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九州大学学術情報リポジトリ

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

ガス分離用多孔質無機膜の開発およびメタン水蒸気 改質反応への応用に関する研究

柴, 茂栄

九州大学総合理工学研究科材料開発工学専攻

https://doi.org/10.11501/3075473

出版情報:Kyushu University, 1993, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)
(3)

お応

発 の の応 開へ

膜 反

機 質 無 改 質 気 孔 蒸 究 多 水 研 用 ン る 離 タ す

分 メ 関

ス び に ガ よ 用

平 成 5 年

柴 茂 栄

σ 

(4)

目 次

1.6.1  シリカ系多孔質ガラス膜

1.6.2  アルミナ系コーティング膜 1.6.3  その他の分離膜について 1.7 メンブ、レンリアクター

1.7.1  反応促進型メンブレンリアクター

1.7.1.1多孔質ガラス膜を用いたメンブレンリアクター 1.7.1.2パ ラ ジ ウ ム 金 属 膜 を 用 い た メ ン ブ レ ン リ ア ク タ ‑ 1.7.2  触媒機能型メンブレンリアクター

1.8 水蒸気改質反応 1.9 本研究の目的と概要

参考文献

U

今 ︐

B

今 ︐M 4 3 A U T A U T

戸 ︑

J ζ J f O

I

J A y

1 A 1 A

d

I 1 1 1 i T i

1 i t i

1 i 1 i 1 A 1 i 1 1

第1章 序 論 1.1 緒言

1.分離膜の分類と特徴 1.3 気 体 分 離 膜

1.4  多孔質膜による分離機構 1.5 無機膜の構造と製造法

1.6 主な無機膜の開発および応用状況

第2章 高耐熱性多孔質アルミナ膜の開発

2.1  緒 言 2.2  実験方法

2.2.1  膜 の 作 製

2.2.2  ガス透過係数、分離係数および微細構造の評価 2.3  膜の調製および微細構造

2.4  膜のガス透過および分離性能

2.5  膜の微細構造と膜の耐熱性との相関

2.6  添加物の膜の耐熱性へ及ぼす効果 2.7  本章のまとめ

参考文献

/ O f O

f

f n y n y a

f

3 ζ J

戸 ︑

J

2 2 2 2 2 2 3 3 4 4 4  

(5)

第3章 高い水素選択分離能を有する金属分散アルミナ膜の開発 47 

3.1 緒言 47 

3.2  実験方法 48 

3.2.1  膜 の 作 製 48 

3.2.2  膜のガス透過係数、分離係数の測定 49  3.2.3  膜の微細構造の評価 49  3.2.4  テトラエトキシシランを用いた膜のCVD処 理 49  3.3  白金族金属分散アルミナ膜の調製および微細構造 50  3.4  白金族金属分散アルミナ膜におけるガス透過特性の評価 53  3.5  白金族金属分散アルミナ膜を用いた水素一窒素混合ガスの分離 55  3.6  Fe、Co、Niおよび、Cu分散多孔質アルミナ膜の調製および水素選択透

過能の評価 57 

3.7  テトラエトキシシランのCVD処理による白金族金属分散アルミナ膜

の分離性能の改善 62 

3.8  本章のまとめ 66 

参考文献

67 

第4章 金属分散多孔質アルミナ膜における水素の選択透過機構の解析 68 

4.1  緒 言 68 

4.2  白金族金属分散アルミナ膜における水素の吸着および金属表面に吸

着 し た 水 素 の ス ピ ル オ ー バ ‑

4.2.1  白金族金属分散アルミナ膜における水素の吸着 69  4.2.2  金属表面に吸着した水素のアルミナ表面へのスピルオーバー 71 

4.3  膜のガス透過機構の解析 73 

4.3.1  表面拡散 73 

4.3.2  白金族金属分散アルミナ膜における水素、重水素の選択透過 74  4.3.3  金属分散アルミナ膜のガス透過機構の解析 76 

4.3.4  解析結果と考察 78 

4.3.4.1透過定数Kの決定 78  4.3.4.2見かけの拡散係数の比 αおよび吸着工ネルギーの決定 79  4.3.4.3 表面拡散および、Knudsen拡散機構によるガス透過のシミユ

レーション ハ ツ

t i t i

J 0 0 0 0

4.4本章のまとめ

参考文献

‑2 ‑

(6)

第5章 白金族金属分散アルミナ膜を用いて作製したメンブレンリアクタ ー におけるメタンの水蒸気改質反応への応用

83  5.1  緒言

83  5.2  実験方法

5.2.1  触 媒 84  5.2.2  膜 の 作 製 84  5.2.3  反 応 装 置 84 

85  5.2.4  水蒸気改質反応の性能評価

86  5.3  固定床反応器を用いた触媒活性の評価 86  5.4  水素分離型メンブレンリアクターを用いた水蒸気改質反応 87  5.5  白金族金属分散多孔質アルミナ膜のメタン水蒸気改質反応活性 94  5.6  本章のまとめ

参考文献 97 

97 

第6章 メンブレンリアクターを用いたメタンの低j財く蒸気改質反応におけ る反応促進効果のシミュレーション

6.1  緒 言

6.2  メタンの水蒸気改質反応速度論

6.2.1  反 応 速 度 式

6.2.2  反応速度定数の計算

6

2.1平衡定数の計算 6

2.2反応速度定数の計算

6.3  メンブレンリアクターを用いたメタンの水蒸気改質反応における反応 器のシミュレーション計算

6.3.1  分離を伴う触媒反応モデル

6.3.2  ガス透過係数

6.4  シミュレーションの結果

6.5  シミュレーシヨンの結果と実測値との比較

6.6  本章のまとめ 参考文献

第7章 本 研 究 の 総 括

謝 辞

‑3 ‑

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111  115 

(7)

第 1 章 序 論

(8)

第 1 章 序 論

1.1  緒言

二度の石油危機や湾岸危機で繰り広げられた石油資源をめぐる争いのため、全 世界的にエネルギー資源への関心が急激に高まっている。また、オゾン層の破 壊、大気中のC02、NOx、SOx濃度の急激な増加に伴う地球温暖化およびほかの 環境問題など、 21世紀に向けて様々な解決すべき問題がある。日本を含めて全世 界的に地球規模のエネルギー資源および環境問題が注目され、二酸化炭素の排出 低減、省エネルギ一、代替エネルギーおよびエネルギーの高度利用なとな新エネル ギーシステムの再編成が迫まられようとしている。これらの問題に対する解答の ーっとして、水素エネルギーを媒体とするエネルギ一変換システムの確立がある [1‑9]。この水素エネルギ一変換システムの確立のためには、水素を大量かっ安価 に製造できるプロセスの開発が不可欠であり、炭化水素の低温水蒸気改質反応は その有望な基礎技術の一つである。

