期には、幼児では想像力が著しく 伸びるのに対し、論理的思考が伸びてくるので、このことを創造性の豊 かな発達につなげる必要があると思われる。
この時期の特徴について、リゴン(Ligon, E. M.)の研究(27》によれば、
6〜8歳の子どもは創造的想像力も現実的になり、遊びも細部にわたっ て表現しようとするようになり、好奇心も発達し続ける。8〜10歳に なると、創造的技能も発達し、自己特有の能力を創造的に使えるように
なる。また10〜12歳の子どもは、探索を好み、とくに女の子は書物
やごっこ遊びを、男の子は直接経験を好むようになる。この時期は読書 が大切な時期で、落ち着いて長時間本を読んだり考えたりすることがで きるようになる。読書が想像や思考力の育成に役立っことは言うまでも ない。またこの時期には、美術的、音楽的適性が急速に発達してくると一29一一
いう。.(28) そこで、この時期には、自分のアイデアや技能を試してみ る機会を与え、それを発表させるようにしむける必要がある。特に音楽 の場合にはいろいろな音楽に接する機会を与えることも必要になってく ると思われる。
第2項 産業界における創造性教育の方法
産業界では、創造性開発の手段がいろいろと考えられているが、これ らは主として想像力、次に直観力の開発に重点を置いている。第1節で も触れたように、創造的思考は、直観→想像→思考の過程をとるので、
創造干すなわち創造的思考力を伸ばす方法が、直観→想像、すなわち一 見何もないところがら新しいイメージやアイデアの芽を直観力が生み出 し、想像力がそれらを自由に統合し、展開していくという発想法に重点 が置かれるようになってきたのである。
では実際にどのような方法で行なわれているか。いくつかの開発法を 取り上げてみる。
(1)ブレイン・ストーミング(29》
このブレイン・ストーミング法(以下BS法とする)は、創造性開発 法として最も一般的に用いられている方法である。このBS法は1941年
に、オズボーン(Osbom, A. F)が、アイデアを容易に出させるために案出 した集団討議法の一つである。この方法は一切の権威や固定観念を排除 し、受容的でなごやかな雰囲気の中で、自由に思いついたことを何でも 口に出し、それらのアイデアの中からより具体的なアイデアを取り出そ うとするものである。このBS法は、想像力、拡散的思考、創造的想像 力を養うのにょいとされる。この方法が従来の討議法と違うところは、
参加者のメンバーが個人としてアイデアを出すというより、一つの集団
がアイデアを出すという点で行なわれることである。アイデアは共同作 業の結果と考える。この方法の特徴は、アイデアを出している時は批判 をしないということである。ある程度アイデアを出してから批判をする のである。またBS法では、次の4っの規則を守らせる。
①批判厳禁
②自由奔放
③量を好む
④統合改善
アイデアについてすぐいいか悪いか批判しない。
アイデアは奔放なものほどよい。
アイデアの数が多ければ多いほど、その中にいいものが 入る可能性は大きくなる。
自他のアイデアを組み合わせて、さらによいアイデアに 発展させるように努める。
討議の人数は、リーダー1名、セクレタリー1名、メンバーは2〜20 名が最も効率がよい。性別、能力、性格はバラエティーに富んだ方がよ
く、時間は10〜20分がよいとされる。このBS法では、アイデアを
絞りだすというより、むしろ浮かんできやすいような条件を作るのである。
以上の規則は、頭の回転をよくするためで、その抑制となる条件を取 りのぞこうとしている。そして、④の結合と改善の規則は、先の第1節 でふれた、ファンジェの「創造とは、既存の要素を新しく組み合わせる ことにすぎない」という基本的な創造の実践理論になっている。この方 法はアイデアを自由1こ出せるばかりでなく、参加する人々の人間関係を 良くし、自発性、創造性はもちろん協調性をも高める。
またこの方法は、先に述べたギルフォードの創造性因子の中の、流暢 性と柔軟性に力点を置いていることがわかる。