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高い水素選択分離能を有する金属分散アルミナ膜の開発

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 56-71)

3.1  緒 言

高性能ガス分離膜に望まれる特性として、 1)、ガス種に対する選択透過性が高 い、 2)、ガスの透過速度が速い、 3)、耐熱性および化学的安定性が高いなどがあ る。第一章で述べたように、アルミナ、シリカなどの膜を中心とする無機膜の大部 分は、イオン伝導膜、水素透過性金属膜など特殊な例を除くと、 一般的な高分子膜 にみられる溶解・拡散過程による選択透過が期待できないので、多孔質膜の形で使 われる。これらの膜は細孔径が数μm‑‑‑‑数nmの範囲にわたるものが作られており、

ガス透過機構は気体分子聞の衝突が支配的な分子拡散領域から、気体分子と細孔壁 との衝突が支配的なKnudsen拡散領域までにわたる。膜の耐熱性や化学的安定性は 高いが、ガス分離能は高分子膜に比べると著しく低い[1]。最近、ゾルゲル法、 CVD 法およびゾルゲル‑CVD処理複合製膜法などを用いて多孔質セラミック基板の上に 複合膜をコーテイングすることにより無機膜の選択分離能が改善されたが、それに 伴ってガスの透過速度も大幅に低下し、実用的な分離能に限界が生じる[2‑5]。

一方、多孔質材料を用いてガスを透過分離する場合では、細孔径が小さくなり、

細孔容積に対する表面積の割合が増えてくると、凝縮性あるいは吸着性ガスの全透 過量が気相のみで予測される値よりも大きな値を示すようになる。この差は吸着相 での透過分子の流れの寄与、すなわち表面拡散によるものと考えられている[6,7]。 水のような凝縮性の強い気体の場合には、表面拡散量が気体での拡散量の数十倍に も達することもある[8]。表面拡散が確認された多孔質材料としては、多孔質ガラ ス、シリカゲル、シリカアルミナ、活性炭など、ガス種は、水素、酸素、水蒸気、

二酸化炭素、炭化水素などがある[9]0

また、表面拡散速度はガス種の吸着量に依存する[10]。金属担持触媒の吸着性能 の研究結果によると、 Ni、Pd、Ptを代表とする周期表第四族などの遷移金属は、水 素分子を解離吸着する特性を持っている。 Schuitら[11]は、シリカ担持金属の水素解 離吸着活性に対し以下の序列を示した。

Rh>Ru>Pd>Pt.Ni>Ir.Co>Fe>Cu 

また、 Ni、Rh、 Ru、Pdなどの金属をA1203、Si02、Ti02などの多孔質材料の上に担 持させて調製した金属担持触媒は、高温で吸着した水素が担体上へスピルオーノマー するため、水素に対する吸着量が大幅に向上することが知られている [12]0そこ で、本研究は、多孔質アルミナ膜の細孔中へ遷移金属微粒子を分散することによっ

‑47 ‑

て膜の水素選択透過性能を改善し、高性能な水素分離膜を開発することを試みた。

本章では、高温での水素分離および水素分離型メンブレンリアクターへの応用に 強く望まれている高い水素透過速度と水素選択分離能を有する新規な多孔質無機分 離膜の開発を目的として、 Rh、Ru、Pd、Pt、Ni、Co、Feおよび:Cuなどの金属分散 アルミナ膜を調製するとともに、膜の水素選択透過能および分離能、膜の表面およ び細孔の微細構造などについて研究した。

3.2  実験方法

3.2.1  膜 の 作 製

膜はゾルのデイツプコーテイングにより作製した。膜の作製ステップをFig.3‑1 に示す。 800Cの熱水を所定量のアルミニウムイソプロポキシド(H20/Al=100mol/  mol)を加え、 10%のHCl溶液(HCVAl

= u

.OlmoVmol)添加して約3時間撹排して均一な ベーマイト溶液(γ‑AIOOH)を調製した。得られたベーマイトゾルの中に所定量の RhC13、RuC13、Pd(NH3)C12、H2PtC16およびNi(N03)2、Fe(N03)3、Cu(N03)2、 CO(N03)2の溶液を加えて12時間以上撹枠し、均一半透明な金属分散ゾルを調製し た。得られたゾルを3‑‑‑6倍に希釈した後、 9500

C

で2時間熱処理した多孔質アルミナ 基板(16x16x1.5mm3、 平 均 細 孔

径=500nm、気孔率=45%、ニッ カトー製)の片面にデイツプし て 、 室 温 で12時間乾燥させ、

5∞ ℃ で2時間焼成する操作を15

‑‑‑30回以上繰り返して、厚さお

Al(i‑OPr)3  H20 

n

O

・ ・ ・

& 圃

6EL‑u一JMqrk‑a 

P3

Ei

m

m e

一n一ρ

o b

O一m

O一H一

Boehmite sol 

(or RhCI3, PdI4)4CI2H2PtCI6, 

RuC13INi(Nω)Fe(Nω)3Co(N03)3,  Cu(N03)2,は.)