炭化水素の水蒸気改質反応は工業的水素製造法として重要なプロセスであり、

一般的に700‑‑‑‑‑10000C、10‑‑‑‑‑30atmの高温高圧条件でナフサや天然ガスなどの炭化 水素と水蒸気を反応させて水素や合成ガスを合成するものである[10,11]0省エネ ルギーあるいは環境問題から低温プロセス化が強く望まれている。メンブレンリ アクターは、生成物の選択分離により化学反応平衡を生成物側に移行させること によって、より低い温度で高い反応転化率が得られる高効率反応器であり、それ を利用して炭化水素の低温水蒸気改質反応、プロセスを開発することが可能とな る。このような反応プロセスにおいては、生成ガスからの水素の効率的な分離法 の開発が不可欠である。従来、生成物の分離として凝縮法が用いられているが、

この方法は比較的大きな熱交換用伝熱面積と循環動力が必要である。膜分離法 は、反応、ガスを冷却、凝縮することなく、反応生成物の分離が可能であり、熱効 戒の向上と装置費の節減につながる。

しかし、従来の膜分離法の発展を支えてきた材質の大部分は有機高分子膜であ り、膨潤、劣化や耐熱性が高々2000C程度など膜の耐久性が問題となるので、高温 および有機溶媒が関与するメンブレンリアクターあるいは高温でのガス分離など への応用には期待できない。 一方、セラミックス材料から構成される無機多孔質 膜は、有機高分子膜に比べ優れた熱的、化学的安定性を有するため、従来の膜分 離法では対応できなかった高温高圧下、腐食性雰囲気下などでの利用が可能とな

(9)

るが、その一方 で 、 孔径制御が難しいために選択性に乏しいこと、耐熱 温 度も 高々8000C程度であること、薄膜化が困難であることが重要な問題点として指摘さ れてきた[12‑17]。

本研究は、優れた耐熱性、耐高温水蒸気安定性および選択透過能を有するセラ ミック多孔質気体分離膜の開発を目的として行われたものである。ゾルーゲル法 を用いて多孔質アルミナ膜の細孔中への金属超微粒子を分散することにより、従 来にない高い耐熱性、水素ガス分離能およびガス透過能を有する無機分離膜を開 発するとともに、膜の微細構造の解析およびガス透過機構の解析を行った。さら

に、この膜を高温触媒反応器に組み込むことによって反応率や選択率を大幅に向 上できるメンブレンリアクターを開発し、メタンの低温水蒸気改質反応への応用

について検討した。

1.2  分離膜の分類と特徴

膜による分離法は古くから知られていた。 1930年代の"ManhattanProject"におけ るウラン同位体分離(ガス拡散法)に用いられたように、膜分離技術は長い歴史 を持つ分野である[18]0 しかしながら、当初の分離対象は、ウラン同位体などの 特殊な目的に限られており、膜分離プロセスが多分野で実用化されるようになっ たのは比較的最近である。 1960年代、 LoebとSourirajanの逆浸透膜の開発により膜 分離法は工業的な分離法としての第一歩を踏み出した。以後、金属膜、高分子分 離膜および多孔質無機膜など様々な膜の開発、適用範囲の拡大、システムとして の検討を経て、膜分離法は現在の分離技術として地位を確立している。最近では 膜分離技術の利用分野は化学工業に留まらず、医療、食品、エレクトロニクス等

の分野に非常に速い勢いで拡大している。

分離膜を素材面から見た場合では有機膜と無機膜とに、構造から多孔質膜と非 多孔質膜とに分類することができるが、形状、形態、製膜法等でさらに細かく分 類することができる。 Table11にその代表的な一例を示す[13]0 またこのほか

に形態から分類すれば平板膜、管状膜、中空糸膜などがある。

また、分離対象で分類すれば、液体および気体に分類できる。液体分離膜はそ の分離対象物の分子の大きさにより、さらに細かく分類することができる(Table  12)0Fig.  11には分離対象物の分子の大きさとろ過法の関係を示す。なお、 一 般的には限外ろ過(UF)膜と精密ろ過(MF)膜は多孔質膜に、逆浸透(RO)膜は非多孔 質に分類される。気体分離膜に関しては、その分離法の原理、細孔構造の違いに

よりさらに細かく分類することができる。

‑2‑

(10)

素 材 形 状

「 多 孔 質 膜 無機膜│

L非多孔質膜

膜構造

孔質膜一一一一

有 機 膜

I

r均 質 膜

Table 11分離膜の分類[13)

製膜法 対液体分離膜 対気体分離膜

、 溶 出 法 ノ て イ コ ー ル ガ ラ ス 膜 バイコールガラス膜 ト 焼 結 法 ア ル ミ ナ ジ ル コ ニ ア 膜 ア ル ミ ナ , ジ ル コ ニ ア 膜 L放 射 線 法 金 属 多 孔 質 膜

テフロン

ニュクリアポア膜

Pd合金膜,国体電解質膜 ポリイミド

テフロン

非対称膜 相 転 移 法 Loeb型膜 ポリイミド,ポリスルフォン,

酢酸セルロース膜 多孔質膜

「 液 製 膜 法

│溶液塗布法 UOP‑CTA  合膜一一寸モノマー重合法 PEC‑lC削

│界面重合法 30 Lプラズマ重合法 SolconP

酸素富化シリコーン膜 プリズムセバレーター

プラズマ重合膜

上記の分類においても見られるように、現在まで開発された膜の大部分は、有 機高分子膜である。これは、有機高分子材料には安価で優れた性能の膜素材が多 くあること、さらに製膜や加工が比較的容易なためである。しかしながら、現在 膜分離法の非水溶液系、高温高圧気体、腐食性化合物および高温高圧触媒反応へ の展開には大きな障壁が存在している。そのため、無機膜への関心が、ここ数年 の聞に急速に高まってきた。

