博 士 ( 獣 医 学 ) 芝 原 友 幸 学位論文題名
Comparative pathological study of intestinal spirochetosis in herbivorous animals
(草食動物の腸管スピロヘー夕症に関する比較病理学的研究)
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
ス ピ ロ ヘ ー タ の 一 部 は 人 工 培 養 が 可 能 で あ る が 、 一 般 に そ の 分 離 培 養 が 難 し い た め 、 未 知 の ス ピ ロ ヘ ー タ が 多 く 存 在 す る と 考 え ら れ て い る 。 細 菌 命 名 上 の 優 先 権 か ら 、 腸 管 ス ピ ロ ヘ ー タ で あ る3種 のSerpulina属 菌 をBrachyspiraと 表 記 す べ き で あ る と の 提 案 が 、1997年 に な さ れ た 。2003年12月 現 在 、 正 式 にBracル ヮ ね と 表 記 さ れ る も の に は B餾めD´ ザ(基準種)、&ロんmゆ甜肪、Bり′D・加ピ門胞rぬビ、B加門DcP恥およぴBpm硲をDカの5 種 類 が あ る 。 そ の 他 の 菌 種 も 肌 吐 卿 カ . と 表 記 す る 報 告 も 多 く あ る が 暫 定 的 な も の で あ る 。 ま た 、 腸 管 ス ピ ロ ヘ ー タ 症 は 人 と 豚 で 報 告 さ れ て お り 、 草 食 動 物 の 腸 管 ス ピ ロ ヘ ータ症の 報告はない。
第I章 で は 、 赤 痢 を 呈 し た24カ 月 齢 雌 ホ ル ス タ イ ン 種 牛 に つCヽ て 病 理 学 的 検 索 を 実 施 し た 。 そ の 結 果 、 腸 上 皮 細 胞 の 過 形 成 に よ る 大腸 粘 膜肥 厚が 認め られ た 。. 免疫 組織 化 学 的 な ら び に 超 微 形 態 学 的 に8M轟 ) ヤfm属 と 考 え ら れ る ス ピ ロ ヘ ー タ が 、 盲 腸 と 結 腸 の 陰 窩 の み な ら ず 杯 細 胞 、 吸 収 上 皮 細 胞 お よ び 粘 膜 固 有 層 に 存 在 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。 ま た 、 こ れ ら の 生 体 組 織 中 へ の 侵 入 が 病 原 性 に 関 わ り 、 牛 に 盲 結 腸 炎 並 ぴ に 赤 痢 を 引 き 起 こ す こ と が 示 唆 さ れ た 。 著 者 は 、 本 疾 病を 豚 赤痢 の原 因と 病理 発 生を 参考 にし 、
牛赤痢boV血cdy闘nteヴ と呼ぶこ とを提案した。
第u章 で は 、2000年 か ら2003年 ま で に 、 ゛ 様 々 な 理 由 で 病 性 鑑 定 に 供 さ れ た27頭 の 牛 につ いて 、 腸管 スピ ロヘ ー タ感 染の 有無を免 疫組織化学的手法で調べた 。42.1%(8/19) の 農 場 、37.O% (lO/27) の 牛 にBm碵 脚fm抗 原 を も つ ス ピ ロ ヘ ー タ が 確 認 さ れ た 。 ウ イ ルスある いは細菌の重複感染が80.0%(8/lO)の牛に認められ 、ヨーネ病が50.O%(5/め)
で あ っ た 。 病 理 組 織 学 的 に 、 ス ピ ロ ヘ ー タ に よ る 病 変 は 、 盲 腸 と 結 腸 に お け る 粘 膜 上 皮 細 胞 の 変 性 と 好 中 球 の 浸 潤 で あ っ た 。 牛 ウ イ ル ス 性 下 痢 粘 膜 病 に 罹 患 し て い た 牛 の 腸 潰 瘍 病 変 部 に 、 多 数 の ス ピ ロ ヘ ー タ が 確 認 さ れ た 。 こ れ ら の 結 果 よ り 、 腸 管 病 原 性 微 生 物 に よ る 糜 爛 ・ 潰 瘍 性 病 変 は 、 腸 管 ス ピ ロ ヘ ー タ の侵 入 によ り増 悪す るこ と が示 唆さ れた 。 また、腸 管スピロヘータ症が牛の間 で拡がっていることがわかっ た。