Metal ‑boehmite sol  よそ10‑‑‑15μmの均ーな膜を調

製した。

また、上述のように調製され た金属塩添加ベーマイトゾルを そ れ ぞ れ50ml取 っ て ペ ト リ 皿 (直径=10cm)に入れて、空気中 で数日間乾燥させ、 5000Cで空 気 中2時 間 焼 成 し 、 非 担 持 試 料 (バルク体)を得た。得られた担 持 膜 お よ び 非 担 持 試 料 を5000C で3‑‑‑5時間水素還元して、金属

Dip ‑coating  ‑‑‑‑‑, 

: Repeating  Calcination at 773KI一一一:

T,2I773K,3h  Me~ disper~ed alUffi1na memorane 

Fig.3‑1  ゾ ル ゲ ル 法 に よ る 金 属 分 散 ア ル ミナ膜の作製手順

‑48 ‑

分散アルミナ膜とした。膜の表面微細構造、細孔径分布、結晶状態およびガスの透 過、分離特性を評価した。

3.2.2  膜のガス透過係数、分離係数の測定

多孔質アルミナ基板の片面にデイツプコーテイングした多孔質膜はガラスシーリ ング(日本電気硝子:GA‑33)を用いて磁性管の一端に接着(接着条件:850t、3lin) させ、 2.2.2節と同じ二重管構造のガス分離、透過係数測定装置に組み込み、H2、

N2、He、Ar、 CH4、C02のガス透過係数の測定および水素一窒素混合ガス分離実験 を行った。また、混合ガス中水素の分離係数は次式より算出した[13]0

分離係数、 α =  (H2/N2)透 過 側 /(H2

! N

2)非透過側 (3‑1) 

3.2.3  膜の微細構造の評価

膜の結晶構造および金属状態の確認は粉末X線回折(Rigaku、RINT14∞)、 CuKα 線を用いて測定した。

金属分散アルミナ膜の表面状態、膜と基板の接着状態および膜の厚さを走査型電 子顕微鏡(SEM、JEOL‑T330A)および走査型高分解能電子顕微鏡(目立S‑9∞)により 観察した。

金属の分散状態および粒子径分布を透過型電子顕微鏡(TEM、JEOLJEM‑2∞OFX) で観察した。

膜 の 比 表 面 積 と 細 孔 径 分 布 は 定 容 真 空 系 装 置 を 用 い て 測 定 した。液体窒素温度(ー 1960C)での窒素吸着等 温線をもとにB.E.T法 および、Inkley法によっ て そ れ ぞ れ 算 出 し た [14]0 

3.2.4  テトラエトキ シ シ ラ ン を 用 い た 膜

のCVD処理

テ ト ラ エ ト キ シ シ

5  4 

3  2 

1, Gas sylinder; 

2

, Pressure reducers;  3, Needle valve;  4, Flow meter;  5, Pressure sensor;  6, TEOS bubbler;  7, 3‑way valve or stop valve;  8, Experimental apparatus;  9, Membrane; 10, Heater;  11, Soap film tlowmeter 

TEOS=Si(OC2H5~

Fig.  3‑2 

膜の

CVD処理に用いた実験装置

‑49‑

ラン(Si(OC2HS)4)を用いた膜のCVD処理はガス分離、透過装置(Fig. 32)を用いて 行った。 20cm3jminの窒素ガスでテトラエトキシシラン溶液をバプリングした後、

磁性管の一端にガラスシーリングで接着した多孔質アルミナ膜または金属分散アル ミナ膜の膜面側(高圧側)に導入し、反対側に2Ocm3jminの酸素一窒素(02:N2=1:1)の混 合ガスを入れて、 4000C、膜両側の圧力差=30‑‑‑‑‑40kPaで、テトラエトキシシランを透 過させながら細孔中で分解させ、生成したSi02を細孔中に析出させることによって オングスタロームオーダーの細孔制御を試みた。