無機膜は細孔の有無によって多孔質膜と非多孔質膜とがある。非多孔質膜の典 型的な例としてパラジウム金属薄膜(箔)、パラジウム合金膜(箔)およびジル コニア膜などがある。これらの膜には細孔がなく、ガスの透過は国体内のイオン 拡散移動を利用する。通常、イオン伝導は一つの化学種にのみ起こるので混合ガ スから100%の純度で分離ができる。しかしながら、これらの膜のガス透過速度は 極めて遅いので、特別な用途にしか使えない。そのため透過速度を向上させるた

めに高度な薄膜化技術が必要になる。

一方、多孔質無機膜はゾルーゲル法などの製膜技術の発展にともなって盛んに 研究されるようになった。現在まで開発されたサブミクロン 数十μ m程度の精 密ろ過領域の多孔質膜の大部分は、種々の手法で成形された後、焼結法を用いて 製造されている。また平均細孔径が数ナノメーター程度の細孔を有するガス分離 用多孔質膜の作製法は、分相法、ゾルーゲル法などによりほぼ確立されつつあ る。しかしながら、ほとんどの多孔質膜によるガスの透過はKnudsen拡散および

‑3 ‑

(11)

Table 12  膜 分 離 技 術 の 現 状[14]

用 途 分 離 対 象 膜 分 離 技 術 の 現 状 適 用 例 、 能 力 な ど

1)エタノール/水 実用化(西独G打 杜 ) PV  *平膜、ヨーロッパで ~30基、日本で ~10基95%

より エ タ ノ ー ル →99%に濃縮

水 優 先 透 過 開発中(どダ)ウ社、工 PV *ダウ社(平膜)

技院な *中空糸膜(工技院、笹倉機械、加ト吉、徳山曹達)

2)海 水 脱 塩 化 実用化(海水脱塩) RO 120Udagyal/day、ガルフ、デュボン社(中空糸膜)

(淡水化) 5ッダ、建設中

*8m3/day1、茅ケ崎テスト中 実用化(かん水) RO 牢コロラ の再生テスト中 3)超 純 水 の 製 造 実用化(一次純水シス RO 

テム,ユースポイント)UF *電子工業、医薬工業用 4)果 汁 の 濃 縮 実 用 化 RO *トマトジュースの濃縮

5)有 価 物 の 回 収 実用化(化学工業) RO εーカプロラクタム、酢酸、無機塩 6)廃 水 処 理 実用化(鉱山、塗装工 RO 本酸洗またはメッキ廃液処理

業) UF 事塗装廃塗液 か ら の 溶 剤 回 収 、 ポ リ イ ミ ド 膜 な ど

帯電着 装 ラ イ ン か ら の 塗 料 回 収

本パルプ工業廃液処理

7)蛋 白 、 酵 素 等 実用化(食品工業) *乳工業でのUFROEOの利用

の 分 離 濃 縮 RO *大豆蛋白の回収

8)脱 塩 実用化(イオン交換膜 *海水脱塩化

の利用) *製塩

ED 牢醤油の脱塩

酸 、 金 属 回 収 牢鉱価酸廃金液 か ら の 酸 回 収

*有 属 の 電 析 回 収

食 塩 電 解 ED 

9)フェノールや ()マルションILSM 

キゼスコー‑らゼおスJ/)Zn46(pJ(m45トフ 1J7

金 属 の 回 収 マール 60g

*フェノ

(中園、 ノら) 開発検討実施 LSM  の 湿 式 製 錬

吋星式燐酸からのウランの回収

HFILM 牢ウランの湿式精錬

1)アンモニアプラ 実用化(1979,モンサント *"プリズム"は中空糸膜、世界で97基 、 日 本 で5基。

ント、石油精製 ネ土の"プリ ムセパレー 化 学 工 業 プ ロ セ ス 、 石 油 精 製

オ フ ガ ス よ り 水 ター" )  付也のメーカーの開発例、エアプロダクツ社("セパレ 素 回 収 クス"2基),宇部興産(紡UBEガスセパレークス2)

デユポン,ダウ,東洋

2)天 然 ガ ス 中CUl 開発中(ガスのスイートニ 牢ガス:ランドフィルガス、天然ガス、バイオガス H2Sの除去 ングC仇 の 回 収 →EOR)

3)縮空、気白よ富N2 実 用 化(02富化:医療や燃 OECO、社帝医人療、用旭(硝76)、 ダイキン、 クラレなど

化 空 焼用)

気 の 製 造 *燃焼用:松下電装

実用イヒ(高純度N2:シール 牢ノTーミア社"プリズム ‑"92基;ダウ社"ジェネロ 用) "80基;リンデ社:97%N2 

4)鉱ルガ山ス、 ランドフ

中よりの 開発中 事エアプロダクツ社

メタンの回収

5)水 蒸 気 分 離 開発中、 湿実用化気開の始乾(天燥然) *パーミア千土"プリズムーカクタスH ガスの脱 、空 牢宇部興産"メンプレンドライヤ"

6)天 然 ガ ス 中 の ヘ 開発完了(ヘリウムの生 *カナダ、アルパータナ│、│

リウム分離 産)

‑4‑

(12)

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分子量

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Ro 入低圧RO̲1

0.5  0.2 

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逆浸透膜(RQ)、低圧逆浸透膜、限界鴻過膜(UF)、超漉過膜(S町、精密i慮過膜(MF)の領域[13]

懸濁質領域 コロイド領域

イオン、低分子領域 Fig.l1

自由拡散に支配されるため、高いガス分離能を期待できない。これよりも小さな 細孔サイズを有する無機膜の開発は現在ホットな研究課題となっている。

1.3気体分離膜

膜によるガス分離技術は1970年代後半に開発され、深冷分離法、 PSA (吸着分 離)法に次ぐ分離法として急速に実用化が進んでいる。分離対象は、酸素、水 素、二酸化炭素をはじめ、最近では窒素、メタンなど実施例が増加し、将来的に は、希ガス、アルコールなどへの発展が予測されている[19]0Table 12は気体 分 離 膜 の 現 状 を 示 す[14]。現在までこの分野で実用された膜は全て有機膜であ

り、無機膜の利用により有機膜が適用できなかった対象にまで膜分離技術を適用 できる可能性がある。

無機膜の最も重要な利点は高温におけるガス分離に適用可能な点である。高温 の混合ガスの温度を下げる事なく分離することができれば、省エネルギーの面か らも非常に有用である。ポリイミドをはじめ、耐熱性有機膜の開発にはめざまし いものがあるが、適用限界温度は200‑‑300t程度と思われる。そこで、 200‑‑300

