におけるメタンの水蒸気改質反応
への応用
第
5
章 白金族金属分散アルミナ膜を用いて作製したメンブレンリアク ターにおけるメタンの水蒸気改質反応への応用5.1 緒 言
炭化水素の水蒸気改質反応、はナフサや天然ガスなどの炭化水素と水蒸気を7()()‑‑ 9000Cで反応させ、水素や合成ガスあるいは都市ガスの製造を目的とした最も重要な
プロセスの一つである。世界各国におけるアンモニア合成、メタノール合成、石油 精製、あるいは燃料電池の分野で使用されており、大規模なプラントが数多く稼働 している[1‑7]。しかし、最近では中小規模の都市ガス製造やオンサイト水素ガス製 造、燃料電池用水素の製造など利用分野の拡大にともなって、小型および低温プロ
セスの開発が強く望まれている。特に燃料電池用の水素を製造する場合は、高温で 水蒸気改質反応を行なうと水素のほかに燃料電池の電極の被毒物質となる一酸化炭 素が多量に生成することから、さらに低温で
c o
のシフト反応を行ないc o
の量を減 ずる必要がある。これに対し、低制く蒸気改質反応、では被毒物質とならない二酸化 炭素と水素ガスが主生成物であり、燃料電池用水素を製造する目的として最適なプ ロセスであると考えられる[8‑9]。また、エネルギーおよび環境問題に対処すべく、低温廃熱利用プロセスの開発がさけばれており、その観点からも低温水蒸気反応の 開発は極めて意義深い研究課題である。しかしながら、この反応は吸熱反応で、低 温での転化率や水素収率は熱力学的平衡によって低く制限される。一方、メンブレ ンリアクターは、触媒反応、をしながら未反応の原料と生成物の全部あるいは一部を 選択的に分離することができるため、生成物の選択除去によって化学平衡を生成物 側に移行するとともに、逆反応、を抑えより低温で高い転化率が達せられる[10‑17]。 したがって、メンブレンリアクターを利用して炭化水素の低j副く蒸気改質反応に応 用することによって高転化率と生成水素の分離濃縮を同時に可能にする高効率な水 素製造プロセスの開発が期待できる。
このような高温触媒反応プロセスに利用できるメンブレンリアクターは、耐熱 性、耐高温水蒸気安定性および高い水素選択透過能を有する無機分離膜が必要であ
る[18‑20]0第3章に議論したように、本研究で開発された白金族金属分散多孔質ア ルミナ膜はKnudsen拡散機構の予想、値以上の高い水素選択透過速度および分離能を 持っており、水素分離型メンブレンリアクターとして有望であると考えられる。そ こで、本章ではこのような白金族金属分散多孔質アルミナ膜を用いて水素分離型メ ンブレンリアクターを作製し、メタン低j副く蒸気改質反応への応用について検討し
‑83 ‑
た。さらに、白金族金属分散アルミナ膜自体の触媒活性を利用してメンブレンリア クターを作製し、メタンの低j副く蒸気改質反応への適用性について考察した。
5.2 実験方法 5.2.1 触 媒
メタンの水蒸気改質反応に用いた1.33wt% Ru/Al203触媒はゾルゲル法を用いて以 下のように調製した。アルミニウムイソプロポキシドを加水分解して得たベーマイ
ト(y‑AlOOH)ゾルの中に所定量のRuC13水 溶 液(Ru/Al203=1.33wt%)を加えて均一に 分散し、蒸発皿中に入れて室温でおよそ2週間乾燥後、 1200Cで2時間乾燥して、 Ru 分散アルミナゲルを調製した。得られたゲルを10‑‑20メッシュに粉砕し、 8∞℃で5 時間焼成および5∞℃で3時間水素還元を施して、 1.33wt%Ru/Al203触媒(ゾルゲル法)
とした。
また、比較のため、含浸法を用いて1.33wt% RU/ Al203担持触媒を調製した。調製 法は次の通りである。参照触媒γ‑Al203(JRC‑AL04)を5∞℃で2時間焼成し、粉末状 に粉砕させ、蒸発皿に入れ所定量のRuC13水 溶 液(5ml溶液j1g)を加え、撹祥しながら 乾燥させる。 5000Cで2時間焼成して得られたアルミナ担持Ru触 媒 を 整 粒(10‑‑20 メッシユ)後、 8000Cで5時間焼成および5000Cで3時間水素還元を施し、 1.33wt% Ru/
Al203触媒(含浸法)を調製した。
5.2.2 膜の作製 長さ25cmの多孔 質アルミナチュー ブ (O.D.=10mm
、
I.D.=8mm、
poresize=5‑‑8μm
、
TOTO(株)提供)の両端の外壁面に ガラスシーリング を用いてそれぞれ 10cmを 封 着 さ せ た。チューブの内 側 に 所 定 量 の RuC13
、
RhC13、
5μm Fig. 5‑1多孔質アルミナチューブの内側に3.0wt%関l‑A1203
ゾルを30回コーテイングした膜の表面および断面SEM
写真
‑84‑
Pd(NH3 )4C12および H2PtC16などの金属塩 を溶解したベーマイ
ト ゾ ル を デ イ ツ プ コーテングして、室 温で12時 間 乾 燥 さ せ、 5000Cで2時 間 焼成する操作を30‑‑‑‑‑
40回繰り返して、お よそ15μmの厚さの 白金族金属分散アル ミナ膜をコーティン グした
( F i g . 5 ‑ 1 )
。 膜における単一ガスの透過係数を測定し たところ、多孔質ア ルミナ基板の片面に コーテイングした白 金族金属分散アルミ
ナ膜と同程度の高い 水素選択透過能を示
した。
5.2.3 反応装置 上述の方法で調製
(A)
Ar
(B)
Ar
Thermocouple
( C )
匝0,CH4, N2Ru/A12U3 Catalyst
CH4, N2, fu, CO, C02 etc. CH4, N2, fu, CO, C02 etc.