33  白金族金属分散アルミナ膜の調製および微細構造

1.33wt%Rh、 Ru、Pd、pt分散ベーマイト(γ‑AlOOH)ゾルおよびベーマイトゾルを それぞれ3倍希釈し、 9000Cで2h焼成(前処理)した多孔質アルミナ基板の片面に デイツプコーティング‑乾燥‑焼成(5000Cx2h)の担持操作を15回行った後、さらに 上記ゾルを 6倍に希釈したゾルを用いて10‑‑‑‑‑15回の担持操作を繰り返して、白金族 金属分散アルミナ膜およびアルミナ膜を調製した。得られた膜のSEM写真をFig.3

3に示す。白金族金属分散アルミナ膜は多孔質アルミナ基板の上に均一的に担持さ れていることが観察され、厚さはおよそ10‑‑‑‑‑15μm程度であることが分かった。

白金族金属分散アルミナ膜の微細構造を高分解能SEM、 百M観察、 XRD測定、細 孔 径 分 布 、 比 表 面 積 、 細 孔 容 積 お よ び 平 均 細 孔 径 測 定 に よ っ て 検 討 し た 。

1.33wt%Rh、 Ru分散アルミナ膜の表面高分解能SEM写真をFig.3‑4に示す。多孔質 膜は長さ60‑‑‑‑‑1∞nm、直径20‑‑‑‑‑40nmのアルミナ粒子により構成されていることが分 かった。また、膜表面の細孔径がおよそ3nmである。 Fig.3‑5に5∞℃、 3h水素還元 後の白金族金属分散アルミナ膜(バルク体)のTEM写真を示す。平均直径およそ5nm

の白金族金属超微粒子がアルミナ膜の上に均一に分散されていることが分かった。

また、アルミナ粒子の直径はおよそ20nmであった。

5000C、3 Mく素還元後の1.33wt%RuおよびRh分散アルミナ膜のXRD測定結果を Fig.  36に示す。膜はγ‑A1203相とRuあるいはRh金属の混合相であった。また、

Scherrer式[15]

0.9 j(Bcos 0 B)  (3‑2) 

より求めた。金属Ru、Rh粒子直径はそれぞれ7.4nmおよび7.2nmとなった。式中、

AはX線 の 波 長(nm); Bは回折線の広がり幅 ;OBはBragg角である。この結果は TEMの観測結果とほぼ一致する。

白金族金属分散アルミナ膜(バルク試料)の細孔分布、比表面積、細孔容積および 平均細孔径は窒素吸着法により求めた。 Fig.37は1.33wt%RuおよびRh分散アルミ

‑50‑

a) 

c) 

︑ ︐ /

hU 

d) 

5

n Fig. 3‑3 ゾルゲル法を用いて調製した1.33wto/t:1、Ru、Pdおよび町分散アルミナ膜 の表面および断面SEM写真

a) 1.33wt% Rh‑Al203; b)1.33wt% Ru‑Al203; c) 1.33wt% Pd‑A1203; d) 1.33wt% Pt‑A1203 

a)  hu  ︑ ︐ ノ

150nm 

Z 主

34 ゾルゲ峨を用いて調製した白金族金属分散アルミナ膜の表面高分解能SEM a) 1.33wt% Rh‑Al2U3,  5

∞ ' C

x2h;  b) 1.33wt% Ru‑Al203, 5

OCx2h 

‑51 ‑

a)  LU  ︑ . ︐ ノ

20nm  Fig.35 ゾルゲル法を用いて調製した白金族金属分散アルミナ膜のTEM 写真

a) 1.33wt% Rh‑Al203; b) 1.33wt% Ru‑Al

2 ω  

Rh‑A1203 

')ιA1203 

Rh

h =

∞ ロ

O一 ‑ 口 同

2 2 ω M

0γA1203 

Ru

Ru‑A1203 

5  20  40  60  70 

28 / deg. 

Fig. 36  3.0wt%Rhおよび、Ru分散アルミナ膜のXRDパターン 焼成条件:500"Cx5h,還元条件:500"Cx3h, H2 

Table 31  1.33wt%Ru, Rh  Pd および~分散アルミナ膜の比表面積,

細孔容積および平均細孔径の測定結果 比(表m2

jg 細孔容積 平均細孔径 (cm3jg)  (nm) 

A1203  145.6  0.1306  3.59  Ru‑A1203  117.8  0.1121  3.81  Rh‑A1203  124.5  0.1184  3.80  Pd‑A1203  107.3  0.1077  4.02  Pt‑A1203  114.7  0.1104  3.85 