℃以上で膜分離法を適用する際には無機膜を用いざるを得ない。しかし、高温で の細孔中のガス透過はKnudsen拡散により支配されており、理論上の上限値(分 子量比の平方根)が存在するため、大きな分子量の違いがない限り、高分離能は 期待できない。通産省工業技術院の iC1プロジェクト

J

において、水素一一酸 化

‑5 ‑

(13)

炭素からの水素の選択透過のため、有機膜とともに、より高温下で用いる膜とし て、 4000Cでのシリカ系の多孔質ガラス膜の利用が検討された[20]0その結果、高 温で使える利点はあるものの、有機膜に比べて、選択性が劣っている点が指摘さ れた。

一方、無機膜の化学安定性を利用して、有機蒸気、腐食性ガス系への展開も検 討されてきた。凝縮性気体に関しては、表面拡散(吸着分子の流れ)や毛細管凝 縮流によるフラックスの増加 (Knudsen拡散の数十倍に達することもある)やブ ロッキング効果による高選択性能の発現が期待される。辻川ら[21]は、細孔径4nm の多孔質ガラスを用いて、窒素‑ベンゼンの分離実験を行い、ベンゼンの選択透 過を確認した。表面拡散支配領域において分離係数が10であるのに対し、毛細管 凝縮領域では、同3000を報告した。また、浅校らがゾルーゲル法を用いて作製し た膜は、加湿空気中、水一アルコール‑水蒸気系からの水の選択除去に極めて高 い分離能を得た。 1nm程度の細孔での毛細管凝縮機構によるものと推定される。

そのほか、ウラン濃縮に用いられている"拡散法"は、多孔質ガラス細孔中での 六フッ化ウランとフッ化水素の拡散速度差によって分離する方法である。ウラン 鉱石とフッ化合物を反応させて生成した六フッ化ウランガスとフッ化水素が強い 腐食性および放射性を有するため、通常の分離法は適用できないので、多孔質ガ ラスを用いた膜分離法により、六フッ化ウランとフッ化水素の混合物分離が可能 になった。

また、パラジウム薄膜(箔)は解離した水素分子がプロトンとして移動するた め、水素のみを透過させることができ、この優れた性質を利用し水素の選択分 離・精製などに用いられている[22,23]。その応用分野は一般の産業における高純 度水素の製造や、やや特殊であるが原子力産業における放射性廃棄物の処理など が挙げられる。しかし、水素を吸収したパラジウム膜は相転移にともなう塑性変 形を受け脆弱になり亀裂など発生しやすいので、銀、金、銅など金属を添加した 合金膜として水素精製などに使用される。また、イオン伝導性セラミックス材料 もガス分離膜として使用できる[24]。たとえば酸素イオン導電性を有する安定化 ジルコニア(Zr02‑Y203)やプロトン導電性のSrCe03系などの固体電解質は、それ ぞれ酸素、水素の分離膜としてガスの分離精製およびメンブレンリアクターへの 応用も盛んに研究されている。しかしながら、これらの膜のガス透過速度が極め

て遅いので、透過速度を向上させるために薄膜化技術を完成せねばならない。

最近、比較的高温下でのガス分離が、多くの化学プロセスにおける省エネル ギーを目指した分離精製、可逆反応生成物の選択的除去による反応率の向上、さ

‑6‑

(14)

ら に 膜 触 媒 に よ る 反 応 と 分 離 の 同 時 操 作 な ど を 目 的 と し て 活 発 に 研 究 さ れ て い る。特に無機膜の耐熱性、耐腐食性などを生かした高温でのメンブレンリアク ターは、反応システムに分離システムを組み込むものであり、反応系だけでは得 られない高転化率と高選択率が同時に達成できる。しかしながら、高温下では毛 細管凝縮分離などはほとんど期待できないため、細孔径制御による分子径あるい は分子形状の相違からのガス分離能の向上、あるいは表面改質による化学種の表 面 拡 散 速 度 の 相 違 か ら の ガ ス 分 離 能 の 向 上 な ど 、 今 後 に 多 く の 課 題 を 残 し て い

る。

1.4  多孔質膜による分離機構

以上に述べたように、混合ガスの分離には、パラジウム合金膜による水素の分 離・精製、国体電解質膜(イットリア安定化ジルコニア)による酸素ポンプなど 特殊な気体透過膜を除くと、主な微細孔(数nm...数μm)を有する多孔質無機膜に よってなされる。分子混合物分離用多孔質セラミックス膜の開発において特に重 要と考えられる点としては、細孔径および細孔構造の制御、細孔表面の改質など が挙げられる。特に細孔径の制御は重要であり、膜の分離選択性を左右する。例 えば、無機混合ガス分離用膜はオングストロームオーダ程度でかつ均ーな細孔を 持つことが必要であろう。また、細孔構造の制御は主に透過係数に関係し、細孔 表 面 の 改 質 は 細 孔 径 の 制 御 と 同 じ よ う に 分 離 選 択 性 に 大 き く 関 係 す る と 思 わ れ る。それはさらに小さい細孔径を制御することより一層高い分離能が向上できる が、ガスの透過速度も大幅に落ちるので、分離効率の面では望ましくない。これ に対し表面改質法は多孔質膜のガス分離能を向上することにもかかわらず、ガス 透過速度をさらに上げられることも可能である。これらの事と関連して、多孔質 セラミックス膜の開発において重要なことは、いかなる分離機構による分離が期 待できるかということである。

多孔質国体膜による主要な分離機構はFig. 12に示すように分類されている [25, 26]0 

粘性流 (Poiseuille流)においては、流過する気体の多孔質膜壁面との衝突によ る速度の変化はないと考えられ、気体の平均自由行程が細孔径より小さい。粘性 流の物質移動速度式は、 1840年にPoiseuilleが次の式を導いた[27]0

川 一

L

山 川

N  町

EEA ︑自/

aEA

/E

1 

‑7 ‑

(15)