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第m章では、牛におけるPapillomatous digital dermatitis (PDD)と腸管スピロヘータの関 連を明ら かにす るために 、屠畜 場に搬入 された 牛につい て検査し 、両疾 病に同時に罹患 して い る 症例 を み っけ た 。 免 疫組 織 学 的な ら び に超 微 形 態学 的 検 索結果 より、PDDと 大腸炎の 病巣に 認められ たスピ ロヘータ は非常 に類似し ていた。 さらに 、同一個体にお い てPDDと 大 腸 炎 が確 認 さ れた こ と から 、 こ れ ら2つ の 疾病 は 病 因学 的 に 関連 が あ る と考 え ら れた 。 ま た、PDD罹患 牛 群 にお い て 、糞 便 が スピ ロ ヘ ータ 伝播 の主要 な経路 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。PDDの 再 発 が 治 療 後7‑12週の 短 期 間で44.2 ‑48% と 高率 にお こ る こと を 考 慮す る と 、PDD罹 患牛 は 蹄 の治 療 と は関 係 な く糞 便が スピロ ヘータ の 感 染 源 に な る こ と 、 お よ び 罹 患 牛 は キ ャ リ ァ ー と な る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 第1V章で は、上記 の牛症 例と同ー 地域に生 息する 野生エゾ シカに おける腸管スピロヘ ータ の 体 内分 布 を 調査 し 、7頭中6頭 の盲 腸と結 腸の粘 膜に牛の ものと非 常に類 似する スピロヘ ータを 確認した 。さら に、感染 部位に 一致して 大腸炎が みられ た。以上の結果 から 、Brachyspiraに属 すると考 えられ る腸管ス ピロヘ ータが牛 の赤痢 と野生エ ゾシカ の大腸炎 に深く 関わっていることがわかった。また、この腸管スピロヘータ症がすでに.
野生エゾ シカの 間で拡が ってい ること、 および 、このス ピロヘー タが牛 とエゾシカから 他の反芻動物に伝播する可能性のあることが示唆された。
第V章で は 、7カ 月 間 に わた る 持 続的 な 下痢と発 育遅延 がみられ た仔馬 の病理学 的検 査を 実 施 した と こ ろ、Brachyspira抗原 を有 し、か つ形態学 的に3種類の スピロヘ ータ が、盲腸 と結腸 の粘膜表 面の粘 液と陰窩 に多数 認められ た。さら に、変 性上皮細胞の細 胞質内な らぴに 細胞間と 粘膜固 有層、特 に血管 周囲に、 これらの スピロ ヘータがしばし ば認めら れた。 これら侵 入性腸 管スピロ ヘータ は馬に大 腸炎なら びに下 痢を起こす病原 体のひとつである可能性が示唆された。
第VI章 で は 、様 々 な 理 由で 病 性 鑑定 に 供された12頭のサ ラブレッ ド種馬 について 、 腸管スピ ロヘー 夕感染の 有無を 免疫組織 化学的 手法で調 べた。そ の結果 、7頭(58.3%)
が感染し ており 、腸管久 ピロヘ ータは盲 腸に多 く認めら れた。組 織学的 に、スピロヘー タと 腸 上 皮の 過形 成には 明らかな 関連が 認められ た。Brachyspira抗原 を有し、 かつ形 態学 的 に3種 類 のスピ ロヘータ が変性 した上皮 細胞問あ るいは 細胞内に 認めら れた。こ れらの結 果から 、Brachy.spira抗原 をもつ 腸管スピ ロヘータ の粘膜 への侵入が、盲腸の 腸上皮過形成を誘発することが示唆された。
本研究 では、牛 腸管スピロヘータ症 牛赤痢 の存在をはじめて明らかにした。また、