‑52‑

一 一 ‑Rh‑A1203  Ru‑A1203 

‑A1203  5.0 

1.0  4.0 

3.0 

2.0  門 戸 ∞

J' EJ

'

UN︐︒ヨ¥凸司¥﹀司

3 ‑1にまとめ

20  30  10 

Pore diameter, D / nm 

Fig. 3‑7  1.33wt% Rh‑、 Ru‑A1203および、A1203s:莫 の細孔径分布

5

tx5h水素還元

5.0 

Neat Al203 

0.5 wt% Ru‑Ah03  4.0 

一 ー ー 1.33wt% Ru‑Ah03  3.0 wt% RAh03

一 一 一

10.0wt% Ru‑Ah03 

H2" N2、He、CH4、Arおよび C02のガス透過係数の測定結 果をFig.39に示す。第2章に 議論したように、 BaO‑A1203, La203‑A1203および、A1203膜で、

ガ ス の 透 過 係 数 は 分 子 量 の‑1/2乗に対しでほぼ直線的な依存性が得られ、

Knudsen拡散機構に従うことが分かった。これに対してFig.3‑8に示すように白金族 1.0 

門 口 ︑ ∞

J ' g

ロマ凶門日

υN 'O ¥

¥

3.0 

2.0  ナ膜およびアルミナ膜の細孔

径 分 布 の 比 較 で あ る 。 い ず れ の膜も細孔径が10nmの狭い範 囲で分布しており、白金族金 属分散した後、膜の細孔微構 造がほとんど変わらないこと が分かった。また、白金族金 属分散前後の膜の比表面積、

平均細孔径および細孔容積の 結 果 をTable

た。白金族金属分散した後、

膜の比表面積、細孔容積がや や減少し、平均細孔径は大き くなっている。特に白金族金 属の添加量が多くなると膜の 平均細孔径および細孔径分布 範 囲 が 大 幅 に 増 加 し 、 膜 の 綴 密性が悪くなることが分かっ

た(Fig.3‑8)。

3.4  白金族金属分散アルミナ 膜 に お け る ガ ス 透 過 特 性 の 評

1.33wt%Ru、Rh、Pd、Pt分 散 ア ル ミ ナ 膜(30回 デ イ ツ プ コーティングした)における

30 

Fig.3‑8 Ru‑A1203膜 に お け る 細 孔 径 分 布 の 添 加 量 依 存 性

5

tx5h水素還元

10  20  Pore diameter, D / nm 

は、

‑53 ‑

Knudsen diffusion:  Q=ftggAo(8カ浪MT)0.5 

Ru‑A12U3 

UAU 

5 4 3 2 1 0  

'd

N a g ‑

g ‑ o E

N ‑ ‑ C

H ¥ h H

2

85

ω

H2 

Rh‑A12U3 

U

仙 哨

U

' £

N 6 75

E ‑

o E

N

'O H ¥

台 ヨ

D g g h

ω

0.8  0.2  0.4  0.6 

(Molecular weight) 1/2 

0.8  0.2  0.4  0.6 

(Molecular weight) 1/2 

PtA12U3 

ハU

AV  

4 3 2 1 0  

︻匂円四

N ‑ E

マ ∞ 日 目 05

2 0 H

¥ h M

沼 門 戸

85

Pd‑Al2U3 

N ' E 7

E‑

E N H

oc

‑ ¥

b

28 E

0.2  0.4  0.6  0.8 

(Molecular weight) 1/2 

0.8  0.2  0.4  0.6 

(Molecular weight)1/2

Fig. 39  1.33wt%1RuPdおよび、Pt分散アルミナ膜におけるガス透過係数と分 子量のー1/2乗の関係。 膜厚:悶lA120316μm; Ru‑Al203, 18μm; Pd‑A12ω, 14n; PtA1203, 13n。 企P

25 kPa, 

0

20oC;2

OC;4

∞ ℃

金属分散アルミナ膜の場合では、水素ガスを除く他のガスの透過はKnudsen拡散機 構に合致しているが、水素ガスの透過はKnudsen拡散機構からの計算値(直線の外挿 値)以上のガス透過係数が得られた。水素透過速度の実験値とKnudsen拡散から計算 値との差は、高温ほど大きくなり、Knudsen拡散の以外の拡散機構の関与が考えら

れる。

また、水素および窒素のガス透過係数の比より算出したガスの選択透過能をFig. 3‑10に示す。アルミナ膜の場合では、ガスの透過係数がKnudsen拡散に支配され、

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