NA

は単位面積当 りの透過量

( m o l m ‑

s e c ‑

1) を、

r

は 膜 の 細 孔 半 径 (m) を、 Lは膜 の厚さを、 μは 粘性係数 (Ns m‑ 2)を、

p l

p 2

はの 各 々 上 流 側 、 下 流 側 で の 圧 力 (P a)を 表 す 。 こ の 式 か ら 明 ら か な よ う に 、 混 合 ガ ス が 膜 を 透 過 す る と き 、 膜 の 厚 さ 、 細孔 径 お よ び 膜 両 側 の 圧 力 差 が い ず れ も 定 数 で あ り 、 ガ

ス 透 過 量 の 違 い は 粘 性 係 数μに のみ依存する。

ま た 、 粘 性 係 数 はガスネ重により あ ま り 大 き な 違 い が な く 、 ガ ス の 混 合 な ど 、 他 の 因 子 も 介 在 し て く る た め 、 こ の 機 構 に よ り 気 体 を 分 離 で き る 可能性は低い。

多 孔 質 膜 の 場 合

a)多 孔 質 膜 の 孔 径 と 透 過 機 構

P o i s e u i l l e  f l o w   K n u d s e n  d i f f u s i o n  

0.1  0.2  0.5  1  2  5 10  20  50 1

200 5

10

∞ 

P o r e  d i a m e

e r( n m )  

b)膜 内 の 分 子 の 流 れ

供給側 膜

亡ニコ

透過側

K n u d s e n

拡 散

表 面 拡 散

毛細管凝縮

分 子 ふ る い

イオン拡散

.‑言髪警デ 0 . 0   2 ̲

6 髪蒙易場。 0 .