牛腸 管 ス ピロ ヘ ー タの 蔓 延 状 況と 牛 へ の病 原 性 の一 端 を 明ら か に すると 共に、PDDと 腸管スピ ロヘー タの関連性を示した。っぎに、 牛赤痢 罹患牛と同ー地域に生息する野 生エゾシ カにお ける腸管 スピロ ヘータの 保有状 況およぴ 体内分布 、馬の 腸管スピロヘー タ症の病 理学的 特徴、お よび馬 の腸管ス ピロヘ ータが増 殖性大腸 炎を引 き起こすことを 明らかに した。 以上の成 果iま、草食 動物の腸 管スピロヘー夕症の診断ならびに治療法の 確立に寄与すると考えられた。
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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査 教授 梅村孝司
副 査 教 授 昆 泰 寛 , 副査 教授 喜田 宏
副査 教授 古川博康(北里大学)
学位論文題名
Comparative pathological study of intestinal spirochetosis in herbivorous animals
(草食動物の腸管スピロヘー夕症に関する比較病理学的研究)
ス ピ口 ヘー タの 一 部は 人工 培養 が 可能 であ るが 、一 般 にそ の分 離培 養が難しい ため不明な 点が 多く 、未 知の ス ピロ ヘー タも 多 く存 在す ると 考え ら れて いる ゝま た、腸管ス ピ口へー夕 症は 主に 人、 豚で 報 告され ているが、これまで草食動 物の腸管スピ口へー夕症の報 告はない。
第I、uお よ びm章 で は 、 赤 痢を 呈し た 成牛 の大 腸に 、 甜口 め spira属 と考 えら れ る組 織 侵入 性ス ピロ ヘー タ がみ られ 、腸 炎 なら びに 赤痢 に関 連 する こと がわ かった。そ こで、牛お け る 腸 管 ス ピ 口 ヘ ー タ の 体 内 分 布を 調査 し、27頭中10頭 の盲 腸、 結 腸お よび 回腸 に スピ 口 ヘー タを 確認 した 。 このス ピ口ヘータカ漑に日本の牛 に拡がっていることがわかっ た。また、
屠場に搬入された牛を検査 し、Papillomatous digital dermatitis (PDD)と腸管スピ口ヘー夕症に 同 時 に 罹 患 し て い る 症 例 を み つ けた こと から 、 両疾 病は 病因 学的 に 関連 があ ると 考 えら れ た。
第W章 で は 、 野 生 工 ゾ シ カ に お け る 腸 管 ス ピ 口 ヘ ー タ の体 内分 布 を調 査し 、7頭中6頭 の 盲腸 と結 腸に 牛の も のと 非常 に類 似 する スピ 口ヘ ータ を 確認 した 。こ れより、類 似のスピロ ヘータが牛と野生工ゾシカ の大腸炎に関わっていること がわかった。
第V、VI章 では 、持 続的 な下痢を呈した仔馬の大腸病 変部に、Br achyspirロ抗原 をもっ形態 的 に3種の ス ピ口 へー タが 多 数認 めら れた 。こ れ らは 馬に 大腸 炎な ら びに 下痢 を起 こ す可 能 性 が 示唆 され た。 そ こで 、馬 にお ける 腸 管ス ピ口 ヘー タ の体 内分 布を 調査 し 、12頭中7頭 の 盲腸 、結 腸お よび 直 腸に 、前 述の も のと 類似 する スピ 口 ヘー タを 確認 した。この スピロヘー
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夕が腸上皮の過形成を引き起こすことがわかった。
本研究成果は、草食動物の腸管スピ口ヘー夕症の新知見であり、その疾病防除に貢献する ものと判断された。よって審査委員一同は、芝原友幸氏が博士(獣医学)の学位を授与され るに十分な資格を有するものと認めた。
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