Fig.5‑2 三種反応器の模式図
(A)触媒充填メンブレンリアクター;
(B)膜本体のみを触媒とするメンブレンリアクター
( C )
通常の固定床反応器した白金族金属分散多孔質膜をコーティングした多孔質アルミナチューブの内部に 1.33 wt%Ru/Al203触媒(ゾルゲル法)2gを充填し、それを二重管構造の反応器の内管 として組み込み、
F i g . 5
・2
に示すようなメンブレンリアクター(反応器A )
を作製し た。また、比較のため磁性管を用いて作製した通常の固定床反応器σig.5‑3反応器C) および触媒層を充填しない白金族金属分散アルミナ膜自体のみを用いるメンプレン
リアクターσig.5‑2反応器B)を用いてメタンの水蒸気改質反応の性能を評価した。
‑85 ‑
5.2.4 水蒸気改質反応の性能 評価
メタンの水蒸気改質反応は
F i g . 5
・3
に示す流通式メンブ レンリアクターを用いて測定 した。原料ガスのCH4、H20 およびN2 (H20:CH4:N2= 1‑‑‑‑‑ 5:1:1‑‑‑‑‑3) を そ れ ぞ れ200‑‑‑‑‑ 3∞℃に加熱した混合器に導入し た 後 、 メ ン ブ レ ン リ ア ク ターの内管の上部から触媒層 へ送り込んだ(反応条件:300
5 4 3
1. Feeder, 2. Gas bottles, 3. Pressure reducers, 4. Needle valve, 5. Flow meter, 6. 3‑way valve or stop valve, 7. Pressure sensor, 8. Evaporator, 9. Membrane reactor, 10. Heater, 11. Trap, 12. Gas chromatography, 13. Soap film flowmeter
‑‑‑‑‑6000C、H20/CH4=1‑‑‑‑‑5(mol! F!g.̲ 5‑3 メタンの水蒸気改質反応に用いた実験装置 のフローダイヤグラム
mol)、 膜 両 側 の 圧 力 差=10‑‑‑‑‑
30kPa)。触媒層で生成した水素ガスおよび他のガスの一部は、触媒層から分離膜を 透過して反応系外に除去され、残りの未透過ガスは反応器下の出口から排出する。
また、透過速度が遅いため、透過側にはスウィープガスとして0...100cm3 /minの Arを供給した。原料ガスおよび透過側、非透過側の排気ガス組成はガスクロマトグ ラフを用いて分析した。また、メタンの転化率は透過および非透過側の生成物組 成、流速を用いた次の式から算出した。
F
C c
H4+ fCCH4CH4 conv. = (1 ‑ ~~~. '‑'U‑. ) x 100 %
F
( C c
H4 + CCO+叱
α)+ f(cCH4+ CCO + Ccα) (5‑1) ここで、F
,C
およびf,cはそれぞれ触媒層側および透過側出口ガスの流量および出口 ガス中の各成分のモル分率である。また、他の反応器(B,C)を用いる場合水蒸気改質反応は反応器(A)とほぼ同じ反応、
温度、原料ガス供給速度とガス組成で行なった。触媒を充填しないメンブレンリア クター(B)場合膜両側の圧力差およびスウィープガス流速は同ーとした。
53 固定床反応器を用いた触媒活性の評価
Fig.5
・4
はゾルゲル法および含浸法で調製した1.33wt%Ru/Al203触媒を用いたメ タンの水蒸気改質の固定床反応における触媒活性の反応温度依存性の比較を示す。いずれの触媒においても反応は3∞℃付近から始まり、 6700
C
でほぼ100%のメタン転‑86‑
化率に達した。含浸法で調製し た触媒は6000C以 下 の 低 温 領 域 ではメタンの転化率が熱力学平 衡値以下にとどまるが、これに 対しゾルゲル法で調製した触媒 は全測定温度領域で熱力学平衡 値とほぼ一致する高いメタンの 転化率を示した。。
Fig. 5‑5含浸法およびゾルゲ ル法で調製した触媒の活性の経
1
∞
700 時変化を示す。 47S0
C
でメタンの水蒸気改質反応を60時間以上 Fig.5‑4ゾルゲル法および合浸法で調製した1.33wt%
Ru/Al203触媒におけるメタンの水蒸気改質反応活性 継続した場合、いずれの触媒に の比較 S.V.=2側 h‑1, H20/CH4=3.0
おいても高いメタンの転化率を
0
,含浸法;口,ゾルゲル、法; ー一一,熱力学的平衡値 維持していることが分かった。特にゾルゲル法で調製した触媒 における低j副く蒸気改質反応活 性および活性安定性は含浸法に より調製した触媒よりも高く、
メタンの低削く蒸気改質反応用 触 媒 と し て 適 す る と 考 え ら れ
る。
5.4水 素 分 離 型 メ ン ブ レ ン リ ア クターを用いた水蒸気改質反応 則、 Ru、Pd、pt分散アルミナ 膜およびアルミナ膜をコーテン グした多孔質アルミナチューブ
求、、、
, ,
, ,
, ,
,
を用いて作製したメンブレンリ
アクター(反応器A)のメタン水蒸気改質反応におけるメタン転化率を通常の固定床流 通反応(反応器C)および平衡転化率と比較してFig.5‑6に示す。 Ru/Al203触媒を用い た固定床反応の場合、平衡転化率にほぼ一致する活性が得られた。メンプレンリア クターでは触媒層で生成した水素ガスがほかのガスに比べて速く膜を透過するた