e 腎議警察事:. ・ ・

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・修諺参議・。

~.匂多安。。0

.~髭髪室卒。

.0什金属また

. 1 ・ ‑

~~~は固体電.・

。予│解質 ド

Fig.I‑2無 機 膜 に よ る ガ ス 分 離 機 構 [2526]

‑8 ‑

(16)

では、表面にクラックやピンホールなどがあれば粘性流が現れ、分離係数が低下 する可能性がある。そのため、表面改質によりピンホールなどを除去することが 必要となる。

細孔径が小さくなると、気体分子と細孔内壁との衝突により拡散が進行する。

この過程はKnudsen拡散と呼ばれる。 1909年にKnudsen[28]、Smoluchowski[29]ら は、 Maxwell‑Boltzmann の運動論に基づ、き、次の拡散係数式を導いた。

町 一 M

フ ニ

π

山 下

4

3

(1 2) 

Dkは拡散係数(m2sec‑1)を、 Tは温度(K)を、 Mはガスの分子量(gmol‑1)を、 Rは気体 定数(JK‑l  moI‑1)を、 fは気体分子が壁に衝突する際に拡散反射(diffusereflection)す る割合を表す。多くの場合、 f=1として取り扱われる。従って、ガスの分離係数の 上限値は分子量の1/2乗に反比例するため、 一般にその選択性は低く特殊な場合を 除いては実用性に乏しい。

さらに細孔径が小さくなり、細孔容積に対する表面積の割合が増えてくると、

全透過量は気相のみで予想、される値よりも大きな値を示すようになる。この差 は、細孔表面に吸着した透過分子の吸着層における流れの寄与、すなわち表面拡 散によるものと考えられている。表面拡散によるガスの透過速度は、

NFDsts! grad CSA  (1 ‑3) 

Dsは表面拡散係数(m2sec‑1)を、

p b

は膜の嵩密度(gm‑3)を、 Sgは膜の比表面積(m2g)  を、

τ s

は細孔の曲折係数を表す。表面拡散には混合物中のある成分が細孔表面に 吸 着 し 、 吸 着 層 内 で の 吸 着 量 の 勾 配 に よ り 選 択 的 に 膜 を 透 過 す る 必 要 が あ る [30]0そのため、細孔表面の改質により化学吸着性能を向上させることにより分 離係数の向上が可能であると考えられる。例えば、水素選択吸着能を持つ白金族 金属超微粒子の分散によって高い水素分離能を有する多孔質膜の開発に有望であ ろう。また、吸着した分子によって有効細孔径が十分小さくなり分子径の大きい 成分の透過が妨げられるならばさらに高い選択性が得られる可能性がある。

毛細管凝縮によるガス分離は混合ガス中の凝縮性成分が細孔内に凝縮透過する のに対し、難凝縮性成分の透過が妨げられるため極めて高い分離選択性が得られ る。しかし、凝縮性成分の濃度が低い場合や、比較的高温での分離においては、

Kelvin の式による毛細管凝縮径が小さくなるため、十分小さな細孔径を持つ膜が 必要となる[31]。

‑9‑

(17)

分 子 ふ る い 機 構 に よ る ガ ス 分 離 は 理 想 的 な も の で あ る が 、 細 孔 径 を 分 子 径 オ ー ダに調製する必要があり、製膜法に難しさがある。この機構による分離において は 、 透 過 分 子 と 細 孔 表 面 と の 聞 に 強 い 相 互 作 用 が 考 え ら れ 、 い わ ゆ る 、 活 性 化 拡 散 に よ る 透 過 が 予 想 さ れ る 。 最 近 、 こ の 機 構 に よ る ガ ス 分 離 が 可 能 で あ る こ と が 明らかになり、注目を浴びている[96]0

1.5無機膜の構造と製造法

現 在 ま で 提 案 さ れ て い る 、 代 表 的 な 多 孔 質 無 機 膜 の 作 製 法 お よ び 1 ‑3にまとめる[32,33河]0

Table 1‑3無機膜の作製法と膜の構造[32,33]

作 製 法 材 質 細 孔 径 膜厚(活性部)

アルミナ,シリカ,ジルコーア O.1mm'"'‑'  0.2mm'"'‑'mm 分 相 法 シリカ 1nm'"'‑'5μm  51'"''数mm

ゾ ル ー ゲ ル 法 シリカ,アルミナ,チタニア,ジルコニア 1nm'"'‑' 6白lID 1n'"'‑'20n ダイナミック法 Zr(IV), Al(III), Fe(III)  RO'"'‑'UF 

陽 極 酸 化 法 アルミナ 10nm'"'‑'80nm  9n'"'‑'lmm トラックエッチング法 マイカ 5nm'"'‑'数μm 7n'"'‑'l∞ 仰n 水 a 法 ゼオフイト '"'‑'lnm  1n'"'‑'5∞ 仰n

塗 布 法 シリカ 14nm  1∞ 山n

熱 分 解 法 カーボン 6n

埋 め 込 み 法 ゼオフイト 0.74nm  120n

分 相 法 は シ リ カ 系 の 多 孔 質 ガ ラ ス や 有 機 系 の ポ リ マ ー ア ロ イ の 作 製 に 用 い ら れ る 方 法 で あ る 。 ア メ リ カ のCorning社 よ り 開 発 さ れ た 多 孔 質 バ イ コ ー ル ガ ラ ス (PSG)の製造工程の一例をFig.13に示す[34,35]0Na20‑B203‑Si02系のガラスを 分相させ、酸を用いてNa20‑B203相を取り除いて多孔質を製造する。この方法よ り作製した多孔質ガラスは、条件を変えることにより、細孔径を幅広い範囲で、

且つ狭い分布で制御できる点に大きな特徴がある。 Coming社の多孔質パイコール ガラスは、その96%がシリカよりなり、代表的な無機膜として数多くの研究に用 い ら れ て き た 。 問 題 点 と し て は 、 熱 水 、 ア ル カ リ に よ る シ リ カ 分 の 溶 出 と 、 薄 膜 化 が 困 難 で あ る こ と で あ ろ う 。 前 者 に 関 し て は 、 表 面 の 改 質[36]、ジルコニアな どの添加による安定化[37]が、後者に関しては、ゾルーゲル法との組み合せ[38]、 塗布法[39]の利用が検討されている。

ゾ ル ー ゲ ル 法 は 、 ガ ラ ス の み な ら ず 様 々 な 結 品 質 ( セ ラ ミ ッ ク ス ) 系 で も 薄 膜 n u  

Ei

(18)

堆積ケイ.酸ゲルの除去 アルカリ水溶液

Fig.1‑3多孔質ガラスの製造工程[3435]

お ・

W1 γι γm

r

prepationof  sollayer 

mγAIOOH gellayer  (lyogel)

inyγAlOOH gel layer  (xerogel)

smtenng  T=4∞~ 1000"C 

inceramic  Al203 layer with  chosen pore size 

Fig.1‑4ゾルーゲル法を用いたアルミナ膜の作製手順[4344]

Fig.1‑5多孔質ベーマイト膜微細構造のモデルμ3]

11‑

(19)

化が可能であることから、大きな脚光を浴びている方法である[40‑42]0アルミニ ウムイソプロポキシドを出発原料とする場合には、 Fig. 14に示す方法によって 安定なベーマイトゾルおよび薄膜を作製できる[43,44]0シリカ、ジルコニア、チ タニアなど[45‑47]の 場 合 で も 、 基 本 的 に 同 様 に し て ゾ ル あ る い は 薄 膜 が 得 ら れ る 。 同 法 に お い て は 、 ゾ ル は ミ ク ロ ン オ ー ダ ー の 細 孔 を 有 す る 多 孔 体 の 上 に 、 デイツプーコーテイングすることにより担持され、その後ゲル化、焼成される。

そ の た め 、 膜 は 非 対 称 構 造 を 有 す る 。 支 持 体 が 強 度 を 持 っ て い る た め 、 薄 膜 で あ っ て も 機 械 的 強 度 の 面 で の 問 題 点 が 少 な い 。 膜 の 特 性 は 、 ゾ ル 濃 度 、 酸 の 種 類、強度、支持体の細孔径、焼成温度に支配される。また、細孔径の制御は、分 相法と同程度に、細孔分布はシャープに制御できる。焼成前のベーマイト膜の細 孔の模式図をFig. 1‑5に示す[43]。膜の細孔はプレート状アルミナ結晶を重ねて 形成した層間間隔からなる。多孔質基板の上にデイツプーコーテイングしたアル ミナ膜も同様の構造を持つことが考えられる。焼成温度が上がるにつれて細孔径 が大きくなることは、プレート間隔の広がりにより説明できる。

ゾ ル ー ゲ ル 法 に 関 し て は 、 光 学 的 、 機 械 的 な 表 面 特 性 の 改 質 を 目 的 と し た

「フィルム

J

コーテングの観点からの研究が主流であり、多孔質膜、分離膜に対 する取り組みは最近のことである。そのため、今後に多くの課題と可能性を残し ているといえよう。そのほか、多孔質支持体の上に、コロイドなどを担持、付着 させることにより、膜を形成させるダイナミック法[48]、陽極酸化法[49]、放射線 トラックエッチング法[50,51]、ゼオライト単結晶をエポキシ樹脂に埋め込み製膜 法[52‑54]、CVD法、プラズマ法を用いた多孔質薄膜の作製も、ガス分離領域での 応用研究が進められている[56]0また、分子ふるいカーボン(MSC)は、ゼオライ トと同様に、分子ふるい能を有し、吸着剤として利用されることもある。 MSCの 薄膜化の観点から、有機高分子膜を熱分解して、 MSCを作製した例もある[55]0 酸素‑窒素混合ガス系に対して分離係数7.1が得られた。

1.6主な無機膜の開発および応用状況 1.6.1シリカ系多孔質ガラス膜

この膜は前述のComing社の多孔質ガラス膜と調製法および素材的にはほぼ同じ であり、分離原理は気体の分子量の違いを利用したKnudsen拡散機構による。ま た、東洋紡績(株)において、通産省工業技術院の大型プロジェクト「一酸 化 炭 素を原料とする基礎化学品の製造法jの研究開発の一環 と し て 、 多 孔 質 ガ ラ ス 膜 とそのモジュールの開発が行われた[57]0その中で、細孔径が数nmから数十nmの

‑12 ‑

(20)

多孔質ガラス膜も開発され、さらに、外径2mm、内径1mmの中空糸多孔質ガラス による膜モジュールが開発された。このモジュールは5000

C

、50atmの条件で、も安 定であった。このような耐熱性に優れたモジュールは、特に高温域における混合 ガスの分離などに使用が期待できるが、ガス分離能および耐高j副く蒸気安定性が 乏しいなどの問題点が残っている。

多孔質ガラス膜の分離能の向上を目指して、表面塗布および表面改質などが考 えられる。 Gavalasら[58]、諸問ら[59]はシランの減圧CVDあるいはRF‑プラズマ CVD、Megirisら[60]はトリイソプロピルシランの減圧CVD法を用いて多孔質ガラ スチューブの片面にアモルファスシリカ薄膜を付けている。水素、窒素純ガスの 透過速度比は改質前の 2~3 から、改質後の 6~ 数 10以上を得ている。ただし、混合 ガスの分離および2000

C

以上の耐熱性については報告されていない。大矢ら[7,8]  はCVD法とゾルーゲル法を併用ことにより、多孔質ガラス管の表面に多孔質ジル コニア薄膜を担持させ、高透過率、高選択性の水素分離膜を開発した。また、

Gavalasら[61]は、 AIC13、SiC14、TiC14などの蒸気と水蒸気を膜の片側からそれぞ れ拡散させ、多孔質ガラスの内部で酸化物を析出させている。改質後の多孔質膜 は選択透過性が大幅に向上したが、透過速度が非常に遅くなった。浅枝ら[31,62‑ 64]は多孔質ガラス膜にゾルーゲル法を用いてアモルファスシリカ膜を製膜してお

り、 2000Cま で 極 め て 高 い ガ ス 分 離 能 を 得 て い る 。 膜 を 透 過 す る 速 度 は He>H2>C02>N2の順で、 vander Waals径の序列と一致し、分子ふるい特性が出て いる。ただし、高温での耐熱安定性については報告されていない。そのほか、

Hwangら[65]は、多孔質ガラス膜の上に塗布、重合させて得たポリメチルシロキ サン膜を熱分解し、シリコーンベースの膜を調製した。この膜におけるガス透過 は、室温.で、H2S>C02>Heの)11買になっており、 4000C、でH2>Heの)11貢となることから、

吸着特性が関与していると推定される。

1.6.2アルミナ系コーティング膜

市販の無機膜は α一アルミナ、コーデイエライトなどを焼結して製造されてお り、 lμm程度の系団子しを有し、ガス分離能が乏しい。このため、多くの研究はゾ ルーゲルを用いた多孔質アルミナ基板の表面へのより微細な細孔を有する γ一ア ルミナコーテイング膜の作製について検討している。 Burggraafら[66‑68]はベーマ イトゾルを用いて、 C02、H2、CH4などの分離膜、限界ろ過膜としての適用性に ついて検討を行った。ガスの分離原理はC02の吸着および凝縮によることが考え

られる。

‑13 ‑

(21)

浅枝ら[63]は数ミクロンの細孔を持つ多孔質チューブにゾルーゲル法により作 製したアルミナコロイドを担持、焼成後、アルミニウムイソプロポキシドを用い て水熱処理することにより複合膜を作製した。この膜は凝縮系の混合物の分離に 関し、極めて高い選択性を得た。分離機構はオングストロームオーダーの細孔で の凝縮によるものと結論された。また、諸岡ら[69,70]はベーマイトゾルのろ過法 を用いて、外径2.0mm、内径1.4mm、来田子し径0.17μmの多孔質アルミナ中空糸の内 壁に、膜厚0.5‑‑‑‑‑2μmのピンホールのないベーマイト膜を調製した。ただし、膜 の耐熱性および分離能については報告されていない。

1.6.3その他の分離膜について

高い水素選択分離膜として、菊地ら[71,72]は、多孔質アルミナ膜の上に無電解 メツキ法で厚さ5‑‑‑‑‑6μmの金属パラジウム膜を析出することにより、水素選択透 過性が多孔質アルミナより大幅に向上されることを報告している。さらに、この 膜に銀などを添加して合金化し、パラジウムの水素脆性を防止した。

また、固体電解質の酸素や水素をイオンの状態で透過させる性質を利用して、

イットリア安定化ジルコニアを用いた酸素分離器(酸素ポンプ)や国体電解質燃 料電池の研究が進められている[24]0国体電解質膜はパラジウム合金膜と同様に 高選択分離性であることと、耐熱性を利用して、反応制御の膜反応器に利用した 研究もなされている。竹平ら[73,74]はイットリア安定化ジルコニア膜を用いて、

新規酸化プロセスを開発している。また、嵐ら[75]は同じ膜を用いて水の分解反 応の研究を行っている。

1.7  メンブレンリアクター

反応システムに分離工程を組み込むことによって、反応系単独の場合には得ら れない特性の発現を狙った研究が盛んに行われるようになった。この10年間に分 離膜素材の開発は急速な進展を示したが、これを背景に膜分離を組み合わせた反 応器、すなわちメンブレンリアクターの研究が日本を中心に進められている。

触媒と膜との位置関係からメンブレンリアクターは主な反応促進型と触媒機能 型の二種類に分けられる。前者は触媒層で反応を行い、生成物の全部または一部 を分離膜によって反応系外に分離・除去する。後者は触媒を膜表面または細孔中 に固定し、反応と分離をhybrid的に組み合わせる。そのほか、本研究で開発され たような触媒機能と反応機能を共に持っているメンブレンリアクターもある。

従 来 の 反 応 器 に 比 べ 、 メ ン ブ レ ン リ ア ク タ ー は 次 の よ う に 優 れ た 特 徴 を 有 す

‑14 ‑

(22)

る。

(1)反応物と生成物を分離することによるプロセスの合理化

(2)反応系からの生成物の除去による見かけ上の平衡移動に伴う転化率の向上 (3)阻害物の除去による反応速度の増加

(4)最終生成物のみの除去による副反応の抑制 (5)中間生成物の除去による部分反応選択性の向上

(6)反応物を濃縮した形で供給することによる反応器効率の向上 (7)反応物をそれぞれ供給することによる選択性の向上

(8)触媒活性サイト雰囲気の制御による特異な反応活性の発現 (9)膜を介しての高伝熱性

(10)膜を介した反応のカップリング

以 下 に 反 応 促 進 型 メ ン ブ レ ン リ ア ク タ ー お よ び 触 媒 機 能 型 メ ン ブ レ ン リ ア ク ターを分類してそれぞれ述べる。

1.7.1  反応促進型メンブレンリアクター

反応促進型メンブレンリアクターの模式図をFig. 1‑6に示す[76]。反応器の中 に生成物の一部または全部を選択的に分離できる分離膜を装着し、反応と分離を 同時に進行させる新型反応器である。例えば、次のような可逆反応を考える。

生 成 物 の一部 で ある成分Cを反応 の 進 行 と 同 時 に 膜 に よ り 逐 次 分 離する。成分Cが 膜 に よ り 反 応 系 外 に 分 離 ・ 除 去 さ れ る こ と に よ り 逆 反 応 が 抑 制 さ れ 、 正 反 応 の

A + B

司 全

C + D

(1 ‑4) 

原料ガス

Fig. 1‑6メ ン ブ レ ン リ ア ク タ ー の 模 式 図[76]

生成物C 生成物D

進行が促進される。このように、メンブレンリアクターが生成物の分離により、

目的反応を阻害する逆反応や逐次反応を抑制することができる。また、実際の操 作において、より低い温度で高い転化率が得られることや、より低い圧力で反応操

‑15 ‑

(23)

作ができるなど、反応操作条件を大幅に緩和できる利点があり、触媒寿命を長 く することができるなどの効果もある。

1.7.1.1多孔質ガラス膜を用いたメンブレンリアクター

無機多孔質膜の耐熱性を生かした高温メンブレンリアクターは、 Knudsen機 構 による低分子成分の透過が利用される。そのため、脱水素反応に生成した水素の 除去を組み合わせた系が数多くに研究されてきている。

亀山ら[77‑79]は多孔質ガラス膜を用いてメンブレンリアクターを作製し、研L化 水素の分解反応、について研究を行なった。膜の外側の硫化モリブデン触媒層に硫 化水素が導入され、脱水素反応、が進行するとともに、反応物と生成物水素の分離 が行われた。 8200Cでの実験結果、 Knudsen拡散の理論値に近い分離係数3.7が得ら れた。温度が高いまま分離することができるため、省エネルギーの観点からも有 利に、しかもシンプルなプロセスで水素の濃縮が可能で、あることが示された。

化学平衡のシフトという観点から、 Shinjiら[80]は、シクロヘキサンの脱水素反 応を取り上げた。多孔質ガラス管の内側に白金担持アルミナ触媒が充填され、内 側にシクロヘキサンと窒素、外側にはスウイープガスとして窒素が導入された。

その結果、同じ触媒充填固定床反応器の場合に比べ、大きく転化率が向上するこ とが分かった。同反応系は伊藤ら[81,82]によって、さらに詳細に検討された。シ クロヘキサンの漏れだしの影響を定量化し、シミュレーションにより最適膜厚が 存在することが示された[83]0また、 Songら[84]は、多孔質ガラスチューブを用い てメンブレンリアクターを作製し、メタノールの酸化脱水素反応によるホルムア ル デ ヒ ト 合 成 反 応 に 関 す る 研 究 を 行 っ た 。 チ ュ ー ブ の 内 部 に 針 状 銀 触 媒 を 充 填 し、 300‑‑4000C、latmで、の反応結果、固定床反応器より高いメタノール転化率が 得られた。そのほか、 Sunら[85]は、含浸法により、直接白金を担持させた多孔質

ガラス膜を用いて、同じ反応系で実験を行い、理論的検討を行った。

1.7.1.2パラジウム金属膜を用いたメンブレンリアクター

パラジウム金属膜は水素のみを透過させる膜である。この膜を用いて作製した メンブレンリアクターは、触媒反応、が促進される上に、透過側から高純度の水素 が得られる利点もある。

w

d[86]Gryaznov[8788]らはパラジウム合金膜を工業 的に重要なイソペンタン、ブタンの脱水素反応に適用し、各々イソプレン、ブタ ジエンを得た。前者に関しては平衡値14%を上回る21%の転化率が、後者に関し ては同2%に対し6%が得られた。伊藤ら[89,90]は市販の金属パラジウムチューブ

‑16 ‑

(24)

、 ‑

(膜厚:200μm)を用いるメンブレンリアクターを作製し、同じシクロヘキサン の脱水素反応を検討した。反応条件を選択することにより 100%の転化率がが得ら れた。さらに、透過側に酸素導入ことにより、転化率を向上するとともに、水素 の 燃 焼 発 熱 を シ ク ロ ヘ キ サ ン の 脱 水 素 反 応 用 吸 収 熱 と し て 利 用 す る こ と も で き た。

大部分の研究では市販の膜を用いているため、システムの限界は膜の透過速度 で限定されてしまっている。これに対し菊地らは、多孔質ガラス管の外壁に無電 解メツキにより 20μmのパラジウム膜を製膜した。この膜を用いてメンブレンリ

アクターを作製し、水性ガスのシフト反応[91]、メタンの水蒸気改質反応[92]など を検討したところ、平衡転化率の1.5‑‑2倍の転化率が得られることを報告してい る。

1.7.2  触媒機能型メンブレンリアクター

触媒機能型メンブレンリアクターは、膜自身もしくは膜表面に担持した触媒に より、新しい触媒機能を発揮する反応器である。触媒機能を有する膜を開発する ことができれば、上述の利点に加え、充填層と異なる低圧力損失、高触媒活性お よび高触媒利用率などの利点が期待される。

現在まで触媒機能型メンブレンリアクターを利用する触媒反応の例としては、

主にパラジウム金属膜を用いた選択水素化反応である。パラジウム金属膜中に水 素 を 透 過 さ せ 、 透 過 水 素 に よ る 水 素 化 反 応 の 研 究 を 種 々 の 視 点 か ら 行 わ れ て い る。その代表的な例としてはGryaznovら[87,93]により開発された炭化水素類の選 択水素化反応による重要な有機化合物の合成に関する研究である。例えば、パラ

ジウム膜あるいはPd‑Ag、Pd‑Ru合金膜を用いて製薬原料のリナルル(Linalool)、ピ タミンK4および重要な化学原料のシクロペンテン、テトラリン、テトラヒドロフ ラン、アニリンなどの合成反応の結果、従来の反応系に比べ高い転化率が得られ る上に、いずれも90%以上の高い選択率が見出されている。しかし、このような 反 応 器 は パ ラ ジ ウ ム 薄 膜 の 製 膜 に 制 約 さ れ る た め 、 特 別 な 反 応 し か 利 用 で き な

\/~。

最近、触媒機能を有する多孔質膜を利用したメンブレンリアクターの作製およ び触媒反応への応用に関する研究論文が見られるようになってきた。研究例とし ては、多孔質アルミナ膜あるいは表面に銀触媒を担持したアルミナ膜によるメタ ノールの脱水素反応[8498, 99]、多孔質V205引u2複合酸化物膜によるNOの接触 還元反応[100]などがある。しかしながら、触媒量が少ないため、透過速度に比べ

‑17 ‑

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